一般人生徒リツカ!   作:ブタどもの一人

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タイトルモロバレシリーズ。

特に意味のない話がこの閑話シリーズ。

まあ、fgoの体験クエストみたいな感じで一つ。




閑話 山門の守護者

 桜咲刹那。

 

 麻帆良学園長・近衛近右衛門の孫にして関西呪術協会長・近衛詠春(このええいしゅん)の娘、近衛木乃香(このえこのか)の護衛役を務める少女である。

 

 一応、近衛家の一員に数えられる彼女だが厳密には彼女は京都神鳴流を受け継ぐ血を持っていない。

 彼女は親もなく家もなく彷徨っていたところを、近衛詠春により保護され養子として迎え入れられたのだ。

 

 なぜ、年端もいかぬ少女がそのような経緯を持っているのかと言えば、それは彼女の生まれが原因となる。

 

 彼女は、人間と烏族(うぞく)の間に生まれた混血(ハーフ)。加えて、持って生まれたその翼は一族では禁忌(タブー)とされる純白の翼であった。

 これらの事情により彼女は嫌われ恐れられ虐げられて住む場所も追い出されたのだ。

 事の詳細については語るべき時にないが、これらの経緯により刹那は近衛家の加護に入ることになる。

 

 その際に、詠春の一人娘である近衛木乃香と仲良くなり川で溺れかけた一件で彼女を守り抜く決意をするのだが、それもまたここで語るべき話ではない。

 

 今回重要なのは、彼女が近衛家に入るにあたって顔見知りとなった一人の『剣士』との交流である。

 

 

 

 

 

 

 刹那が初めて彼にあったのは、近衛家に入る時だった。

 

 傷付き衰弱していた彼女が、詠春に抱えられながらもぼんやりと彼の姿を見たのが最初。

 

 なにやら慌てた様子の詠春と、至って冷静に話を聞く彼。

 やがて意識の薄れた刹那はこの時はそれ以上のことを知らなかった。

 

 

 近衛家に入り、木乃香と遊ぶようになって久しく。その頃になってようやく彼のことを知るようになった。

 曰く、彼は山門の門番を務める剣士らしい。

 とはいえ近衛家のある本山には強力な結界が張られており、彼も四六時中門番をする必要もなく、夜には家の者たちと酒を飲んでいることもあった。

 使用人やその他親戚によれば形だけの門番らしく、腕は立つらしいが詳しくは知らない人ばかりだった。

 

 

 

 ある日、ふと気になった刹那はいつも通りに門番を務める彼に声をかけた。

 

「門番さん、あなたはどうして門番をしているの?」

 

 純粋な疑問。必要がないならば別にしなくていいのでは、と。

 しかし彼はふっ、と笑ってから刹那の頭を撫でた。

 

「門番には縁があってな、別に好きというわけでもないが『主』に頼まれた故に、勤めているまでよ。

 それに、門番をしていると何かと落ち着く」

 

 どこか遠い過去に想いを馳せるように語る彼に、しかし幼い時分の刹那は不思議そうに小首を傾げた。

 

「でも、ここには“けっかい”があるから門番は必要ない、ってマホさんは言ってたよ?」

 

「ははは、マホさんとはあの使用人の女子(おなご)のことだな?

 そういえば、何度か彼女を酒の席に誘ったことがあるが」

 

 意外と軟派な人なのかもしれない、と当時の刹那は思った。

 

「……しかしな、いくら“結界”を張ってもそれを超えて来るものが居らぬとは限るまい。事実、この山門は結界の一番弱い部分ゆえにな。

 ならば、ここを超えんと襲い来た強者(つわもの)と果たし合う機会にも恵まれるかも知れぬ、そう思い、ここで静かに待っておるのよ」

 

「? おじさんはたたかいたいの?」

 

「おじ……いや、まあ、そうだな。戦いたい、のかも知れぬ。

 幾たびの時空を超えて来たりてみれば、平和の世。かつての主人殿の時代と変わらぬようだが、戦が足りぬ。

 この刀も振るわねばいずれ錆びついてしまおう」

 

 そう言って背中に背負った長すぎる太刀の柄を撫でる彼。

 その顔は嬉しさの中に哀愁を秘めた複雑なものであった。

 

「せっちゃーん!」

 

 屋敷の方から幼い子どもの声がする。

 

「ふむ、どうやらお嬢様が呼んでおるようだぞ?」

 

「あ、うん! またね、おじさん!」

 

「おじ……」

 

 元気に手を振り去る刹那、その背中を彼はなんとも言えない顔で眺めていた。

 

 それからも刹那は時折、門番を務める彼のもとに来ては談笑するようになり、いつからか彼も過去の話をポツポツと刹那に聞かせるようになった。

 というのも、ポツリと漏らした過去話を刹那が聞きたいとせがんだからなのだが。

 

「おじさん、今日もおはなしして!」

 

「ふむ、それはともかくおじさんは無いのではないか?

 ほら、見た目はまだ若く見えよう?」

 

「おはなし!」

 

 度々、彼も呼び方に関して抗議することがあったがいつも聞き入れられず仕方なくおじさん呼びを許すことになった。

 

「では、今日はかの名高き剣豪・宮本武蔵と斬り結んだ話をしてやろう」

 

「わーい!」

 

 ドヤ顔で語る彼だが、普通に考えて時代的にあり得ない話である。しかし刹那はまだ子ども、細かいことは分からず気にしなかった。

 

「アレは拙者が下総国に呼ばれた時のこと。

 当時は何のために呼ばれたのか、甚だ分からずとにかく飯と宿の恩は返さねばと“妖術師殿”に従っていた。

 しかし、この御仁、なかなかに面白い男であった……ああ、これは聞かせる話ではないな。

 

 とにかく、この妖術師殿はだな実は下総国を滅ぼさんとする悪い妖術師だったのだ」

 

「えぇ!? じゃあおじさん悪者なの!?」

 

「はっはっは! しかし拙者も一宿一飯の恩義がある。悪さに手を貸したことはなかったが、言いつけだけは守った。

 まあ、安心めされよ。悪い妖術師はかの宮本武蔵が討ち取った」

 

「よかったぁ……そうじゃなきゃわたしたちも“あんしん”してくらせないよね」

 

「その通りだな。

 まあ、その際に拙者は宮本武蔵と出会い勝負を挑んだ!」

 

「なんで!? 悪い人をたおしたんだからいい人でしょ!?」

 

「そうだろうな、しかし剣の道を行く者にとって善悪はさほど重要なものではないのだ。

 腕の立つ剣士、それも東西無双の域にある剣豪ともなれば、拙者も刀を抜かずにはいられまいよ」

 

「うーん、わたしわかんない!」

 

「はは、それでよい。分かる必要はない、お主はまだ子どもだしな。

 結果はまあ、負けでしまったのだがな」

 

「あたりまえだよ! みやもとむさし、は強いんだから!

 おじさんじゃかなわないよ!」

 

 子ども特有の容赦のないもの言いに彼は内心傷付いた。

 

「その通りなのだがな……改めて言われると来るものがある」

 

 

 

 それからも何度も話をせがみにきた刹那へと、彼は様々な話を聞かせた。

 彼が剣の道をいくきっかけとなったとある老人との戦い。彼が世界に刻まれる要因となったとある地方都市の戦い。その際に世界の名だたる英雄と斬り結び、尽くを退けるも西洋の女騎士に斬り伏せられたこと。

 そして、“とある普通の高校生に呼ばれ、世界を救う戦いをしたこと”。

 ついでに古代ローマで百人斬りをして歴史に残ってしまったことも。

 

 未だ無邪気な刹那に語って聞かせる彼は、側から見ればとても楽しそうに思えたとは詠春の言葉。

 

 幼い刹那にとって、たとえ現実離れした話であろうとも、心躍る話を聞かせてくれる彼は、そのどれもで剣士たる彼は強い憧れの対象となっていた。

 

 

 

 

 

 

 

 更に時が過ぎ、川で木乃香が溺れかける事件が発生し、その際に助けられず結局大人の手で二人とも救われたことに刹那は自らの無力さを自覚。

 今後、何があろうと木乃香を守り通すために力を求めた。

 

 それからは京都神鳴流を師範の元で師事し、厳しい修行に堪え着々と力をつけた。

 その合間にも、神鳴流の任務として依頼を受けていた魔獣の退治や悪しき妖怪の討伐。それら実戦を踏まえた鍛錬の末に、心まで刃と為した刹那は神鳴流でも指折りの剣士となっていた。

 

 その頃には門番の彼の事など忘れ、ただひたすらに斬って斬って斬り捨てることのみを続けていた。

 

 そんなある日。

 刹那はふと、山門の彼のことを思い出した。

 だからと言ってどうということもないが、無性に気になった彼女は久々に山門へと赴いた。

 

「まだ、いらっしゃったのですね」

 

 感情を感じさせない声。しかしどこか嬉しそうな雰囲気を彼女は出していた。

 

「ほう、誰かと思えば、あの幼子か。

 随分と、大きくなったものよ」

 

「あなたは、あの頃と全く変わりませんね」

 

 刹那の言う通り、彼の姿は幼い頃と全く変わらなかった。あの頃には美青年であった彼は本当ならもう少し老けているはず。

 魔法使いであればさして珍しくもないのかもしれないが。

 

「……しかし、胸は育たなかったようだな」

 

「ちょ、今せっかくしんみりしてたのに!」

 

 どこか憐れみを込めた視線と言葉に刹那は反射的に胸を腕で隠して吠えた。

 

「とはいえ、美しく育ったことには変わりあるまい。

 将来はさぞ美人になるであろうな」

 

「はぁ……その飄々としたところも、お変わりないようで」

 

「はて、そう軽薄であるつもりはないのだが。

 それに、お主が美しいというのは事実。拙者は女子を口説く時も至って真剣なのだが?」

 

「は、はぁ!? じ、冗談はほどほどにしてください!」

 

 なぜか無性に焦りを覚えた刹那はそう吐き捨てて稽古場へと走って行った。

 

「……まあ、あまり気負い過ぎなければ良いが」

 

 

 

 

 

 

 

 その後、多くの鍛錬に日々を費やした刹那は、守るべき主人であり親友でもあった木乃香と会うことは殆ど無くなっていた。

 それでも、まだ足りない、と一層の鍛錬に励んだ刹那は時が来て、麻帆良へと入学することになった木乃香の護衛として共に麻帆良に赴くことになった。

 その手続きについての話を長である詠春としていた時のこと。

 ふと気になった刹那は詠春に門番の彼について尋ねた。

 

「え、彼?

 うーん、そうだなぁ、あまり詳しいことは言えないけどね、かなり強いよ。だからこそ山門の守りを任せている」

 

「では……長とどちらが強いのですか?」

 

 この頃になって、やはり結界があるのに山門に守りを付けていることに非効率であるとの疑問が刹那の頭には残っていた。

 それゆえにこのような問いを投げた。

 彼女としては当然、神鳴流の剣士としても凄まじい実力を持つ詠春の方が上だと考えていたのだが。

 

「そんなの()()()()()()()()()()()()()()()()()

 というか、比べるのも少し恥ずかしいくらいだよ」

 

「え……」

 

 なんてことないように語った長の言葉に、対して刹那は言葉を失った。以前よりそれなりに強いとは聞いていたが、不要な門番を務める彼が戦ったことは殆どなくその戦闘を見た者など皆無であった。

 だからこそ、彼の実力をまだ知らないということに彼女は気付いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「試合?」

 

「ええ、長は自分よりもあなたの方が断然強いとまで言いました。しかし私にはそれほどの腕を持つようには見えない。

 だから、この目で確かめたいのです」

 

 自らの愛刀・夕凪を腰に提げ刹那は言った。

 

「門番などこの地には不要。それなりに腕が立つのならば魔獣退治に出てもらった方がよっぽど利になります。

 それでも惰眠を貪るというのなら、私がこの手で叩き出します」

 

「つまり、お主が勝った場合は拙者に門番の任を降りろ、と?」

 

「ええ。代わりに妖怪退治でも魔獣退治でも、実力に合った仕事についてもらいましょう」

 

 刹那とて、それらを決める立場にも無ければ興味なども本来無かった。しかし、なぜかどうしても彼に関してだけは興味を捨てきれなかった。

 だからこそ腕がありながら不要な任につく彼に納得がいかなかった。

 

「良いだろう。真剣で構わぬ、いつでもかかってくるがいい」

 

 しかし、構えも取らぬまま、ただそのままに立ったままで彼はさらりとそんなことを宣った。

 まるで構える必要もない素人だ、とでも言いたげだ。

 そう思った刹那は無性に腹が立った。

 

「……では、そうさせていただきます!!」

 

 手加減など不要、寧ろ、してやるものか、と刹那は接近すると共に全力で刀を抜き放つ。

 が。

 

「なっ!?」

 

 あっさりと、構えるまでもなく容易に彼女の剣は止められていた。

 彼の方は特に焦ることもなく昂ることもなく至っていつも通り。

 

「くっ!」

 

 その後も、刹那はあらゆる型、戦法にて彼を攻め立てた。

 

「奥義・斬空閃!」

 

 ひらり。と躱す彼。

 

「斬岩剣!」

 

 またもひらりと。

 

「雷鳴剣!」

 

 ひらり。

 

「くっ、百烈桜華斬!」

 

 無数の剣撃を素早く放つ。それは一般人から見れば同時に現れたかのような斬撃。刃の群れ。

 しかし、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「ふむ」

 

「そんなっ!」

 

 甲高い剣戟の音を響かせながら、全ての向かい来る斬撃を捌ききる彼。本来ならあり得ない光景にしばし刹那は硬直した。

 

「おや、これで終わりか?」

 

「っ!! 真・雷光剣!!」

 

 涼しい顔で述べる彼に、刹那は焦りと怒りと、その他の感情を爆発させた。

 

「おっと」

 

 大振りで、剣先に集めた電撃を地に振り下ろす刹那。

 真・雷光剣とは広範囲攻撃に適した技。さすがに直撃はまずいかと思った彼は、即座にその場から飛び退る。

 

「はぁ、はぁ、はぁ……!」

 

 もはや外聞などどうでも良い。とにかく気に入らなかった。

 あれだけ楽しい話を聞かせてくれた彼が、あれだけ戦いたいと言っていた彼が、門番などという形だけの仕事で腐るなど。

 それが、許せなかった。

 

「いや、なんとも凄まじい技よ。もはや剣など関係なくないか?」

 

 ご尤もな意見を述べつつ、煙の奥から現れる彼。

 

「ば、ばかな! 逃げ切れるはずが!」

 

「隙が大き過ぎるな。拙者のような手合いであればそれを上回る速さを持つ技にて攻めるべきだ」

 

 そう言って、一瞬、刹那の視界から消え去る彼。

 ……尤も、彼を超える速さの技など数えるほどにしかないのだが。

 

「なっ!」

 

 次の瞬間には、彼女の首筋に刃を添えていた。

 ひたり、と触れるか触れないかの位置で止まった刃に、刹那は自然と息を飲んだ。

 

「……まだ、続けるか?」

 

 圧倒的な強者。剣技ではまるで歯がたたなかった故に反則とも言える大技で仕留めようとした。

 しかし、それすらもあっさりと逃げ切られた。

 

 完敗。それが今の彼女の状況であった。

 

「……参り、ました」

 

 絞り出すように述べられたその言葉に、彼もゆっくりと剣を納める。

 

「まあ、まだ若い。これから如何様にも成長できよう」

 

 慰めではなく、ただ単純にそう彼は思った。

 しかし、今の彼女には何を言っても慰めにしか、哀れみにしか聞こえなかった。

 

 自然と、歯をくいしばった。

 

 なぜなら、彼女は幼い頃に彼に憧れ、鍛錬によってそれを忘れて侮り、勇んで挑めばあっさりと負けてしまった。

 滑稽。それすらも生ぬるいほどの一人芝居。

 彼女は、ただ、己の浅はかさを呪った。

 こんな体たらくで“このちゃん”を守るなど、と。

 

 悔しい、のだろう。しかし、これだけの強者を前にしてそんな思いを抱けるのはきっとーー

 

「出直してきます」

 

 すっと立ち上がり俯いたままに述べる刹那。

 

「うむ、いつでも受けてたとう」

 

 対して然程気にした風もなくいつも通りに返す彼。

 結局、その余裕を崩すことも出来なかった、と刹那は更に悔しさを募らせた。

 

「お手合わせ、ありがとうこざいました!」

 

 最後に、去る前に潔く頭を下げて礼を述べた刹那。それがせめてもの意地だった。

 

「拙者も、久方ぶりの仕合、楽しませてもらった」

 

 嘘偽りのない言葉。この地に呼ばれてから久しい戦いであったのは確かだった。

 しかし刹那にはそれすらも慰めにしか聞こえない。

 

「っ!!」

 

 溢れる感情を抑えきれなくなった彼女は駆け出した。

 どこへ急ぐ用事もない、しかしとにかくその場から逃げ出したかった。

 

 この仕合で、彼女は悟ってしまったから。

 彼には、一生、敵わない、と。

 

 

 

 

 事実として、それは仕方ないことであった。

 なにせ、彼はーー

 

 





なんで彼がいるのか。
それはアルの言っていた『いないはずの紅い翼メンバー』がなんかしたからです。
別に、重要な内容ではないです。



ぶっちゃけ作者が小次郎好きなだけ(ぼそっ
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