短めですが、楽しんでください。
--処刑台前--
海軍派出所を目指して歩いていたカゲルは町の中心部にある処刑台の前で足を止めた。
「約20年程前だったか、海賊王があの処刑台で処刑されて、そして大海賊時代が幕明けたのは…」
そう呟いたカゲルは無意識に額を抑えた。
「あはは…、おかしいな、もう傷なんてとっくの前に治っている筈なのに痛いや…」
海兵になってから幾度となく傷を負っていたのだが、カゲル一人だけが助かったあの時の"痛み"が記憶と相まって彼の中で消えない傷として残っていた。
(グラナータには…、見せられないな、こんな姿…)
「よしっ、スモーカー大佐へ挨拶に行くとしますか。」
瞬時に気持ちを切り替えたカゲルは再び派出所へとその足を進めた。
そんなカゲルの事を陰から見つめている女性がいた。
「カゲルさん…」
スモーカーへの用事を終えたグラナータだった。
「なんで…、私に一度も相談をしないんですか…」
カゲルの口から直接聞いたことはなかったのだが、夜、一人で涙を流すカゲルの姿を何度か目にしたことがあり、いつも心配になっていたのだ。
(けど…、聞いてしまったら、あの人を傷付けてしまうかもしれない。嫌われてしまうかもしれない。)
カゲルに嫌われてしまうかもしれない。そう思ってしまい、聞けずにいた。
「私じゃあ…ダメ、なのかな……」
ポロリと心の声が漏れた。
「いや、違う。私はあの人を守るために海兵になった。だからここで弱音を吐いたらいけない。」
そう言うと、グラナータはG-15支部に戻るため港へと向かって行った。
---海軍派出所---
処刑台前から移動をしたカゲルは、海軍派出所へとやってきた。
「ん?何か御用ですか?」
と、入り口の方にいた海兵に質問された。
「あぁ、ここへと赴任する事になったカゲル大尉です。スモーカー大佐や、他の海兵の皆さんへの挨拶に参りました。」
「はぁ、兎に角スモーカー大佐へと確認を取るのでここで待っていてください。」
そう言うと、海兵は建物の奥へと引っ込んで行った。
「しかし、まぁデカイな、この派出所。ちょっとした支部くらいはあるんじゃないか?」
カゲルは派出所の建物を見上げてそう呟いた。
「シェルズタウンでの勤務とは違って、ここでの任務はリスクが大きいだろうな…。はぁ…、未だに20年近く前の事を引きずっていたままじゃ、グラナータに愛想尽かされるかもな。なら、彼女に並べるくらいの地位と力を付けないとな。」
改めてカゲルが覚悟を決めたその時、
「確認が取れました。どうぞカゲル大尉。奥でスモーカー大佐がお待ちです。」
先程、確認を取るために行った海兵が戻ってきて、カゲルへ中に入るよう促した。
「お、そうですか。では、これから同じ場所で働く海兵として、よろしくお願いします。」
そう言ってカゲルは手を出した。
「ええ、こちらこそ。」
それに対し、海兵もカゲルの手を握り返した。
「では、私は仕事があるのでこれで。」
「はい、私もスモーカー大佐へと挨拶に行ってきます。」
そう言って、カゲルは海兵と別れた。
「さてと、スモーカー大佐との仲が悪くならなければ良いのだが…」
そう一抹の不安を持ちながら、スモーカー大佐の待つ奥へと足を進めた。
感想、質問、評価などなどお待ちしております。