一般人生徒リツカ!   作:ブタどもの一人

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短いです。

いい区切りが分からなかったのでここでぶつ切りにしました。




霊長を律するもの、裁定を下すもの

「バカが、バカが、バカが!!」

 

 我武者羅に走りながら己の浅はかさ、無謀さ、愚かさを罵り続ける。

 どうしてこうなった?

 何を間違った?

 俺は、どこで選択を誤ったんだ?

 

 考えれば考えるほどに訳がわからない。

 このような事態に陥る経緯が不明だ。

 

『アハハ、そう心配せずともいい。私に考えがあるからね』

 

 しかしそんな中でも小脇に抱えた本の精霊は呑気に笑っていた。思わず投げ飛ばしそうになる。

 

「策とかそういうレベルじゃないだろ、()()()は!!」

 

 率直に倒せる気がしない。寧ろ倒そうなんて考えは浮かんで来なかった。とにかく退いてもらう。

 何をしてでもそうしてもらわなければならない。

 アレはそもそも戦おうなんて考えちゃいけない存在なのだから。

 

『落ち着いて落ち着いて。万事私に任せなさい。

 まあ、ちょっぴり手伝ってもらうけど、あとは静観しているだけで済むからさ』

 

 何を、呑気な!!

 

「くそくそくそっ!!いいから急ぐぞ!!」

 

『君がね』

 

 一瞬、本能で本を投げてしまいそうになったが、僅かに残った理性で抑えた俺は偉いと思う。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ーー屋上、彼女は静かに下界を見下ろしていた。

 

 ここは麻帆良の中でも端の端、おまけに橋の近くにあるとある古い建築物、周囲に比べて高い作りの屋上であった。

 

「……やっと見つけた。やっちゃうけど、いい?」

 

『構わん。アレは危険な種子だ、摘める時に摘まねば』

 

 脳に直接響く声に、彼女は答えることもなくジッと『対象(ターゲット)』を見ていた。

 

 彼女は、此の期に及んで未だ『この討伐』に疑問を持っていた。

 

 知人からは『同時期の生まれ』『巧妙に隠されている』などなど様々な説得を受けたが、それでも彼女の勘が違和感を感じていた。

 本当に、アレは『器』なのか? と。

 

 事実としてそれは正しい疑問である。

 しかし、それを教えてくれる人はそこにはいなかった。或いは、彼女が最も信頼し大切にしている彼ならば答えを示してくれたやもしれない。

 だが、永い時を以前と同じような『殺戮』で埋めてしまった彼女は、彼に相談するという大事な要素を忘却してしまっていた。

 あるのは漠然とした愛。

 ゆえに個人的な問題は己で解決するという結論を出してしまっていた。

 

 それが此度の悲劇の原因の一端である。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

闇の吹雪(ニウイス・テンペスタース・オブスクランス)!!」

 

雷の暴風(ヨウイス・テンペスタース・フルグリエンス)!!」

 

 二つの大魔法が橋の上で炸裂する。

 かたや『闇の福音』と呼ばれた強大なる吸血鬼の大魔法。

 かたや『英雄の息子』という肩書きを持って生まれた齢十の子どもの最大出力。

 

 それらがぶつかり合う波動は嵐となって、十分離れた位置にいた俺のもとまで飛んできた。

 

「うわっぷ! うぇ、砂が口に」

 

『砂だけで済んで寧ろ良かったんじゃないかい?

 君のような一般人では魔法が掠っただけでも吹き飛んじゃうと思うし』

 

 天然か? ナチュラルでdisってんのか?

 俺は空間把握能力だけは高いと自負する。

 エンデュミオンの鷹とは俺のこと。

 

 

 橋に辿り着いた時、エヴァとネギくんの戦いはちょうど終盤を迎えていた。

 おそらくは明日菜とチュッチュして契約更新、茶々丸の抑えを頼んでネギくんは一対一の戦いにもつれ込んでいるのだろう。

 羨ましい、俺も明日菜とチュッチュしたかった。

 

『……間に合ったようだね』

 

「うーん、これ普通にネギくんとエヴァのイベントだよな。

 本当に彼女たち死ぬのか?

 というか今なんとなく隠れてるけど急いで行った方が良くね?」

 

『いや、まだだ。不確定要素が乱入すれば彼女は即座に排除に動き出す。

 おそらく彼女も測りかねている。願わくばこのまま退いてほしいのだが……』

 

 何やら事情を知っていそうな精霊だ。

 だが、今はネギくんたちを救うために動くべき。

 

「で、今のうちに詳細を聞きたいんだがね?」

 

『まあ待ちたまえ、こういうのは待ってこそだよ。

 ……正直、君にどれだけ情報を与えるべきか悩んでいてね、このまま彼女が退くなら何も問題なく、帰って寝てもらって構わないんだけど』

 

 まどろっこしいやつだ。

 

 その後も問い掛け続けるも精霊殿は一向に口を開かない。

 そうこうしているうちに、二人の戦いも終わってしまった。

 

 麻帆良の停電が早めに復旧したために、学園結界が復活、エヴァにかけられた呪いが即座に発動してエヴァ落下。

 それをネギくんがまるで王子様のように助けて一件落着。ちゃんちゃん。

 

「おい、終わっちゃったぞ?

 まさかブラフか?

 あいつの姿なんてどこにもーー」

 

 ぞくり。

 その時、俺の全身を怖気が走った。

 前世今世含め、感じたことのない、魂まで震わせるような恐怖。およそ予想し得る範疇にない圧倒的な恐怖。

 もしくは霊長類として、地球の生命としての本能からの恐怖。

 

 あらゆる絶望を混ぜ合わせたかのような絶対的な存在感。

 

 俺は、震えることもできない手足を無理に起こしてなんとか、その根源へと目を向けた。

 そこにはーー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あ、名簿に『僕が勝った』て書いとこ」

 

「何すんだ貴様、やめろー!」

 

「えーと、仲直りってことでいいの?」

 

「……どうなんでしょう?」

 

 やいのやいのと橋の上で騒ぐのは、先ほどまで激戦を繰り広げていた四人の男女。

 学園結界の復活により辛くもエヴァに勝利したネギと、結界のせいで負けてしまったエヴァ。ついでに命まで助けられてしまった。

 

 とてもこれまで殺し合いに近い戦いをしていたとは思えないほどの空気。だが、それこそが彼らの長所であり……短所でもあった。

 

「っ!!!!」

 

 最初に『ソレ』に気付いたのは、同じ吸血鬼種であるエヴァであった。

 

「? エヴァンジェリンさん?

 いったい、どうされーー」

 

 遅れて、ネギがその『絶望』の存在を感じ取る。

 それでも、二人が『ソレ』に直接目を向けるのにはしばしの時間がかかった。

 根源的な恐怖、種としての『優先順位』。『星』から定められた無慈悲な『優劣』。そして、()()()()()()()()()という直感が、何よりもそれを直視することを拒んでいたから。

 

「っ!! レーダーに反応! マスター!!」

 

 科学技術にて『ソレ』の反応を察知した茶々丸が叫ぶ。それは恐怖からではない、ただ、マスターの身に最大級の危険が迫っていたから。

 しかしエヴァにはそれに応える余裕はなかった。

 

「え、ちょっとどうしたの茶々丸さん?

 ……ネギも、エヴァちゃんも」

 

 魂まで凍りつく二人に、明日菜だけが困惑していた。

 

 そして、そんな彼らの元にゆっくりと、『ソレ』は舞い降りる。

 

「探したわよぉ、おチビちゃん」

 

 身に纏うのは至って普通の服装。白のハイネック、紫色の長いスカートとそれだけなら普通の人間と変わらなかった。

 ……ただ、美しい金髪と真っ赤に輝く瞳さえ除けば。

 

「あ……れ……?」

 

『ソレ』を視界に捉えたことでようやく明日菜の全身は『理解した』。星が遣わした大いなる存在、人類の上位存在、あまねく人類種の律者。身体の奥底にある地球生命としての叫び(本能)を。

 

「エヴァンジェリン・A・K・マクダウェル。

 別に恨みとか無いんだけど、人類のため、志貴のためにーー

 

 ーー殺すわ」

 

『ソレ』から暴力的なまでの覇気が放たれた。

 ただでさえ直視することを拒んだ身体は最早、全てを差し出す以外の行動を取れない、全てを諦めることしか理解できなかった。

 

 そんな中、この中でも一番の年少たる『英雄の卵』は理性で無理やり脚を動かし前に出た。

 

「ぼ……僕の、生徒……手を出すな!!」

 

 震えることを理解した身体はもはやそれ以上の動きを拒否していた。それでも、彼女を前にして動くことを()()()()()彼は人類でも稀な存在である。

 

「へぇ……やるじゃない、少年。

 ……でも、アレだけは殺さないといけないの。悪いけど、邪魔するならみんな殺すわ」

 

 だが、無慈悲な執行者は少年のなけなしの勇気を消しとばした。的確に狙って飛ばされた強烈な殺気にネギは尻餅をついたままその動きをとめていた。

 

「さぁて、じゃあお仕事始めましょうか」

 

「待てよアルク」

 

 ゆっくりと歩みだした彼女の前に、本を小脇に抱えた彼は立ち塞がった。

 個体として彼女は彼を認識している、覚えている。しかしなぜここにいるのか、なぜ邪魔するのかは分からない。

 

「……なんのつもりかしら、リツカ。私、今忙しいんだけど」

 

 故に、邪魔をするなら殺すだけである。

 たとえ志貴が悲しむとしてもその命には代えられないのだから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 怖い。怖い怖い怖い。

 

 あらゆる恐怖が、絶望がこの身に襲いくる。

 早くその場から去れ、と。目をつけられる前に逃げ出せと。

 

 だが、理性はいたって冷静である。

 それはさっき出会ったばかりの精霊の言葉のおかげか、もはや正体不明のアレに賭けるしかない自分が情けなくて。

 それでも、使えるのなら使う、と判断した。或いは魂のーー

 

「そこ、どいてくれない?」

 

 いつも、とは違う彼女。

 星の触覚、物理法則の頂点にある真祖の中でも頂点とされる金色の姫君。堕ちた真祖すら屠る究極の地球生命体。

 

「真祖の姫君、アルクェイド・ブリュンスタッド」

 

「あ、やっぱり知ってたんだ。

 でも、それが何? 知ってるなら分かるでしょ。

 貴方ごときが私の邪魔をしないで」

 

 放たれる殺気は、おそらくこの世の誰よりも強烈なのだろう、比較対象がおらず、そもそも感覚すら最早ないので分からないが。

 

「マスター、マスター!!」

 

 後ろでは再三にわたって己が主人に声をかける茶々丸がいた。

 だか、今は無駄だろう。だってその瞳は既に戦意どころか、生きることすら諦めてしまっている。

 

「くっ!!」

 

 だが、何を思ったか、茶々丸はこちらに向かった急発進。

 そのまま腕を構えてアルクェイドに突撃した。

 まさか、玉砕でもする気か!?

 

「ああぁぁぁぁ!!」

 

「……」

 

 ジェット噴射を利用した高速の拳撃。

 しかし、アルクェイドは軽くを手を振っただけでそれを無力化した。どころか、茶々丸の半身を吹き飛ばした。

 

「っ、茶々丸!!」

 

 その光景にようやく理性を取り戻したエヴァが声をあげた。

 彼女の視線の先では今にも崩れゆく茶々丸が克明に写っている。

 

「ま、すたー……」

 

 ガシャン、と地面に落ちた茶々丸は駆動音を出しながら発声すらできないほどに損傷していた。

 

「ロボットか。

 じゃ、次はお前だね、エヴァンジェリン」

 

 ゆっくりとだが動き出したアルクェイドに、俺は咄嗟にエヴァに声をかけた。唯一、この中でマシに動けているから。

 

「エヴァ、茶々丸を連れて後退しろ!!」

 

「っ!! お前」

 

「早く!」

 

 俺の叫びに、エヴァはすぐに茶々丸の回収に動いた。

 

「あー、ちょっと。逃がすとかそれこそあり得ないから」

 

「待てよ。お前の相手は俺がしてやる」

 

「は?」

 

 彼女の前に立ち、()()()()()()()()()本を開いた。

 

『はろー、じゃあさっき言った通り、やってみようか』

 

 まさか彼女を前にしても狼狽えないこいつに少し不気味さを覚えたが、とにかく精霊の言う通り地面に本を叩きつける。

 

『いったぁ! そっと置いてくれよ! 表紙が傷んじゃうだろー!

 ……全くもう』

 

 精霊の声を無視して、()()()()()()()()()()()()()

 そして、想像した。

 

『いいよぉ、もう少し具体的に。彼女を倒せる英霊は果たしているかなぁ……?』

 

 こちらを煽るような物言いを、しかし無視して想い描く。

 彼女を、星の絶対者を倒せる英雄を。

 誰でも構わない。

 とにかく、この場を凌ぐことを、アルクェイドを倒せるだけの力を!!

 

「頼む、誰か助けてくれ!!!!」

 

 ねがう。

 それだけを。

 

 瞬間、本から眩い光が放たれた。

 

『よし! 成功だ、お手柄だね!』

 

 精霊の嬉しそうなその声、視界は光に染まった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ガシャン。

 

 重苦しい鎧の音がする。

 

「……全く。不甲斐ないにも程があろう」

 

 傲岸不遜なる『王の声』が響く。

 

 

 

 ガシャン。とまた一歩、『彼』が歩みを進める。

 

「だが此度は許そう。何せ、貴様は『前世』にて俺への忠節を尽くした功がある」

 

 ひどく愉快そうな声がする。

 

 

 

 

 

「古き神を経て……今度は人間どもの『法則(ルール)』に沿ってまで律することを望むか。クク、愉快愉快」

 

 

 やがて、光が収まり代わりに眩い『黄金』が視界を占領した。

 

 

 

「その惨めな走狗を、よりにもよって我が前に晒すとは」

 

 

 この世のあらゆる財を手に入れた王にのみ許された黄金の甲冑、財という点において敵うものは存在しない孤高なる王。

 

 

「だが許す。此度の(オレ)は機嫌が良い。

 そこな雑種の献身に感謝するのだな」

 

 

 過去未来現在、この世の隅々、あらゆる真理すら見通す最高位の千里眼を有し、世界最高の頭脳と謳われたホムンクルスを知で圧倒し。

 その溢れんばかりの豊富な財と、それに基づく圧倒的な戦力によってあらゆる英霊を討ち滅ぼす英霊。

 

 

「精々、(オレ)を楽しませてみせよ。星の化身よ」

 

 

 神々が創り出した最高傑作。天と地をつなぐ楔でありながらそれらを決別させた王。

 人類最古の叙事詩に語られる孤高にして絶対なる王。

 

「……何を惚けている。戦の支度をせい。

 これは貴様の度重なる功に対する褒美である。

 死ぬ気で我の期待に応えてみせよ、雑種」

 

 凶悪ながらも今は頼もしさしか感じないその笑顔。

 

 

「英雄王、ギルガメッシュ!!」

 

「不敬にも我の名を呼び捨てるか。

 だが許す。我が退屈を紛らわせ続けた前世の貴様の献身、星の化身の討伐劇にて労おう。

 ……分ったならば伴をせい。

 

 此度の宴、我も久方ぶりに本気を出してやる」

 

 

 

 ーー英雄の中の英雄、絶対なる英雄王がここに降臨した。

 

 

 





ちなみに本作のギルガメッシュは絆10です。
キャスギルも10です。

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