一般人生徒リツカ!   作:ブタどもの一人

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進級

「いい加減起きなさいよ〜子イヌ〜!」

 

ゆさゆさと身体を揺さぶられる感覚で目がさめる。

気怠さを感じながら、枕元を手探りで漁る。

 

こつん、と指先に当たったソレを鷲掴みにして目前に持ってくる。

 

「七時……起きねば」

 

時計の針は起床時間を過ぎていた。

俺は時計を元あった場所に戻しごそごそと布団を抜け出す。

 

「うう……身体が痛い」

 

身体中の筋肉が悲鳴をあげている中、キッチンまでフラフラと足を進ませる。

 

「ちょっと、大丈夫、子イヌ?」

 

心配そうに声をかけてくれたエリちゃん、見ればすでに制服に着替えていた。

 

「ああ、悪い。すぐにご飯作るから待っててね」

 

「おはよう、マスター!!」

 

エリちゃんに声をかけている間に、妙にテンションが高いアビーが挨拶してきた。

 

「元気だなぁ、おはよう。今日はどうしたーー」

 

ゆっくりと視線を向けると、そこには麻帆良中等部の制服を着て満面の笑みを浮かべたアビーが立っていた。

その姿を見てようやく、今日から彼女も学校に通うのだと思い至った。個人的には複雑な心境だが、当人がこうして嬉しそうにしているとこちらも心が温まるというものだ。

 

「そういえば今日四月一日か……なら、なおさら早くご飯をーー」

 

「おや、お目覚めかい? ご飯ならもう出来てるよ」

 

いるはずのない人物の声に、朦朧としていた意識が少し覚醒した。

声の先にはエプロン姿のダ・ヴィンチちゃん。

彼が料理の乗った皿を置くテーブルにはすでに全員分の朝食が並べられていた。

 

「顔を洗っておいで。そしたらみんなでご飯にしよう」

 

「悪い、そうする」

 

優しげに微笑む彼に促され、俺は洗面台へと向かった。

 

 

 

 

 

 

 

「ありがとう、ダ・ヴィンチちゃん。この礼はーー」

 

「ああ、そんなの後でいいよ。……行っといで」

 

朝食を終え、着替えも歯磨きも済ませた俺たちは、エプロン姿のダ・ヴィンチちゃんに見送られて玄関を出る。

まるで新婚夫婦だ。

 

「それじゃ、行ってきます!!」

 

「行ってくるわ!」

 

「ああ、気をつけてね」

 

朝から元気な二人の女の子サーヴァントに手を振るダ・ヴィンチちゃん。

俺も気を引き締めて眠気を飛ばす。

 

「行ってきます。ああ、あと例の件はーー」

 

「はいはい、それも放課後に聞くから。あ、ほら、襟が」

 

不意に、俺の襟を掴んで整えてくれるダ・ヴィンチちゃん。

男とは分かっていても、綺麗な顔をそう近づけられると朝から煩悩が増幅されてしまう。

 

「これでよし。……気をつけて行ってらっしゃい、リツカくん」

 

「い、行ってきます……」

 

眩しい笑みで見送られ、こっぱずかしさからどうにも目を合わせられなかった。

ちなみにここは一応、男子寮の一室にあたるので偶然、目撃した他の男子生徒がこちらをガン見していた。

 

「貴様は、何も、見ていない。オーケー?」

 

すぐさま詰め寄りいい含める。

 

「は、はぃ……」

 

「よろしい」

 

俺はこれ以上厄介ごとを増やす前に早足で学校まで急いだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

時は2003年、世界は核の炎に包まれていない。

春休みを終えて進級した俺は今日から高三。エリちゃんも中三。アビーは今年から中学生である。

周りが春休みをゆったりと過ごす中、俺は丸々エヴァのコテージの修復に取り掛かっていた。俺のせいでもあるが、それでも休みが潰れたことに違いはない。

春休みなんてなかったんや……。

 

おかげで、俺は全身を筋肉痛で痛めながらも新学期を迎えることになった。昨日も遅くまで修復作業を行っていたのだ。

もちろんながら、茶々丸を中心としてロボの手を借りた作業ではあるが。

その中で俺が手伝うには、応援に駆けつけた葉加瀬の『作業用ロボ』を活用するほかなかった。

というか、作業のためといいつつ、新開発したロボの実験に付き合わされたため倍の労力を費やすことになった。

 

よって、この気怠さの残る身体で登校を余儀なくされているのである。

 

 

 

 

 

 

「おかげで、あの朝の大レースに参加する羽目になったよ」

 

「惚気か、惚気なんだな? よぉし、お前は今日からぼっち同盟から除名する」

 

とほほ、と項垂れる俺の背中に何やらぺたりと貼り付けるカウレス。

 

無事に始業式を終えた俺はいつもの裏生徒会本部へと足を運んでいた。

 

「いや、お前始業式いなかったろ? すっぽかして自分のサーヴァントの入学式見に行ってたよな、なぁ!?」

 

何を言っているカウレス?

俺は確かに始業式に参加していただろう?

 

「嘘つくなよ! ていうかあんな雑なコピーで騙せると思ってんのかお前!?

新入生の子の乳談義振ったら、

『そんな不純な目で後輩を見てはいけないよ(キラッ』

なんてお前が言うはずねぇだろうが!」

 

ち、ダ・ヴィンチちゃんに頼んで作ってもらった自信作だったのに。

 

「そんなしょーもないことに天才を使うな!」

 

「いや、カウレス。論点はそこじゃないだろ」

 

怒り心頭のカウレスの代わりに衛宮が声を出した。

 

「乳談義で見破られてることの方が問題だろ。そっちの方がしょーもない」

 

まるで自分は清廉な人間だとでも言わんばかりの衛宮の物言いに俺は異議ありと申し立てた。

 

「自分は乳に興味がないと? 本気で言ってるのか貴様?」

 

「お、おう。どうしてもそこに食いつくのなお前」

 

若干引いてるが、俺は誤魔化せない。

原作で貴様がどれだけの女と組んず解れつして来たか画面越しに嫌というほど見せつけられてきたのだからな。眼p……けしからん。

3Pとか高校生がするもんじゃないからね。

 

「魔力供給。お前も結構ノリノリだったって聞いたぞ」

 

「っ!!!! お、おい、どこでそれを!!」

 

慌てて俺の肩を掴む衛宮。ふふふ、貴様の情事はすべて脳裏に刻まれているぞ……冷静に考えるとそれはそれで哀れだな。

 

「いや、前世でな? 色々召喚したって言ったろ。そん中にお前の関係者も含まれていてだなーー」

 

「もういい、分かった。それ以上は口を開くな」

 

有無を言わせぬ威圧感を出しながら衛宮ははっきりとそう口にした。

何かを悟ったのだろう。例えば生前の関係者に囲まれ、胃痛に悩まされながら料理を作る褐色オカンの図とか。

 

「え、なになに、めっちゃ気になるんだけど?」

 

興味津々なカウレスが身を乗り出して続きをせがんできた。

いやぁ、純朴な少年にそこまで言われちゃ話すしかないっしょ。

 

「何でもない。いいか、さっきの話は全力で忘れろ。脳裏に一片たりとも残すなよ?」

 

「お、おう……悪りぃ」

 

全力で脅しにかかる衛宮にカウレスもさすがに口を閉ざしてしまった。

 

「……なんだ、減るもんじゃないだろ」

 

「いや、減るだろ。主に俺の心とか胃とかそこらへんが」

 

そう堅いこというなよ。この中ではお前が唯一、勝ちg……

 

いや待てよ。こんな年相応な悪ふざけしていて忘れてたけど、そういやカウレスも原作で生き残ってたよな?

 

「まさか、カウレス、お前、結婚とか……してないよな?」

 

「え……あ、ああ、いや。前世の話はもうやめようぜ?」

 

気まずげに語るカウレス、それを見れば大体予想はつく。

この中で円満な家庭を築けていないのは俺だけだと。

 

自然と、身体中の力が抜け、膝をついた。

 

「馬鹿な、それじゃあ、何か? 彼女に逃げられた挙句、痴漢の冤罪までかけられて車に跳ねられて死んだ負け組は俺だけだってのか?」

 

「お前、そんな悲惨な死に方してたのか……」

 

「リツカ……」

 

ご両人が哀れみの視線を向けてくる。やめろ、そんな目で俺を見るなぁ!

ちくしょう! 何が家庭だ、何が結婚だ!

俺は何が何でも今世で貴様らが羨むほどのラッブラブな家庭を築いてやるからな?

 

「……覚えておけよ!!」

 

ビシッと指をつけつけるが、目の端からはキラリと光るものが落ちていた。な、泣いてないんだからね、これは汗なんだからね!

 

「ああ、俺は全力で応援するぞリツカ」

 

「……そうだな、姉さんはやれないけど同じくらいの女性をいつかお前に見繕ってやるよ。姉さんはやらないけどな」

 

お前ら……。

 

「くそっ、泣けること言うじゃねぇか……嬉しくて、目にゴミが入っちまったよ!」

 

ぐしぐしと涙を拭く俺の肩に衛宮が手をそっと乗せた。

 

「お前はいつもみんなを笑顔にしてくれる。その良さに気付ける女性が必ず現れる」

 

もう片方の肩に今度はカウレスが手を乗せる。

 

「ああ、お前を捨てた元カノを見返してやるくらいのとびっきりの美人が、お前を待ってるさ」

 

「くぅ……お、俺は絶対、エリちゃんを射止めて……うぅ」

 

男泣きをする俺に、二人は優しい笑顔で慰めてくれた。

ああ、俺は今、こんなにも満たされている……。

 

 

 

「えーと、その茶番はいつまで続くのかな?」

 

割と酷い言い草のダ・ヴィンチちゃん。ごめんね、そうだよね、真面目に礼装作ってくれてるダ・ヴィンチちゃんに失礼だよね。

 

「一応、私たちもいるんだけど?」

 

若干、顔が赤い黒髪凛。おやおやぁ? 前世での彼氏との魔力供給思い出しちゃった?

あ、今もやってたりするのかな?

 

「コホン、カウレス、後でお話があります」

 

シスコン弟に厳しめの口調で物申すフィオレ。

でも満更でもないような顔してるのが明らかに彼女もブラコンを発症してしまっていることを悟らせた。

 

「ははは、レディの前でする話じゃないよ君たち。……乳談義の件、後で詳しく聞かせてもらってもいいかい?」

 

にこやかに俺らを窘めつつ、ぼそりと耳打ちするレオ。

こいつ、CCCのノリだな?

裏生徒会とか名付けたのも絶対こいつだと思ってる。

 

「はいはい、くだらない話で盛り上がらないで。例の本の解析結果をお伝えするよー!」

 

パンパンと手を叩いて「はいちゅーもーく」と声をあげたのはダ・ヴィンチちゃん。

その話の内容からふざけていたみんなも、静観していたみんなも静かに視線を向けた。

 

「例の本、『初めての英霊召喚』と銘打たれた魔導書の解析。ここ一週間ちょっとしてみたんだけどね。

……ぶっちゃけ分からない! てへぺろ!」

 

こつん、と頭に拳を当てながらちろりと舌を出すダ・ヴィンチちゃんに、なぜか魔眼勢だけがズッコケタ。

 

「え、えーと……そういうノリなの?」

 

幾ら何でも古い反応に俺はたまらず声をかけた。

 

「古くないだろ! 今は2003年だぞ!?」

 

なぜか猛烈に反論する志貴。どうしたお前。

 

「いや、魔眼で一括りにするなよ、あんな寒い反応してないぞ俺」

 

全力で志貴から距離を取る両儀。そんな冷たいこと言うなよ、ほら志貴涙目だぞ。

 

「こらー、志貴をいじめるなぁ!

私はちゃんとズッコケタよ? ね、偉い?」

 

それを庇うのはあーp……真祖の姫・アルクェイド。

まるでペットのようななつき方をしている。

 

「君たち、どんなギャグ時空で生きてきたんだ……。

これ、結構真面目な場面だからね?」

 

なんとも言えない、といった様子のダ・ヴィンチちゃんが珍しくまともなことを言った。でも原因はあなたにあると思う。

 

「すまない、私の叡智を持ってしてもこの本のプロテクトを解除するのは不可能だ。

何せ、セキュリティに使われているのは神霊の『権能』に値する力だからね」

 

権能。その言葉に皆がピリッと意識を張り詰めた。

権能とは人類史以前、まだ神が地上で好き勝手していた時代にのみ許されていた力。物理法則が確定した西暦以後にはもはや発動すら許されなくなった、文字通りの神にだけ許された権能。

神霊の扱う人智を超えた力のことだ。

 

それが、この本に掛けられているという。

なんとも馬鹿げた話があったものだ。

 

「いや、値するとは言っても権能そのものというわけじゃない。だって今の世の中では発動できない力だからね。いくら()()()()()()()()()()()()それとこれとは話が別だからだ。

改めていう必要もなさそうだから説明は省くが、このプロテクトが人間には解けない領域にあることは確かだ。

それがたとえ『英霊』であってもね」

 

ダ・ヴィンチちゃんをして解けないとは。それってかなりやばいんじゃないかと思う。とはいえ、ラニまでいるこの集団をして解析できないという時点でなんとなくこの結果は見えていた。

 

「でも、何も分からなかったわけじゃないんだろ?」

 

「ああ、もちろん。判明した部分もあるさ」

 

俺の言葉に待ってましたとダ・ヴィンチちゃんは笑顔で頷いた。

 

「私の力で解析出来たのは全体の40%。これ以上は我々人類ではどうあっても辿り着けない領域だ。

そしてその40%の中で分かったのは三点。

まず、この本の力は本物。呼ばれる英霊は座から来ていることは分かっている。

次に、触媒や代償の話なんだが、これはどうにも本の記述の通りであるらしい。つまり、私含め今現界している英霊たちは()()()()()()()()()()()()()()()()。無茶苦茶な話だがこれも確かだ。

そして、肝心の魔力の源泉。これなんだがね……なんとも信じ難いことに『世界から直接』来ている」

 

「世界、ですって……」

 

黒髪凛が驚き半分、戸惑い半分に言う。

 

「ああ、世界……それはつまり自然に生える木々であり、草木、山、大地。空から来てたりもする。もちろん自然に生きる野生動物からもほんの少し来てるね。

当たり前だが、()()()()()()()()()()。ぶっちゃけこれが殆どの魔力を賄っている」

 

「文字通り、世界、か……馬鹿げてるな」

 

信じ難い、が、他の誰でもないダ・ヴィンチちゃんの言葉ゆえに事実として受け取るしかないとカウレスは呟いた。

 

「最後に……これらすべての信じ難い事象、その全てにおいて方法、術式、その他詳細含め一切分からない。この先はプロテクトの向こう側なのだろう」

 

まさしく神の所業。あるいは『世界の理を司るもの』の仕業だ。大スケールの話だが、一つ気になることがあった。

 

「ダ・ヴィンチちゃん。人類種って言ってたけど、それってつまり『アラヤ』のことだよね?」

 

人類の集合的無意識・人の抑止力アラヤ。

英霊の座を管轄する時間の概念を超越した大いなる力、概念そのもの。星の抑止力たるガイアと異なり、人類種の危機に対して発動する防衛装置。

 

()()()()()。いや、確証を持てないが十中八九そうだろうね。でなければここまで膨大な供給が成り立つはずがない。まあ、それは他の供給源にも言えることなんだが何せ方法が解明できない。

私にはもうお手上げだ」

 

諦めたように述べたダ・ヴィンチちゃんに、俺もこの本の解明が無理ゲーであることを悟った。

 

「まあ、全部ではなくても解明できた部分はあるわ。お手柄よキャスター」

 

「そう言ってもらえるとありがたい。それ代わりというわけでもないんだが……」

 

遠坂に感謝を述べつつごそごそと取り出したるわ、一着の服、いや、全身タイツに近いプラグスーツみたいなもの。

 

「チャラララッチャチャー♪

『ダ・ヴィンチちゃん式魔術戦闘服』ー!」

 

変な効果音で広げてみせたそれは、まさしくfgoで使用していた『カルデア戦闘服』のパチモンだった。

全体のデザインは大体合ってるが、細部に相違点が幾つかあった。中でも背中のごつい十字架みたいな装置が目を引く。

 

「ふっふーん、リツカくんにはカルデア戦闘服に見えるだろうけどこれはちょっと違うんだよねぇ。

ぶっちゃけ性能は下だ」

 

劣化品かよ。いや、作ってくれただけありがたいけどさ。

 

「まず、ガンドの威力は大幅に落ちている。対魔力Bくらいならなんとか貫通できるけどさすがにAを超えると弾かれちゃうね。前みたいにティアマトレベルだと足止めなんかも無理」

 

なるほど、でもそれって普通に考えたらすごいんじゃないかな。

 

「ティアマトって……いや、それよりもガンドよね? 今、ガンドの話をしてるのよね?」

 

黒髪凛が若干混乱気味に問いかけてくる。うん、『ガンド(確定麻痺』の話だよ。

というかあんたもマシンガンみたいに撃てるんだからたいがいだろ。

 

「うん、ガンド。まあ、これについてはリツカくんなら今ので大体使い勝手は分かったと思う」

 

「ああ、でも足止めならAもいけるんだろ?」

 

ぶっちゃけ手傷も負わせられないのがガンドだ、足止めできれば十分である。

 

「まあ、気をひくくらいならね。

で、次に全体強化なんだけど、これも出力自体は落ちちゃってる。でも効果範囲は広がったよ。

これまでは契約してある英霊だけだったけど今回のは範囲内なら誰でもだ。対象の固定が必要になるけど人間に対しても強化できるようになったよ」

 

なるほど、現在の状況が人間主体になってくることを見越しての仕様か。やはりダ・ヴィンチちゃんは優秀だ。

 

「最後に君も気になってる後ろのでっかい装置。これなんだけど」

 

コンコンと例の装置を小突きながら話を続ける。

 

「簡易令呪と言ったら分かりやすいかな。さすがに本来の令呪とか以前の令呪にも及ばない力だけど、限定的な治療、魔力の補充くらいなら可能だ。あ、効果はさっきの機能とは比べものにならないからね、ちゃんと簡易令呪名乗るくらいの出力はある」

 

すご過ぎるだろ。これ約一週間で作り上げたんだぜ?

万能とかそういうレベルじゃないだろ。

 

他の面々も言葉が出ずただダ・ヴィンチちゃんの解説に耳を傾けている。

 

「最後にこれら全部に言えることなんだけど……正直、燃費はすっごい悪い。どれくらいかと言うと全部の機能が一発限りの一か八かになるくらい」

 

そうか、fgoでは何ターンか経ったら再使用できたが今回はそうもいかないか。

 

「先の標準機能の回復に約一日。簡易令呪に至っては三日でギリギリ再充填できるかどうかだ。

原理としてはすべての機能で、リツカくんの魔力バックアップ能力を利用している。正直言うと、これを無理やり機能の方に引っ張るのだけでもかなり魔力を使ってる、燃費はそのためだ。

ちなみに、簡易令呪は三回に分けて使用するのでも一気に使って大きな効果を出すのでもどちらも可能にしてある。状況に応じて使い分けてくれたまえ」

 

そう言って、俺に戦闘服を手渡すダ・ヴィンチちゃん。

 

「機能的にこれは君専用だからね。他のみんなの礼装も随時作製していくよ。もう少し待っていてくれ」

 

素直に受け取ってしまったが、冷静に考えてこれを速攻で作り出す彼は改めて只者ではないと思う。

その旨を伝えると彼は謙遜するように応えた。

 

「いやいや、カルデアでの記憶が残っているおかげでもあるさ。

以前、作製した戦闘服の設計を元にして今ある資源と時間で作った試作品だしね、メンテナンスは定期的に行う予定だ。

時間をもらえれば機能の強化もできるだろう」

 

まじかよ、至れり尽くせりじゃないか。

確かにこういうの作って欲しくて呼んだけど、なんというか予想以上に有能過ぎて怖い。

 

「あ、それと後ろの装置は取り外し可能だ。だってそれ付けてると制服着た時に目立っちゃうしね」

 

ぱかっと装置を外して「ほら」と見せてくるダ・ヴィンチちゃん。ほらじゃないよ、そんな簡単に外すなよ、怖いよ。

 

「作ってくれたのは嬉しいけど……休みだけはちゃんと取ってくれよ?」

 

彼の労働環境が心配になってしまった俺は心配になってそう伝える。

 

「ありがとう。でもこれくらいなら問題はないさ、それに優秀な助手もいるし」

 

そう言って視線を移したのは褐色露出狂・ラニ。こちらの視線に気づくなりぺこりと頭を下げられた。

やっぱ優秀だわ、彼女。

 

「……なんか、色々と予想以上で今も信じられないくらいなんだけど、改めて感謝を述べるわキャスター。

今後も協力してくれると助かるわ」

 

「もちろんだ。そのために呼ばれたのだからね。現界と工房の分くらいはしっかりと働いてみせるよ」

 

こうして終始穏やかながらも裏生徒会の面々とダ・ヴィンチはお互いの距離を縮めた。まあ、一週間もいれば自然と絆も生まれてくるだろう。

その後も他の面々との交流を深めながら、例の礼装や、本の解析結果の話で盛り上がった。

ダ・ヴィンチちゃんは主にその方面の話だとW凛やレオ、ラニあたりと話が弾むようだった。

 

何はともあれ準備は順調に進んでいるようなので俺も少し気を緩めていたのは確かだった。

 

 

 

この後、俺を含めた裏生徒会全体に大きな影響を与える事件が発生するとは露にも思わず。

 

 

 

 

 

 

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