一般人生徒リツカ!   作:ブタどもの一人

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魔法世界が『世界』の一部である理由。

リツカの魂の経緯。

そして『名前が残らない紅い翼メンバー』と『黒幕と敵対者の力』。


ここら辺だけ覚えといてもらえれば大丈夫です。




審判の刻

 昨晩、ちょっと一悶着あったりもしたが、特に生活に支障はなく夢に出てきた乳製品もまったく眼中にない。

 

 サーヴァントの二人は昨日の出来事がまるでなかったことかのようにいつも通りに振舞っていた。

 なので俺もいつも通りに、朝飯を作り一緒に家を出た。

 

 高校について彼女らと別れ、普通に授業を受ける。

 そしたらあっという間に放課後だ。

 

 何事も無さすぎて逆に気持ち悪い。

 

 根拠とかまったくないがこれって『嵐の前の静けさ』ってやつなんじゃないかと思う。

 

 

 

 現在は放課後に集まる裏生徒会本部にて衛宮との談笑に興じていた。

 いや、よく考えたらここってそういう場所じゃねぇし。

 

 ちゃんと今後について話し合う場だし。

 

「ところで、調査ってどうなってんだ?

 なんか、いつの間にか無いもののように話題にも上がらなかったけど」

 

 心配になって黒髪凛に尋ねる。

 

「だいぶ進んだわ。

 魔法関係の重鎮くらいなら名簿作ってあるわよ」

 

 マジかよ、言ってくれよ。そんな大事なこと。

 

「だって、あなたサーヴァントの入学式に行ってて居なかったじゃない。仕方ないでしょ」

 

 そういえば俺があの日合流したのはだいぶ遅れてだった。

 それというのも葛葉刀子とアビーの写真撮影で揉めたからに他ならない。あいつ、自分の子ども出来てからそういうやる気出せばいいものを。アビーの保護者は俺である。学園長も認めている。

 

 そう言って言い負かしてようやくアビーを独占することに成功した。当のアビーは顔を真っ赤にして「マスターのバカ」と罵っていたがそれって俺にはご褒美である。

 

 結果、俺の『麻帆良製デジタルカメラ』のフォルダはアビーの写真で埋め尽くされたのであった(まる)

 

 

「自分で言ってて気持ち悪くない?」

 

「え、なにが?」

 

 心底理解し難いといった様子の金髪凛が声をかけてきた。

 気持ち悪いとか、失礼だよな。

 

「な? って俺に聞くなよ。俺までそういう趣味かと思われるだろ」

 

 同意を求めた衛宮はしかし、俺と距離を置いた。

 解せぬ、イリヤにバブみを感じていたくせに。

 

「お前は守備範囲広いだろ衛宮」

 

「なんで俺ばっか仲間にしようとしてくんだよ!

 お前のせいで最近、『衛宮くんってロリコンなの?』って聞かれ始めて困ってるんだよ! やめてくれよ!」

 

 なんだなんだ、図星だろう? 固いこと言わず素直になれって。

 

「いやぁ、このメンバーだと断然、衛宮の方が守備範囲広いわ。だって十は離れたおばさまから下は小学生まで……」

 

「あることないこと言うな! あ、いや全部嘘だから、丸っ切り捏造だから、頼むからその人差し指を下げてくれ、ガンド撃たないでくださいお願いします」

 

 静かに怒りを滾らせた黒髪凛がガンドを衛宮に向ける。あれって人差し指向けた状態で体調不良の呪いかけられるんだよね?

 もしかしてもうかけられてね?

 

「うぐっ!? き、急にお腹が!」

 

 ほら、めっちゃ腹痛そうな衛宮が身を屈めている。あれ絶対本来のガンドかけられてるよね?

 

「安心して、今日一日は効果続くようにしといてあげたから」

 

 にこやかに語る黒髪凛に衛宮は顔を青くした。

 かわいそうに。

 

「お前のせいだろ!? 今のは絶対お前のせいだったぞリツカ!」

 

 叫びながらも教室を飛び出していく衛宮。君が生きて帰ってくることを心から祈ってるよ。

 

「なにやら衛宮くんが凄まじい形相で廊下をかけていったけど……

 何かあった?」

 

 困惑気味のダ・ヴィンチちゃんが部屋に入ってきた。

 ちなみに彼の工房は本部とは別にちゃんと確保してある。

 

「いや、何もなかったよ。な、遠坂?」

 

「ええ、何もなかったわ。それより用があったんでしょ、キャスター」

 

 俺と遠坂のケロッとした様子にダ・ヴィンチちゃんも深く追求せず衛宮の件は闇に葬られた。

 

「ああ、今日はマスターが来ていると聞いてね。彼に一つ報告だ」

 

「お、なんだなんだ」

 

「君の魔力についての話さ」

 

 そういや細かな範囲の特定を頼んでいた。

 具体的には俺がどれだけ離れるとサーヴァントに影響が出るか。

 だって修学旅行とか控えてるし、魔法世界編もたぶんこれ出る羽目になる。

 もし行かなくなってもいずれは必要な調査である。

 

「いいよ、ここで言ってくれ」

 

 別に裏生徒会メンバーにバレても問題ない。少なくとも黒髪凛と衛宮は信用してる。

 彼女らが実質的なリーダーである以上は俺はこのメンバーとも仲間でいるつもりだ。

 

「そうか、なら伝えよう。

 ……ぶっちゃけどこに行っても平気だ」

 

 は?

 

「え、と。それって修学旅行とか平気ってこと?

 というかサーヴァントの話だよね?」

 

「そうだよ?

 君の契約は『世界との契約』だ。どこにいようが君が『世界』に存在するならば『世界』から魔力が供給される。サーヴァントとは別行動しても問題ないということだ。

 ちなみに、魔法世界とやらに行っても平気だと思うよ。あれもおそらく『世界』の一部にカウントされている」

 

 マジかよ。散々心配してたのに、初めから対策いらずとか。

 いや、素直に喜ぼう。これでどこに観光行っても平気だし、修学旅行も魔法世界もどこでも行き放題だ。

 

「ただ、無いことだとは思うが宇宙はダメだ。当たり前の話だけどね。『世界』の影響が及ばない、例えばこちらの世界の月とかね。

 宇宙空間だけでもおそらく即供給を打ち切られるだろう」

 

 そんなとこ行く気はさらさらない。唯一、火星の異世界たる魔法世界がネックだったがあれも『世界』の一部というなら問題ない。

 いや、というかこの世界の『アラヤ』強過ぎね?

 絶対、錬鉄の弓兵とかパワーアップしてるよ。

 ……なんかこれもフラグ臭いな。今のなし。

 

「あと、これもマスターの話なんだけどね」

 

 俺の話多いな、いやあの本からこっちずっと俺が原因のゴタゴタが起きてはいるが。

 

「私含めて彼女たち、やっぱりあちらの世界の座から来ているようなんだ。正確には座ですらなくて、『記録帯』。()と別れた時点での私たち、と言ったところかな」

 

 なるほど、つまりーー

 

「この世界の座もあるということか」

 

「それは不明だ。ただ、これだけアラヤが強いなら十中八九いるだろうと思うけどね。あくまで推測でしかないが」

 

 それを言ったら大体推測でしか測れないのが現状だ。

 なにせ『権能』に匹敵する力を秘めた本なんてものがあるんだから。それを使ってアビーたちを呼んだ俺が言えた義理じゃないが。

 

「本、ね。

 ちなみにこれも蛇足なんだがね、あの本、もしかしたらまだ使える機能があるかもしれない」

 

「召喚以外にか?」

 

 題名からてっきり召喚オンリーと思っていた。もしかしたらバックアップ機能があるのかもしれない。

 

「ま、今はなんとも言えないけど」

 

 まあ、ダ・ヴィンチちゃんに解析できなかったことから最早あの本を制御しようなどとは考えてない。ただ、俺の利、彼女たちの利になるうちは使うまでだ。

 

「そうなると、やはりあの本を置いた者の思惑が気になるわよね。

 何か大きな存在に対抗してのこととは思うけど。

 てことなら、その大きな存在というのも気になるし。

 こんな大掛かりな事してまで止めようとするのは、一体なんなのかしらね」

 

 全くその通り。同意しかできない、他のことは分からんままやし。

 型月の魔術師を呼び、英霊まで呼ばせて、一体何と戦わせようとしているのか。

 まあ、俺は()()()()()()()()()()で大まかなことは分かるが詳細までは突き止めていない。伝えられるだけの情報がないのだ。

 依然、謎は謎のままである。

 

「まあ、今、急いでもしょうがない。

 気長にやっていこう」

 

「呑気なものね藤丸くん。でも実際そうなのがなんか悔しいわ」

 

 俺に言われても困る。

 だが、転生者たちの選考基準も考察に入れるべきだろう。

 なぜ、彼女たちなのか。

 なぜ、俺だけ異質な魂なのか。

 

 その黒幕とやらが出てきてくれないとこれ以上は分からんちんだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 帰宅後、エリちゃんから今日の報告を聞く。

 今日は茶々丸あたりがネギくんと交流を深めていたようだ。

 うん、順調。

 なのに物凄い嫌な予感しかしない。

 

 どうやら俺は疑心暗鬼に陥っているようだ。

 そのため、寝る際はより一層アビーの匂いを嗅いでから就寝した。

 

 

 

 

 翌日に寝起き早々エリちゃんからビンタをもらった。

 今度はなにをやってしまったんだ俺。

 

 曰く、『アビーの匂いを嗅ぐなら私のも嗅げ』と言われた。

 なるほど、ならばお言葉に甘えて。

 

 エリちゃんはちょっと甘酸っぱい匂いがした。

 感想を述べるとまたもやビンタをもらった。

 槍ではないとはいえ、英霊のビンタである。

 機能不全が出ていないかダ・ヴィンチちゃんに戦闘服を見てもらう必要があるだろう。

 

 エリちゃんに深い感謝を述べてから高校に向かった。

 

 

 

 今日は土曜日。学校は休みなので真っ先にダ・ヴィンチちゃんの工房へと足を運んだ。

 

「おや、マスター。どうかしたのかい?」

 

 扉を開けると、魔術工房らしい機器や礼装、触媒がごちゃごちゃと置かれた雑多な部屋が現れる。

 雰囲気はカルデアのものに近い。

 

「ちょっと用事があってね。

 そういや、他のメンバーの礼装とかどうなってる?」

 

 ダ・ヴィンチちゃんという後方支援にはうってつけの存在を召喚したのだ、遠坂管理の本を使わせてもらったこともあり裏生徒会面々の礼装の開発も彼には頼んでいる。

 素が弱い俺にばっか作っても焼け石に水だろうし、それなら味方全体を強化した方が効率も良いだろう。

 

「ああ、一通り各人にあった礼装は渡してある。あとは個人的な受注を受けたものが数点かな」

 

 仕事早いな、さすがダ・ヴィンチちゃん。もうこの言葉だけで全部片付きそうで怖い。

 とはいえ彼にも出来ないことはあるので無茶は頼めないがそれは瑣末な問題だろう。

 これ以上は本当に神様に頼むしかなくなる。

 

「流石だな。

 毎度聞くようだが俺の頼んだヤツはどうなってる?」

 

 俺も、彼には個人的に頼んだ礼装が何点かある。

 その進捗を聞きたい、主に一点について。

 

「そちらも随時開発中。いずれも順調に進んでるよ。

 ……ただ、君が熱心に頼んできた礼装ね、あっちはちょっと時間かかるかなぁ」

 

 まあ、そうだろう。()()()()()()()()()()()だ。()()()()()()()()()()()()()()()のは至難の技、彼にしか頼めない高難易度の発注である。

 

「多少な無茶は許容するよ、()さえ無事なら治せるだろ?

 ダ・ヴィンチちゃんなら」

 

 とはいえ『あの礼装』の完成は俺の悲願にも等しい。

 だから何が何でも作って欲しい。

 

「核って……私はあくまで技術枠だ、治療は他の英霊にはるかに劣るよ。まして『死』を迎えた人間を蘇生なんてできないから。

 それに、軽々しく()()()()()()もんじゃない。エーテル体の私が言えた義理じゃないがね」

 

 捨てる気は無いのだが……。

 あくまで必要なら捨てるまでだ。

 

「……それに、正直私はアレの開発には乗り気じゃないよ。だって明らかに無茶な設計コンセプトだ。君に備わる『世界の加護』が無ければ甚だ不可能な品物だよ。

 改めて確認するけど、本気で欲しいのかい?」

 

 こちらを気遣うような眼差しに、少し嬉しさを覚える。だからこそ彼は好きだ。

 

「欲しい。どこまでいっても現代一般人でしかない肉体だ。何らかの補助を付けなければこの先、やっていけないだろうさ」

 

 具体的にはポヨに殺される予感がする。理由は特にないけどあのお姉さん結構容赦なさそうだし。

 これまでの俺なら龍宮隊長に命運を預けていた。

 

「……まあ、君の頼みだ。それに()()()()使()()()ちゃやるしかないよね」

 

「ごめん。この件については貴方に汚名を着せてしまうかもしれないが、それでも俺は強くなりたい」

 

 カルデアで行われていたデミ・サーヴァント実験に猛烈に批判を述べたという彼だ、『例の件』にも同じくらいの嫌悪感を感じるのだろう。

 でも、俺は欲しい。

 今後のためでもあるが、何より守られるだけなのは忍びないから。最早この身は彼女たちのために捧げると決めた今は撤回することはあり得ない。

 

「とはいえ技術的にも困難なのに変わりはない。完成には時間がかかると思うけど、我慢してくれ」

 

 声のトーンを少し落として述べた彼は言うなり作業机の方を向いてしまった。少し不機嫌そうな雰囲気を出している。

 嫌われてしまったかも、と思いつつ後悔はしていない。

 

 そうは言っても気まずいので何か他の話題を探して部屋を見渡す。

 すると、テーブルの上に無造作に置かれた紙束が目に入った。

 手に取りページをめくる。

 

「ほう、これが黒髪凛の言ってた」

 

 それは魔法世界の重鎮たちのリストだった。

 名前に判明している経歴、役職、その他諸々の情報が書き連ねられている。いくら魔術が探知されないからと言ってここまでの情報を集めるとは、やはり彼女たちは只者ではない。

 

「うは、ゲーデル総督まで赤裸々に……いや、『寝取られ趣味、また稚児趣味の可能性』とか、絶対関係ない情報でしょこれ」

 

 プライベートすぎる情報、正直知りたくなかった。

 

 他には、ヘラスの皇女に、アリアドネの総長。

 あ、リカード!

 そういやそんなおっさんもいたな!

 つーか、メガロの情報多過ぎだろ。なんか恨みでもあんのか?

 

「イザヤ・メガロ・エフライム・ネビイム、に。

 ラピス・スウィンドル・アエテルノ・エリクシャー……妙に長い名前だな。つか、元老院議員ほぼほぼコンプリートしてるし」

 

 おまけにイザヤとやらはネギくんの故郷を襲撃した悪魔たちの雇い主・反アリカ派の筆頭格らしい。

 さらにはMM創設メンバーの最後の一人とか。どんだけ生きてんだよ、亀仙人かよ。

 

「ラピスは保守派、大戦期には一貫して和平を主張し紅い翼にも協力していた、と」

 

 ふーん、穏健派ってことかな?

 案外、漁夫の利を狙う策士かもしれんが。

 

「……ただし女癖が悪く、その甘いフェイスで著名人を誑かしては度々スキャンダルをすっぱ抜かれている、ってこれただのナンパ男じゃねぇか!」

 

「あー、うるさい! 用が済んだのならさっさと出ていきたまえ!」

 

 突然杖を振るったダ・ヴィンチちゃんに不可視の力で部屋の外まで吹っ飛ばされる。

 

 そのまま廊下に派手に転げ落ち、後頭部を痛めた。

 

「はっ! そういやメンテナンスしてもらうの忘れた!」

 

 とはいえ今の不機嫌モードにはあまり近づかない方がいいだろう。しょうがないのでメンテは今度にする。

 

 何はともあれ、もう高校での用事は済んだので、今度は()()()()()()()へ向かう。交渉は依然続いているのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おや、あなたでしたか。ようこそいらっしゃいました」

 

「ああ、()()()も持ってきた。とりあえず中で話そう」

 

 いつものようにワイバーンに挨拶してアルの家に入れてもらう。

 一度目の交渉からこっちアルの態度も穏やかで平時の飄々としたドS気質は鳴りを潜めていた。

 まあ、話の内容が内容だけにふざける気分にもなれないのだろう。

 

「紅茶でよろしかったですか?」

 

「構わん。たまにはコーヒー以外もいいもんだ」

 

 アルの家に来るときは決まってコーヒーを頼んでいるのだが、わざわざアルが申し出たということは豆を切らしているのだろう。

 ならば、と素直に申し出を受ける。

 

「それで、開発はどうなってる?」

 

 渡されたティーカップを口に運びつつ最初の問いを投げる。

 

「そうですね、雛形は完成しています。あとは機能の多様性を持たせるための変形機構ですかね。正直、どのくらいまで搭載する予定ですか?」

 

「そうだな、出来れば入れられる限り入れたいがそれも無茶だろう。なら最低限、()()()()()()()()()()()()()()

 

「っ!」

 

 最後の一言にアルはピクリと眉を動かした。

 当然の反応だ、彼とて紅い翼の一人、かつて仲間の一人が命をかけて日本に逃がした少女を狙うような発言には敏感になるだろう。

 

「そう構えなくていい。別に本人をどうこうするつもりはない。()()()使()()()()()()()()()()()()。おそらくアレは相当にレア、こちらの世界の歴史上でも類を見ない力だ」

 

 例えるなら上条さんのアレ。もはやチートと呼ぶしかない能力が完全魔法無効化能力である。効果はそのまんま魔法を完全に無効化、消し去ってしまうというバランスブレイカーもいいところ。

 魔法世界ではその力を持つ存在が歴史上少なくとも複数体いたというのだから、よく今まで世界崩壊しなかったな、と感心する。

 

「……一応、忠告しておきます。

 彼女をどうこうしようというなら私は容赦しません。それは私が果たすべき義理であり責務だからです」

 

「当然だ。その時は『裏切って』構わん。もともとあんたとは利益ありきの関係だろう?

 なら、俺が不利益と判断したなら遠慮なくやれ、俺も遠慮せずお前を殺す」

 

 馴れ合う気はない。互いの利となる関係を保てているからこそ俺たちは敵対せずにいられる。

 

「それに再度言うが本人には興味はない。あくまで力だけだ。それさえ搭載してくれれば最早、神楽坂明日菜には関心はないさ」

 

 でもあの子結構面倒見いいし、性格は好みだしなにより可愛いんだよね。

 ……あ、いやいや俺にはエリちゃんとアビーがいるから。煩悩退散、煩悩退散。

 

「そうですか、なら良いでしょう。

 その代わり、今後も『情報の提供』、お願いしますよ」

 

「もちろんだ、そちらも引き続きの『協力』を頼む」

 

「ええ、存じています。こう見えて義理堅いですから私」

 

 爽やかな笑顔を浮かべているが、こいつがドSなのを忘れてはいけない。俺は騙されんぞ。

 

「じゃあ本日の『意見交換』といこうか」

 

「ええ、お願いします」

 

 

 そうして幾つかの『原作知識』を俺は与え、アルからは『開発』と『情報』を聞き出し、その日は夕方まで語り合ってから帰宅した。

 

 もちろん、今後の展開に差し支えない辺りをチョイスして小出しにして与えている情報。いずれはストックも無くなるだろうが、どうせ魔法世界編までの関係だ。

 それまでに『アレ』を完成させてもらいたいがはてさてどうなるやら。とりあえずもうダ・ヴィンチちゃんがいるので俺としてはどっちに転んでも痛くも痒くも無い。

 

 

 

 

 

 翌日、俺は裏生徒会本部に顔を出し、ダ・ヴィンチちゃんに再度謝って戦闘服のメンテを行なってもらった。

 結果、特に異常はなくついでに、エリちゃん用の礼装の件の進捗を聞く。

 こちらも随時開発中で今の所、()()()()()()()()()()()()とのこと。テストも兼ねて今度試作品を試してみることになった。

 あとは、レオの子飼いから得た調査報告を裏生徒会会議にて拝聴し、金髪凛のハッキング能力によってこの世界にも『魔術協会に似た組織』がロンドンにあり、また、『アトラス院らしき組織の存在』が出てきたとの報告も受けた。

 後者については噂の域を出ず、ほんの僅かな記述からの推測であるとのことから断定するのは見送られた。

 その日は日曜ということもあり各々予定を入れているらしく早々に会議はお開きとなった。

 俺?

 俺は当然、エリちゃんとアビーを連れてデートだよ。

 クレープが美味かった。

 あと、道中になにやら見覚えがあるような若い男を見かけたが、二度見した時にはもういなかった。

 確か、アレはーー

 

 

 

 

 翌日、放課後に久々にエヴァのとこに顔を出すか、と思うもそういえばいつのタイミングかにネギくんが彼女の看病に来る、ということを思い出し寸前で思いとどまった。

 とりあえず、吸血鬼騒動が終わるまでは会わない方がいいだろう。

 

 帰ってからエリちゃんに聞けばやっぱりその日はエヴァは風邪で休んでおり、俺の神がかった回避スキルに自画自賛してしまった。

 俺ってば直感スキル持ってるんじゃないかなぁ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 また翌日、もはや修学旅行までは準備や調査と、地道な活動しか行えないため衛宮に戦闘訓練を付けてもらうことにした。

 衛宮曰く『才能はない』らしい。

 魔術のみならず近接戦闘すらままならないとは、この肉体はほとほと非日常に適応していないらしい。

 そうは言っても護身くらいは出来るようになりたいので稽古をつけてもらう。

 

 結果は見事にボコボコ。護身のごの字も習得できなかった。

 衛宮は地道にやればいい、と言っていたがどうにもこれ以上上達できる気がしない。やはり俺は非戦闘員なのか……。

 

 

 落胆しつつも帰宅、今日は麻帆良中が二十時に停電する日なので早々にご飯とシャワーを済ませる。

 もう最近普通に生活しちゃってるけど、当面は俺が出張る必要のない、寧ろ出たら搔き乱しかねないイベントだらけなので裏での活動をするのみと結論付けた。

 ふと、停電といえばその日にエヴァとネギくんが激突するということを思い出した。

 だからって出て行く必要はない、エヴァには是非ともネギくんの成長の一助を担ってもらいたい。

 

 と。

 

『リツカくん! 起きてるかい!?』

 

 うとうとし出した俺の脳内に激しい音声が響いてきた。

 こいつ、直接脳内に……!

 

『あー、はいはい。この声はダ・ヴィンチちゃんね』

 

 とまあ、これはマスターとサーヴァントの念話であって声もダ・ヴィンチちゃんのものなので驚きは少ない。

 とはいえ夜に何の用だ? 随分と慌てた様子だし。

 

『ああ、良かった。とりあえず私の工房まで来て欲しい、内容は来てから話す』

 

 それだけ早口で言うとブツリと念話が切れた。

 なんやなんや、ただ事じゃないっぽいなぁ。

 

 寝る寸前だったのですごく気怠いが、彼が慌てるなどそれこそ何か大きな事態が発生しているに違いない。

 朦朧としながらも急いで着替えて部屋を出る。

 スヤスヤと安らかに寝息を立てる彼女らは……わざわざ起こさなくてもいいだろう。戦闘の可能性があるならダ・ヴィンチちゃんは伝えてくるはずだ。

 

「んん……マスター? どこに行くの?」

 

「ん? ああ、ちょっと高校までね、朝までには戻るからゆっくり寝てな」

 

 物音を立ててしまったからか、アビーが目をこすりながら起きてきたが、心配ない旨を伝えて早々に部屋を出る。

 

 寮からは電車に乗る必要があるが、それほど時間がかかるわけでもない。おとなしく座って本を読む。こういう時こそ冷静さが大事だ。

 俺は慌てない男なのである。

 

 

 電車に揺られ、最寄り駅に着いた俺は歩いて無事に高校に辿り着く。ダ・ヴィンチちゃんは工房に来いと言っていたので大人しく彼の工房である部屋に入った。

 するとーー

 

「ああ来たか。ちょっとのんびりし過ぎじゃない?

 なるべく早く来て欲しかったのだけど」

 

「いや、無茶言うな、電車乗る距離なんだからこれでも最速だよ」

 

『ハハ、なんとも愉快なマスターだ。やはり君を選んで正解だったねリツカくん』

 

 ……何か、聞き覚えのない第三者の声が聞こえた気がした。

 

『こっちだよ、こっち。……君が手に入れた本だ』

 

 声の主人を探して見渡し、ようやく見つけたそれは本。

 それも『初めての英霊召喚』と表紙に書かれたもの。

 俺が図書館島で見つけたもの。

 

 ……しかし、本はページがめくられその上に『ホログラム状の人物』が浮かび上がっていた。

 

「誰だ……お前」

 

 真っ白なローブ、艶やかな金髪、何よりも()()()()()()輝く瞳がもはや人外の者であることを現している。

 

『これは失礼、挨拶が先だったね』

 

 その人物は優雅に胸に手を当てて礼をした。

 どことなく飄々とした、あるいはふざけているような態度に不快感を覚える。

 

「いいから早く答えろ」

 

『私に名は無い。

 だが便宜上、呼称は必要だ。

 ゆえに、“精霊さん”とでも呼んでくれ』

 

 ソレは悪びれることもおどけることもなくあくまで穏やかにそう述べた。

 

「は?」

 

 自然と怒りが湧いてしまうことも仕方ないと思う。

 そこへ、見兼ねたダ・ヴィンチちゃんが口を開いた。

 

「彼はあの本に棲まう精霊だ。それも人工的に作られた人造精霊。

 私も先ほど初めて遭遇してね、幾度か言葉を交わしてから、君を呼んでほしい、と言うので念話で報告したんだ」

 

 なるほど、わからん。

 

「そもそも、こいつ……信用していいのか?」

 

「さあ、だが彼の語った話はどれも真実だった、だから私も君を呼んだんだよ」

 

 彼がそう判断したなら仕方ない。

 

「で、精霊さんとやら。俺に何か用でもあるのか?」

 

 今まで解析に散々苦労させられて結局分からなかったのに、今更ノコノコと出てきて自己紹介とか。

 ふざけてんのか、と言いたい。

 

『いやね、私も出てくるつもりはなかったんだが……少し厄介なことになってね』

 

「困ったこと?」

 

 顎に手を当てながら困ったように彼は述べた。

 

『率直に言おう。

 今日、エヴァンジェリン・A・K・マクダウェルとネギ・スプリングフィールドの両名は死亡する。

 君には私の意図が伝わると思うが?』

 

「なっ!?」

 

 予想外の発言に俺は絶句した。

 唐突な原作ブレイク発言もそうだが、俺が()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()まで飛び出した。

 何がどうなってーー

 

『ぶっちゃけ、時間がない。

 私の予測が正しければあと半刻もしたら二人とも無残な肉塊、吸血鬼の方は塵すら残らないだろう』

 

「待て待て待て! 最初から説明してくれ!

 いったい、なんでそんなことが。

 そもそも、どうして俺のことをーー」

 

『知っているからさ。この続きは帰ってきたからにしたい。

 今はとにかく時間が惜しい、私を持ってあの橋まで行きたまえ』

 

 一方的な発言に一方的な命令。あまりにも癪に触る、が。事実であったならば一大事である。

 まさか原作主人公と準ヒロインが三巻で死亡など、この先の魔法世界編とかどう進めていけばいいんだ。そもそも修学旅行とかもなくなるし、そもそも原作が終わってしまう。せっかくここまで配慮してきたのに。

 というか、確実に今後の歴史に大きな歪みを生み出すことになる。

 

『迷う時間はないよ。私を所持して橋に向かうんだ』

 

「くそっ、信用できるかそんな与太話!

 だいたい、それならなんでサーヴァントの同行の必要を伝えなかった! 二人が死ぬような場面に生身で行くなんて自殺行為だろ!!」

 

『必要ない。寧ろ足手纏いだ。相手は生半なサーヴァントで対抗できる存在ではない』

 

 エリちゃんやアビーでも無理?

 おかしい、そんな存在がこんな序盤で出てくるなんて。聞いていない。

 造物主? いや、奴はまだ封印状態だと()()()()()()いる。

 ならテルティウム?

 それこそあり得ない。学園結界はもとよりここには学園長を始め、手練れの魔法使いが大勢いる。今のタイミングで突っ込んでくる理由がないし、そもそも目的が不明である。

 

「……なら、相手の正体を教えてくれ」

 

『ふむ、強情だね君も。素直に私の指示に従ってほしいところなんだが、君ならば名前を聞けば全てを理解すると思うし、うん。

 じゃあ良く聞いてね』

 

「早く言え」

 

『今後の歴史の重要人物たる二人を狙う相手。

 それはーーーーーー・ーーーーーーーー』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ーーその名前を聞いた俺は、本を掴んで一目散に橋へと向かった。

 

 





いったい誰なんだー(棒二回目
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