(熱い…苦しい…)
ゴゥ…ゴゥ…パチッ
(熱い…熱い…熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い!)
少女は目を覚ました。そして見た。大量の瓦礫を、燃え盛る炎の群れを。
「逃げなきゃ…」
何で燃えてるの?どうして?そう疑問が浮かぶ前に少女は歩き出した。少しでも炎から遠ざかるために。
「お母さん…みんな…どこ…?」
少女は探した。自身の他に誰かいないか、助けてくれる誰かがいないか。
しかし、歩けども歩けども、辺りには炎と瓦礫の山のみ。
「お母さん…みんな…どこ!ッ…ゲホッゲホッ…」
辺りに立ち込めた煙を吸ってしまい少女はむせた。
と…
「たす…け、て…。た、すけ…て」
「ッ!」
少女のすぐ近くで、誰かの声が聞こえた。声のした方へと目を向けると、自分と同じくらいの少年が瓦礫の間に挟まっており、その額からは血が流れていた。
「あ…」
その少年の顔には見覚えがあった。彼は近所に住んでいる少年で、よく一緒に遊んでいた。
「いまっ…助けるか…ら」
少女は勇気を振り絞って瓦礫の山に近づいた。
「大丈夫っ…助けるから」
「----ちゃん?…----ちゃん助けて、僕、動けなくなっちゃった…」
少女は少年の手を握って、「大丈夫…大丈夫…わたしが助けるから」
と言った。そして、少年の周りの瓦礫を少しずつ退かしていった。
しかし、子供の力だけで退かせる瓦礫には限界があった。
「はぁ…はぁ…何で…動かないの」
「----ちゃん、寒いね…、あとね、眠くなっちゃった…」
「え?…」
「寒い」こんなに火の手が上がっているのに、「寒い」少年は確かに言った。
「ダメッ…寝てもダメ、あともう少し、あともう少しで出れるから…助かるから!」
少女は先程より、強引に瓦礫を引っ張った。そして、瓦礫の一部をどかす事に成功した。だが、それが引き金となったか、はたまた、元からだったのか、瓦礫は大きな音を立てて崩れた。ようやく、少年を助けられる。そう思った少女の期待を押しつぶすかのように崩れ去り、さらに駄目押しとばかりに燃え盛る柱も重なった。
少年の断末魔は聞こえなかった。恐らく、瓦礫が崩れると同時に生き絶えたのだろう。
「あぁ…あ、あぁアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアァッ!」
しかし、少女の精神をを抉るのには十分すぎる破壊力を持っていた。
そして、少女はその場から逃げるように走り去っていった。
途中、何度も助けを求める声が聞こえたが、少女の恐怖心をさらに掻き立てた。そうして、気がつけば町外れの荒地で気を失った。
「ッ!」
軍艦の船室でグラナータは目を覚ました。しかし、その顔には疲労の色が浮かび、汗をかいていた。
「はぁ…、嫌な夢を見た…」
もう一度眠りにつこうとしたが、先程の夢のせいでなかなか寝付けないでいた。
「少し、夜風に当たりましょうか…」
そう言って、彼女は私服のコートを羽織ると、夜風に当たるために甲板へと向かっていった。
---甲板----
コツ…コツ…
月夜に照らされ、凪模様の海と相まって、静かな雰囲気の甲板には誰もいなかった。
その甲板をグラナータは一人で歩いていた。来る途中で見張りの海兵ともすれ違ったが、『少し夜風に当たりたかった』と答えれば、すぐに去っていった。
「ふぅ…、それにいても嫌な夢だったわね…」
先程の夢…、いや、昔の記憶を見た事で、グラナータは感傷的になっていた。
「やっぱり…、忘れられないわね…。」
と、グラナータが一人で呟いていると、
「おや?グラナータじゃないか」
誰かが声を掛けてきた。その声の主を確認するため振り向くと
「あ…、カゲル…さん。」
そこには、カゲルが立っていた。
「どうしたんだい?こんな夜更けに甲板に出て。」
「あぁ、いえ、目が冴えてしまったので、すこし夜風に当たりに…」
先程みた夢のことをカゲルには知られたくないため、そう答えた。
「……ふ〜ん、『目が冴えた』ねぇ…。まぁ、何にせよグラナータも夜風に当たりに来たのか。」
「カゲルさんもですか?」
「ん?あぁ、そうだね。それで、甲板にグラナータが居たからね、驚いたよ。」
「意外ですか?」
グラナータは少し苦笑いを浮かべつつカゲルに聞いた。
「あぁ、意外だね。そうだ、せっかくだから、少し話をしないか?。」
「?構いませんが…、どうしてまた?」
「いや、何となくだよ…、何となく。」
「はぁ…、まぁ、構いませんが。」
「そうこなくっちゃな」
グラナータに提案を受け入れられたため、カゲルは嬉しそうな笑みを浮かべた。
それから、二人は暫く話をしていた。最近の出来事、自分の体調や、思っていること、そして、"二人が出会った時のこと"。時間にして、一、二時間程ではあったものの、それだけで、グラナータの心を覆っていた不安などはいつしかなくなっていた。
今回は、幕間としてグラナータの過去を取り上げてみました。グラナータは戦争孤児になります。その後
、カゲルと出会いますが、二人の出会いについては、また次の機会に…
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