一般人生徒リツカ! 作:ブタどもの一人
その日一日死んでました、心が。
せめて、子どもだけでも作ってあげたかったよ◯◯◯ちゃん……
あと、社長がもう一人来ればアルティメット・バーストが撃てるようになります。
ワルキューレはお察しください。
「……」
「そのローブと胡散臭い敬語、おまけに似合わない近接格闘術とくればあんたしかいないだろアルビレオ」
俺の問いかけに、しかしアルビレオはダンマリを決め込んだ。
アルビレオ・イマ。
ネギま!本編においても度々登場し、物語の謎を解く重要参考人、謎の一端を知るものとして物語を盛り上げてきた人物。
ネギくんの父君であるナギ・スプリングフィールドのパーティーの一人でもあり、ナギと比肩する実力者。つまりチートキャラ。
強力な重力魔法と、その容姿からは考えられない抜群の格闘術を誇る作中でも屈指の猛者。
その正体は魔道書らしいが詳しいことは原作でも書かれなかったので俺の知るところではない。
続編でも色々活躍してるがそれは完全な蛇足。今は関係ない話だ。
「で、アルビレオさんよ、あんたは本来まだ出てくる時期じゃないだろ。なんでもってこんなくだらないイベントに出張ってきた?」
「……」
先ほどまでの胡散臭さが嘘のように黙り込んでいる。
微笑を浮かべたその優顔が不気味ですらある。
「だんまりね、いいよ、じゃあぶっ飛ばして吐かす」
こちらにはサーヴァントが二体、おまけに片方は宇宙の副王の娘。エリちゃんも宝具を使えばそれなりに有効打は与えられる。
アビーに関しては結構危険な賭けになるが、そうそう暴走はしないと思っている。
正直、アルビレオとか俺に対してオーバーキルな戦力に思う。
例えるなら、幼少期のリュカがゲマと戦うようなものである。
無理ゲー過ぎる。
ただ、それはあくまで通常のお話、アビーが本気を出せばどうということはないと思う。
「……ていうかなんか喋れよ、おい、あんただよアルビレオさん」
「……」
え、いや待って。なんでこんな無視するの?
さっきから一人で喋ってものすんごく虚しいのだが。
……ん? まさか、こいつーー
「おい、クウネル・サンダース」
「はい、なんでしょう?」
にこやかに返事をするアル、改めてクウネル。
こいつ、ほんとに偽名で反応しやがった。
ちなみに、クウネル・サンダースとは某鶏肉のお店とはなんの関係性もなく、ただ単にアルビレオ・イマが偽名として使っているだけの名前だ。
しかし、こいつはこの偽名を何故かいたく気に入ってしまっており本名で呼んでも返事をしないという珍事が原作において発生していた。
他にもナギの過去を濁したり仄めかしたりと本当に面倒くさい奴なのである。
「とりあえず、なんで俺らに敵対してくんのか理由を聞いてもいいか?」
「そりゃあもちろん、あなた方が学園長を暗殺しようとなさったからでしょう」
すごく正論、分かりやすい、ごもっともなお言葉。
なんのことはない、いつもの『俺が原因』というやつだった。
「なんだ、じゃあ、もうここらで休戦といこうぜ、俺はもう学園長は暗殺しないよ」
「信じられませんね、というか隙をついて私を殺るつもりでしょう」
バレたか。その通り、俺は原作とか今、どうでもいい。とりあえずエリちゃんを殴った貴様に制裁を加えねば気が治らんのだ。
「オーケー、大人しく殺られる気がないなら仕方ない……アビー!」
「任せて!」
俺の掛け声にアビーが手を振り上げた。
すると、クウネルの足元が途端に白く輝き出す。
「っ! これは」
急いでその場を離れたクウネルに、輝く地面から無数の輝く触手が飛び出した。
「くっ!」
咄嗟に重力魔法を発動して触手に放つ。
一瞬、大き過ぎる重力に形を歪められるも、潰れはしない触手。
「っ、バカなっ!?」
クウネルも驚いている、と言ってもこれはアビーというよりはー
「まあ、仮にも『神』の身体の一部だからな」
アレ自体が時空の神の身体の一部なのだ、宇宙の副王がその程度で怯むはずもない。
まあ、クウネルも手加減して放ったのだろうがな。
そうこうしてるうちに、重力魔法を抜けた触手がクウネルに追いすがる。
それらを躱しながら絶えず重力魔法を放つクウネル。
「てい!」
しかしアビーも黙って見ているわけではない、クウネルの行く先々に新たに触手を召喚し続け、それらで彼を袋叩きにする。
「いけませんね」
だがクウネルも辛うじてそれらの猛攻を躱していた。
宙空で身を捻り、暴れる無数の触手を紙一重で躱し続ける様は素直に感嘆の一言だった。
チートって間近で見ると本当にチートなんだと実感する。
どころか、休む間も無く襲いくる大量の触手の攻撃を掻い潜り、その僅かな隙間をついてアビーに突進してきた。
「ひっ、来ないでぇ!」
「っ、なに!?」
しかし、ギュッと目を瞑りながらも額から白色の光線を放つアビーによってクウネルは地上に叩き落とされた。
そこへ、間髪入れずに新たな触手を放つアビー。
クウネルの周囲を囲むように現れた空間の歪みから一斉に触手が現れ、彼に向けてその白く輝く肢体を畝らせた。
「……ぬん!」
だが、クウネルは両手を左右に広げ自身の周りに無数の重力玉を作り出し対処する。
高重力を持つ球体に触れた触手は“絞られるように”身を縮め拘束された。
「やぁぁ!」
そこへ、アビーが放った『無数の紫色の虫』が突撃する。
紫色の怪しい光を放つ虫たちは、そのサイズを利用して重力魔法が置かれていない隙間をぬってクウネルに襲いかかる。
「なんとっ!」
ブゥン、という耳障りな羽音を響かせながら高速で迫る虫たちに流石の彼も驚いた声を上げている。
とはいえ、クウネルもすぐに平静を取り戻し、群がる虫たちへ極大の重力魔法を放って消し去る。
その余波は周りの触手にも及び、纏めて何本か弾かれる。それによって触手の包囲網に風穴が空いた。
「ふふ……」
小さく笑みを浮かべたクウネルが一直線にアビーの元へと駆けてくる。
残念ながらアビーの俊敏はさほど高いわけではないのでクウネルの、しかも直線的な速度に追いつくことはできなかった。
「これでーー」
一瞬でアビーの目前まで迫ったクウネルはその首元へ手を伸ばす。
「いやぁ!!」
アビーは咄嗟に手に持ったぬいぐるみで殴りかかった。クウネルはそれを意に介さず手を伸ばす。
……子どもの悪足掻き、そう彼は思ったことだろう。
しかしーー
ベキィ、と奇妙な音が辺りに響いた。
「は……?」
音源を見れば、アビーのぬいぐるみに当たった部分、左手首辺りがあり得ない方向に折れていた。
そして、そのまま
「ぐぅ!?」
ペキペキ、とクウネルの腕から嫌な音が聞こえ、それと同時に数十mは飛ばされる。
咄嗟ながらも受け身を取り、今一度自身の腕を見るクウネル。
「……随分、力持ちですね」
右手で回復魔法を使用しつつこちらに笑みを向けるクウネル。僅かながらその額に汗を浮かべている。
「ああ、ごめんなさい! 私はいけない子だわ……」
クウネルの皮肉にもアビーはビクビクと怯えたように謝罪した。
……何処と無く話が噛み合っていないようにも見えるが、どうなのだろう。
「いけない、いけないわ……ああ」
ブツブツと呟きが多くなってきたアビー。
ちょっと、アビーさん?
「アビー?」
ちょっと心配になって声をかけてみる。
「だめ、いけないわ……私、悪い子になっちゃうわ」
その横顔は言葉とは裏腹に愉悦の笑みをこぼしていた。
ちょっと、ヤバイかもしれん。
これはフォーリナー全体(今のところ二人だけだが)に言えることなのだが、彼女らは根本的にあの架空神話の神性をその身に宿している。その影響でたまに精神的に支障をきたしているような描写が見受けられた。
特にアビーは肉体年齢は少なくとも12.3歳、もう一人の方と違って神性の狂気を飲み下したわけでもない。
ただ、その身に宿しているだけなのだ。
だからこそその精神は狂気との鬩ぎ合いの最中にあると俺は推測している。
これも、おそらく『それ』の一種なのだろう。
スキルに『狂気:B』とか入ってるしな。
となると、これ以上戦闘を行わせるのは危険か。
「ああ、ああ……!」
悲壮な声をあげながらもクウネルに触手を嗾しかけ続けるアビー。
ぶっちゃけラリってるようにしか見えない。
クウネルは今の所、触手の攻撃を捌くのに意識を向けている。
「……どう? ぶっちゃけこの戦闘、入っていけるエリちゃん?」
隣で休息に努めているエリちゃんに問いかける。
「ムリ」
速攻で返事が返ってきた。ですよねぇ、俺も割り込める気がしない。入っても何もできないが。
クウネル……アルビレオもこれで地味に世界クラスの猛者なのだ、そこが厄介なのだ。現状、彼と対等に渡り合えるのはアビーしかいない。だがアビーも現在悪い子モードに入りかけている。
「ここらで詰みか……」
もう俺に打つ手はない。というか俺単体では何もできない。
エリちゃんが先の不意打ちで
この呪い、厳密には魔法の一種っぽいのだがアビーが戦っている間にエリちゃんのステータスを見て初めて気がついた。
ざっとステータスを見ただけでも『全ステータスダウン、スキル宝具封印』と地味に面倒なバットステータス付与となっていた。各々の効果は微々たるものだが、全体的に負荷を加えられている状態。
アトラス院制服を所持していない俺ではどうにもできない。
ダ・ヴィンチちゃんでもいればなぁ。
正直、これ以上戦っても危険しか増えない。
というか俺なんでこんな戦ってんだ?
はい、エリちゃんをぶっ飛ばされたことで頭に血が上り過ぎていました。ごめんなさい。
「クウネル」
「はい、なん、でしょう?」
四方八方から現れる触手をなんとか回避しながらクウネルが返答する。
お前よくその状況で喋れるな。
「ここらでやめておこう。……アビー、もういいぞ」
「あら、そうなの? それは、残念ね……」
本当に残念そうに首を垂れるアビー。すっかり悪い子モードである。再臨はしてないが。
触手の攻撃が止んだところでクウネルも息を整えながらこちらに視線を向けた。
「おや、私はまだやれますよ」
いいから下がりなさいよ。こんなところで変なプライド出すなよ。
「……というか、あんたも足止めが目的だろ? これだけ戦えば学園長も無事に本取り返してるさ」
冷静に考えて、彼が出張ってきたのはあの『魔法の本』のためだと思う。
原作でも本を見たネギくんが『メルキセデクの書』だとか言ってはしゃいでいたのを見るに、おそらく本物。
となれば、アレを取られたままというのは学園としては由々しき事態なのだろう。
じゃあこんなとこ置いとくな、とか。そもそもこんなアホみたいな計画で囮に使うな、とか色々言いたくなるが黙して語らずが正解だろう。
ともかく、そんなところで俺が足止めをしてしまったばかりに、見兼ねてアルビレオが助太刀に現れた。と、そんなところだと俺は思ってる。
「……違うか?」
「ええ、その通りですよ。……まあ、学園に現れた得体の知れない召喚士の実力を測る意味もありましたが」
パンパン、とローブについた埃を払いながらにこやかに彼は告げた。
……なるほど、確かにアビーのお披露目はまだしていなかった。
学園側としては得体の知れない新しいサーヴァントの調査の意味もあるのだろう。
「そうか。じゃあ目的は達せたな」
「話が早いのは助かりますが、察しが良過ぎて逆に怪しいですねぇ」
ほっとけ、というか怪しさで言ったらお前の方が断然、だと思うぞ。
「とりあえずエリちゃんに付けやがった呪い、さっさと解いてくれない?」
「まあ、いいですけど……ホントに不意打ちとかしたりしません?」
しないしない。フリかよ。
これ以上戦ってもこちらがジリ貧、というかアビーがヤバイ。いずれは悪い子モードになってもらう必要もあるのだろうが、今やる必要はないだろう。
ちゃんとアビーと話し合ってからにしたい。
「しねぇよ、というかさっさと解かないとアビーの宝具ぶち込むぞ」
外宇宙放り出すぞ。
「それは怖いですねぇ。……出来ればそこらへんのお話も少し聞いておきたいところですが」
そういえば宝具に関しては何の説明もしていなかった。
……だが、遠坂にああ言われた手前、おいそれと話すわけにはいかない。学園側に黒幕がいる可能性だって無いわけじゃないのだから。
「まあ、話せる範囲なら……」
「それはありがたい。私も地下に居座っている手前、学園側に手土産の一つくらい用意しないといけませんから」
ああ、そういう。
あくまで、自分は学園側ではないと言いたいわけか。
ただ、そう闇雲に疑ってかかっても現状仕方ない。
「魔法関連の事件には呼ばれれば行ってるし、魔獣退治だって俺らだけで請け負ったりしてる。
こちらも相応の対価を頂かないと」
「ええ、私がお話できる範囲でしたら、なんなりと」
相変わらずにこやかな笑顔で彼は述べた。
話が早いやつは俺も好きだ。
遠坂から頼まれた件もある。こうしてアルビレオ・イマという数少ない知恵者と会えたのだ。聞き出せるだけ聞き出しておいた方がいいだろう。
そうして俺たちはなし崩し的にクウネルとの話し合いを行うことになった。
場所は麻帆良地下にあるクウネルの家。
あのでかいワイバーンが門番してるでかい家だ。
クウネルの魔法を使えば一瞬で移動できる。
ただ、エリちゃんは試験を明日に控えているために先に帰っていてもらうことにした。ごめんね。
ちなみにクウネルの転送魔法で一瞬である。
「ようこそ、藤丸立華くん。歓迎します」
そう言って紅茶を差し出してくるクウネル。
俺は今、彼の家のリビングにあるソファに腰掛けている。対面には営業スマイルのクウネル。
俺の隣にはアビーがちょこんと座っている。
テーブルには各々に紅茶とケーキが配られていた。
「ほら、遠慮せずがっつり食えアビー。おかわりもいいぞ」
「ここ私の家なんですが……」
クウネルが何か言ってるが生憎と聞こえない。
ていうか、こいつの家、改めて見ると生意気にもすごい幻想的だ。滝の近くにあるテラスとかオサレ過ぎんだろ。
ちなみに滝に流れるのは地下水だ。
「で、でもマスターさん。この人、さっきまで戦ってた人よ?
絶対、毒とか入ってるわ……」
クウネルに対して疑いの目を向けるアビー。
そりゃそうだわ。
でもここはネギまの世界。単なる照れ隠しで神鳴流奥義とかぶっ放す世界である。問題ない。
加えて、クウネルもそんな姑息な手を使ってくるやつではない。やるならもっとエゲツない暗殺の仕方をする。
「こいつはそういうやつじゃないよ。だから安心してくれ」
「おや、随分と私について知っているような口ぶりですね。どこかで会いました?」
白々しい、初対面に決まってんだろ。
「単なる情報として、だよ。それよりさっさと話始めようぜ」
時間もない。俺だって明日学校があるんだ。
「それもそうですね。では単刀直入にーー」
紅茶を啜りつつ俺は奴の声に耳を傾ける。
「ーーあなたの目的はなんですか?」
予想外にも凄い重圧をもって質問を投げかけてきた。隣のアビーもすでに警戒態勢に入っている。
どうどう、お二人さん、そんな熱くなりなさんな。
「目的、とは?」
どうにもクウネルがどういうつもりでそんな質問をしているのか俺は測りかねていた。思い当たる節が多過ぎて。
いったい、どれのことを言ってるんだ?
「先日、あなたが図書館島でキティといっしょになって何やらしていましたね、おそらくは英霊召喚というやつなのでしょうが」
知ってたのね、それ。
確かにあの時アビーを召喚した。
「ーーそこまでしてあなたは何を成そうとしているのです?」
特に何も成そうとはしていないのだが……。
強いて言うなればネギくんの手助けだろうか。いや、遠坂の件も今は優先事項である。
答えを決めかねていた俺を置いてクウネルは話を続ける。
「学園での記録、先ほど実際に手合わせをしてみて感じた所感を申しますと……英霊というのは尋常ならざる戦力です」
「……」
だろうな、仮にも戦争に呼び出す使い魔だ。それも聖杯という規格外の願望機を巡る戦争に。
それなりに常識外れでなくては話にならないだろう。
「……あなたが最初に英霊を召喚したのが二年前、それまではごく普通の中学生であったあなたは、しかし、反応が現れた直後の質疑応答に対しても明朗に答えていましたね。
そこがまず第一の疑問点」
「そこからの二年間は特に行動を起こすことなく素直に学園の指示に従っていた。
しかし今月に入って急に図書館島地下に降り立ち新たな英霊を召喚した。
これが第二の疑問点。まあ、これに関してはある程度推測はできます。
ズバリ、ネギ・スプリングフィールドの登場でしょう」
ほう、さすが鋭い。確かに俺はネギくんが現れたことでこれから始まる原作を前に、その準備としてここ最近は動いていた。
「となると必然的に最初の疑問が浮上するのです。
そもそも、あなたはなぜ英霊を召喚したのか」
「それについては事故だと言ったはずだが」
「ではなぜ英霊の存在はあらかじめ知っておられたのですか?
記録を見るにまるで最初から知っていたような口ぶりです」
まあ、知ってたからな。そこの詮索についてはするな、と学園長にしてあると思うのだが。
「あんた、ジジイからどこまで聞いてる? 正直に答えてくれ、それ次第では俺が話せる範囲も決まる」
「……英霊と呼ばれる強力な使い魔を使役すること、英霊の管理はあなたにしかできないという二点です」
「真名については? クラス、使役方法は?」
「いえ、私が知っているのはそこまでです。ですから殊更、あなたの行動に不信感を覚えました」
素直だな。まあ、俺が魔法先生の何人かから疑われているのは知っているが。ちなみに魔法生徒たちにも怪しまれている。仕方ない。
「……そうだな。下手に敵を増やしたいわけでもなし、あんたが他言無用を守れるならいくらか話しておこう」
怪しいとはいえ、クウネルもあのナギの仲間だ。特に黒い政治絡みの思惑や企みも原作を見たかぎりなかった。
味方として見た方が気が楽でもある。
「わかりました、それではギアス・スクロールをお持ちしましょうか? ご存知とは思いますがスクロールでの契約では不正は行えません。いかがでしょう?」
「いや、そこまではしなくていい。仮にも大英雄のお仲間さんだ、情報の悪用はしないと信用した上で話そう」
「よろしいのですか? スクロールを使用すれば確実ですが」
俺は何も特別頭が良いわけでもなく、敵を作りたいわけでもない。
なるべくなら平穏な日々を送りたいとさえ思っている。
だからこそ信用をできるかできないかで人を見るしかない。
「いや、必要ない。改めて言うが、俺は敵を作りたいわけじゃない。寧ろ平和がなによりの事勿れ主義者だ」
現状、そんなことも言ってられんが。
「だから正直に言うが、俺は何も企んじゃいない。強いて言うなら防災準備のようなものだ」
「では学園を害する意思はないと?」
「当たり前だ。そもそも俺の行動原理は二つ、エリちゃんとアビーだ」
そう言って隣のアビーの肩に手を乗せる。
「ほう……」
「魔法とか学園とかぶっちゃけどうでもいい。どうなろうと俺自身はなんとも思わん。が、ことこの二人に関しては話は別だ。
俺は当初、事故とはいえ呼び出してしまったエリちゃんと静かに暮らすつもりでいたんだ。
だが、あのジジイが学校に入れた挙句、今年に入って代わった新しい担任はあのナギの息子だ。
齢十の幼子が大英雄の息子にも関わらず単身、祖国を旅立ってこの地に来た、それで何も起こらない方が不自然だ。
だから俺は来るべき時に備えて自分とエリちゃんの身を守ることも兼ねてアビーを呼んだ。
とはいえアビーを使い捨てにする気なんぞさらさらない。
そもそもの話、俺と彼女らは『知り合い』だ。それならと俺ら三人でこれからを生き抜くために準備をしている、ていうのが事の真相だよクウネル」
洗いざらい、とは言い難いが出来る限り、話せる範囲で真実を告げた。
俺の根源的な願望は三人で生き残ることである。
それがブレたことはないしこれからもブレない。俺の身内として数えるならギリ、高校のあいつらも入るが絶対に守ると決めているのは彼女たち二人だけだ。
「ま、マスターさん……」
かぁ、と顔を赤くしたアビーが俺の腕をギュッと握った。
いやそんな照れることじゃないから、当たり前のことを言ったまでである。
「ふうむ、少々乱雑な話ですが一応、理には適っているというか。……いえ、正直言って、これってただの惚気ですよね?」
真剣な顔でなんてこと言うんだお前。
いや、見方によっちゃそうかもしれんが。
肝心のお二人としては有り難迷惑かもしれんし。
「一応言っておくが、『知り合い』って部分は黙秘権行使するからな? プライベートに関わることだし」
というか異世界転生とか、人理焼却云々とか、言っても信じてもらえんだろ。我ながら無理ゲーに思う。
遠坂たちは奇跡的に全員が全員転生者だったからスムーズに話が進んだだけだ。
「なるほど。どうにも私の思い過ごしだったようですね。なにやら学園の結界をすり抜けた形跡があったものですから」
少しだけ、気を緩めたクウネルがそう言った。
「それってかなり大事だろ、学園結界って一応すごい結界なんだろ?」
強大な魔力を封じ込めるくらいしか知らんが、あと侵入者探知。
「ええ……もっとも、何か被害があったとは聞いていませんが」
そういう問題ではない気がする……。
それとも、この学園にいる規格外の実力者だけで対処できると考えているのだろうか。
慢心も過ぎると足元を掬われるぞ、どこぞの金ピカみたいに。誰とは言わんが。
「そんなことよりも、私としてはもう少し英霊の皆様の情報をいただきたいところですね」
目をキラキラさせながらクウネルは問う。これ絶対、自分の興味本位で聞いてるよね?
「じゃあ、まあ、宝具の概念については教えておこうか」
思えば、未だに宝具を使うほどのピンチに陥ったことがないので一度も試し打ちをしていなかった。
とはいえ、エリちゃんのはぶっちゃけ大音量ライブだし、アビーのはそもそも危険過ぎて使えば相手は死ぬ。
外宇宙放り出されて無事に帰還できる奴とか少なくとも俺の知り合いにはいない。
「宝具ってのは、その英霊の象徴。その英霊を英霊足らしめている概念だ。分かりやすい言い方をすると必殺技みたいなもの。
例えば、アーサー王。
当然ながら
他にも、物質的な象徴を持たない英霊、持てない英霊。彼らにおいては生前の生き様がそのまま概念宝具として昇華されることがある。
これも分かりやすい例を挙げれば『ヘラクレス』。
こいつの場合は少々特殊な例なんだが、彼の生前の逸話『十二の試練』は有名だと思う、この逸話がそのまま概念として宝具になり、効果は十二個の命のストックとなる、といった具合に英霊になることで新たな能力を得る英霊もいるんだ」
「なるほど、ではその両方を持ち得る英霊もいるということですね」
「その通り。これまた分かりやすい例がアーサー王関連の円卓の騎士なわけだが。
例えば『ランスロット』。こいつは物質的宝具としてアロンダイトを所持している。
それとは別に、こいつの生前、『咄嗟に落ちていた枝を使って勝利、他人の武器を使って勝利』といった逸話が昇華されて宝具になったものがある。
それが『
Zeroではあの慢心王の宝具の一部を奪って憤慨されていた。
元々の技量が凄まじいランスロットにとっては無数の宝具を打ち出してくれるギルガメッシュはいいカモというわけだ。
「勉強になりますね」
まあ、この程度の情報ならくれてやったところで何ら痛くも痒くもない。
アビーはそもそも在り方が本来とは変質しているし、エリちゃんも逸話からは予想できない特殊な宝具を持っている。
『
どこの魔術師が、血の伯爵夫人とその地域に伝わるマイナーなドラゴンを関連付けるというのか。自己申告しなければ絶対に分からないと思う。
『
エリちゃんは黙ってれば有能で美少女なのである。
「俺ばっか話してるけど、あんたもなんか情報寄越せよ」
「情報ですか、その辺はどうにも貴方は既に知っている気がするんですよねぇ」
まあ、知ってることの方が多いな。
世界樹の下に埋まってる造物主とか、あんたが魔導書とか、ネギの母親とか、魔法世界の秘密とか。
限定的な未来予測(原作知識)も可能である。
とはいえ、それだけではどうにもできないことだってある。
バタフライ効果で今後の流れが変わる可能性だってある。
「じゃあ俺から質問。
なんで、俺がエヴァと図書館島地下に来ていたのを知ってる?」
単純な疑問だ。
あの場には少なくとも俺とエヴァしか居なかった。誰かいればエヴァが反応するだろうし、アビーだって何か察知するだろう。
そうなるとこいつが知っているのが不自然に感じるのだ。
突飛な考えではあるが、あの本を置いたのはこいつなんじゃないかとも考えている。
「ああ、それに関しては図書館島からお二人、いや三人で出てくるところを見たからですよ。
いやはや、エヴァが高校生と二人っきりで図書館島に入っていくのをみて、遂に彼女にも春が来たかと思ったんですがね」
ふぅん、ほんとかしら?
ただまあ、そう答えられたら他に追求のしようがない。
「ではもう一つ。
英霊について、ここまで興味を持つのはあんたが初めてだ。
ぶっちゃけ、あんた英霊について前から知ってたんじゃねぇか?」
まあ、これは建前だ。興味を持っているだけなら他にもエヴァとかいるし。
本音は、遠坂が言っていた黒幕じゃないかと疑っての発言である。
「そうですねぇ……私も、あなたの信用に答える必要がありますし、この際だからお話しておきますか」
だが、妙に黄昏れながら紅茶を啜るクウネルの反応に、俺の思惑とは少しズレがあることに気がついた。
「なぜ、私が興味を覚えたか。
いや、やはり知っていたのか?
未だこいつの疑いは晴れていないが、こちらも慎重に言葉を選んだ方が良さそうだ。
「厳密には、
魔法と異なる技術?
それはもしかしてーー
「
「っ!」
やはり魔術か。しかし会ったことがあるとは……もしかしたらそいつが黒幕か?
いや、今はとりあえず話を聞くべきか。
「
大英雄と今も持て囃されるナギが活躍したあの大戦の時でした」
二十年前。
随分と昔の話だ。その時代の人物が今更、俺なんかにちょっかいをかけてきたのか? いや、黒幕と仮定すると遠坂たちにもか。
「現在語られているナギパーティーには記されていない影の英雄。それが
まあ、目立つのが何より苦手でしたらねあの人は」
目立つのが苦手で影、裏方か?
まだ情報が少ない。
「……ただ、
仲間の誰かが聞いても『単なる秘術だ』としか答えてくれませんでしたが」
おそらく魔術。確定ではないが話の流れから見てそう判断して間違いはないだろう。
「ですが、一度だけ彼が答えてくれたことがあるのです。
あの魔法は魔法に非ず、遠い過去に
「魔術……」
やはり魔術師か。過去というのが気になるが、そいつは型月式魔術師で間違いない。
いや、型月の魔術師が人助けとかするとは思えないが。
「……ですから、あの日、あなたとエヴァが口にした魔術という単語が妙に引っかかりましてね、こうして接触を試みたわけです」
なるほど、会話も聞いてたのか。ストーカーかよ。
お前実はエヴァのこと好きなんじゃねぇの?
「なるほどな、まあ、あんたの予想通り、英霊召喚は魔術儀式の一種だよ」
厳密には、雛形は抑止力の防衛装置だが。
「やはりそうでしたか! いえ、失礼。
どうにも、私の性と言いますか、秘匿された神秘というのに対して抗い難い好奇心を掻き立てられてしまいまして」
意外と研究者気質なのねあんた。
こんなところで、こいつの人間味ある一面を見てしまった。
と、アビーが唐突に俺の袖をくいくいと引っ張った。
「ん、どしたアビー?」
見れば、何やらもじもじとしながら言い淀んでいる。
もしかしてもしかして、おトイレですか?
しょうがないなぁ、俺が一緒に行ってやるよ!
「あ、あのねマスターさん」
「なんだいアビー」
「け、ケーキ……おかわり、欲しいの」
ケーキ。
テーブルを見るとアビーに配られた皿は空っぽになっていた。
どうやらクウネルが出したケーキを気に入ってしまったらしい。
「おかわり、マスターさんに言えばくれるっておっしゃったから……」
「おう、お代わりね。いいよ。……クウネル、ケーキのおかわりだ、早よもってこい!」
「いや、私の家ですからここ……」
やれやれ、と言いつつケーキを取りに席を立つクウネル。
なんだかんだ言って、あいつも子どもには弱いらしい。
「ああ、ケーキのおかわりをしてしまうなんて……やっぱり私は悪い子だわ」
そう言って俯くアビー。
いやいや全然悪くないよ。寧ろアビーが嬉しそうに何かを食べてる姿は俺の癒しだよ。
いっぱい食べる君が好き。ただし腹ペコ王、あんたはダメだ。食べ過ぎる。
「はい、今度はモンブランにしてみましたよ」
「わぁ、とっても大きいモンブランね!」
アビーの言う通り、クウネルの持ってきたモンブランはかなり大きい。
「ついでにパフェもご用意しましたが、いかがでしょう?」
ついでに片手にはフルーツと生クリームの乗っかったプリンパフェ。
いや、奮発しすぎだろ。ほんとにお前アルビレオ・イマか?
「素敵だわ! あ、できたらでよろしいのですけど、大っきいパンケーキとかも食べてみたいなぁ……」
「わかりました。少々時間がかかりますがご用意しましょう」
いやいやいや、待て待て待て。
なんでそんな張り切ってんの? ロリコンなの? ロリコンなのね?
「お前……意外と良いやつだな」
健全なるロリコンに悪はいない。
俺はクウネルのことを少しだけ信用しようと思った。
作中の呪いは魔法です。また、呪いの効果も英霊に当てはめた場合の効果となっております。
そして肝心の腹黒魔導書さんの戦闘能力ですが、もちろん手加減した上でのものとなります。
あと、障壁に関してはアビーのお父さんの力で叩き割ってます。
解説が過多になるためこちらでの補足とします。
お目汚し失礼いたしました。