--モーガン大佐拘束より数日後--
朝日が昇る少し前、あいも変わらずカゲルは日課の素振りを行なっていた。
そして、一連の流れを終えた後、刀を収めると、ふと、自らの両手を見て、握っては開く動作を何度か繰り返した。
(先日、基地に侵入してきた少年も悪魔の実の能力だったらしい。それもゴム人間。おれとの能力の相性が悪い。この東の海には能力者はあまり存在しないが、偉大なる航路じゃあ化け物みたいな奴らが多い。このままだと、任務の最中に死ぬかも知れない…)
「とは思ったものの、偉大なる航路での任務なんて早々、まわってこないし暫くはここに配属されるだろうからな〜」
カゲルはその能力を持ったことによって力に溺れると言ったことはしない。しかし、何処かしら抜けている部分があり、そのせいで能力と普段の姿が一致しないのだ。だが、先日の一件で、海兵達の認識は変わった。変わったのだが……、当の本人がこの様じゃ、些か信じられない。
「さて、朝日が昇りそうだし、戻りますか」
今日もカゲルの一日が始まるのであった。
さて、モーガン大佐が拘束された事によって、この基地ではいくつか変化が起きた。まず、この基地の責任者にリッパー中佐がおさまった。この件に関しての不平不満はなかった。次に、雑用として新兵が増えた。先日の侵入者であったルフィと一緒にいた、丸メガネの少年--コビー--、それと…
「くそっ、何でオレ様まで雑用なんか…」
意外な事に、バカ息k…モーガン大佐の息子のヘルメッポが一緒にいた。
そして…、
「あ、おはようございます!カゲル大尉!」
そう、先日の件からカゲルの階級が少尉から大尉へと昇格したのだ。
「あ〜、うん。おはようさん。しかしまぁ、本部の方には、まだ報告してないから仮の階級だけどな。」
苦笑いを浮かべながら、カゲルは挨拶を返した。
「でも、カゲルさんの実力なら佐官になってもおかしくないんですけどねぇ。何で、それ以上の昇格を辞退したんですか?」
ふと、挨拶をした海兵はカゲルに尋ねた。
「ん?あぁ、佐官になると東の海でも高めの賞金首を相手にしなきゃいけないし、下手すれば、何処かの支部の管理を任命されちゃうし、そう言うことがやりたくないのよ」
要は、『めんどくさいからやりたくない』ということである。
「はぁ、そうですか…。けど、賞金首の相手は、どの階級であってもありますよ?特に、カゲルさんが強いって事は、この支部の全員が知っている事なので、リッパー中佐も貴方に優先的に回すと思いますよ。」
「うへぇ、そりゃ嫌だね…、まだ死にたくないし」
「あはは、何言っているんですか、貴方に勝てるのなんて、この東の海じゃあ、"ノコギリのアーロン"くらいなモンですよ。あ、いや、アーロンでもカゲルさんが勝つ可能性が…」
「それこそ嫌だね…、それじゃ、おれは、行くから」
「あ、では、また」
そう言って、敬礼をされながらカゲルはこの場を去っていった。
--支部長室--
以前までいた部屋の主人の姿はなく、別の人物がその椅子に座していた。
コンコンッ
と、誰が訪ねてきたようだ
「リッパー中佐、カゲルです。」
「ん、入ってもいいぞ」
ガチャッ
「失礼します。」
「あぁ、急に呼び出してすまないな」
どうやら、カゲルはリッパー中佐に呼び出されていたようだ。
「別に構いませんよ。それで?要件とは?」
「あぁ、先日の件を報告したんだが、第77支部基地でもトラブルがあったらしくてな、また後日ということになった。それで詳細を報告する為と君の昇格を正式に認定するために、偉大なる航路にある海軍支部に向かって欲しいのだが…、向かってくれるか?」
カゲルは目を見開いた。まさか、自分が偉大なる航路への任務を命じられたからだ。
「あの〜、本気ですかい?電々虫じゃダメですかね?」
「報告だけならそれでもいいのだが…、昇格の件は、なるべく本部に近い支部での認定が必要になるのでな、という訳で、向かってくれ。」
「はぁ…、了解しました。それで、その支部ってのはどこの町ですか?」
「あぁ、グランドラインにある春島の町らしくてな、何でも、最近支部長になった大佐が居るんだが、それがかなりのやり手らしくてな、その容姿にちなんで"紅の女大佐"と呼ばれて居るらしいぞ」
「へぇ〜、女性なんですね。」
「あぁ、くれぐれも失礼のないようにな」
「了解しました。では、明日から向かいます。」
再度、敬礼をしてカゲルは退室していった。
--???大佐 視点--
グランドラインの春島、とある町の海軍支部基地、その支部長室にて紅色の長髪を後ろで結わえた女大佐が座っていた。彼女は、東の海で起こったトラブル報告のための海兵を待っていた。
その横顔には、窓からの光が当たり、
とても神々しくも思えた。その凛とした表情からは、微塵の焦りも感じられず、ただその時を待ち構えていた。
と、
コンコンッ
「大佐、報告のための海兵が参りました。」
来た。彼女は、緩みそうな口角を我慢した。
「そうですか…。では、どうぞ」
ガチャッ
「失礼します。」
部下である少佐に続いて一人の海兵が入ってきた。が…
(あれ?カゲルさんじゃない? え?)
大佐は一瞬ポカンとしたが、すぐに表情を戻したため、気付かれなかった。
「えと、所属と今回の報告をお願いします。」
「は!海軍第77支部基地所属、カケル少尉であります!」
(え?カケル少尉?しかも第77支部?
カゲルさんは第153支部じゃ?)
大佐が困惑している間に、カケル少尉は報告をしているのだが、右から左へと流れてしまっていた。
「〜〜〜〜と言うわけです!以上が今回の報告となります。」
「へ?あぁ、はい。わかりました。報告ご苦労様です。後ほど、記録として報告書をお願いします。」
「は!では、失礼いたします!」
そう言って、カケル少尉と部下の少佐は退室した。
その後、大佐の部屋から、苦悶に満ちた声が聞こえて来たと言う。
ここで、カゲルのデータを公開したいと思います。
カゲル (32歳) 海軍 大尉
悪魔の実:バチバチの実
能力:自身や、その持ち物に帯電させたり、電気を放電する ことができる。
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