一般人生徒リツカ!   作:ブタどもの一人

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修学旅行までのキツキツスケジュール。
なるべく時間を無駄にしないスタイルで行きたい。





エンディング後のドタバタは割とシャレにならないものもある。

「いやぁ、それにしても一昨日の地震、すごかったねぇ」

 

 麻帆良本校女子中、3-Aの通称・ネギクラスでは修学旅行を来週に控えた興奮にソワソワしている生徒が多かった。

 そんな中で出席番号7番・柿崎美砂(かきざきみさ)が口を開いた。

 

「というか、変な爆発音みたいなのも聞こえた気がするんだけど……」

 

「ねー、なんかお祭りでもやってたのかな?」

 

 なにやら違和感を感じていた同クラスの釘宮円(くぎみやまどか)とちょっとズレた発言をかます椎名桜子(しいなさくらこ)

 

「あ、あのぅ、そろそろ授業……」

 

 途中、チャイムが鳴ったことにも気付かず話し続ける三人組。それを見てオロオロとしながらも注意しようか迷っているネギ先生を見兼ねて、クラス委員長たる雪広(ゆきひろ)あやかが声をあげた。

 

「はいはい、三人とも!

 これからネギ先生が授業をなされるというのに、私語は慎みなさい!」

 

 鶴の一声とはこのこと、彼女の叱責により三人はピタリと会話を止めた。

 

「さあ、ネギ先生。授業を始めてくださいな」

 

 満面の笑みを浮かべたあやかがネギ先生へと甘ったるい声で授業を促した。

 クラスの面々にはすでに周知の事実となっているのだが、あやかはショタコンでありネギの生真面目で誠実、礼儀正しい姿に心を打たれて、率直にゾッコンになっているのだ。

 時代を先取りした性癖を持つ女・雪広あやかとは彼女のことであった。

 

「あうぅ……先生の僕が言わなきゃいけないのにぃ」

 

 そんなあやかの完璧なフォローに、ネギは自らの先生としての自信をさらに落とすことになったことをあやかは知らない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はい、戦闘服のメンテ終わったよぉ〜」

 

 ダ・ヴィンチちゃん工房 in.麻帆良にて俺は彼から修理された戦闘服を受け取る。

 

「いやぁ、それにしても。

 防御機構全てズタズタにされるなんて、いったいどんなハチャメチャラブコメディを繰り広げてしまったんだい?」

 

 それについては断固否定……は出来ないが、一般的に考えられるハチャメチャラブコメディでないのは確かだ。

 

「……ええ、色々と。

 心躍る体験をしてしまいました」

 

 一昨日、正確には昨日の夕方までなのだが、俺は二人のサーヴァントから徹底的なお仕置きを受けた。

 まず、戦闘服に防御機構が搭載されているのをいいことに触手やマイクスタンドによる苛烈な責めを受けた。

 詳細は語るだけでもb……いや、縮んでしまうので省くがとにかく凄まじいSMプレイであった。

 続いて、衰弱した俺を触手に絡め取っての緊縛。からの言葉責め、じわりじわりとこちらの精神を抉り取るような言葉に俺は泣き喜び、エリちゃんによる拷問プレイで完全に正気を失った。

 俺の正気度はゼロになった。

 

 

 まあ、それから暫くして悪い子モードが終了したアビーにぬいぐるでビンタされて、裏生徒会のみんなに救助された。

 その際にはくのんによるエリちゃんお説教会が開かれていたとのことだが、残念ながらその際に俺の意識はなかった。

 当然、戦闘服は壊れていたのでダ・ヴィンチちゃんに修理に出され先ほど目が覚めた俺は彼から受け取ったということ。

 

 

「心躍るって……さすがの私もドン引きなんだけど」

 

 いいじゃん、本人が喜んでんだから。

 有り体に新たな扉を開いてしまったというやつだ。

 詳細は省こう。なんかここで語っちゃいけない気がする。

 

「いやまあいいならいいんだけどさ。

 それより、体調どう?」

 

「ん? めっちゃ元気だよ」

 

 なんか疲れが取れた気もする。

 どうやら彼女らのプレイは疲労回復の効果があるようだ。

 定期的にお願いするか。

 

「いや、そんなことで毎回壊されたくないんだけど……まあ、ついでに強化もしといたけどさ」

 

 お、やっぱダ・ヴィンチちゃんは優秀。

 素直にありがたい。

 これでもっと激しいプレイが行える。

 

「……ていうか、君の胸下に入ってたコレ、なに?」

 

 ジト目に変わった彼がポイっと机の上に投げたのは藁人形。エヴァからもらったお守りであった。

 なんか、ダ・ヴィンチちゃんが怒っていらっしゃる。

 

「まぁ? 君が魔法とやらの恩恵に預かりたいのは結構なんだけどね、私が心血注いで作り上げた礼装の保険に使われちゃあ、気にくわないよね?」

 

 拗ねたように頬を膨らませて語るダ・ヴィンチちゃん。そんなに気に食わんかね。

 

「ごめんごめん、いや俺も死にたくないしさ、知り合いの好意を無碍にするのも気が引けて、つい」

 

「へぇ、知り合いね。ざっと見た所、人形作製に長けた人物のようだけど一体どこの誰なんだい?」

 

「え……この学園にいる吸血鬼だけど」

 

「やっぱりか! 君、彼女とも知り合いなのかい?

 いやぁ、物作りの面で何やら気が合いそうな作り方してるからね、ちょっと紹介してくれたりしない?」

 

 やけに食いつくと思ったらそっちが本音か。

 まあ、今は学園とは同盟にあり、エヴァ個人とも交流はあるが。正直な話、ダ・ヴィンチちゃんと気が合うとは思えない。

 ああ見えてエヴァは純情乙女だ、ダ・ヴィンチちゃんの頭一つ抜けた変態具合にはドン引きしてしまうだろう。

 

「まあ、予定が空いてたらね?」

 

「いや、彼女が終始暇してるのは調査済みだよ?

 ほらほら、減るもんじゃないし、ちょこっとだけ!」

 

 そのちょこっとが怖いんだよ。ちょこっとで新礼装とか作っちゃったり何かぶっ飛んだものを作っちゃうのが彼だ。

 もし、エヴァが悪ノリでもしたら大変な事態になるかもしれん。或いはエヴァが男の娘になってしまうかもしれん。

 なんでも起こり得るのがダ・ヴィンチちゃんクオリティだ。

 伊達に同人で媚薬作りやらされてない。

 

「えー、ケチ。いいよ、それならこっちの実験をお願いするから」

 

 そう言って取り出したるは、俺が頼んでいた礼装の一つ。

 その形状は、一言で言うならばブレスレット。

 

「『擬似霊器変換機』、その名も『ダ・ヴィンチちゃんブレス』!

 これを使えばあら不思議、君の英霊が別クラスに変身するぞ!」

 

 七色に輝くブレスレット。中央に取り付けられた機械の真ん中にはハートマーク。どっかで見た記憶はあるが思い出せない、がなんとなくパチモンなのは分かる。

 

「とりあえず、外見、どうにかしようか」

 

「えー、いいじゃないかプリティで。キュアってしそうじゃない?」

 

 アウトである。

 しかもかなり古いし。今はなんかタッチパネル式だったと記憶している。前世の話だけどね。

 

「まあ、真面目な解説をするとその名前の通りに擬似的に霊器を変換する装置だよ。最後の詰めが難儀したけどそこは『精霊』の助力でね。

 もちろん制約があって、『過去に変異した記録』がある英霊にしか扱えない。そして成れるのは当然、過去になったことがあるクラスだけだ。ついでに時間も限られてるがそれは同封した説明書を見てくれ」

 

 要は別クラスに突然変異してしまった元となった霊器があればよいということ。

 お察しの通り例のお方専用である。

 

「細かく言うと、乖離が激しい別側面とかはまだ『演算』が不安定だからやめといた方がいいけどね」

 

 なるほど。

 それはヴラドとかヴラドの話か?

 それとも乳上と無乳上の話か?

 

「要は夏のアレとかハロウィンのアレしか対応してないってことさ」

 

 アレね、理解した。

 これで限定水着サーヴァントなんかも元の霊器一つで……って。

 

「いないし!

 エリちゃんもアビーも夏仕様になったことないよ!」

 

 惜しむらくは2018年の夏を迎える前に死んでしまったことか。無念。

 

「まあ、そこらへんは素直に水着きてもらえばいいんじゃない?

 わざわざ霊器変える方がどうかしてるからね?」

 

 ごもっともなお言葉。確かに無駄なコストである。

 それに、変換とかさらっと言ってるけど簡単なことじゃないからね。

 

「今の所、例のトカゲ娘専用ではあるが、研究を進めればなんとか別の英霊でも使えるようになるかもね」

 

「いや、これで十分ありがたいよ。

 感謝してる、ダ・ヴィンチちゃん」

 

 エリちゃんはアイドルサーヴァントである。その戦闘能力に関しては正直な話お粗末なものであるのは確か。

 そこそこ強いサーヴァントに出てこられたりしたら正直厳しいのが現状である。まあサーヴァントに匹敵する敵とか早々いないのだけどね。

 

「ふふ、どういたしまして。

 ああ、でも、あまり無茶なことはしないように。

 さっき言った通り別側面とかそういうのは無理だからね。具体的に言うとアルターエゴとか」

 

「わかってるよ。最初はキャスターあたりから試していこうと思ってる」

 

 fgo初の配布サーヴァントにして、エリちゃんの記念すべき初クラスチェンジだ。あ、いや、バーサーカーとか既にやってたけどアレはノーカンで。

 あくまでゲームの話だが使い勝手がいい性能をしていたと記憶しているし、暴走の危険性が低い、あるいはやらかす可能性が比較的低いことにある。

 

 もし間違ってバーサーカーとかになられたら死ぬ自信がある。言い含めておく必要があるか。

 

「ああ、あとね。

 ……君の身体のことなんだが」

 

 少し言いにくそうに告げる彼に俺は首を振った。

 

「理解してる。だからこそ『例』の開発も進めてくれ。いざとなれば精霊に頼んで新たな、それこそ『存在を昇華する術』を知る奴でも召喚するさ」

 

「そうか……君がいいと言うなら私もこれ以上はやめておこう。あくまで君は君なのだからね、自分の思うようにしたまえ。

 もちろん、君のサーヴァントである私も手を貸すよ」

 

 慈しむような眼差しを向ける彼に、俺は目を合わせられなかった。

 

「ありがとう。……じゃあ、また明日」

 

 そう言って彼からもらった『ダ・ヴィンチちゃんブレス』というキワモノを手に工房を出た。

 

 

 

 

 

「おお!? 目が覚めたのかリツカ!」

 

 廊下にて偶然にも衛宮に遭遇した。

 一瞬驚いてからすぐに嬉しそうにこちらの背中を叩いてきた。何処と無くおっさん化が激しい気もするが彼の事情を考えれば致し方あるまい。

 遠坂さんとはお楽しみでしたね!

 

「はは、まあ敵に痛めつけられたわけじゃないからね。愛の鞭と考えればどうってことないよ」

 

「そういう基準なのか……?

 いや、とにかく無事でよかった。お前に何かあったらきっと志貴さ……遠野も気をやるだろうし」

 

 遠野志貴。俺が気を失う前に、あの戦闘の後に会ったのが最後だが今どうしているのだろうか?

 アルクも死んでいないはずだが。

 

「……アルクェイドは無事だ。今はキャスターの生命維持装置に入ってるよ。回復に時間はかかるそうだが命に別状はないと。

 遠野は……まあ、彼女の側に、な」

 

 彼ならばそうするだろう。

 伊達に月姫やってない。

 

「そっか……まあ、無事で何よりだよ、って俺の言えた義理じゃないけどな」

 

「遠野には事情をちゃんと説明してある。彼もちゃんと理解している。だからお前はーー」

 

「分かってる。分かってるから大丈夫だ衛宮」

 

 遠野志貴は優しい男だ。ゲームだと世捨て人めいた面があったが、高校で出会ってから見ていた限り、そういった面は無くなっていた。

 その原因はおそらくアルクだろう。

 

 加えて彼は惚れた女には一途だ。少々朴念仁気質ではあるがアルクの明るさがあればそれも関係なくなる。

 

 だからこそ、俺は彼に会うべきではない。

 

 時が解決するなんて言うがそんなのまやかしだ。人間は時と共に憎悪を募らせ、時と共に愛を忘れていく生き物。

 たとえどんなに長い期間を愛しあっていたとしても一時の不幸で全てが水泡に帰すものだ。

 俺は痛みなき愛など信じない。

 少なくとも心の底から信じることができない。

 どうしても、そこに辿り着けない。

 

 主人公にはなり得ない。

 

「……そういやダ・ヴィンチちゃんから実験頼まれてたんだ、じゃあまた明日な衛宮」

 

 彼の返事を待つことなく俺はその場を去った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「で、これがその礼装ね」

 

 帰宅後、エリちゃんに『ダ・ヴィンチちゃんブレス』を手渡した。

 

「うわぁ! これすっごい可愛いじゃない!」

 

 エリちゃんは昨日のことなど忘れたようにケロッとしている。

 はくのんのお説教は一日で頭から吹き飛んだようだ。

 

「ああ、待って。

 これ一応、試験機らしいからね。今回はエリちゃんに実験台になってもらいます」

 

「な、なんか怖い言い方なんだけど、分かったわ!」

 

 いいんかい。でもそれがエリちゃん。

 細かいことは気にせず己の思うように生きている。

 

「じゃ、それ付けて……あ、まだ触らないで。これマジで危険だから。下手したら霊核吹っ飛ぶからね」

 

「えぇ!? そんな危険なものを、私に」

 

 嘘である。たぶん大丈夫。

 俺は同時に渡されていた説明書に目を通す。

 

「えーと、『本機は霊器変換専用の礼装です。特殊なプレイに使用したりしないでください』」

 

 するか。ブレスレット使うとか特殊過ぎるだろ。

 使うのならせめてスティックである。

 

「……とりあえず、ハロウィンで毎回変身してた奴は大丈夫そうだってさ。まあ最初は無難にーー」

 

「ハロウィンね! よーし、行くわよぉ、ポチッとな!」

 

 アウトである。俺の言葉を聞き終える前にエリちゃんはハートマークをプッシュした。説明する前にエリちゃんに渡すべきではなかった。

 ポチっとなって「エリちゃ〜ん、変身!」と謎のポーズをとったエリちゃんは光に包まれた。

 何もかもが手遅れ。

 これがゲームオーバーの光にならないことを、俺はこの時、ひたすらに願っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 やがて光が収まり、視界が明瞭となる。

 

「ううん、なんか何も変わってない気がするんだけど」

 

 目の前にはさっきと変わらぬエリちゃんの姿。怪訝そうに眉を顰めている。

 なにやら良からぬ予感がする。

 

 と、その時、ガシャンという何やら床が抜けたような音が部屋に響いた。

 とっさに目を向ければーー

 

「……重量過多による崩壊。もう少し強度を上げるべきですね。聞いてますか、貴方に言っているのですよ」

 

 随分とメカメカしい姿になられたエリちゃんのお姿。

 ……いや、現実を見よう。

 崩れた床に嵌ったメカエリちゃん初号機の姿がそこにあった。

 ちょっと、恥ずかしそうにしているのは体重で床が抜けてしまったからか。ここが一階で本当に良かった。じゃなきゃ下階の生徒を押し潰しながら下に落下していたところだ。

 

「あわわ……」

 

 当のやらかした本人たるエリちゃんは、メカエリちゃんを見てひたすらにあわあわ言っている。使い物にならないのは知ってた。だがそこがいい。

 

「ちょっと。呼んでおいて無視ですか?

 随分と偉くなりましたね、()()()()()()()()

 

 若干キレ気味のメカエリちゃん。本当は恥じらいに頬を染める彼女をもう少し眺めていたかったのだが。

 そろそろ出した方がいいだろう。じゃないとロケットパンチで塵殺されるかエリちゃんドリルでミンチにされてしまう。

 

「…………ごめん、どうやって出したらいい?」

 

 だが、実に4tという大重量を俺の手で引き上げることは不可能だ。かといってジェット噴射を使えばこの部屋は木っ端微塵になるだろう。

 

「まったく!

 心が堕落したと思っていたらどうやら脳味噌まで腐ってしまったようですね。

 これでは候補生からも除名せざるを得ません!」

 

 静かに憤慨するメカエリちゃん。

 どうしよう可愛い。可愛いけどこのままではまた礼装が粉砕されてしまう。今度はダ・ヴィンチちゃんにガチギレされてしまうだろう。早く救い出さねば。

 ああ、でも写真だけは撮りたい。

 

 

 

 

 俺は迷った末に後者を選び、見事に礼装ごと肋骨を半数ほど持っていたかれた。

 

 






結局、エリちゃんパンチで壁は粉砕されました。
彼女の詳細は次回やります。


真面目な話、京都は色々とカオスでシリアスで激闘になる予定。
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