マインオブザデッド   作:dorodoro

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最終日は2話更新です。本編の後日談は前話です。この話はあくまで蛇足です。投稿するか迷いましたが書いてしまったので投稿します。

内容については、前話の後書き通りです。タイトルを確認してください。
いつもより少し長いですがよろしければどうぞ。
















蛇足 とある主役の視点にて

「ディートリンデ、今日はアウブと食事を取るから準備をしなさいな。」

 

あまりわたくしに興味のないお母様が珍しく話しかけてきたと思ったらアウブであるお父様との食事とのことだ。

 

まあ、お母様はこんなことでもなければ話しかけても来ない。

 

思えば、お父様との食事もずいぶん久しぶりな気がしますわね。マルティナなど側仕えに準備をさせた。

 

今回は、お父様が新しく養子に取った子の身内でのお披露目という意味もあるらしい。

 

「お母様は、そのローゼマインという子について何か聞いていまして」

 

「いいえ、ディートリンデが直接見てどんな子か判断してくださいな。」

 

お母様も良く知らないそう。いろいろと噂だけは流れてくるが実態はよくわからない。

 

分かることと言えば神殿出身らしいということ。体がとても弱く年齢よりもとても幼く見えるほど小さい子らしい。

 

お父様も神殿なんて孤児の集まるようなところからわざわざ養子なんて取らなくていいのに...。

 

何を考えているかさっぱり分かりませんわね。

 

 

 

 

実際に食事会で会ったローゼマインは、とても小さくお人形みたいな子ではじめましての挨拶をしてきたときも、表情が余り変わらず不思議な雰囲気を持った子だった。

 

これなら私の後ろに置いても見栄えはしそうだわね。神殿の者と同列に見られるのは嫌だけど妹としてなら悪くはないかもしれないわね。

 

「まあ、話には聞いておりましたがずいぶんちっちゃいのね。ローゼマイン。わたくしのことをお姉さまと呼ぶことを許しますわ!」

 

「まあ、ありがとう存じます。ディートリンデお義姉さま。貴族院では今年からご一緒になりますがよろしくお願いしますね。」

 

少し表情が柔らかくなった気がするわね。今までわたくしが一番下だったからお姉様と呼ばれるのも新鮮ね。

 

「よろしくってよ。お姉さまとして困ったことがあったら何でも頼ってちょうだいな。」

 

その後の食事前にローゼマインの左手の手袋を取らないのかという話になったのだけど...

 

なんでもローゼマインは体が弱いのに加えて左手が不自由で魔術具なしには動かないとのこと。

 

親がおらず神殿に入れられていただけでなく、体も弱く左手まで不自由だなんてお父様も彼女の境遇に同情して引き取ったに違いありませんわ。

 

ローゼマインのことを少しだけかばってやると「ありがとう存じます。ディートリンデお義姉さま。」と言ってきました。

 

表情が余り変わらず分かりにくいけど感謝をしていることは伝わってきますわね。なんとも不思議な雰囲気を持った子ですこと。

 

ローゼマインは、余り話すのは好きではないようだが、こちらが聞いたことは少したどたどしさもありながらも答えてくれますし、何よりわたくしの話をちゃんと聞いてくれた。

 

どうにもわたくしの周りには話の途中でさえぎったり、すぐ他の話へ言ってしまうことも多いのでここまで心地よく思うがままに話してもちゃんと聞いてくれる人は少ないのよね。

 

そうそう、いろいろ聞いてみて分かったことは、養子に引き取られた後も神殿に勤めているということと、一応貴族の血筋らしいけど本当の親はよくわかっていないとのことね。

 

体がものすごく弱いので良く寝込むということで一応領主候補生として扱われるけど、アウブには絶対にならないことをお父様と約束しているという事も確認が取れた。

 

まあ、神殿のものというのは良くないけど仕方が無いでしょう。

 

アウブを争う相手ではないし、シュミルのお人形みたいで可愛いので見栄えもする。加えてわたくしの話しも気持ちよく聞いてくれるので側においてあげてもよくってよ。

 

いつもお父様との食事会は硬い雰囲気で、大人の話には入っていけずつまらない事が多かったけど、この日はいろいろ話せて楽しい時間を過せたわ。

 

 

 

 

その後は、冬の洗礼式と洗礼式後のお披露目ではやけに派手に祝福を降らせていたわ。

 

よく魔力が持つわね、なんて少し感心しながら見ていたら最後の最後でものすごく派手に祝福を降らせてきた。

 

ずいぶん目立ってますわね。少しだけ嫉妬したくなったわ。

 

「まったくずいぶん目立ってますわね。マルティナどう思いまして。」

 

「アウブの命で、できるだけ派手にやれと言われているそうですわ。ローゼマイン様の表情を見ていただければものすごく無理をなさっていることがよく分かるかと存じます。」

 

確かにそうですわね。お披露目会が進めば進むほど、よく見れば顔色が悪くなっていき体がほんの少しふらついているように見えますわね。

 

まったく、お父様もローゼマインは体が弱いのですから少しくらい配慮してあげればいいのに。

 

案の定、授与式ではここにいられるような状態ではない様で贈り物を渡されたらそそくさと退場して行ったわ。少しだけ話したかった気もするけど、あの状態では仕方が無いわね。

 

 

 

 

案の定、あの後からローゼマインは寝込んだようで私が冬の館にいる間には戻ってこなかった。

 

あれだけの魔力を放出すれば、ただでさえ体が弱いのに当然ですわね。まあ、貴族院では時間があるだろうから今はいいですわね。

 

さすがに貴族院に来ないってことはないだろうし。

 

貴族院では新入生を迎える準備も終わり、共有フロアでのんびりとしていたらローゼマインがわたくしを探しているとの話が入ってきたので会いに行ってあげたわ。

 

ええ、まあ、わたくしが洗礼式での話を聞きたかったということもあってのことだけど。

 

やはり、ローゼマインは洗礼式では相当無理をしていたらしく、寝込んでいたとのことですわ。

 

わたくしが心配してあげたということを伝えると、ローゼマインは感激したというかのように少し目を潤ませて、体のことでいろいろ迷惑をかけるということと社交経験がないため頼りにさせてもらうということを言って来ましたわ。

 

あれだけのことをできてもきっとローゼマインは、神殿育ちで貴族としては何もできないのよね。

 

わたくしがローゼマインにいろいろ教えてあげないと。

 

素直に頼るなんていわれたのは初めてのことだったのでいい気分になってきましたわ。

 

領主候補生として見本を見せないといけませんわね。

 

そのあとは、周りに指示を出して貴族院生を集めローゼマインを紹介してあげた。

 

わたくしのおかげでローゼマインの紹介はスムーズに進み、最後にローゼマインがお礼を言ってきたわ。

 

「流石はディートリンデお姉さまです。ありがとう存じます。」

 

他の者と違って素直に感謝しているのが伝わってきましたわ。素直にお礼を言われるのって気持ちいいものですわね。

 

 

 

 

親睦会では、ローゼマインが初めてのことで僅かに緊張しているように見えたので、安心するように言うと少し表情が和らいだように見えた。

 

なんだか、とても素直で動きとかもシュミルみたいでかわいいですわね。身長も年齢に似つかわしくなく小さいので余計にそう感じますわ。本当に不思議な子ですこと。

 

その後は、いつも通りに親睦会が進んだ。ローゼマインも少しだけ話すけど元々の引っ込み思案な性格と、やはり緊張していることもあってか余り積極的には会話に入ってこない。

 

ですけど、不思議とこの日は、いつもより話しやすく気分良く他の領主候補生と話せましたわ。

 

ただ、何故かはわからないけど、ヴィルフリートが来た時にローゼマインの態度が変わったように感じた。

 

手袋に不調が出てきたのか違和感を感じているのか話しているときも左手を気にして気もそぞろだったしどうしたのだろうか。

 

最初はほんの僅かな違和感だったけど、ヴィルフリートがローゼマインに興味があるようで話しかけていたが当のローゼマインは興味がないといった感じだった。

 

話しかければ一生懸命答えようとしていたさっきまでの姿と余りに違うので、さすがに変だと思って顔を見たら、少し顔色が悪いように見えた。

 

「あらいけないローゼマイン、体調が悪くなってきたと申してましたわね。顔が真っ青でしてよ。こっちはいいから休んでらっしゃい。」

 

絶対に挨拶しなければならない領地は終わっていたので休むように促すと、相変わらず表情が分かりにくいけどほっとした感じになったわ。

 

「ありがとう存じます。お言葉に甘えて席をはずさせてもらいますね。」

 

やはり無理をしていたのかもしれないわね。先ほど調子が悪くなってきたと言ってましたしもう少し早く休ませてあげても良かったかしら。

 

でも、わたくしの親戚のヴィルフリートには挨拶しておいた方が良かったのは当然なので仕方が無いわね。

 

結局ローゼマインはそのまま戻ってこられずに休むことになった。

 

その後は、お付き合いの深い領地はないのでそのまま挨拶と少しの話だけで終わったわ。

 

 

 

 

親睦会ではヴィルフリートがずいぶんと勉強に熱を入れているようで全員初日合格させるとか息巻いていたわ。

 

わたくし達も領主候補生らしく導いた方がいいですわね。さっそく寮に戻ったら周りに相談した。

 

「あなた達、何かいい案はありまして」

 

「それでしたら、ローゼマイン様は神殿長をしていられたのですから領主候補生として神学について教えさせてみてはいかがでしょうか。」

 

「いいですわね。引っ込み思案なローゼマインと周りとの繋がりもできますし、やらせてみましょうか。」

 

まったく、あの子ったら用がなければ自分の部屋から出てこないのか今も共有フロアにいませんしどうなっているのかしら。

 

周りと少しは交流しないとダメですわよ。待っていても出てきそうにないので、仕方なくローゼマインを共有フロアに呼び出してみんなを指導するように言ったわ。

 

「さて、ローゼマイン。わたくし達は領主候補生として皆様を導かなければなりません。」

 

「ごめんなさい、ディートリンデお義姉さま。私に皆様を導けるような力はありません。」

 

相変わらずこの子は表情とか口調からは分かりにくいけど、大事な交流をめんどくさがっているのではなくて。

 

「みなさん、神の名前や由来について難しくて困っているのですわ。あなたは神殿にいたのですから緊急講義をお願いしますわ。」

 

ローゼマインはあまり気が乗らないようだったけど範囲とかを教えてくれというので学年の取りまとめているもの達を呼んで伝えるように言っておいた。

 

あなたも領主候補生なのだから少しはみんなとお話をしないとダメですわよ。

 

 

 

 

その日の講義が全部終わった後、ローゼマインの教えがうまくいった様で教えた教科については全員が合格したらしい。

 

そのことを、側仕えや側近達と話すと...。

 

「でしたら、次はローゼマイン様に歴史を教えさせてみてはいかがですか。」

 

「ローゼマインは歴史も詳しいのかしら?」

 

「おそらくは、冬の館でも優秀なようでしたしわざわざアーレンスバッハの歴史なる分厚い本を貴族院に持ち込むほどですからとても詳しいのではないでしょうか。」

 

...あの本ですわね。

 

あのとんでもなく長く変に細かいところは細かく書いてあるのにいきなり雑な表記になったりとても読みたいとは思えない代物だったわ。

 

専属の教育係に無理やり少しだけ読まさせられたけど、余りのひどさに途中で諦めましたわ。

 

神学の評判も良かったし次は歴史をやらせるべきですわね。

 

そのことをローゼマインに伝えると、あまり得意ではないとかいろいろ言い訳してきた。

 

ローゼマインのためにもなるし、わたくしがヴィルフリートに自慢できるかもしれないし却下ですわ。

 

「だいじょうぶです。やるだけやって御覧なさい。」

 

任せましたわよ!

 

 

 

 

次の日の音楽では、体調を崩して祝福を出したとかいろいろ話が私のところにもきましたわ。

 

まあ、あれだけの祝福を贈れるのですから少しくらいは、溢れ出すなんてこともあるのでしょう。

 

それよりも、また体調を崩したですって!あの子は本当に体が弱いわね。他の人を教えたくらいで倒れるとは思えないし。

 

一応心配になって朝にローゼマインが無事に共有フロアに顔を出したのを見て安心したわ。

 

顔色もそこまで悪くないようだし大丈夫ですわね。

 

そのあと、図書館に登録するということでとりまとめを任されたとのことでグループごとにわざわざ回って伝えようとするので共有フロア全体に伝わるように用件を話してあげたわ。

 

伝わっていないものには、共有の連絡版とかに文官たちが書いてくれるでしょうし、お任せですわ。

 

 

 

 

その後も、ローゼマインの行動はありえないよな事が何度かありましたわ。

 

まず、用事がないにもかかわらずお茶会に参加したくないというだけで参加を断ろううとしたり...先生から誘われるなんて名誉なことなのにそこについてもよく分かっていないみたいね。

 

シュタープを取りにいったら全然戻って来なくてようやく戻ってきたと思ったら部屋に引きこもったり...。

 

奉納舞の授業では、ヴィルフリートが話したいというからローゼマインを呼んでみたけど、相変わらずだし。

 

引っ込み思案のローゼマインには、いい機会なのでわたくしの親族のお茶会に参加させようとしたら断るし、まったく、姉であるわたくしを困らせるとか何なのでしょうか。

 

こうなったら絶対に参加させてやりますわ!

 

他にも、マルティナにローゼマイン様にぜひ勉強を教えて欲しいと言ってくる方がたくさんいるのですが、ディートリンデ様に教えるようにお願いして欲しいと言われたりしたわ。

 

「ローゼマイン様を動かせるのはディートリンデ様だけですわ。皆様ディートリンデ様を頼ってこられているのでお願いしていただけませんか。」

 

領主候補生で姉であるわたくし以外ローゼマインを動かせないとのこと。まったく頼られては仕方が無いわね。ローゼマインに周りの希望通りに教えるよう言ってあげたわ。

 

あの子もとりあえず頼られていい経験になるでしょうし、あの子にいろいろ言ってあげられるのは立場が上のわたくしだけですからね。

 

その他にも体が弱いのにもかかわらず一人で図書館へ行ったり、単独で行動していることがよくあるそうで何度か注意したわ。

 

またある時は、お茶会の準備を忘れていて直前まで準備をしていなかったりいろいろ抜けてますわ。私がきっちり見てあげないと本当にダメな子ですわね。

 

 

 

 

どういう経緯かよく分からないけど、ローゼマインが図書館のシュミルの主になってしまい寮につれてきたいという話になったわ。

 

シュバルツ達はとてもかわいいと聞いているけど、実物は最初の図書館登録以来、図書館へ行かないので、かわいらしい人形があったということ以外良く覚えていないのよね。

 

かわいいシュミルの人形が動くというだけでも心躍りますわね。ローゼマインよくやりました、と思っていたのだけれど...。

 

最初に、わたくしに主を譲ろうとしてうまくいかなかったりいろいろあったけど、とりあえず触れるようにはなったわ。

 

ローゼマインは魔術具に関してとても詳しいようでシュバルツ達の魔法陣の解析をしていた。

 

こんなにかわいいシュバルツ達をわたくしに譲るなんていい心掛けだわ。

 

しばらく経つと、この子達を図書館へ返さなければならない時間になってしまったのだけれど...あまりにこの子達がかわいいので返したくなくなったわ。

 

どうやらこの中で一番魔術具に詳しいらしいローゼマインに何とかならないのかと聞いてみたところ...魔術具を準備しだした。

 

なんでも、この子達は一定時間理由なく図書館に出しておくことはできないため、ここに置くのなら分解しなければならないとのこと。

 

冗談じゃないわ。分解するなんてかわいそうですわ!

 

初めはローゼマインの冗談かとも少し思ったけれども、とても真剣な目でシュバルツ達をにらんでいたので本気だとわかった。

 

断腸の思いで断念しましたわ。分解するなんてとんでもないですわ。

 

心なしか、ローゼマインは残念そうだったように見えたのが気になったけれども...。

 

 

 

 

解析が終わって、シュバルツ達を戻すために図書館へ向かうと...ああ、やだやだ、あの暑苦しいダンケルフェルガーのレスティラウトが仁王立ちしてますわ。

 

狙いはこの王族関係の魔術具ですわね。ローゼマインは必死に説得しようといろいろ言っているけどこいつらに何を言っても無駄ですわ。

 

ローゼマインにさっさと戻しにいくよう伝えると、アナスタージウスが来ましたわ。

 

あのいけ好かない王子に一度仲裁されて、ローゼマインはシュバルツ達を戻しに行った。

 

私達は先に小会議室へ行き今回の件で話し合いになったのだけれど、結局言い合いになり全然話が進まなくなってしまったわ。

 

王子がいつもの言い合いにめんどくさくなったのか...

 

「ふむ、双方の言い分はわかった。だが、どちらも悪い。双方何かいい方法はあるか。」

 

本当にわかったの?ふざけているわね。まあ、ダンケルフェルガーにディッター以外の話が通じるわけないしどうでもいいですわ。

 

案の定、ディッターで決めようとか言い出してきたわ。これ以上話したくもないので代表として受けてやりましたわ。

 

シュバルツ達の主の座を譲る気はなかったけどこいつらを黙らせるにはディッターしかないのだ。

 

レスティラウトが断られたことを理由に断念させようとするもローゼマインと同学年のハンネローレを引き合いに出してきましたわ。

 

ローゼマインが資格があればという話しにもっていき何とか終わったわ。

 

わたくしにも資格がないのに、レスティラウトの妹に資格があるわけないわよね。

 

その後のディッターでは、ローゼマインの魔術具がうまくはまり勝利しましたわ。

 

レスティラウトのそれはもう悔しそうな顔ったら、いい気分ですわね。

 

あの暑苦しくむかつくダンケルフェルガーもディッターで負ければ素直に引き下がりますわ。

 

ローゼマインのおかげでいい気分で戻れますわね。

 

 

 

 

さて、親族同士のお茶会ですわ。ローゼマインの側近には、先に必ず本人にお茶会の件を黙っているように言っておいて準備だけを先にさせておいたわ。

 

問答無用で、朝一番でお茶会の準備をさせたわ。

 

ローゼマインはわたくしの親族同士のお茶会があったことを忘れていたらしくて伝える前は頼りにしていますと素直についてきましたわ。

 

ところが、向う途中で親族同士のお茶会であることを告げると、逃げようとしだした。

 

規模も小さく、わたくしの気心の知れた方しか参加しないので経験の少ないローゼマインにぴったりなのに何で露骨に逃げようとするのかしら。

 

もちろん手をつかんで逃がしませんでしたわ。まったくもう。わたくしの親族とそんなに話したことがないはずで嫌いな人がいるわけがないし...男が苦手とかならありえますわね。

 

それならなおさら気心の知れた者たちが集まり多少失敗しても大丈夫なこのお茶会に行かせない訳には行きませんわね!

 

 

 

 

その後、楽しいお茶会が始まりましたわ。参加者はヴィルフリートとフレーベルタークのリュディガーとわたくし達2人ですわ。相変わらずローゼマインは不安そうで、これはこれでかわいいわね。

 

大丈夫ですわ、引っ込み思案なローゼマインは時間がかかるかもしれないけど経験すれば慣れますわ。

 

貴族としては当然お茶会には慣れていないといけないのだけれど、まったく神殿なんかにいたらできないのは当然ですわね。

 

お茶会が始まってから途中でローゼマインが席をはずしたいといってきたので顔色を確認してからはずさせたわ。体が弱いって大変ね。

 

そのあと、ヴィルフリートがローゼマインに興味があるのかいろいろ言ってきたわ。

 

「ディートリンデ、ローゼマインが話をしてくれないのだが私は彼女に何かしてしまったのだろうか。」

 

「確かにリュディガーとは普通に話すのにヴィルフリートだけ変な反応ね。」

 

「私も気になっていた。ヴィルフリートに何か思いつくことはないのか。」

 

あらあら、ひょっとしてローゼマインのことを?まだいくらなんでも早いわよね。でも一目ぼれとかもありえなくはないし...。

 

そこでヴィルフリートが意を決したかのように言って来ましたわ。

 

「ディートリンデ、ローゼマインと一度、一対一で話したい協力してくれぬか。」

 

ヴィルフリートの目が視線で盾を貫きそうなほど真剣で、ローゼマインと本気で話したいと物語っていたので協力してあげることになったわ。

 

恋愛感情があるかは分からないけど、そこまで話したいと思われるとは少し嫉妬したくなるわね。まったく、まあ、かわいい親戚の願いを叶えてあげましょう。

 

ローゼマインは相変わらず少し疲れた表情で戻ってきましたわ。

 

「ローゼマイン、ヴィルフリートがあなたと話をしたいと言ってますわ。」

 

案の定、わたくしに助けを求めるかのように不安そうな目を向けてきますがダメですわ。ヴィルフリートの思いを無碍にするわけには行きませんものね。

 

「いいから行ってきなさいな。」

 

多少強引に言わないと動きたがらないのよね、この子。まったく、領主候補生失格ですわ。

 

何とか二人っきりで話させようとヴィルフリートと別の席に移動させた。

 

そこでヴィルフリートが二人で話したいと盗聴防止用の魔術具を渡そうとしたけど、ローゼマインが断っていたわ。

 

ああ、ただ話すだけなのにじれったい。見ているだけでイライラしますわね。

 

「まあ、ローゼマイン。何かヴィルフリートには話したいことがあるようです。聞くだけでいいから聞いてあげなさい。」

 

とりあえず聞くだけ聞いてあげればいいのですわ。ヴィルフリートだってローゼマインに悪さをするとは思えないですし。

 

「ディートリンデ、同学年の男女がああやって話しているのを見るのはいいものだな。」

 

「あら、リュディガーはしたなくってよ。」

 

「そういいながらも、目を離さないのはどなただ。」

 

「ローゼマインが心配なだけですわ。」

 

盗聴防止用の魔術具を使っているから内容はまったく分からないけどローゼマインはほとんど聞いているだけで、ヴィルフリートが一方的に話しているようね。

 

話しているうちに、不安そうな表情から、だんだん表情が和らいでいるように見えますわね。

 

ヴィルフリートに対して少しは警戒感を減った様で良かったわ。

 

と安心していたのだけど...。また、なにやら泣きそうな表情になったかと思うと、ヴィルフリートが何かを言ってローゼマインに手を出した瞬間...。

 

ローゼマインの金色の目が急激に輝きだしたかと思うといきなり椅子から崩れ落ちたわ。

 

わたくし達は余りに驚いて急いでローゼマインの側に寄った。

 

「ヴィルフリート、わたくしのかわいい妹に何をしましたの!しっかりしなさいローゼマイン、こうしてはいられませんわ!失礼しますわ」

 

事情を聞くのは後ですわ。この症状は明らかに異常だ。急いで医者のところに...。

 

「しっかりなさいローゼマイン。あなた達ローゼマインを医者の所へ。」

 

「お義姉さま...ごめんなさい、これは持病なのです。私の部屋まで運んで...。」

 

確かに特殊な病気なら専用の薬が必要ですわね。持っているというのなら医者に見せるより部屋へ連れて行った方がいいですわね。

 

「しっかりなさい。あなた達ローゼマインの言うとおり急いで運びなさい。」

 

側近達にローゼマインの部屋に運ばせましたわ。

 

それで薬がどこにあるのかと聞いても自分であけるといって箱だけ持ってきて欲しいといってきます。

 

仕方が無いので私自ら取ってあげた。

 

「どれですの。」

 

「お義姉さま...人払いをおねが...。」

 

人払いなんてしている場合ではないわ。でも一刻を争う状態ならそんなことで言い合いする方が時間の無駄ですわね。

 

「人払いとかそんな場合では...仕方ないわねあなた達でていきなさい。」

 

「一生のおね、がいです、はこだけおいて、うしろをむいて...あぐ」

 

もう、なんなのこの子は!他の人に見られたくないとかそんなこと言っている場合じゃないわよ!

 

「なんなのですか。ああ、もうわかりましたわ、はい、これが箱よ。後ろ向きましたわ。」

 

見ているのもかわいそうな状態になっており、言うことを聞いてあげますわ。

 

後ろでビンがこすれあい割れそうな嫌な音が鳴ってきた。ああもう、手のかかる子ですわね。

 

「ああ、もう、この薬でいいんですわね。ほら開けてあげるから、飲みなさい。」

 

見れば完全に手が震えているし、目の焦点が合っていないように見えた。こんな状態になってまで無理をして!

 

「ありが...とう...おねえ...。」

 

「本当に大丈夫なのですか、大丈夫なら何も心配せず眠りなさい。」

 

まったくもう、とりあえず少し経つと寝息は穏やかになったので大丈夫そうですわ。

 

改めてローゼマインが出した薬箱を見ると...。

 

何なのですか!見たこともないようなどす黒い薬は!?こっちの薬は虹色に輝いていますわ!?

 

とても人が飲むものには見えない、よほど特殊な薬なのか薬と偽って毒でも飲まされているのではなくて!?

 

とりあえず、人払いまでさせて飲んでいたのはこういうことでしたのね。

 

確かにこんな見ているだけで気持ちの悪くなりそうな薬を飲んでいるなのなら、飲んでいるところを見られたくないというのはよく分かりますわ。

 

あまりに見たこともなくひどい色の薬に動揺し、薬箱が閉じてしまいましたわ。

 

どす黒い色の薬を出したままだったので改めてしまおうと薬箱をあけると...。

 

あれ、変ですわね。そこにはわたくしでも見たことある普通の薬が入っていた。

 

再度閉めてから空け直しても同じ状態だ。

 

困りましたわね。とりあえずこの薬は預かっておきましょう。

 

 

 

 

そこから、ローゼマインが起きたと報告があったのは4日後でしたわ。

 

急いでローゼマインの元に向った。

 

ローゼマインはまだ、お世辞にも体調がいいとはいえないようだが口調ははっきりとしていて体の変な震えも収まっているように見えた。

 

「ディートリンデお義姉さま、ご迷惑おかけしました。」

 

ええ、まったくですわ。でも無事でよかった。

 

「本当に大丈夫そうでよかったですわ。わたくしにこんなに心配させるなんてローゼマインはわたくしの妹失格ですわ。」

 

体調が悪くてもあのときの薬については聞いておかないといけませんわね。

 

「ところであの薬は何なのですか、話してもらえるわね。」

 

ローゼマインは私の質問には答えずに露骨にわたくしから目線をそらして聞いてきました。

 

「ディートリンデお義姉さま、私のことについてゲオルギーネ様からはどう聞いていますか。」

 

今の話と何か関係があるのかしら?まあいいわ。答えてあげましょう。

 

「あなたのこと?何も聞いていませんわ。」

 

驚いた表情に見えるので意外だったのかしら。

 

「お母様から、ローゼマインの人となりを見て判断なさいといわれてますわ。」

 

 

 

 

その後ローゼマインは目を一度閉じて考えをまとめたようで、再度ゆっくりと目を開いた後に答えて来ましたわ。

 

なんでも、ローゼマインは身食いと同じ症状で魔力のコントロールができなくなることがよくあるとのこと。

 

そのため、今回も急に魔力の暴走を起こしてあのように急に倒れたとのことだ。

 

体が弱いのも、左手が不自由なのもその所為なのね。

 

優秀かもしれないけど親もおらず、病気で体を蝕まれるこの弱い妹を助けてあげないとね。

 

あ、話を聞くのに夢中で薬を返してあげるのを忘れてましたわ。

 

「この間薬箱に戻せなかったから渡しておくわ。体調が良くなるまでゆっくりなさい。」

 

病気のこととかいろいろ聞きたいけど、体が辛そうだから今は勘弁してあげましょう。

 

その後、神殿の行事に出ないといけないとかで一度アーレンスバッハへ帰りましたわ。

 

まあ、体調の関係もあるだろうし今の状態では一度帰った方がいいですわね。

 

 

 

 

貴族院ではローゼマインがいない間にお茶会なども頻繁に行われましたわ。

 

領主催のお茶会では、一度大領地にふさわしいお茶会を大々的に行いいつも通りに終わりましたわ。

 

お茶会ではローゼマインの話題が良く出てきて、ローゼマインが体調を崩していてアーレンスバッハに一度戻っていて出席できなかったことを伝えましたわ。

 

そのために、もう一度小規模な領主催のお茶会をやりますので代表だけでよろしければ参加してくださいましと言っておきました。

 

体が弱いことはもう全体に広まっているのでどこの領地も納得してくれましたわ。手間がかかるけどしょうがないわね。かわいい妹のためにがんばらないと。

 

ローゼマインが戻ってきてからのお茶会はおおむね評判でしたわ。あの暑苦しいダンケルフェルガーの領主候補生と仲が良さそうに話しているのは少し気に食わないけどいいですわ。

 

ようやくお茶会に少しは意気が出てきたということで納得してあげましょう。

 

そのあと、ローゼマインは、アウブであるお父様の命で領地対抗戦と卒業式には出ることができなかったわ。

 

今年のアーレンスバッハからは例年以上に優秀者が出て誇らしかったですわ。

 

ローゼマインはなんと最優秀とのことだけど当然欠席なので私が代わりに出てあげたわ。

 

わたくしのアーレンスバッハが注目されるのは気持ちいいですわね。思わず高笑いが出そうでしたわ。

 

この後は、特に何もなく貴族院は終わりましたわ。まったく、あの子のおかげで今年は大変でしたわ。

 

 

 

 

この後、戻った後は例年通りでしたわ。

 

次に会ったのは、アウレーリアの星結びのときだけど、この時は特に話す時間がなかったわ。

 

あの子らしい、派手だけどなんともやさしい心のこもった祝福でしたわ。

 

そのすぐ後にランツェナーヴェの使者をもてなす宴で、少しだけ話せたけど顔色が悪いのが気になったわね。

 

案の定、また倒れたとかで冬の貴族院が始まる前までお母様の話だとユレーヴェに入ったとのことだったわ。

 

心配だったのだけれど、そうも言っていられない事態になってしまったわ。

 

冬の館に移動する前にお母様に側近一同集められて言ってきたわ。

 

「ローゼマインは、あなたがアウブになるために最大の障害になりかねません。貴族院で機会があれば処分なさい。」

 

あの子を処分ですって!お母様は何を言っているの?

 

「神殿出身で汚らわしいだけでなく、あの子の所為でわたくしの支持者は減る一方です。今ならまだ間に合います。ディートリンデ、あなたがアウブになるためにもやりなさい。期待していますわよ。」

 

「お母様、神殿出身が好ましくないのは分かります。ですが、あの子を直接見て判断しなさいといわれたのは他ならぬお母様では。」

 

「あら、あなたまであの子に絆されてしまったの。汚らわしい神殿に入れられ、アウブに媚を売って従属契約してまで領主候補生になったあの子に。」

 

なんですって!領主候補生になるために従属契約ですって!

 

「おまけに、あの子の所為でわたくしのベルケシュトックの支持者はまったくいなくなりアーレンスバッハ辺境に持っていた支持までなくなってしまっているわ。ディートリンデあなたが頼りなのよ。いいですかあの子を必ず処分しなさい」

 

お母様はこんなことを言っているけど、そこまですることだろうか。いえ、本当ならするべきなのでしょうが。

 

そこで、「ディートリンデお姉様」「ありがとう存じます」と普段より僅かに柔らかくなった笑顔で言っているローゼマインが頭に浮かんできた。

 

わたくしに何も期待していないと思っていたお母様に頼られたのは、初めてのことです。

 

でも、いくらアウブになるためとはいえ、あの子を処分しろだなんて...。

 

冬のお披露目会では例年通りあの子は祝福を降らせたりしていたけど、わたくしはといえばほとんど気もそぞろであまり覚えていませんでしたわ。

 

 

 

 

わたくしが貴族院5年生、ローゼマインが2年生になったこの年は、貴族院に行ってからも悩んだわ。仕掛けるタイミングはわたくしが指示を出すまでは待って欲しいと側近に言っておいた。

 

貴族院であの子は何度もディートリンデお姉様と話しかけてきたけど私はどう反応していいかわからなくなってしまって冷たく突き放したわ。

 

ローゼマインは、少ししょんぼりとしているようにも見えたけど私もどうしていいかわからないのですわ。

 

時間だけが無駄に過ぎていった。側近がお母様に手紙でエーレンフェストと図書館でお茶会をするという話を伝えたらしくてわざと遅れて行きなさいと支持が来たわ。

 

ローゼマインはよく分からないのだけどエーレンフェストと接触を避けるように制約を課されている可能性が高いらしくそれを破らせるためらしい。

 

「ディートリンデ様、ここでしか機会がありません。いいですか、あなたは用事があって遅れるだけです。あなたが何かをするわけでもしたわけでもありません。」

 

そんなこといっても...お母様には逆らえませんわ。そうよ、初めて頼ってきたのだからせめてここまでお膳立てしてくれた以上従ってあげないと...。

 

非常にもやもやしたものを抱えながら私は急用が入ったとローゼマインの側近に伝えた。

 

しばらく経ってから会場である図書館に向いましたわ。

 

入ると普通に話しているように見えるローゼマイン達がいたわ。そこでほっとして胸からつき物が落ちたように感じてしてしまったわ。

 

わたくしにはこの子を処分することなんてできないですわ。

 

最近冷たい態度しかしていなかったのに、ローゼマインはこのお茶会ではいつも通りに見えた。

 

その後、わたくしのためにシュバルツ達の簡易版を作って寮に置こうとしている話などをしてきたわ。

 

ローゼマインは何かするときはいつも一生懸命で、王族の魔術具といわれるとても難しい魔術具を私のために作ろうとするなんて。

 

もう、どうしていいかわかりませんわ。

 

 

 

 

そんなこんなで悩んでいたら今度はローゼマインが戻ってこないという話になった。

 

あの子の側近が言うには図書館に向ったきりで目を離したらいなくなっており、どこへ行ったかわからないとのこと。

 

寝込んで長期間休むことはよくあるので体外的に聞かれたら体調が悪く寝込んでいるという話で通すよう全員に話したわ。

 

もちろん、できる限りみんなに探させたけどローゼマインは見つからなかった。

 

考えようによっては、お母様に言われたことを達成できてよかったなんて言葉が頭によぎってしまいどうしていいかわからなくなりましたわ。

 

 

 

 

いなくなって10日過ぎた日、あの子は少し体調が悪そうだけどいつもとそこまで変わらない表情で戻ってきましたわ。

 

身長もかなり伸びており、何かがあったのは確実ですわ。

 

とりあえず、怒ってから最低限説明させようとしたのだけど、本人も時間がたっているということすら把握していないようで怒られたことに関しても不思議そうな顔をしていたわ。

 

最低限、迷惑をかけた全員に謝らせこの場は納めたわ。まったく、ローゼマインがいるとトラブルが起きない年はないわね。

 

ローゼマインが戻ったことを城に知らせるとすぐに帰還命令が来たわ。あの子は二日も起きなかったので起きたらすぐに帰るように言ったわ。

 

そのあと、わたくしは考えました。答えは簡単だったのですわ。あの子がわたくしがアウブになるための障害にならなければいいのです。

 

要は、味方にしてしまえばいいのですわ。そうすればアウブになる気のないローゼマインが奪っていたという支持者も間接的にわたくしのものになるしいい考えね。

 

いずれにせよローゼマインが戻ってきたら、腹を割って話そうと覚悟を決めた。

 

 

 

 

ローゼマインが奉納式から戻ってきたら、真っ先に側近以外いない状態を作りローゼマインと現状について話したわ。

 

今回の件はアウブであるお父様から、結局何も分からなかったという報告をもらっていたわ。

 

「なんにせよ、あなたが無事で良かったと言ってあげらられれば良かったのだけど」

 

わたくしは盗聴防止の魔術具をローゼマインに持たせて話を始めたわ。

 

「ねえ、わたくし、あなたのことをとっても気に入っていますわ」

 

そう結局のところ、親がいる、いないの差はあれども親の愛情を受けていないという共通点があるためか、ローゼマインのことを気に入ってしまったのよね。

 

「あなた、アウブであるお父様達とずいぶんな契約を結んでいるそうね」

 

まったく、とんでもない契約を結んでいるようだけどこの子には権力に対する欲はまったくないのはわかるので、恐らく病気を治すためにアウブに身を売ったのでしょう。

 

ローゼマインはまったく表情を変えずに私の目をじっと見ながら聞いていましたわ。

 

「ローゼマイン、わたくしは必ずアウブになるわ。だからあなたも協力しなさい」

 

そこで、ようやくローゼマインは口を開いた。

 

「協力と言われましても、契約をご存じなら、わたくしはアウブに対してのみしか動けないことをご存じのはずでは」

 

そんなことはわかっているわ。わたくしが欲しいのはあなたの心の中での忠誠よ。

 

「協力できる限りでいいわ。わたくしは、わたくしの妹であるあなたと敵対したくないのですわ。それに、契約を結んでいると言うことはそれ以上の忠誠はアウブにもあなたのお母様にも持っていないのでしょう」

 

「申し訳ございません、ディートリンデお姉様。わたくし個人としては、アウブの後継者争いに首を突っ込むつもりはございません。もちろんディートリンデお姉様と敵対なんて考えたくもありません。ですが、契約を受けている身としては、命令次第でどうなるかわからないのです」

 

悲しそうに目を伏せながらローゼマインは行ってきたわ。

 

契約そのものが名捧げに近い状態だろうし、もしかしたらアウブに名捧げをしているのかもしれないから仕方がないわね。

 

そのような状態でもわたくしと絶対に敵対したくないとまで言ったのだから今回は諦めましょう。でもこれなら時間をかければわたくし側に引き込めるかもしれないわね。

 

「まあ、しょうがないわね。敵対したくないと言う言葉をとれただけ良しとしますわ」

 

お母様にはまた、無関心の目を向けられるだろうけどわたくしのやり方でお母様は認めさせてあげますわ。

 

「お母様よりあなたを手懐けられないなら手に終えなくなる前に処分しなさいと言われています」

 

本当はすぐに処分しなさいと言われているけどローゼマインに伝える必要はないわね。

 

「わたくしは、あなたの先ほどの言葉を信じますので裏切らないでちょうだいね」

 

このわたくしにここまで言わせたのだから貴方はたいした者よ。ローゼマインは僅かしか動かない表情でも明らかに驚いているのがわかるわね。

 

このあと、ローゼマインに来たお茶会のお誘いなどを伝えて終わったわ。

 

 

 

 

領地対抗戦ではローゼマインがこっそりと書いた論文が評価されたり、エーレンフェストのヒルシュールが勝手にローゼマインの名前を使ったりいろいろ問題はあったわ。

 

ローゼマインも、体調が悪いながらも王族より命令が出てしまった所為で卒業式では神殿長として祝福をおこなっていたわ。

 

アーレンスバッハで見慣れているわたくし達からすると、ずいぶん調子が悪く抑えていたみたいだけど回りは感心してため息をついている方もいたわ。

 

そうよね。普段のあの子の祝福がおかしいだけですわね。

 

 

 

 

貴族院が終わればゆったりとした時間が流れましたわ。なにやらお母様はいろいろ忙しく動かれているようだけどどうしたのかしら。

 

わたくしに関してはやはり余り期待していなかったのかいつも通りだ。

 

お母様が軍を率いて境界門に向われたと聞いたときは驚きましたけど。

 

この後、エーレンフェストと本物のディッターが行われるなんて話も出てきたけど何事もなかったかのように噂は消えていきましたわ。

 

本物のディッターなんてアーレンスバッハが野蛮な行為を行うとは思えませんものね。

 

今年もランツェナーヴェの使節団を迎える宴でローゼマインと少しだけ話せましたわ。去年とは違って顔色も良くてよかったですわ。

 

レティーツィアがしきりにこっちを気にしていたのが少し気になったけど、まあ、あなたなんて相手でなくってよ。

 

 

 

 

夏も終わりに近づいて来た時にお母様がエーレンフェストに行くから着いてきなさいといってきましたわ。

 

どうせならローゼマインも連れて行きましょうというとお母様がいいですわね。アウブに聞いてみますわねと言って来ました。

 

髪飾りの件もあるしローゼマインには是非とも一緒についてきて欲しかったのだけれど...。

 

アウブであるお父様からは許可が下りなかったわ。何度かお願いの手紙を出してみたけどダメでしたわ。

 

残念ですわね。まあ、仕方が無いのでお母様と一緒にエーレンフェストへ向った。

 

エーレンフェストへ向う途中、お母様が、以前の軍を率いて向ったときの顛末をいきなり話してきたわ。

 

なんでも衝突寸前まで言ったけど、結局話し合いで終わったとのことだ。

 

ただ、その所為で、エーレンフェストとアーレンスバッハの領主候補生を婚約させろという話が王族より来てしまったようだ。

 

今のところ、わたくしとヴィルフリートが最有力候補らしい。

 

ヴィルフリートはわたくしよりも若いながら領主候補生らしくエーレンフェストを率いており、わたくしの夫としてふさわしいわね。

 

ヴィルフリートとなら結婚してもいういかと思わせるだけの風格をこのときすでに持っていたわ。

 

エーレンフェストではヴィルフリートといろいろ話したわ。残念ながらヴィルフリートはわたくしとの婚約はあまり乗り気ではないみたい。

 

もしかしてこの子ローゼマインに惚れているのかしら?というくらいローゼマインの話を聞きたがったわ。

 

契約があるし、あの子の夫を外から迎えるのも外に出すのも無理なのよね。アウブであるお父様が非難されかねないし。

 

この時は、わたくしとしては非常に不本意ながら王族を納得させるための仮の婚約ということで話が進んだ。

 

そのあと、髪飾りを注文したりシャルロッテやメルヒオールとも話したわ。意外とヴィルフリートも髪飾りのことを良く知っていて一緒にデザインの相談に乗ってくれたわ。

 

男で、去年まではそこまで興味がなさそうだったのに本当に意外でしたわ。年下なのに少しかっこいいわね。

 

この後は、ずっとお母様が忙しそうにされていたのは気にはなるけど、わたくしは例年通りでしたわ。

 

 

 

 

さて、あっという間に冬になり、冬の館に移動すると珍しくローゼマインが初めから来たわ。

 

今まで、貴族院へ行く前に碌に冬の館にいたことがないけど良かったですわね。

 

「ディートリンデお姉様、今年は冬の屋敷へも問題なくは入れましたし、いい年になりそうです。」

 

まったくですわね。今年はいい年になりそうですわ。

 

わたくしは貴族院最終学年ということもあり、最後は本当にいい年になりそうだと期待を膨らませていましたわ。

 

ローゼマインにエーレンフェストのことを話してあげると意外に興味があるのか髪飾りとかの話については少し聞いてきましたわ。

 

そういえばローゼマインも普段使い用が欲しいって言っていましたもの。

 

ローゼマインも連れて行きたかったと話したら、行きたかったのか心なしか残念そうだった。

 

無理やりでも連れて行ってあげるべきだったかしら。でも契約の関係でお父様の許可がないと無理よね。

 

 

 

 

貴族院が始まって親睦会ではやけにローゼマインが注目されていたわ。ローゼマインはわたくしの知らないところで何かをやったようだわ。以前に領主会議に呼び出された関係かもしれませんわね。

 

今年のアーレンスバッハは4位になり、上位領地はすべて大領地となったわけだけどその大領地の領主候補生であるローゼマインに下手なことはできないでしょうし問題にはならなそうね。

 

その後は、相変わらず授業では祝福が出たとか、神の加護を得る儀式で時間が掛かっていたとかで少しだけ話題になったけど問題になるようなことはなかったわ。

 

ローゼマインも例年通り順調に講義を終え、領主候補生コースだけでなく他の文官コースの講義なども出たいということを話したりしていたのだけど...。

 

それはいきなりだったわ。予定にない緊急帰還命令がローゼマインに出ましたわ。

 

今までの流れなら少なくともまだ、ローゼマインの出ている奉納式までには時間があるはずだしこれはいくらなんでもおかしいわね

 

「ローゼマインに。何か心当たりがありまして。」

 

「いえ、まったく心当たりがございません。」

 

最近は、ようやくこの子の僅かな表情の変化がわかるようになったわ。

 

分かってしまえばローゼマインは表情豊かでいろいろ考えていることがわかり可愛いのよね。

 

さて、今回の件は本当に分からないよう。それでも命令が出てしまった以上は一度ローゼマインは城に戻るしかないでしょうね。

 

「おそらく今戻ったら、奉納式が終わるまでは貴族院に戻れないかと存じますので後のことはよろしくお願いします。」

 

「ええ、何かあれば手紙で伝えてちょうだいね。」

 

不安ですわね。今年はここまで珍しくうまく進んでいただけに残念ですわね。

 

 

 

 

そのあと、ローゼマインから緊急の知らせが来たわ。なんでもアウブが倒れてはるか高みに上る心配はないけどしばらくユレーヴェに浸かるとのこと。

 

それだけでなく、お母様とも連絡が取れないとのことで、わたくしから連絡を入れて欲しいとのことでしたわ。

 

お母様はわたくしが貴族院に行く前に、いえ、今年はずいぶんいろいろ忙しそうにされていたけどついに疲労が来てしまったのかしら。

 

まったくこんなときに。と思いながらもお母様の特別なルートを使って連絡を入れた。

 

返信は、少し時間がかかったけど、案の定臥せっているとのこと。アウブの弟君達に任せるみたいな事が書いてあったわ。仕方が無いのでお母様が送ってきた文章をそのままローゼマインに手紙で伝えたわ。

 

様態がわかっただけでも助かりますという内容が送られてきたけど、なんでも丁寧にやるあの子らしくなく少し急いで書いているようでかすれた字だったわ。

 

私もできることがあれば、なんでもしますわと送ってあげると、お母様への連絡と貴族院に現状が伝わったときに混乱しないようにまとめていて欲しいとのことでしたわ。

 

最後に、貴族院のことはディートリンデ様だけが頼りです。と一言入っていたわ。

 

そうよね、城も心配だけど貴族院も重要だものね。ローゼマインのお姉様としてしっかりとまとめなくてはね。

 

僅かに現状を知った貴族院生が、少しだけ騒いだようだけど、側近達も動員して噂が広がらないように勤めたわ。

 

城からは現状は特に問題はないと伝えているのも少しは効果があったようだ。

 

いえ、たぶん城でのことはほとんどの者が知っているわね。私達が平気なふりをしているから問題ないように見えているのかも。

 

ふふ、今年の貴族院はみんなでがんばろうという雰囲気が出ていて一体感も何故かあるしいいですわね。

 

特に問題なくローゼマインも一緒に過せたら良かったのだけど...。

 

領地対抗戦の準備が始まってもあの子は戻ってこられなかった。

 

「なんだか今年は、やけに注文がすぐに届きますね。」

 

文官の子達が不思議そうにしていたわ。なんでも普段はなかなか注文しても来ないので早め早めに決まった側から注文していたそうなのだ。

 

けれども、今年はやけに早く注文した物が届くからこれならまとめて注文してもよかったわねという話があがっていた。

 

アウブがいなくなっているのに効率が上がるなんてことはありえるのかしら、ローゼマインが城で無理していないといいけど...。

 

 

 

 

結局ローゼマインが貴族院に戻ってきたのは、領地対抗戦の始まる前日だったわ。

 

「あら、大変でしたわねローゼマイン。わたくしも本当に戻らなくてよかったのかしら。」

 

本当に大変なら戻るつもりもあったのだけれど。

 

「ええ、たくさんの方にご協力いただいて何とかなりました。それに領地も大切ですが貴族院の方が他領との関わる大切な場なのでおろそかにできません。」

 

まあ、そうなのよね。代表がいなくなるわけにはいかないですわね。

 

ローゼマインはずいぶん苦労したようで疲れが隠しきれていませんわ。何度か熱を出して倒れたという報告も聞きましたわ。

 

ローゼマインも最終確認くらいはするというので、その方がローゼマインもアーレンスバッハの貴族院生として領地対抗戦に参加した気になれるだろうしやってもらうことにしたわ。

 

領地対抗戦が始まると、まず社交だ。

 

まず、アウブの弟君夫妻が上位領地に挨拶回りへと出て行った。わたくし達はその間の来客の対応だ。

 

一応仮とはいえ婚約したヴィルフリートともあいさつ回りに行かなければいけないのだけれど、顔色が余り良くないローゼマインをおいていくわけにはいかないし...。

 

まあ、まだ仮の状態なので、王族と付き合いの深い領地にしか報告する予定はないし少し遅らせてヴィルフリートに迎えに来てもらえばいいですわね。

 

側近を通じて、ヴィルフリートに少し遅れて迎えに来てもらうように頼んでローゼマインと一緒に他領の対応をしたわ。

 

 

 

 

アウブの代行である弟君も上位領地の挨拶周りを終え戻ってきた。王族とか来てまたあの名前も出したくない王子は嫌味を言ってきたけど、まったくもう、あなたの嫌味にかまっている時間はなくってよ。

 

ただ、ランツェナーヴェが攻めて来るかもとか言ってきましたわ。信じがたいけど嘘をつくとも思えないのよねぇ。

 

この王子達は、また厚かましいことにローゼマインにもうしないと約束をしていた成人式での祝福を行えないかと言ってきたのでローゼマインが現状を説明し無理ということを伝えましたわ。

 

まったく、アウブもいないのにローゼマインがそこまでできるわけないですわ。今年も体調は余り良くなさそうだし。

 

その後、何を思ったのかローゼマインが私の脇に寄ってきてこっそり耳元でささやいてきた。

 

「星結びでは、わたくしがディートリンデお姉様達を盛大に祝福いたしますね」

 

あら、ヴィルフリートのことはまだ伝えていなかったはずだけれども。まあ、ローゼマインのことだから城かどこかで聞きつけたのかしらね。

 

 

 

 

王子たちの対応を終え、他の領地の対応をしてしばらくすると、ヴィルフリートがやってきましたわ。

 

「ではローゼマイン、後は任せましたわ。」

 

するとローゼマインは少し驚いた表情に変わったわ。あれ、知っていたのではなくて?

 

「あら、わたくし、ヴィルフリートと婚約することになりましたので」

 

「何も聞いていないのですがそれは...ご婚約おめでとうございます!」

 

ローゼマインは少し混乱したかのようになりましたが、最後はいい笑顔で言ってくれた。

 

「婚約といっても、どちらがどちらの領地へ行くかも決まっていないし、レティーツィアがメルヒオールを迎える可能性もあるのでまだ仮なのですわ。」

 

何も知らないようなので一応補足してあげたわ。まだ、正式な決定ではないのよね。

 

「そもそも、貴族院入寮直後ではヴィルフリート様との婚約はできなかったという話ではなかったのですか。」

 

そういえば、あの時は後で話そうと思ってローゼマインには言わなかったのよね。仮だから今後どうなるかも分からなかったし。

 

「残念ながらまだ仮なのよ、王族より去年の争いのせいでアーレンスバッハとエーレンフェストの領主候補生が結婚するようにというお話なのですわ。」

 

わたくしがそう言うと、少し気まずそうにローゼマインが一度目線を横にそらした。

 

「いずれにせよ、ご婚約おめでとうございます。こちらのことは気にせずお二方で挨拶周りに行ってきて下さいまし。」

 

 

 

 

その後、わたくしは後で良いといったのだけれどヴィルフリートが先にローゼマインと話をすると言ってきた。

 

きっとヴィルフリートはローゼマインに惚れているのでしょうね。まあ、婚約の条件ならヴィルフリートとローゼマインが結ばれても問題ないわけで...あの子と結ばれるには契約とかの壁が大きすぎて実質不可能でしょうけでど。

 

ただ、仮であっても婚約者の目の前で他の子に惚れていますという態度を隠せないのはどうかと思いますわ。

 

わたくしはお姉様なので仕方が無いから少しだけ我慢してあげましょう。あの子がヴィルフリートにまったく興味がないことがわかれば諦めるでしょうし。

 

やはり、一目ぼれなのかしらね。契約があったにせよ貴族院でこれだけ会っていてもまともに話せていたところを見たことがないし今回もローゼマインを見ている限りでは大事なお姉様のことをよろしくお願いしますね。なんて心から祝福しますという感じで言っていますし。

 

まったく、わたくしという存在がありながら他の子に目を移すなんて...少しだけ胸が痛くてむかつきますわね。

 

 

 

 

この後、ヴィルフリートはわたくしに時間を取ってもらったことにお礼を言ってきて王族や領地を一緒に回ったわ。

 

一通り回り終わった後、ヴィルフリートがディッターに出るということで準備に向った。

 

ヴィルフリートがアーレンスバッハまで送って行くと言ってくれましたけど、今からだと、とても急いで戻らないとアーレンスバッハのディッターに間に合わなくなってしまうのでエーレンフェストの席で見せてもらうことになったわ。

 

もともとディッターになんて興味はなかったけれども、改めてみると素人目にもアーレンスバッハの皆さんは以前と比べて強くなっているのがわかるわ。

 

なんというかすべての歯車が噛み合って、まるで一つも意思を持った巨大生物のように見えるのよね。

 

ばらばらに戦っていた以前の時とは大違いだわ。

 

とは言うものの、もっと変わったのはエーレンフェストね。去年は一度動き出してから倒すまでは早かったけど準備に時間が掛かっていたけれども...。

 

今年は、去年のダンケルフェルガーに迫るような圧倒的な個人の錬度と連携を見せ見事に倒して見せた。

 

もちろん先頭にいるのはまだ貴族院3年生の仮とはいえわたくしの婚約者であるヴィルフリートよ。

 

これで、ローゼマインに惚れていなければもっとよかったのだけれどねぇ。

 

最近急激に存在感を伸ばしてきているエーレンフェストの領主候補生で、自身の求心力もあるしこうやって見ている分には、いえ、ローゼマインが関わらなければカリスマ性のある格好の良い男なのだけどね。

 

もちろん、実績も加味すれば大領地の領主候補生であるわたくしとも十分釣り合いは取れる数少ない男なのよね。

 

 

 

 

ディッターが終わり、表彰式のため移動すると、ローゼマインがまた倒れたですって!

 

やはりディッターを見ていないで急いで戻って一緒にいてあげるべきだったかしら。でもあの子そういうことをすると余計に申し訳なさそうにするし...。

 

今年はわたくしも優秀者で呼ばれて、ローゼマインの分も代理をしてあげて少し誇らしかったですわ。ローゼマインも来年こそはここに立たせてあげたいわね。

 

次の日の奉納舞では、わたくしが一番目立ってましたわ。髪飾りもばっちりと決まったし、本日一番美しいのはわたくしディートリンデですわ!

 

ローゼマインは案の定、また臥せっていて見せられなくて残念でしたわね。あの子もエーレンフェストの髪飾りが好きなようなので明日見せてあげますわ。

 

注目されるのは気分がいいですわね!

 

次の日、ローゼマインに髪飾りを見せてあげて自慢してあげたわ。

 

髪飾りの話をするとうれしそうに聞いてくれるのでついうれしくなって話に熱がこもってしまって...時間があまりないはずなのに悪いことしてしまたかしら。

 

まあ、あのくらいの時間は大丈夫ですわよね。

 

この後、ローゼマインは図書館に呼び出しをされたらしく、戻ってきたらすぐに城に戻るとのことだった。

 

わたくしも用事が済んだら城へ戻るとローゼマインに伝えると、できればゲルギオーネ様について城に来られるのならお願いしたいということを言ってきた。

 

そうよね。お母様に連絡を取っても臥せっていると言う返事しか返ってこないしいくらなんでも長すぎるわ。

 

 

 

 

城へ戻ると、まずお母様に連絡を入れます。なんでもまだ臥せっているらしく実の娘でもあるわたくしにも合えない状態だそうだ。

 

困りましたわね。この後数日はローゼマインと連絡を取ったり貴族院から戻ってきた後の後片付け関係をしたのだが、お母様から急に呼び出しが来たわ。

 

「お母様、お体は良くなられたのですか。」

 

本当に久しぶりに見たお母様はずっと臥せっていたのが嘘のように健康そうでした。

 

「ええ、ディートリンデ。見ての通りですわ。」

 

その後、本当に珍しく貴族院でのことや城のことなどを聞きたいというのでわたくしは話したわ。

 

今年は本当に大変で、お母様も良くなられたのなら一緒に城へ向かいましょうといったのだが...

 

「うふふ、いい感じですわね。部下が暴走したときはどうしようかとも思ったのだけれど、ようやく準備も整いましたしそろそろ本格的に動き始めましょうか。」

 

「お母様?よく分からないことを言っていないで早く城へ行ってアーレンスバッハを安定させないと...」

 

お母様のこの暗くて気持ち悪い笑顔はあまり見たいものではありませんわね。

 

「ねぇ、ディートリンデ。ローゼマインについて排除する気はまだ残っているかしら。」

 

「お母様、ローゼマインも契約があるとはいえ、がんばってアーレンスバッハを支えているところですわ。排除とかそんな事を言っている場合ではないですわ!」

 

お母様はこの緊急事態に何を考えているのだろうか。そんな話をしていないで早く城に行かないと。

 

「はぁ、どこで育て間違ったのかしらね。もういいわ、ここまで来て変なことをされても困るしあなた達、言われたとおりにしなさい。」

 

お母様がため息をつきシュタープを出して光らせると、いきなり後ろにお母様の側近や部下がたくさん来てわたくしの側近ともども一瞬で拘束してきたわ。

 

「お母様何を!」

 

「ふふ、拘束されてまで言うことがそんなことだなんて。安心なさい、はるか高みに上るのだけはまだ勘弁してあげるわ。あなたにはまだエーレンフェストを取った後に利用価値があるからね。」

 

お母様はいったい何をしようとしているの!?冗談ではすまない雰囲気ですわ。

 

結局この後、身に着けていた魔術具も全部取り上げられ、シュタープを出せなくする拘束具で拘束されてしまった。

 

拘束された後は、体を動かすのは不自由がないようにされたけど、しばらく普通の部屋で軟禁されていたのですわ。

 

その後にローゼマインが何度も心配している旨のオルドンナンツを飛ばしてくるものだから、監視している者達は、この場所がばれるのを恐れて銀の布に囲まれた部屋に移されたら飛んでこなくなってしまった。

 

現状を伝えようと拘束具を何とかはずそうとしたり、いろいろあがいたけど無理だったわ。

 

 

 

 

この後しばらくして、ローゼマインが助けに来てくれたわ。

 

久しぶりに見たローゼマインは、神々しくて思わずひざを着き跪きそうになったわ。

 

でもあの子の「ディートリンデお姉様、ご無事でよかったです!」という、本当に心配していたという声を聞いたらその圧力に対抗できたわ。

 

というか、この子って、こんなに儚い雰囲気を持っていたかしら...よく見るとローゼマインが僅かに透けてる!

 

「ローゼマイン!いったいどうしたのですか!?体が少し透けてましてよ!」

 

ローゼマインは焦った様子で私の質問には僅かに変わった笑顔ではぐらかしてきた。

 

「ディートリンデお姉様、後で結構なのでこの箱をレティーツィアやアウブ達と一緒に王族に届けていただけますか。今回の件で私よりと言って頂ければ分かってもらえますので。」

 

「ローゼマイン、そんなことよりあなたどうしましたの...。」

 

そんな帰ることのできないどこかに行きそうなさびしそうな表情をして...

 

一瞬そんな言葉が出そうだったが、ローゼマインもわたくしがいろいろ察したのかわかったのか顔が曇った。

 

違いますわね。この子が欲しいのはわたくしのこんな言葉ではなく、誇り高きわたくしディートリンデらしい言葉が欲しいのですわね!

 

「私の方が美しいけど美しさが段違いになってましてよ!」

 

やはり欲しい言葉はこれだったようです。少し驚いた顔になった後に今まで見たことがないほどの笑顔をわたくしにむけてきます。

 

ローゼマインが何か言いたそうにしているけど、言葉が出ないようなので先に言ってあげます。

 

「まあ、いいわ。大切な妹の頼みですもの。これからすぐにどこかへ行くのでしょう。どこへ行くかは知らないけど必ず帰ってくるのですよ。お姉様との約束ですよ。」

 

言わなくても、ローゼマインの言いたいことなんてお見通しよ。伊達にあなたのことを三年間もお世話をしてあげたわけではないのよ。

 

「はい、ありがとう存じます。お姉様!」

 

あの子はすっきりとした顔でそう言った後にここを出て行ったわ。

 

完全にローゼマインが見えなくなるまで耐えた後、ずっと耐えてきた緊張の糸が途切れ足の力が抜けてしまい背中から倒れてしまったわ。

 

 

 

 

この後は、ローゼマインが渡してきたのはグルトリスハイトを模した魔術具だったらしく、言われたとおりにアウブやレティーツィアと一緒にツェントに献上したりしたわ。

 

女神の姉として、グルトリスハイトを渡した一人として、それなりの地位を約束され王族になることも打診されたのだけれども...。

 

「ヴィルフリート、ようやく許可が出ましたわね。今日は楽しみだわ。」

 

「そうだな、正直そなたと星を結ぶことになるとは以前なら考えられなかったな。」

 

わたくしは、ヴィルフリートと星を結ぶことになったわ。実はもうすでに大々的に星結びの儀式をメルヒオールとレティーツィアが主導して一度やったのだけれども...。

 

「まさか、ローゼマインがよろしければ小規模なものになるけどぜひとも個人的にやらせて欲しいと言ってくるとはな。」

 

ローゼマインのいるエーレンフェストの小さな村は厳重に管理されており、出入りが規制されているため入るには許可が要る有様だ。

 

でも今回はローゼマイン自らがよろしければ来て欲しいと言っているので問題ありませんわ。

 

「ええ、わたくしも妹、いえ、もう妹なんて言えませんわね。女神様になってしまったのだから...」

 

「ローゼマインは妹と言ってくれた方が喜ぶと思うがな」

 

 

 

 

村に入ると、中央にある小神殿は光り輝いておりとても綺麗だったわ。村の管理人に案内され向うと。

 

「ディートリンデお姉様、ヴィルフリート様ようこそお越しくださいました。その、ご迷惑ではありませんでしたか?この辺鄙なところまで来させてしまって。」

 

ふふ、ローゼマインは立場が変わっても相変わらずですわね。

 

「ええ、今では許可がないとは入れないから逆にこの村に行ったということだけでうらやましがられますわ。」

 

「ああ、そうだな。貴族では一種のステータスになっているぞ。」

 

この村に行けるとなったときのレティーツィアの嫉妬はひどいものでしたわ。レティーツィアも一時的にわたくしの側仕えになって付いていくなんて言ってくる有様でしたもの。

 

「それなら良かったです。以前にお約束したことが果たせないかと気をもんでいたのですわ。」

 

あんな口約束をそこまで気にしてくれているなんて。もちろんわたくしも約束したことはちゃんと覚えていましたわよ。

 

「ええ、では今日は盛大によろしくね。わたくし知っての通り派手なのが好きなのですわ。」

 

「ええ、本日はお姉様のために盛大に祝福いたしますね。」

 

その日に行われた星結びの儀式は、他の村からも見えるほど盛大で、噂ではエーレンフェストの領主の町からも祝福を確認できたとのことだ。

 

 

 

 




以前に割烹にも書きましたがこの作品の裏テーマとしてディートリンデ様の成長記というテーマも持っていました。
この作品のディートリンデ様には大本があり、とある方がピクシブで書いていた誇り高き綺麗なディートリンデ様に成長させるにはどうやったらなれるかということを想像した私なりの結果でもあります。結果的にはあそこまでは誇り高くも綺麗にもなりませんでしたけど一応成長という観点では書ききれたかと思います。

今回のこの話も、ディートリンデ様の視点の完全な回答ではありません。ざっくりとはいえディート様の視点で書いた資料がどこにいったのかわからない状態で一から書き直したものです。本当はマインのいない間の設定とかもう少し作ったはずなのですが分からなくなってしまいました。

さて、最後に関してとかいろいろありますが仮に文句があってもこの話の内容に関しては受け付けませんのでご了承を。あくまでこの話は蛇足ですので。
最後の話を楽しんで頂けた方がおりましたら幸いです。

それでは、原作のハンネローレ様の作品が今年中に更新され無事に来年あたりに完結することを祈りましてこの物語を閉じたいと思います。

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