一般人生徒リツカ!   作:ブタどもの一人

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少し御都合主義が過ぎるかな……

タイトルモロバレシリーズ。






万能の人

「今日集まってもらった理由はすでに聞き及んでると思うけど、改めて言うわ。

 ズバリ、英霊召喚についてよ」

 

 例の空き部屋に置かれた長机、その最奥で一人立ち上がってホワイトボードを叩くのは黒髪凛。

 その横には衛宮士郎と、レオが座す。

 

 俺はというと衛宮の隣に大人しく座っていた。

 

「それは聞いた。リーダーとしてはどう考えてるんだ?」

 

 俺と同じ列に座るユグドミレニア弟・カウレスが発言する。

 

「リーダーじゃないって……はあ、まあ私の意見としては召喚すべきと考えてるわ」

 

 リーダーの言葉に今度は姉の方、フィオレが声をあげた。

 

「召喚するのは如何なる英霊なのでしょう、遠坂さんが決めたということは既に候補はいるのでしょう?」

 

「ええ、暫定だけど、今回は藤丸くんの縁を頼ってレオナルド・ダ・ヴィンチを召喚するわ」

 

 今回使用するあの本、中に書いてある記述の通りならば縁が必要となってくる。ランダム性であることは痛いがなんとかそれっぽい触媒を集めて使用する他ない。

 あくまで記述を鵜呑みにするのであれば、簡易的な触媒でも召喚可能らしいが、いくらなんでもチート過ぎると思う。頼らざるを得ないのが現状なのだが。

 

「待った。それってつまり他のサーヴァントが来る可能性もあるんだろ。さすがに血迷い過ぎじゃねぇか?」

 

 両儀式は召喚には反対のようだ。あくまで確実性が認められた方法での召喚を望むのはごく自然、当たり前の帰結である。

 

「ええ、彼女の言う通り。私は反対よ」

 

 沙条綾香は強い意志の篭った目でそう宣言した。

 

「俺も反対だ。何も急ぐことはないだろう、調査は少しづつだが進んでいると聞く。魔術による調査に参加できない俺がいうのもなんだが、仮に召喚するとしても確実に引ける手段を探した方がいい。

 なにより、あの本の記述はふざけている」

 

 少しばかりの憤慨を含んで遠野志貴は述べた。

 

「僕は賛成だ。

 現在の我々の状況は非常に思わしくない。これは我々を引き寄せた存在も感じていることだと思う。何せ、まだ何も分かっていないのだから」

 

 レオは当初と同じく召喚に賛成している。

 

「私は……ええ、召喚はすべきだと思う。使える手札を使わないのはそれこそ慢心に近い下策よ」

 

 金髪凛も賛成派のようだ。

 

「私も。確実性を求めるだけでは足りないと思う」

 

 はくのんも賛成派らしい。彼女も金髪凛と同じく厳しい環境での生存を強いられてきた者としての意見かもしれない。

 

「やめといた方がいいと思うぜ。得体の知れないモノを信用するのは、経験上俺は反対する」

 

 両儀式は腕を組んで顔をしかめた。

 

「いいや、それでもやるべきだと思うよ。確率の話は正しいが我々の現在と比較するほどのことじゃない。

 失敗を視野に入れた上で決行すべきだ」

 

 レオはーー

 

「待て。俺たちはお前を王に置いているわけじゃない。

 焦る気持ちは分かるがお前だけの意見で強行するべきじゃない」

 

 遠野ーー

 

「私は反対します。今、するべきことではない。

 現状、あの本の解析は進行しています、それを待ってからでも遅くはないと私は判断します」

 

 ラニーー

 

「姉さん……」

 

 すっかり影の薄かった桜は姉を心配そうに見つめて……いるように見せかけて衛宮をガン見していた。

 ちなみに原作と異なり髪の色は黒髪凛と似たものになっている。

 

 その後も、召喚反対派と賛成派のメンバーによって激しい論争が繰り広げられていた。

 どちらも道理はある。しかし、俺個人の願望としては召喚一択だ。

 

 ……俺はエリちゃんたちとの生活の方が大事なのだ。

 

 

 

 

 結局、会議の結論として召喚することになった。

 決定打となったのはやはり、調査が一向に進んでいないことと、あの本の解析はまだ一割も進んでいないという事実だった。

 

 それでも確実性を欠き、得体の知れない魔導書を用いることに懸念を示す声があったが、渋々といった具合で最後には首を縦に振った。

 落とし所としては『危険なサーヴァントなら俺が即自害させる』というもの。

 俺も、責任を取れるほどの力もない凡人ではあるが召喚の際には俺一人で召喚陣の前に立つことを進言した。

 まるで意味のない提案だが、俺にはもはやこうすることでしか責任を果たせない、というか俺の方が罪悪感で潰される。

 

 やるのであれば早い方がいい、と召喚は当日のうちに行うことになり、早速ながら俺は描かれた陣に向かって詠唱を行なった。

 

 

「ーー抑止の輪より来たれ、天秤の守り手よ!!」

 

 詠唱と共に陣から突風が吹き荒れた。

 円の周りに置かれた触媒、モナリザのレプリカがガタガタと揺れる。

 

 本の記述通りならば、それで十分。あとは俺の縁でどうにかできるらしいが果たして。

 

 ちなみに召喚の間際にも、反対派はちゃんとした触媒を用意することを提案していた。その通りだ、本来ならそれでも不十分過ぎるくらいなのだが。

 

 ともあれ、英霊の召喚は上手くいったらしい。俺の左胸に令呪が刻まれていく。三度目ともなれば痛みも慣れた。

 

 やがて、吹き荒れる風も止み、召喚陣の中央の人影がその正体を現す。

 長い杖を持ち、長い髪を垂らし、抜群のプロポーションを誇る肉体を誇るように堂々と立っている()()

 

「ご機嫌よう、諸君!

 キャスター、レオナルド・ダ・ヴィンチ。

 君たちの求めに応じて参上したよ」

 

 それは、まさに俺が前世で見た通りの姿だった。

 あの懐かしき、万能の人。画面越しではあったが、俺も彼女には色々と世話になった。

 俺はぐだ本人ではないが彼女を知っている。だからこそ間違いないと確信を持てる。

 

 俺以外の面々は未だ警戒を解いていない、当たり前だ。ここで()と顔見知りなのは俺だけなのだから。

 

「ちょっとちょっとー、呼ばれたから来たのにそんな殺気ばっかりぶつけないでよね。ひどいなぁもー」

 

 ぶーたれる彼に、俺は意を決して声をかける。

 

「レオナルド・ダ・ヴィンチ、本人に間違いないな?」

 

 我ながら不自然な言葉運びだ。しかし、彼女ほどの知恵者と相見えるに当たって、俺はぐだを演じ切る自信がなかった。

 だって、彼と絆を築いたのはこの俺ではないのだから。

 間違いなく、俺ではないのだ。

 

「……うん。()()()()()()()()()()()()。元気そうでなによりだ」

 

 しかし、彼は優しく微笑んでそう応えた。すべて、全て見透かしたような声で。尚も、俺をあの最後のマスターのように扱って。

 きっと、彼はすべてもう理解している。俺があの立華ではないことも、それでも俺と彼に縁が結ばれている意味も。

 

 それだけで、俺は二の句を継げなかった。

 

「なーに辛気臭い顔してるんだ、君はリツカだろう? ならば問題ない、こうして縁も結ばれた。呼ばれたからには期待に応えるよ、()()()()

 

 ……彼がどういうつもりで俺を立華と扱うのかは分からないが、それでも俺が今取るべき行動は立華を演じることであると判断した。

 

「ああ、()()()()ダ・ヴィンチちゃん。色々と分かっちゃってるかもしれないけど、敢えて言うよ。

 俺に、手を貸してくれ」

 

「うん、もちろんさ」

 

 彼の一言に、周りの面々もようやく警戒を解き始めた。

 その中の一人、衛宮が初めに声をかけてきた。

 

「間違いないか?」

 

「ああ、()はレオナルド・ダ・ヴィンチ。俺が知ってるキャスターのサーヴァントだ」

 

「彼?」

 

 二人称に疑問の声を発した衛宮だが、すぐにダ・ヴィンチちゃんが声をかけてきた。

 

「やあやあ諸君、何やら尋常ならざる事態にあるようだね。顔に書いてあるよ?

 とりあえずは、そちらの事情を聞こうじゃないか。いいかい、マスター?」

 

 確かめるように問う彼に俺は頷きを返した。

 

 

 

 

 

 

 

 

「ーーと、いうのが我々が今置かれている現状です」

 

 机を挟んでダ・ヴィンチちゃんと対面するのはレオ。その横に遠坂と衛宮が座っている。

 俺はダ・ヴィンチちゃんの隣だ。

 理由としては、まあ、一応知り合いだからということだろう。ちなみに彼と反対側には遠野志貴が控えている。

 

「ふぅむ、なるほどね。つまり私の叡智が必要、ということだね?」

 

 キラン、と目を光らせながらダ・ヴィンチちゃんが述べた。

 

「……なんだか、思ってた人物像と違うな姉さん」

 

 カウレスは姉に耳打ちしていた。真後ろなので丸聞こえだが。

 

「よろしい、ならば存分に我が万能を見ていてくれたまえよ、諸君。必ずやご期待に応えて見せるとも、いや、期待を上回ってしまうかもしれないけどね」

 

「ず、ずいぶんな自信ねキャスター」

 

 ダ・ヴィンチちゃんの謎のハイテンションに金髪凛は若干引き気味だ。

 

「まあ、期待して待っていてくれまえ。……とりあえず、私の魔力の隠蔽とあの本の解析だったかな?」

 

「ええ、そうよ。私たちは学園側に存在を知られるわけにはいかない。魔法使いを名乗る連中に見つかるわけにはいかないの」

 

 黒髪凛は冷静に告げる。

 

「了解だ。……それにしても、魔法とはね。魔術に代わる技術なんだって? まあ魔術のない全くの異世界となれば法則も変わってくるのだろうが」

 

 ま、とりあえずは調査から入るのは懸命だね、と言いつつダ・ヴィンチちゃんは杖を一振り。

 

「っ、ホントに魔力を隠しやがった」

 

「うんうん、カウレスくん、君のような反応を返してくれると私はとても嬉しいよ」

 

 満足げに頷くダ・ヴィンチちゃん。どうやら周りの反応を見る限り彼の魔力の隠蔽はちゃんとされているらしい。

 

「とはいえ、この状態ではろくに魔術を振るえない。

 この学校には結界が張ってあるんだろ? ならこれは一旦解除して問題ないかな」

 

 もう一度杖を振るう。

 今度は隠蔽を解いたらしい。どうにも俺は魔法も魔術もからっきしなので分からない。時間のある時に遠坂たちに見てもらったが見事に才能なしの判定を下された。こんなところまでぐだに似なくてもいいと思う。

 

「ではキャスター。今日のところはリツカくんと自身の拠点に帰ってもらって構わない。なに、隠蔽工作が可能ならば返しても問題はないだろう。いいね?」

 

 問いかけるレオに否を突きつける者はいなかった。

 

「……お気遣い、感謝するよレオナルドくん。

 では、行こうかリツカくん、我が新しいマイルームへ!」

 

 俺の肩に手を乗せダ・ヴィンチちゃんは上機嫌にそう述べた。

 

「解散、てことかな?」

 

「ええ、そうね。サーヴァントとマスター、呼んだ直後から色々と任せる前に一度、二人きりで話してもらった方がいいわ」

 

 黒髪凛の言葉に俺は「ありがとう」と返した。

 

「みんなも済まない。今回は完全に俺の責任だ。

 本来なら万全を期して行わねばならないものを強行したのは俺だ。

 この負債は実績で必ず賄う」

 

 ぶっちゃけ今回のは俺のワガママがレオの方針と噛み合っただけのことだ。つまり、俺が今回の召喚を強硬した原因だ。

 それを未だギスギスしていた裏生徒会にはっきりと伝える。

 俺はこの中で一番の新米だ。加えて、組織内に不和を齎したとなれば責任の所在ははっきりとしておくべきだろう。

 

「……なに、カッコつけてんだ。誰もお前の意見に流されたわけじゃねぇよ」

 

 しかし両儀式は不服そうにこちらを睨みながらそう言った。

 

「全くだ、何を勘違いしている藤丸。これは相談の上で決まったことだ。誰かに責任を押し付ける問題じゃない」

 

「結果として良い方に転がった。それで十分だぞ」

 

 志貴、衛宮が続く。

 

「ええ、今は成功したことを喜びましょう。本の解析その他諸々の作業は後日行ってもらうわ、今は帰って休みなさい」

 

 最後に黒髪凛が諭すように述べた。

 

「……分かった。じゃあ、また明日」

 

 そうして彼らに別れを告げ、俺は新たに契約したダ・ヴィンチちゃんを連れて自室に帰った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 リツカの帰ったあと、他のメンバーもぼちぼち帰路についていた。

 そんな中一人ぼぅ、と佇むアルクェイドが目に入った遠野志貴は心配して声をかけた。

 

「おい、大丈夫かアルクェイド?」

 

「え、ああ、志貴……うん、大丈夫よ」

 

 少しの動揺を挟みながらもアルクェイドはいつもの調子で答えた。

 

「……本当か?」

 

「ええ、本当だけど。志貴こそ急にどうしたの?」

 

 キョトンと首をかしげたアルクェイドに志貴は、自らの懸念が思い過ごしであったと判断した。

 

「いや、もし疲れてるんだったら送ろうか?」

 

「ううん、平気。志貴こそ、あんまり無茶しちゃダメよ」

 

 ちょん、と志貴の額を小突くアルクェイドに、志貴は顔を少し赤くして背けた。

 

「なぁに、イチャイチャしてんだアンタら。ほらそろそろ引き上げるぞ」

 

 二人の甘いムードを見兼ねたカウレスが嫉しそうに声をかける。志貴は「イチャイチャはしてない」と言うものの、自身の顔がだんだんと赤くなっていくことを自覚してか目を合わせようとはしなかった。

 

「ふふ、志貴ってば、やっぱり可愛い!」

 

「おわっ、だ、抱きつくなって!」

 

 口ではそう言いながら顔を綻ばす志貴に、カウレスは一層げんなりしながら「もう勝手にやってくれ」とその場を去った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ええ……ええ、分かってるわ」

 

 宵闇の中、アルクェイドは自室として充てがわれた学生寮の一室で一人、何事か呟いていた。

 

 彼女の他に部屋には誰もいない。居たとしても彼女はきっと眠らせてこの()()を行っただろう。

 

『お前とて理解しているはずだ、アルクェイド。奴の復活だけは何としても阻止せねばならないと』

 

 その声は部屋に響いているのではない。彼女、アルクェイドの脳内に直接届けられる概念的音声だ。

 

「……それにしても急ね。まさかここ数ヶ月でいきなりそんなこと言われるとは思わなかったわ」

 

 応答する彼女も慣れた様子だ、つまりはこの交信は今回が初めてではないということ。

 加えて、彼女ほどの存在が気安く話しかける存在ともなればごく限られた人物だけだ。

 

『儂とて()()()()()()()()()()。今回はそれほどの相手というわけだ』

 

 彼女に届けられる声は概念ではあるが声質は朧げにも伝わる。

 少々年老いた、しかし力強さのある声。

 

「私たちをこの場所に集めた奴と関連しているってわけね。……まあいいわ、仕事に変わりはないんでしょ?」

 

 確認するような口ぶりに、交信相手もただ肯定だけを示した。

 それだけで彼女には十分だった。

 

「わかった。見つけ次第、排除するわ」

 

『頼む』

 

 その言葉を最後に交信は途切れそうになる。

 アルクェイドはなんとなく、ふと感じた違和感を頼りに最後にもう一度確認を行った。

 

「ねぇ、これは本当に学園側への警戒よりも大事なことなのよね?」

 

 それは僅かな違和感。すべてが自分の知り得る知人と感じながらも引っかかりを覚えた歪な綻びからの確認だった。

 

『ああ、最優先事項だ。生憎と儂直々に干渉できる世界でもないようだしな。今回はお前に頼むしかない』

 

 しかし、答えを聞いてもどこもおかしいところは感じなかった。

 

 真祖の姫、アルクェイド・ブリュンスタッドは地球においておよそ最上位に位置する生命体である。

 それは、地上を去った地球の触覚としての神霊に代わる、真祖という新しい触覚、その中でも限りなく()()()()()に近い彼女は地球の代弁者と言っても差し支えない。

 本来なら自我すら希薄な存在、それが彼女という存在だった。

 

 それを今のような明るい性格にしたのは紛れもなく前世からの付き合いである魔眼持ちであることは確かであり、それが何の奇跡か今世でも維持されていることにアルクェイドは深く感謝を抱いていた。

 

 だからなのかもしれない。

 昔の彼女であれば知性を働かせるまでもなく見破れていた()()を見逃してしまったのは。

 

 

 

 ただ一つ確かなのは、今尚、地球の化身として絶大な力を誇る彼女を欺くことができる存在がこの世界に存在し。

 そしてーー

 

 

 

 ーー彼女らに破滅を齎そうとしていることだろう。

 





リツカは先のアビーの成功から召喚の書にそれなりの信頼を持っています。本質的には疑ってかかるのが道理なんですが、リツカとしては可能性に賭けたいという気持ちで。

とはいえ、根は一般人なわけですから全部を蹴散らす覚悟は有らず……。
立華ご本人とはまた違ったベクトルの一般人具合、逸般人具合をこれからお楽しみいただけたらと思っとります。


このままエリちゃん空気とか絶対ないから安心してくれ。
大丈夫、計画通りだ。
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