インフィニット・ストラトス 白い狼《ホワイトウルフ》   作:如月ユウ

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タイトルの通り
今回は鈴の初登場です



プロローグ②セカンド幼馴染

ISが登場したことで箒が引っ越しすることになり、それからしばらく経ち、僕は進級して小学四年生から五年生になった。

 

「リンリンってパンダみたいな名前だよな」

「パンダって笹食べるよな」

「笹じゃないけど、これ食えよー」

「や、ヤメテ……」

 

放課後の教室で掃除しているとサボっている友達が片言の日本語で話している女の子に雑草を持ってからかっていた。

 

「嫌がってるからやめなよ」

「なんだよ内維、邪魔すんな」

「今日はお父さんとの練習があるから早く終わらせないといけないから掃除しないなら帰って」

「公園いこーぜ」

 

からかうのが飽きたのかランドセルを持って取り巻きと一緒に教室を出た。

 

(ファン)さん、大丈夫?」

 

大丈夫かどうか聞くとうつむいたまま小さく頷く。

彼女は鳳鈴音(ファンリンイン)。中国からやって来て五年生の最初の頃に転校してきた。

しかし日本語はうまく話せず、男子からからわれて女子もあまり近寄ってくれなかった。

 

「はやく話せるように今日も練習しよう」

「うん……」

 

一緒に掃除をして家に帰っていく。

 

 

 

 

「お互いに礼」

「ありがとうございました」

 

面と籠手の防具を脱いで床に正座をして手をついて頭をさげる。

篠ノ之神社は箒の家族がいなくても親戚が管理してくれて敷地内にある剣道場はお父さん達が借りて練習している。

僕も練習に参加してお父さんが小さい頃に使っていた防具一式を貰った。

 

「優、また竹刀を右手で支えてる。持つときは左手が中心だから意識しろ」

「はい」

 

今日の練習で何が悪いか指摘されて直すようにしている。

 

「ユウ、オツカレ……これ」

 

鳳さんが麦茶が入った水筒を貰って一気に飲み干す。あぁ~生き返る。

 

「優くん、お疲れ様」

「雪子おばさん」

 

篠ノ之神社を管理している雪子おばさんは僕が剣道の練習中に鳳さんに日本語を教えている。

 

「ホーキはユウのトモダチ?」

「ここにいたときは一緒に剣道をしてたんだ。あのときはまだ素振りしかやってないけど」

「ソウ、ナンダ……」

 

箒がいた頃のことを話したら何故か不機嫌になっている。

 

「キョウもヨルよね?」

「うん、お父さんの車に行こ」

 

防具一式と竹刀袋をお父さんの車に乗せて鳳さんを家まで送る。

 

「いらっしゃいませ」

 

店の扉を開けると料理の匂いが漂い、客席はほとんど埋まっていた。

鈴の家は中華料理店を経営していて中国本場の料理を味わえるので人気である。

 

「晩御飯は何を買って帰る?」

 

壁に貼られたお持ち帰り用のメニューに目を通して何を食べるか選ぶ。

 

「今日は酢豚が食べたい」

「わかった。タレ付き肉団子とトマトと卵の中華炒めと酢豚をお持ち帰りで」

「はい、ちょっと待ってね」

 

鈴のお父さんが手早く作って出来立ての料理がビニール袋に入れられて渡される。

 

「はい、おまちどおさま。キュウリの中華漬があるけどこれは家で浸けたのだからサービスだ」

「わざわざすいません」

「いえいえ、鈴音もおたくの息子さんによくお世話になってるのでお礼ですよ」

「待ってユウ」

 

買った物を支払って帰ろうとしたら鳳さんが呼び止めた。

 

「ワタシのコト、鳳じゃなくてリンで、イイカラ」

「でも、その呼び名はあまり嫌がっているんじゃ」

「ユウなら、イイ。名字(みゃうじ)はオヤ、カブル」

「わかった。これからは鈴って呼ぶよ。また明日ね」

「また、アシタ」

 

鳳さ……鈴と別れて車に乗って家まで帰る。

 

 

 

 

僕はお父さんに剣道を習って、鈴は雪子おばさんに日本語を教えてもらい六年生に進級した頃には普通に話せるようになった。

 

「優はアタシの家のご飯は好き?」

 

放課後の掃除を終わって家に帰ろうとしたとき鈴が自分の料理店のメニューは好きかと聞く。

 

「好きだよ。お父さんも酒のつまみに合うとか言ってる」

「おじさんのおつまみって……まあ、いいわ」

 

おつまみとして食べていると言うと呆れている。だって美味しいじゃん。

 

「もし、アタシの料理の腕が上達したら毎日アタシが作った酢豚を食べてくれる?」

「むしろこっちからお願いしたいよ」

「じゃあ、約束よ。アタシ、絶対上手くなってお父さんのお店を継ぐから」

 

嬉しそうに頬を赤くしているが鈴の腕ならおじさんのお店を継ぐのも時間の問題だろう。

小学生を卒業後も同じ中学校に入学して同じクラスにもなった。

中学校になっても僕と言うのは馬鹿にされるので自分のことは俺と呼ぶようにした。

俺は箒との再開を目標に剣道部に入部するが鈴は実家の中華料理店のお手伝いがあるので帰宅部。

 

「お互いに礼」

「ありがとうございました」

 

板張りの道場に正座をして頭をさげると張りつめた空気が切れて、力を抜いてだらけている部員がちらほらいる。

仮入部から新入部員になった人は竹刀を購入して素振りから始めて、経験者や小学生から剣道をしている俺は先輩方と一緒に混ざって稽古をする。

 

「小学生からやってると言ったが二年生と互角に試合出来るとは思わなかった」

「お父さんの同僚と混ざって剣道をしてまして」

「そうか。その調子で強くなってここの剣道部を引っ張るようになれよ」

「はい」

 

経験者同士で試合をしてその中で俺が一番強かったらしく部長が期待の新人と言って称賛してくれた。

 

「内維、なんでそこまで強いんだよ」

「初段持ちじゃないのに俺達と同等の試合だったからな」

「お父さんが剣道やってるんだよ。確か段位は六段だったような」

「ろ、六段! どおりで強いわけだ」

 

お父さんが有段者持ちだから俺も強いと経験者達も納得。

剣道にも検定があってそれに合格すれば段位という証が貰えるが年齢制限も存在してその年齢に達してないと受けることは出来なく、受かっても年月を経過しないと上の段位も同じように受けれない。

 

「ただいま」

 

部活が終わって家に帰るがお帰りの一言もなく、電気は付いてない。

そのことを気にせず靴を脱いでリビングのスイッチを押して電気を付けるとダイニングルームのテーブルにはラップをした晩御飯が並べられている。

 

「いただきます」

 

晩御飯を電子レンジで温めて食べる。

お父さんさんとお母さんがいないのは理由があってISが関係している。

束さんがISを発表してから世界は激変していった。

まずISは現行する兵器はISの前では鉄屑に等しくそれゆえに世界の軍事バランスが崩壊。IS技術を独占していたのは日本だけでそれを危惧した各国は技術共有として『アラスカ条約』を結束して世界中にISが行き渡った。

そしてISは女性しか動かせなく、操縦者は当然女……となると、どの国も女性優遇制度を率先して施行した。

自衛隊も例外ではなく、女性自衛官も増加。本来、アメリカから納入されて配備されるはずの戦闘機の話も白紙。

ほとんどの予算をISに注ぎ込まれてお父さんだけの収入では足りないのでお母さんもパートをして稼ぐことになった。

鈴が帰宅部なのも家の事情だけじゃなくバイトを募集するにも給料を払えるかどうかわからないので手伝いをしている。

 

 

 

授業が終わって学生の憩いである休み時間になるとワイワイガヤガヤと騒ぎ立てる。

 

「鈴、ちょっと頼みがある」

「頼み?」

「鈴のお店で働かせてくれないか?」

 

そんな中で俺は鈴に頼み事をしている。

 

「バイト募集する暇もないんだろ? 皿洗いとか掃除なら俺でもやれる思うから」

「手伝ってくれるのは有難いけどお金が払えるかどうか……」

「いや、給料はいいからさ、その代わり飯を食わせてほしい。俺の親は夜遅くまで帰ってこないから一人で食べてるし」

「お父さんに相談してみる」

 

鈴が両親に相談してみると部活が終わった後に行く予定で組ませてもらい、午後七時から閉店の午後九時以降に手伝ってほしいと言ってくれた。

 

「お疲れ様です」

 

部活を終えて中華料理店『鈴音』の裏方で皿洗いや掃除をして閉店してからの後片付けをしている。

 

「すまないね、夜遅くに手伝ってくれて」

「飯食わせてもらってるんで気にしないでください」

「このまま店を引き継いでくれるなら安泰なんだがな」

「いやいや、下っ端の下っ端の俺じゃあ無理ですよ」

 

来て間もない素人が店を継ぐなんて以ての外(もってのほか)でそれに鈴がおじさんの店を継ぐからね。

 

 

 

中学一年目の県代表をかけた大会。

二回戦、三回戦と順調に勝ち進んだが準々決勝で一本を取られて時間切れで負けてしまった。

団体戦は三年生の先輩方が出場したが惜しくも惨敗。小学校から剣道を始めて、先輩達や経験者と互角に試合が出来るからいけるだろうと慢心していた。

大会を終えて帰ると鈴のお店の手伝いをして、閉めたあと鈴が飯を作ってくれた。

 

「また来年あるじゃない。そのとき頑張れば」

「あと二回しかないんだ。その二回しかない大会で代表にならないと」

 

今回の敗退でひとつ無駄にして終わってしまった。

箒は代表になって全国大会に出場しているのに俺はなれずに一年目を終えてしまった。

 

「負けて悔しいのはわかるけど、なんでそこまで代表に拘るの?」

「小学校の剣道大会のときだった。ISが出たことで箒も引っ越しすることになったんだ。あのときは誘拐だと思って助けようとしたけど何も出来なくて」

 

小学校の頃の俺は無力で箒が連れて行かれるのを指で加えて見てることしか出来なかった。

本当に悔しかった、力があれば箒を守れたかもしれないと。

 

「あんた、箒のことが好きなの?」

「箒? いや、わからないな。守りたいと思う気持ちはあるけど好きかどうかは」

 

あの時は苛められていた箒を助けて、それから一緒にいて急な引っ越しに大したお別れを言えずに離れ離れになった。千冬さんが全国大会に行けば会えるかもしれないと言ったから強くなろう思っている。

 

「今は食べて力をつけなさい。ここで働いてる間はアタシがあんたのご飯を作ってあげるから」

「鈴が作る飯は旨いからな」

「当たり前じゃない」

 

山盛りの中華料理をがつがつと食べていく。

最初の県の代表をかけた大会で苦汁を舐めた俺はまだ強くならないといけない。家に帰ってからも素振りは勿論、走り込みは筋トレをして、有段者のお父さんや同僚の人達が中学校にきてくれたりして、俺達はメキメキと強くなっていく。

夏休みが過ぎて、冬休みが終わって二年生に進級するある日、鈴は帰国することになった。

 

「おじさんの病気で中国に帰るのか」

「うん……」

 

おじさんは(ガン)を患っていてそれが悪化してお店を続けるのが無理だとのこと。お店も畳み終わってあとは帰国の飛行機に乗るだけで一緒にいられるのもあと数日しかない。

 

「優、あんたの家に行ってもいいよね?」

「別にいいが」

 

お店を辞めてからは俺の後ろをついて行くようになって、飯とかも俺の家で作ってくれるがそこまでしなくて良いと言うと──

 

『一人寂しく食べてるほうが可哀想だから仕方なくよ。ありがたく思いなさい』

 

手伝いをする前は一人で食べてたから平気だったし。しかも俺の親も鈴の親も公認だから止める人は誰もいない。

 

「ご飯、出来たわよ」

「わかった」

 

握っていた握力グリップを置いて鈴が作った中華料理を食べる。皿洗いは二人でやってソファに座ってテレビのバラエティー番組を見る。

 

「帰るのは来週の土曜日なんだよな」

「……うん」

 

間を置いて頷いた。

鈴が日本にいられるのは手で数えられる日にちしかない。

努力して覚えた日本語も中国では意味ないのでちょっともったいない気もしてきた。

 

「あっという間だよな。鈴が日本に来て言葉が上手く話せなくて、頑張って練習して話せ──」

「優!」

 

服を掴んで抱き付く鈴。な、な、なにが起きた。

 

「いやだぁ……帰りたくない。こっちでも友達が出来たのに離れたくないよぉ……」

「あ~もう、泣くな」

 

ポンポンと頭を撫でる。

数年間しかいないがそれでも思い出がある場所なのか離れるのに抵抗がある。箒もこんな気持ちだったんだろう。

時間は二十一時を回っていて家まで送らせようとしたら──

 

「お父さんとお母さんには泊まるって言った」

「まてまて、親には許可もらったか?」

「日本にいる最後の思い出だから許してくれた」

 

大事な娘を簡単に男の家に泊まらせていいのかよ。買い物袋にしては大きいと思ったら着替えも用意していたのか。

 

「落ち着け、相手は鈴なんだ。幼馴染なんだぞ」

 

鈴がお風呂に入っている間に空き部屋に布団を敷いて独り呟く。

小学校の頃から一緒にいるんだから変な気持ちとかにはならない筈。

 

「優、上がったからはやく入りなさい」

「お、おう」

 

いつもツインテールにしている髪はリボンを解いてストレート髪になっている。

お風呂上がりなのか、ほのかにシャンプーの匂いが漂って鼻腔に入ってくる。

普段見ない鈴の姿に上手く反応出来ず、逃げるように浴室に向かう。

服を脱いで裸になり浴室に入ると鈴が入った浴槽を凝視する。

 

「鈴が浸かったお湯なんだよな……」

 

この浴槽には鈴の汗とか髪の毛とかがあって浸かれば身体に纏まりついて──

 

「う、うぉぉぉぉ!」

 

シャワーを冷水にして力任せに髪と身体を洗って綺麗にする。

冬なのに冷水を浴びて冷たいとか言っている場合ではなく、はやく上がらないと自分がおかしくなりそうだった。

 

「はぁ、はぁ……なんで風呂入るだけで疲れるんだ」

 

身体の疲れがとれるどころが余計に溜まってしまった。こういうときはさっさと布団に入って寝たほうがいい。

テレビを見てると思う鈴に声をかけようとリビングに行くが誰もいなかった。

 

「もう寝たのか?」

 

時間はもう少しで二十三時になるので空き部屋で寝ているんだろう。そう思って自分の部屋に行くと布団が膨れ上がっていた。

 

「まさか、それはないよ」

 

ゆっくり布団を剥ぐと鈴が寝息を立てて眠っていた。

 

「マジかよ」

 

ベッドは占領されているので仕方なく空き部屋の布団で寝ることにした。

 

「鈴のやつ。なんで泊まるとか俺の布団に入りこんだりするんだよ」

 

空き部屋の布団にくるまって独り呟く。

女子の友達ならわかるけどどうして男である俺なんだ。幼馴染だからなのか?

 

「あ~やめやめ。考えても無駄だから寝よ寝よ」

 

どうせ答えが出ないから寝たほうがいい。目を瞑ってしばらくして眠りについた。

 

 

 

 

カーテンの隙間から朝日が差し込んで

冬になると布団の暖かさから出たくないからこの一時を楽しみたいが日課である素振りをしないといけないのでこのぬるま湯から出よう。

布団から出ようとしたが布団の暖かさ以外に人肌(・・)の体温を感じた。

 

「…………」

 

無言で布団をめくると鈴が身体をくるまって俺と同じ布団に眠っていた。

 

「おい、鈴」

「んん~?」

 

普段なら驚いたりするが疲れが残っていたのか驚けず、強めに揺すって鈴を起こす。

 

「なんでいるんだよ」

「昨日、泊まるって言ったじゃない……」

 

なに言ってるのと言いながら欠伸(あくび)をして目を擦る。

違う、そうじゃない。どうして俺の布団に入っているんだよ。俺の部屋で寝てると思いきや空き部屋の布団に入り込んで、こいつはなにがしたい。

 

「ご飯作っておくから先に素振りとかやりに行きなさい」

 

色々、言いたいことがあるが時間が足りなくなるので部屋に戻り、竹刀を持って素振りをすることにした。

 

「ふっ!ふっ!」

 

ジャージに着替えて家の庭で素振りをする。四月前だから外は寒いが一日足りとも欠かさず続ける。

 

「継続は力なり……か」

「ご飯出来たわよー」

「わかった」

 

家に戻ってリビングに行き、鈴が作った朝食を食べて学校に向かう。

 

「お互い礼」

「ありがとうございました」

 

正座をして頭をさげると放課後の練習が終わる。部活に入っていない鈴は終わるまで待ってくれて一緒に帰るが今日も俺の家に泊まると言い出した。しかも親の了承を得て。

 

「悪いな、飯も作ってもらって」

「いいのよ。好きでやってるだけだから」

 

中華料理を美味しく頂いて食後のお茶を飲んで、鈴は皿洗いをしている。

 

「このあとやる事ないからゲームやるか?」

「いいわね。なにやる?」

 

ゲーム機に電源を入れて交代でやり続けて時間が過ぎて、気付いたときには時計の針は十時をさしていた。

 

「けっこうやり込んだな」

「あっという間ね。先に入るからね」

 

コントローラーを渡されると着替えを持って浴室へと行く。言うまでもなく俺は浴槽には入らず、冷水シャワーで済ませた。

 

「……またか」

 

寝ようとしたら鈴がまた俺の部屋のベッドで寝ていて仕方なく空き部屋の布団に寝て朝になって起きると鈴も一緒に布団に寝ている。

そのような生活を続けて金曜日になると空き部屋の布団に鈴が寝ていた。

 

「やっと寝れる」

 

寝れないわけではないが寝るなら空き部屋の布団ではなく自分のベッドのほうが落ち着く。

 

「明日で鈴がいなるなるのか」

 

金曜日の夜を迎えて土曜日の朝になれば鈴は空港に行かなくてはならなくなる。

 

──ガチャリ。

 

今日も入ってくるか。

 

「鈴……」

「……ッ! お、起きてるの?」

「まあな」

 

布団から出てベッドに座る。

俺の部屋で寝たり空き部屋で寝たりと鈴の意味不明な行動に流石に言わないと。

 

「はやくあっちの部屋で寝ろ」

「いや」

「駄々っ子、言うな。明日は空港に行かないといけないんだろ?」

「だって……明日になったら帰らないといけないもん……」

 

友達と別れるのが辛いのか、目に涙を流して泣いている。

 

「お父さんの病気が悪化したから仕方ないけど……最後まで優の隣でいたいんだもん……」

 

ぐすっ、ぐすっ……と涙を流して鼻をすする。これじゃあ俺が悪いみたいじゃないかよ。

 

「あ~もう、わかった。はやく起きないといけないからこっち来い」

「いいの?」

「寝てるときに潜りこんでいるのに今さら寝れないのか?」

「ううん、はいるわよ……」

 

背中合わせで同じベッドに入って布団を被る。後ろには鈴がいて、体温が背中から伝わる。

 

「鈴」

「なに?」

「明日の土曜日さ。俺も空港に行くから」

「部活はどうするの? サボるの?」

「部長と顧問にはちゃんと許可貰ってる。だから心配すんな」

「……ありがと」

 

鈴が日本にいる最後の日はお互いの体温を感じながら眠りにつく。

朝になり、鈴の両親が家に来て一緒にタクシーに乗って空港まで行く。

 

「ごめんね優君。娘が迷惑をかけて」

「いえ、幼馴染ですからこの程度、迷惑だとは思ってません」

「ほら、お別れを言いなさい」

「優。アタシ……絶対、日本に行くから。勉強して日本の大学に入って会いに行く」

「そうか。勉強、頑張れよ」

「あんたに言われるまでもないわ」

 

軽口が言えるほど元気を取り戻していつもの鈴に戻った。

また日本に行くと言って、家族と一緒に中国行きの飛行機に乗って飛び立つ。

箒とは違ってちゃんとお別れや送別会をやれたので心残りはあるがそれでも割りきれた。




次回は中学二年生編後半からIS起動直後までを投稿します
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