「そう言えば…、カゲル大尉」
朝の日課の素振りを終えたカゲルに、たしぎはふと尋ねた。
「あなたが腰に差しているその刀…、見たことがありませんが、銘はあるのですか?」
カゲルの腰に差している刀を指差すと、そう質問した。
「うん?あぁ、コイツか。それが俺も分からないんだ。何せ、貰い物の刀だしな。刀に詳しいたしぎ曹長が一目ではわからないとはな。」
「ふむ、少し見せていただけませんか?」
「あぁ、構わないよ」
そう言って、カゲルは刀をたしぎに手渡した。
カゲルから刀を受け取ったたしぎは、おもむろに観察を始めた。
「うーん、柄は黒色で鍔の形も円形で、これと言った特徴はありませんね。重さもやや重いくらいで…。」
「抜いても?」
「どうぞ」
「刃渡りも普通ですね…、ただ、刃文は特徴的ですね。なんと言いますか、禍々しいかと……。うーん、やはり分かりませんね。」
「ありゃ、そうかい。」
「お力になれず申し訳ありません。」
たしぎはカゲルに刀を返しつつ、力になれなかったことを謝罪した。
「あぁ、良いって、分からない事は誰にだってあるしさ。」
カゲルは気にするなと言うように手をひらひらさせた。
「そうですか…、あっ!そう言えば、今私の"時雨"を調整に出していて、そこの店主に聞けば何か分かるかもしれないです。」
「へぇ…、たしか、たしぎ曹長の刀の銘だったね。あの刀は業物って聞いたことがあるけど、その調整が出来るほどの腕のある店主か…」
「そうなんです!少々偏屈な方ですが、腕は確かです。」
「成る程ね。確かたしぎ曹長はこのあと見回りだろう?地図を描いてくれれば自分で行くよ。」
「はい、少し待っててください。」
そう言うと、持っていたメモ用紙にサラサラと店の住所や周りの特徴を書き込むとカゲルに渡した。
「うん、たしかに。それじゃあ行ってみるよ。」
そう言ってカゲルは訓練所を後にした。
「さて、メモだとこのあたりのはずだけど……」
たしぎから貰ったメモを頼りにカゲルは町中を散策していた。
「うーん…、何処だぁ…。おっ、あった。」
しばらく町中を探していると、ようやく目的の店を見つけた。
「お、あったぞ『ARMS SHOP』見たところ武器屋のようだけど、たしぎ曹長が調整を依頼するくらいだからな、刀にも詳しいのだろう。」
そう言うとカゲルは店に入っていった。
「はい、いらっしゃ……、なんだよ海兵かよ…。」
「客に対して、その態度はないでしょうに…」
入店したカゲルを迎えたのは、店主のいっぽんまつの不機嫌な挨拶であった。そのあまりの太々しさに苦笑いを浮かべていた。
「それで?あんたは見ない顔だが、この店に何の用できたんだ?」
一切の営業スマイルを浮かべようとはせずに、いっぽんまつはカゲルに尋ねた。
「あぁ、たしぎ曹長から貴方の話を伺ってね、少しこの刀を見てほしんだ」
「刀だぁ?ちょいと見せてみろ」
カゲルはいっぽんまつに腰に差した刀を見せた。
「どれどれ……、鍔も柄も普通…、『カチャッ』刃はっと…、刃文は荒荒しく波打って…ッ!」
刃文を見たいっぽんまつは明らかに動揺しだした。
「ん?どうしました?」
「お、お、おい!若僧!こ、この刀を何処で!」
「いや、貰い物の刀なんで、何処でとは……」
「い、いいか!よく聞け、この刀はな!鬼徹一派のものだ!」
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