1話 神殿で何故か巫女姫とか呼ばれる
「熱い、あつい、苦しい。もう、いやだよぉ」
そんな声が聞こえてくる。
私こと元須麗乃は子供のころから病弱である。
しょっちゅう入退院を繰り返し1か月以上絶食になることもしばしば。
入院中の友達は本、本であればなんでも読んだ。
当然そんな状態だから基本は引きこもり。図書館は良く行くけど。
外のあこがれか農業などの書籍を読み漁ったりしたときもある。
本以外で好きなものといえばお米。やっぱり日本人はお米だよね。
絶食後のおかゆも大好きですよ。味も何もないのに絶食明けのおかゆってなんであんなにおいしいのだろうね。
今回も入院中に大量に本を積んで、いつも通り入院部屋で部屋で本を読んでいたら突然ぐらりとして本が倒れてきたのは覚えている。そのあとどうなったのだろう。
最後に思ったのは、結局あの本も読み終わらなかったなぁ。絶食明けまであと二日だったのにお米食べたかったなぁ。
そして気が付いたら、声が聞こえるわけですよ。
「あつい、あついよぉ。」
そんなこと言われてもと思いながらも私も熱を出して体調を崩してばかりだったので、この子がかわいそうになった。
だいじょうぶ?
私自身どうなっているかわからないけど声をかけてみる。
「おねえさん、だあれ。あの世から迎えに来たの。わたしもうだめなの?」
まさしく困る質問である。私自身よくわからない。
私もよくわからない。でも、寝てばかりはつらいよね。
お姉さんがそのつらさを少しでも引き受けられたらいいのに。
私がそう言ったとたん、彼女と同調するかのようにものすごい熱が入ってきた。
彼女は最後に少し楽になった表情を見せたような気がするけど私の意識もそこで落ちた。
意識が戻るとあまりの暑さに寝返りをうとうとした。しかし体が全く動かない。
ものすごい暑さが私を襲った。
あつすぎて、さらにいろいろな情報が私の中に駆け込んでくる。
この子の名前はマインでずっと寝てばかりでお姉ちゃんばかり外へ出られてずるいなど、今まで見たり感じたことが入ってくる。
最後は私があの世へ誘う天使だと思って意識が消えたようだ。
いや、どちらかというと混ざったというほうが正しいのだろうか。不思議とウラノではなく私はマインであるという意識が強い。
マインの記憶がどんどん流入してくる。いや、ウラノの記憶がマインに入っているのか。
最終的に記憶を整理して分かった話だとどうやらここはウラノの所と比べて相当昔の文化レベルで何もない農村のようだ。
そして一番の問題だが、本がない可能性が高い。食事もろくなものがない可能性が高い。
少なくともマインの知識ではわからないようだ。
結局そのあと三日ほど寝込んだ。どうにもウラノもずっと寝たきりで熱を出していた時があるので、普通の熱に加え全く特殊な何かと混じっているということが分かった。
なぜなら特殊なこの熱は動かせるようだ。動かせる熱って何よ。
押し込むよりももっと効率の良い方法はないかと思い、熱をきれいに畳んで布団を圧縮袋に入れるかのようにペタンコにしてやったらいい感じになった。
ちなみに食事はイモ類をものすごく薄めたものしかなくお米大好き並みとしてはがっかりであるが食べ物自体がほとんどない状態のようなので文句は言えない。
そこから数か月、私は掃除をしたり熱をコントロールしていたりしていたら少しずつ良くなり外を歩く許可が出た。
私になってからは外に出るのは初めでマインの知識から覚悟はしていたが唖然とした。
周りは崖のような山ばかりになっており、尾根にはとてつもない高さの氷の柱が立っておりまるで牢獄のような風景だ。
土地はやせ細っており、唯一まともなのが氷の渓谷から流れ出る水くらいであろうか。
豊富とはとても言いがたいけど生活に困るほどではないみたいだ。
近くに朽ちかけた立派な建物があった。後で聞くところによると神殿らしい。
非常に興味はひかれるがマインの体力は家を出てすこし歩いただけで限界なので戻ろうと私が言うと、すぐ戻ることになった。
うーん、私の体弱すぎ。
外に出られたのは大きな一歩である。しかし現在進行形でまずい問題がある。この圧縮しまくっている熱をどうすればよいかという問題である。
いやね、この熱ってどこまで貯められるのだろうか。爆発とかしないよね?
私は少しは成長しているから入れられるスペースも増えてはいるように感じるけどどうにか放熱できないものか。
さて、本がないのは非常に残念だが私自身、物語そのものも大好きだ。
お母さん(エーファ)やお父さん(ギュンター)にいろいろな話をせがんでみる。
ここの地域の雪どけの話など興味深い話が多い。
今では一年中氷の渓谷に囲まれているそうだ。
この地域ではよく歌われる物語だそうでマインも覚えなきゃダメよと言われた。
ついでにお母さん(エーファ)ついでに周りの情報もいろいろと聞いてみた。
なんでもここはエーレンフェストの北のはずれハルデンツェルというところで山向こうにはクラッセンベルクという所があるとのこと。
もともとクラッセンベルクとの国境へ向かう迂回路として使われていたが突然氷の渓谷に囲まれ出られなくなってしまったとのこと。
そのため神官がこれなくなり祈念式等大事な神事が行えなくなってしまったとのこと。等話してくれた。
姉のトゥーリとかに聞いても子供の感覚でも農作物の収穫は減っておりどうなるか不安だということだ。
お父さんも昔は警備兵として常駐していたが、今は獣を狩る猟師としての仕事ばかりみたいだ。
さて、少しでもこの世界の情報収集しなければ。
マインは動くことがほとんどできなかったようで情報がまったくといってないのだ。
とりあえず、この動く熱は放置するにはあまりにまずい気がする。
最近は少し油断するとすぐ体に伝播し倒れかねないので気を張ってばかりだ。
とりあえずすぐ近くになら外出してもよいと許可を得た。今回は幼馴染のルッツがわざわざついてきてくれるようだ。
「なんで、神殿なんかみたいんだ。中は大したものないぜ。」
「何もなくてもいいの、見たことないから見てみたいだけだよ。」
知っている情報を実際に見る情報は違う。
情報は直に得なきゃダメなのだ。ウラノも本ばかり読んでいたが知識だけでは役に立たないことが多かった。
寂れた朽ちかけの教会に入る。おそらく以前は神事とかに使われていたんだろうけど今は見る影もない。
なんとなく日本人の癖でウラノの感覚で手を合わせてみる。とそこで感覚が反転した。
「おい、しっかりしろマイン。」とルッツの必死の声が聞こえた気がする。
うーん、ルッツ、あと10分...。
あつい、うん、あつーい。
相変わらず体は重く動かない。
「やっと起きたわね。最近調子よさそうだったから油断したわね。」
お母さんが心配そうにのぞき込んでいる。どうやら私は倒れたようだ。
そういえば、動かせる熱はどうなっているだろう。抑え込んでたのが暴走とかでないといいけど。
幸い動かせる熱は特に暴走していないようだ。
というか気持ち減っているような気がする。
また結局三日間寝込んだ。三日間寝込んだら動かせる熱が膨張しだした。
教会へ行ったら熱が減った感覚もあるので教会を掃除したいという口実で頼み込むも。
「だめだ、また倒れたらどうする。」
「お願いお父さん、絶対に無理はしないから。」
結局すぐに結論はでなかったのでルッツ家の掃除を手伝ったりいろいろ媚びを売りまくったら最終的にはお母さんも私の熱意が通じたのか。
「神様は大切だし、お祈りしてきなさい。必ずルッツ君を連れて行くのよ。」
というわけでルッツはとばっちりである。
「まったく、前回倒れたっていうのに何が気に入ったんだ。」
「せっかくだから、きれいにしておけば神様が帰ってくるかもしれないでしょう?」
「まあ、この間うちもきれいにしてくれたお礼もあるからこのくらい付き合うけどさぁ。」
周りが汚すぎてすっかり掃除の習慣が身についちゃったなぁ。
この体は弱すぎるから少しでも対策しておきたいだけとはいえ...。
前回と同じく入り口で手を合わせてみる。気のせいかもしれないけど少し熱が外へ出た気がした。
そこから掃除を開始する。
長らく放置されてたらしい割に内装はそこまで汚くなく、思ったよりスムーズに進む。
最後にご神体の前の杯に触れると杯が光り熱が一気に持ってかれた。
慌てて離すと何事もなかったかのように元に戻った。
ルッツは特に気が付かなかったようで今日はここまでにして帰ろうとという話になった。
「祈れ、祈れ、汝が道を望むならひたすら祈れ。さすれば聖典より導きが得られるであろう。」
神殿をきれいにした夜中に変な夢をみて、目を覚ましてしまった。
結局掃除し疲れたのかまた二日ほど寝込んでしまった。
水が飲みたくなってなかなか動かない体を引きずって台所へ向かうと、
「ねえ、あなた、今年の冬は越せるかしら。あそこの家族ももう生きていけないから山越えを敢行しようなんて話が出ているけど。」
「だからといって、マインを置いていくわけにはいかんだろう。それに関係なく最近は手ごわい魔獣がたくさん出てきて危険だ。」
え、どういうこと。
私は扉に耳を当て会話を聞き逃すまいと話を聞き続ける。
「もう魔獣のせいで自警団もけが人だらけで、魔獣を倒してくれる貴族様もいないし、明らかに食料が足りないわ。それに神官様がここ三年も来てくれていないせいで作物も全然育たない。どうしたらいいの。」
「何とかなる。いや俺が村ごと守って見せる。」
周りを見ても死んだような土地だなとは思っていたけど想像以上に悪いらしい。
私は私のできることをしよう。
夢だろうが何だろうがやってみよう。
あの夢も神の御導きかもしれないしね。
ウラノなら神、いるわけないじゃんという風にしか感じなかったと思うけどこれほど厳しい自然に囲まれると感じるのか、それともマインの感覚なのか大いなる意思を感じる。
まあ、気のせいかもしれないけどね。
次の日から、あらゆるものに祈りを捧げた。
家族は仕事で外へ出て基本的にいない時間も多い。
神殿にも足しげく通った。
神殿でお祈りをすると熱を多少持って行ってくれる。
祈るものも様々でよく見ると壁や地面天井にいろいろな神様の絵が紋章のようなものがありそれぞれ別々に熱を持って行ってくれるので非常に助かる。
ちなみに祈りで一番持って行ってくれるのは中央部にある闇と光の神の像だ。
杯もあれから何度か触れているけど熱は何度も持って行ってくれる。ただし一日一回までのようだ。
残念ながら何度熱を追いやっても次の日には使った以上に熱が回復しているので、圧縮するのが大変なんだけどね。
とはいえ放出できる分以前よりは格段に楽にはなった。
まとめて圧縮すればいいだけだしね。
さらに熱の塊を煮詰めるかのようなイメージで圧縮することによってだいぶ楽になった。
祈りを毎日繰り返すと神殿に変化が出てきた。
驚いたことに明らかに朽ち果てていたはずの建物がきれいになり、内装も輝きを取り戻し、神殿の周りだけ植生が豊かになってきたのだ。
さすがにここまで来ると大人も無視できなくなり大人の会議に呼び出されることになった。
「祈っているだけだと。ではマインは神のご加護でもついているというのか。」
結局話し合いだけでは何も進まないので大人たちが私の日課に着いてくることになった。
「マイン、本当に他のことはしていないんだな。」
お父さんに何度も確認されても私としては掃除とお祈りしかしていないのだ。
なんでもお父さんはこの街の警備や狩猟を取りまとめている代表代理みたいな立場らしい。まあ、村らしく一番偉いのは長老衆みたいだけど。
以前はちゃんとした管理する貴族がいたけど死んでしまったらしい。
次の日いつも通りお祈りし、最後に杯に触れ熱を持って行ってもらうと周りの大人から、「まさか」「そんなことは」という声が聞こえだした。
「これはまるで祈念式ではないか。」
そうだ、そうだ、試しにまいてみよう。
という話になった。えっと、まくといっても一日たてば消えるものをまいても効果があるのかなぁ。
ついでにこれはまいて大丈夫なものなの?
結論から行くと大人たち的には失敗したらしい。
杯を持って外へ出ようとするといつも通りに輝きが消滅してしまったからだ。
あまりのうなだれかたにさすがに首をかしげてしまった。
「いいか、最後に行われたのはマインが生まれてすぐだから覚えていないだろうが祈念式という大事な儀式があってだな。それが行われないと食料が十分に育たないんだ。それで今回マインが行ったのはそれに非常に近い状態の現象が起こったんだ。」
そのあと、私は仮の神殿の管理者となった。
「祈れ、祈れ、汝が道を望むならひたすら祈れ。さすれば聖典より導きが得られるであろう。」
ここのところよく見る夢。聖典って本だよね。本ほしいなぁ。本当に導いてくれたらいいのに。
最近は神殿の周りで農作物が作られるようになった。
異常に早く育ちとてもおいしいのだけど、毎日祈っても豊かな範囲は広がりを見せない。
けど絶望的状況から光が見えただけでも家族の顔が変わった気がする。
神殿はますますおかしなことになっている。どんどん輝きが増していて、いかにも神様がいるというような感じでさびれた村には明らかに分不相応だ。
というか、教会でため込まないで教会の周りのように周りも豊かにしてくれればいいのに。なんて思ってもうまくいかないわけで。
最近変わってきたことといえば、頭の中に勝手に知識が入ってきているということだ。
おそらく祈りの関係だろう「火の神 ライデン..フトが眷属 武勇の神...皆に...」といっても歯抜けだらけだけど。
知識...本読みたい。こんなところじゃかなわないのはわかっているのだけれど。
それに生活でいっぱいいっぱいで食料とかのほうが優先度は高い。お米食べたいなぁ。それ以前にまともな食べ物がないけど。
そんな生活が続きしばらく問題はなかったのだけれど、
「魔獣の大軍が来たぞ!」
凶報が村を巡ったのでした。
「柵が破られたぞ」
「クッソ、けが人だ。」
いつの間にか神殿が避難所となりみんなここに集まり防衛線を構築することになったらしい。
お父さんや村のみんながここへ戻ってくる。
なぜか魔獣は神殿の外側をぐるぐると回るも中に入ってこない。
「ああ、神様、闇の神、光の神我々をお助けください。」
何もできない女性や子供が祈っている。
「神殿の巫女様大丈夫だよね。巫女様が祈れば奇跡が起きるってお兄ちゃんたちが言ってたよ。」
えっと、病気がちで寝てばっかりの私に言われても困るんですけど。というか恐怖で気絶しそうです。
まあ、なんか祈ってるぼいことすれば安心するかな。と思っていると
「ギュンター!!」
え、まさかお父さんが。
お父さんが見るからに重症と思われる状態で担ぎ込まれてきました。
「おとうさん!おとうさん!」
トゥーリは泣き散らしてお母さんは逆に冷静になっているようです。
私も頭が真っ白になりました。
「すまん、私はここまでだ、皆の者後は頼む。」
何か必死にお父さんが言っているのが聞こえます。
その時、頭に勝手に呪文が浮かびました。
「ルングシュメールの癒しを」
お父さんや周りのけが人だけでなく村全体に光が飛んでいきます。
「火の神 ライデンシャフトが眷属 武勇の神アングリーフの御加護が皆にありますように」
なぜこれらの呪文が出てきたのかはわかりません。ごっそり熱を持ってかれたのはわかりましたが、何が起こったか確認をする前に意識が飛んでいきました。
突然マインが何かつぶやくと2色の光が飛び出し村一面に降り注いだ。
致命傷でもう駄目だと思った俺の体はまるで何事もなかったのような、いや、まるで若返ったかのように軽くなり周りにいたけが人これまでケガしていたもの含め全員の怪我が治っている。
みんな驚き、倒れたマインを心配するもこの場にいるものを助け出すほうが先だ。
不思議な高揚感の中、エーファとトゥーリにマインを任せ魔獣へ向かう。今まで苦戦していたのが信じられないくらい魔獣の動きがゆっくりに見えいとも簡単に切り伏せていく。
殲滅にさほど時間がかからず、全部倒しきると緊張の糸が切れたのかみんなへたり込んでしまった。
魔獣騒ぎから私に対するみんなの態度が変わった。
巫女姫様、巫女姫様...ひゃっほう神殿管理人からグレードアップだねって、やめてー。
家族は、からかいついでに巫女姫様なんて言うことがあるけど、
それなりによく一緒にいるルッツもまじめに巫女姫様なんて言い出したから泣き顔で抱き着いて辞めさせた。ほんと勘弁してよ。
ちなみにこの村の人たちはあの奇跡のようなことがあっても腹が座っているのか魔獣を効率よく保存食へ変えていったらしい。
わたし?ちょっと見ただけで気絶ものですよ。それ以前に3日以上寝ていたらしいけど。
おかげで今年は無事に冬を越せそうだと村全体が明るさを取り戻したようだ。
あと、なんか私からみんなに光が降り注いだらしいけどみんなものすごく強くなったらしくて魔獣を倒せるようになったと喜んでいた。
私の生活は相変わらずでルッツやトゥーリを付き合わせ神殿と家を往復。そのあとは家事を手伝ったりいろいろした。
いろいろな編み物のアイデアを出したら喜ばれた。
以前みたいに交易があれば売れるのにねぇとお母さんは残念がってたけど。
そんなこんなで神殿に通い続けたらある日、ガタンと音が鳴った。
「おい、マイン。なんか地下通路が出てきたぞ。」
教会の端のほうに落とし穴のような穴ができているのをルッツが発見した。
どうやら地下通路のようだ。
「ちょっと見てくる。」とルッツが入ってみるも
「なんか、透明な壁があってはいれねぇ。」
少なくともそこまでは安全なのかということで私も行ってみるねと言って行くとすんなり先へは入れてしまった。
ルッツに奥まで行ってみると断って行ってみると、
「なに、ここ。」
行きついた先には小さな部屋があり、すべての品が色褪せていましたが、でかい杯に槍に盾にマントに剣、冠が目に入ってきた。
そして
「本だ!」
魔法陣みたいな変な模様の上に本が置いてあった。
とりあえず、本だけを持って戻ってきた。
「ルッツ、ルッツ本だよ本!」
うわあ、うれしすぎる。文明の輝き、あ...
急に熱くなって意識を失った。
さて、私ことマインは今非常に残念な状態にあります。何が残念かって。
「文字が読めない...。」
せっかく本を手に入れたはいいけど読めない。読めないんだよ。
村人に聞いて回ってもらったけどお父さんがほんの少し読めるだけで無理。
グスン。この本、たぶん聖書だと思うけど読みたい、読みたい、よみたーい。
だって、こっち来てから初めての本だよ。うう、読みたい。
ちなみにこの本も特殊な本らしく熱を持っていく。変な魔法陣が勝手に浮かびイメージがわくけど読めない。
いやなんとなく書いてあることはわかっちゃうんだよ。
祈れば上の最上の立場へ行けるというようなニュアンスに感じるから、
要は祈れば天国へ行けるってことでしょ。
今は天国よりお米がほしい。他の本でもいいよ?
とにかく祈れ祈れって、まあ、いままで祈っていいことしかないから祈るけどね。
ちなみにあの通路は勝手に閉まっていて同じところ調べても開かないんだけどどうなっているのだろうか。この熱と何かしら関係があるのだろうけど。
「ルングシュメールの癒しを」
なんと、傷を治すことができるようになりました。いやね、魔獣に襲われたとき似た現象を起こしたらしいけど覚えてないのですよこれが。
毎日この本を見て熱を流してやっていたらはっきりと頭に浮かんできたのです。
他の言葉も浮かびそうで浮かばないのだけれど。このまま続ければいけるんじゃない。
この本何なんだろう。熱を使うと真ん中の赤い宝石が光るんだよね。
そんな時、私のもとに一人の急患が運ばれてきました。
「ルングシュメールの癒しを」
とてもひどい状態でしたが何とか治療が間に合ったようです。
「この人村の人じゃないよね。」
「ああ、この状態になって初めて外から人が来た。回復したら事情を聴こう。」
回復するのには時間がかかりそうなので私は日課へ向かうこととした。
「マイン、いるか。」
日課を終え家で休憩しているとお父さんが呼びに来た。
「お前が救ったユストクスという男がぜひ直接お礼を言いたいといっている。まあ、問題はなさそうだから気が進まなければ会わなくてもいいがどうする。」
「ぜひ、外の話が聞きたいです。」
ということで、旅人に会うことになりました。
「ユストクスと申します。あなたが治療してくれたマインですか。」
なんでも救ってくれたお礼に何かできればいいとのことなので、
「文字が知りたいです。」
「文字ですか。基本文字位ならすぐ教えられますが。」
「神殿から、この本が出てきたのですが全く読めないのです。なんとなくニュアンスはわかるのですが。」
男は少し苦笑いをして
「私は神殿についても少しはわかりますよ。よろしければ少しお教えしましょうか。」
「うぁあ、うれしい、ありがとうございます。早速なんですけど。」
「こら、マイン落ち着きなさい、いくらけがが治ったからと言ってまだ体力が戻ってないでしょう。」
「はぁい」
結局我慢できず、次の日から質問攻めにしました。
基本文字も覚えられて本も得られて満足です。
ちなみに本は聖書でも問題ないとのことですが、正確には聖典だそうです。
神殿で行う儀式についても教わりました。
祈念式のやり方がわかったよ。
春にやらないとダメなんだね。
「ところで巫女姫様がこの神殿を直したと聞きましたが。」
「えっと、なんか祈れと言われたのでひたすら祈ったら気が付いたらこんな感じです。」
「あと、巫女姫様、何か熱に食べられている感触があったりとかしたことはありませんか。」
「わかるんですか!毎日悩まされているのですよ。お祈りするたびに楽にはなるのですが。」
「その病気に関しては、しばらくは大丈夫でしょうね。今まで通り神殿で祈りを欠かさずにされていればしばらくは大丈夫でしょう。」
「そうなんですか、詳しい方に話を聞けて良かったです。」
「それでは、巫女姫様は非常に興味深くもっと話していたいのですが私は帰らなければなりません。病弱でなければ主のところへ一緒に来てほしいくらいですが。」
気が付けば7日以上も彼は滞在していました。結局寝込んでまともに話を聞けたのは2日くらいでしたが。
「その、大丈夫なのですか。ここらへんは険しい山道しかないですし、魔獣がたくさんいますけど。」
正直とても心配です。地元の私たちですら超えられない山々なのですから。
「想像をはるかに超えていましたが何とかなります。」
「そうですか、わかりました。せめて無事帰れるように祝福を送りますね。」
「巫女姫様の祝福ですか。ありがたいですね。」
と興味深そうな表情でしたがすぐに驚愕した表情に変わります。
呪文は特に唱えませんでしたが聖典を通して祝福を送ると美しい色の祝福がユストクスへ降り注ぎました。
町の人は、おお、巫女姫様の祝福だ。とのんきに話しています。
「驚きました。これほどの祝福を頂けるとは安心して帰れそうです。」
「教えていただいたお礼です。でも、無事に帰って今度はこんな場所に迷い込まないでくださいね。」
「はは、また来ます。」
「いや、来ちゃダメですってば。」
ひょうひょうとした雰囲気で彼は山へ帰っていきました。
原作よりも約一年早く始めたつもりですがもしかしたら矛盾があるかもしれません。
ちなみにこのマインは死んでいません。まあちょっとは影響を受けていますが。