一般人生徒リツカ!   作:ブタどもの一人

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ただただ、彼女を愛でたいだけ。


どうやら藤丸立華ではなく、ぐだ男らしい。

 やあ、俺の名は藤丸立華(ふじまるりつか)

 麻帆良学園高等部に通う二年生の男子高校生さ。

 

 エスカレーター式といえど学生の本分である勉強は欠かさないし、友達と一緒に遊ぶのだって全力さ。

 それに二年生も、もう一月、数ヶ月後には三年生ともなれば大学で専攻する学部や将来のこともちゃんと考えなきゃならない。

 

 寮制なのに毎日電車通学だし、車を追い越すレベルで走る人やオーバーテクノロジーなロボットや、気合いで気弾みたいなのを出す格闘家もいるけど、頑張って勉強してちゃんとした会社に就職するんだ!

 

 色々と規格外な麻帆良だけど、部屋に帰れば可愛いサーヴァント(※使い魔や奴隷の意)が出迎えてくれるんだ!

 だからどんなに辛いことがあったってへっちゃらさ!

 あの、『おかえり、ご飯にする? お風呂にする? それともぉ……私のライv』の一言だけでやる気満タン!

 

 ヒャッホーウ! 思い出したらやる気が満ち溢れてきたぜぇ!

 

 だから今日も、元気にいってきまーす!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ……うん。たぶん、みんな色々とツッコミがあると思う。だが待ってほしい、これって俺のせいじゃないと思うから。

 

 

 とりあえず俺が現実として認識している『前世』とか言うやつの記憶を探ろうと思う。

 

 俺の前世はフジマルリツカとかいう今頃、ブラックな職場で命懸けの戦いを強いられていそうなコミュ値カンスト逸般人じゃなく、ごく普通のサラリーマンだったと思う。間違っても古代ローマ兵とサシで戦ったりしない。

 サラリーマンと書くと、とりあえずスーツ着て朝の満員電車で揉みくちゃにされてるイメージだが大体合ってる。

 もっと詳しく言うとチェーン展開している雑貨店の社員だったのだが、特に関係ない。

 

 大事なのはその会社が倒産してしまったことにある。最悪なことに社長は夜逃げだ。

 そして不幸は続くもの、運悪く、朝の電車で痴漢の冤罪をかけられ裁判に発展した。

 あの時の周囲の人々の目が嫌だった。やっていないことに対して侮蔑の目を向けられるのだ。堪ったものではない。

 

 あげくには痴漢の件が未だ片付いていないうちに車で事故に巻き込まれ入院。幸い、一月ほどで帰宅できたが、その間に同棲していた彼女は男を作った上で金目のものを持ち去って姿を消していた。

 その男というのも俺の高校からの友達であり彼からのメールによって浮気が発覚した。

 痴漢の件により彼からも侮蔑の感情を向けられており、元カノが窃盗したなんて話は一切聞いてもらえなかった。

 両親や兄弟のいない俺は一瞬で孤独になった。

 

 そうして全てを失って、茫然自失としながら大通りを歩いている時にけたたましいクラクションの音と眩しい光に包まれた。

 

 

 

 

 

 

 

 ……と、ここまでが俺が『前世なんじゃないかなぁ』と認識している記憶。その後は目が覚めて見知らぬ若い女性の腕に抱かれていたりとお約束ごとが続いてとうとう高校二年になってしまった。

 幸い、両親は優し“そう”な人物で俺を麻帆良に入れたこと以外は特に恨みもない。

 ただ、幼い俺を麻帆良に入れたこと、それだけは許せねぇ。

 

 麻帆良という名前でお察しなのだが俺が生まれ変わった世界は『ネギま!』という漫画作品の中だった。いわゆる転生である。

 特に神様とかには合わなかったが、まさか現実で自分が体験することになるとは思わなかった、とテンプレのごとく驚いたものである。

 

 まあ、だからと言って“そういう世界”に関わらなければ何の支障もないとは思っている。だからこそ俺は初めに男として生まれたことに感謝した。

『ネギま!』の作中において主舞台となるのは女子中等部である。物語の開始時期は2002年で今年度だが俺はもう高二である。

 特に主要人物と血縁関係もなし、交流関係も“ほとんど”ないし俺が物語に引き摺りこまれる心配は皆無だと言える。

 

 だがここで前述した致命的な問題が一つ存在する。

 

 そう、『英霊(サーヴァント)』の存在だ。

 

 ことの始まりは二年前、あれは中学最後の麻帆良祭の夜だった。

 ふと、何の脈絡もなく俺の手の甲が焼け付く痛みに襲われ見てみればそこに見知った令呪が刻まれていた。

 

 その時の感情といったら『ああ、来てしまったか……』の一言に尽きる。世界観をガン無視した唐突な令呪出現は原作介入の予兆である。

 半ば諦めながらも寮に帰ればそこには、

 

『あら、遅かったじゃないマスター? お風呂にする? ご飯にする? そ・れ・と・もぉ……』

 

 俺は迷わず扉を閉めた。ちなみに一人部屋だ。

 

『ちょっとぉ!? せっかく私が“こっちに”来てあげたのにひどくないっ!?』

 

 扉越しにそのような大声が響いては他の部屋の寮生に聞こえてしまう。仕方なく中に入って事情を聞くことにした。

 

 曰く、俺がマスターであることは確かでありやはり俺が召喚してしまったらしい。だがいつだ? 令呪が現れてからもその前もこれと言って怪しい儀式とかしてないんだが。

 そう問うと不思議そうな顔をした彼女が答えた。

 

『え? したじゃない、“カルデア”で。何言ってるのよ、ボケた?』

 

 カルデア? 全く覚えがない。そもそもこの世界では魔術師は存在せず今はまだ2002年だ。人理焼却事件など起きていない。

 それと、俺はまだ精神的にも還暦前だ。

 

『あー、そうじゃなくって。あなた、生まれ変わったんでしょう?』

 

 続くその言葉には衝撃を受けた。何せこれまで誰一人として転生のことなど話していない。いや、話したところで精神病棟行きだろうが。

 

 だが、それも次の言葉である程度合点がいった。

 

『おかしいわね、記憶は続いてるってお花の魔術師が言ってたのに』

 

 マーリンシスベシ。

 事情は分からないがとにかくアイツの所為らしい。あの爽やかイケメンクソ野郎が絡んでいるなら大抵の無茶は通る。伊達に宝石翁に並ぶ機械仕掛けの神(デウス・エクス・マキナ)と呼ばれていない。

 

 だが、それで俺のところに彼女を送る意味がわからない。そう問いかける。

 

『なんでも、“なかなか引けない恨みを送られて困ってるから代わりに行って来てよ”って話だったわ』

 

 まさかの自業自得だった。確かに前世では一度とて召喚に応じてくれない彼に恨み言を述べていたりもしたが。あくまでゲームの話だ。そんな、来世にまで復讐されるほどのことじゃない。

 というか、カルデアからこっちに来てしまったらカルデアは困るのではないだろうか?

 あれ? そもそもカルデアって最後の記憶だと崩壊して英霊も退去してしまっていたような?

 こいつ、一体、どこから来たんだ?

 

『崩壊!? デジマ!?』

 

 彼女も知らなかったらしい。

 一体どいうこと?

 

 

 

 更に詳しく話を聞いていくと、どうやら彼女は退去までの記憶を有した状態で新たに召喚されたサーヴァントという扱いらしい。つまり、fgo世界線の彼女とは別個体という扱いになるとか。byマーリン

 

 そうなると、仮にぐだ男が彼女を呼び戻しても現れるのはここにいる彼女とは別個体ということか。ややこしい。

 

 だが、彼女自身もよく分かっていないらしくこれ以上問い質しても意味がなかった。

 

 

 正直、困ったことになった。俺は正確には彼女の知るマスターじゃないしぐだ男みたいにコミュ力が高いわけでも、あんな眩しい清らかな精神をしているわけでもない。

 自分で言うのも辛かった、なんだか、自分が同じ名前をした偽物みたいな感じがして。だが伝えなければいけないことなので渋々伝える。

 

『は? え、いや、子イヌでしょ?』

 

 しかし彼女は「何言ってんだこいつ」みたいな反応を返す。だから違うと言ってるだろ。

 

『やっぱ覚えてないのかしら……でも魂は確かにマスターなのよね』

 

 魂とか怖いこと言うなよ。なにそれ、魂って見分けつくもんなの?

 

『うーん、見るというより感じる、の方が正しいわね!』

 

 なんだそれ。

 そう言われても俺の前世は確かにサラリーマンだし人理修復などした覚えはない、ゲームでしか。

 

『ゲーム!? なにそれ、めっちゃ気になる』

 

 ふとこぼした呟きに過剰に反応する彼女。渋々、fgoについて話す。ゲームのキャラに『お前、ゲームのキャラだから』と言う行為は死刑宣告にも等しい『残酷なことだ』と思いながらも事態の究明のために話した。

 

 のだがーー

 

『なにそれなにそれ! え、私ってそんな人気なの!? いやー、やっぱり時代はドラゴン娘よね!』

 

 予想外にも好意的な反応を見せた。少々、彼女の人気に関しては話を盛ったのが良かったのかもしれないが別に不人気なわけじゃないし嘘じゃないし。

 

 その後もEXTRA系統の話やらfateについて熱く語り合った。

 

 ふと、冷静に考えてこの状況が限りなくカオスなことに気づき話を戻す。

 

『なーんだ、やっぱりマスターじゃない。間違えたかと思ったわよ』

 

 だが、それでも俺はマスターらしい。曰く、子イヌを導いてたんでしょう? つまりPね! とよく分からない解釈されていたが俺もよく分からないので流すことにした。

 

 

 

 さて、続いて気になるのは“それでこれからどうするの?”ということであり先ずは彼女に令呪が使えるか試しておきたい。いざという時、これがただの刺青だったら目も当てられない。

 

『令呪をもって命ずる、お茶を入れろ』

 

 特にやってほしいこともなかったのでお茶を入れてもらった。機能はしっかり本物だと確かめられた。

 とんだ瑣末ごとで令呪を使う俺に彼女は若干引いていたが、入れてくれたお茶を『美味しい』というとすぐに機嫌を直した。そういうところがチョロインとか言われちゃうんだと思う。

 

 

 

 次に現界に際しての魔力だ。生憎とこの世界の魔法も、型月の魔術も使えない俺はとんだけ魔力を有しているのかてんで分からない。伊達に十七年も一般人していない。本当に何もしてこなかった。

 そもそも英霊一人現界させるだけでも規格外の魔力量の持ち主でなければ不可能だった気がする。あれ? じゃあなんでこんなにも普通にいるんだ? すでに彼女と会ってから数時間が経過している。

 

『んー、なんか外にあるデッカい木から魔力貰ってる気がする』

 

 とは本人の談。気がする、とはなかなか曖昧だが俺には確かめようもないのでどうしようもない。本人は大丈夫と言っていたのでたぶん大丈夫なのだろう。

 

 

 

 そして最後に、彼女を今後どうするか、である。

 

『え、まさか、捨てられちゃうの……?』

 

 話を切り出せば彼女はそんなことを述べた。あの純粋な瞳で上目遣いをされるとクリティカルヒットだ。

 ぶっちゃけ彼女は彼女なりになかなか聡いしそれなりに暗い過去というか未来を背負ってるので純粋かと言われると疑問符だが、こういう場面に対しては恐ろしく天然だ。

 

 

 まあ、正直、原作と違って一人部屋な寮では少し寂しい気持ちもあったしサーヴァントなら魔力さえ供給できれば食事もいらないし、なにより彼女は“可愛い”。

 

 要するに最後の一言で十分だった。

 

 なのでとりあえずこのまま部屋で匿うことにする。

 

『やった! この喜びをライブで表したいわ、会場の準備を頼むわよ子イヌ!』

 

 それだけはやめてください。麻帆良の住民が死んでしまいます。

 

 

 

 

 

 

 

 一息ついたところで唐突に思い出したことがあった。

 

「そういえば、名前を聞いていなかったな。まあ、聞く必要もないが改めて口上を聞きたい気分だ」

 

「ふふ、しょうがないわねぇ」

 

 一回しか言ってないし別に嫌ならいい。

 

「ああ、うそうそ! やっぱり一回は言っとかないと格好つかないわよね!」

 

 そうか、なら俺から名乗ろう。

 

「麻帆良学園本校高等部二年、藤丸立華だ」

 

 先に名乗る俺に対して彼女は手に持つ“マイクスタンド”をくるりと回して名乗り返す。

 

「サーヴァント・ランサー。真名()()()()()()()()()()()()よ。これからもよろしく、マスター!」

 

 うん知ってた。その真っ赤な髪、爛々と輝く碧眼、長い爪と竜の尻尾にマイクスタンドを持ったアイドルといえばーー

 

「やっぱエリちゃんだよね」

 

 

 

 

 

 




とりあえずエリちゃんを愛でたいだけの毎日
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