一般人生徒リツカ! 作:ブタどもの一人
短いです。
あと然程重要なことは起こりません。
「……おそらく、『ブレス』の誤作動。或いは突然変異?
まあ、事故だねこりゃ」
「なるほど、事故か」
いや、そんなの見りゃ分かるよ!
俺が知りたいのはなんで誤作動起こしたら新たなサーヴァントが増えちゃったのかってこと。
いや悪いのは俺だけどさ……。
「メカエリチャンの回収に部屋の修繕、おまけに君の礼装をまた修復して肋骨の再生……って、なんか私の予想以上に大惨事になってるよね」
それがエリちゃんクオリティ。色褪せない魅力がそこにはある。
「あと君、まだ治ってないからね?」
「何のこれしk……コフッ!?」
突然の吐血。溢れた鮮血が布団を濡らした。
あと胸が痛い、物理的に。
それにこれ某人斬り病弱セイバーの持ちネタだから!
俺がとっちゃいかんでしょ!
「あーあー、言わんこっちゃない。ほら、胸、見して」
しょうがないなぁ、と俺の纏うワイシャツの胸元に手を伸ばすダ・ヴィンチちゃん。
問答無用でボタンを外して開く。
「だ、大胆だな」
「おや、『そっち』の触診が必要なら言ってくれたまえ。君ならちゃんと最後まで手取り足取り教えてあげるよ?」
やめてくれ。俺にはエリちゃんという最高のアイドルがいるんだ。まだ子イヌをやめる時じゃない。
「冗談はこれくらいにするけど、結構派手にやられてるねぇ。あと少し威力があったら心臓潰れてたよ」
シャレにならないお言葉だ。まじか、そんなギャグみたいな死に方したくないよ。俺はただメカエリチャンの可愛さを永遠に残したかっただけなのに。
「あ、あの……候補生の容態は、どうなのですか?」
容赦無くグリグリと傷を触りながら治療するダ・ヴィンチちゃんに御慈悲をお願いしていたら、当のメカエリチャンが声をかけてきた。
「んー、だめだね」
「っ!! そ、そんな……」
ダ・ヴィンチちゃんの言葉に、メカエリチャンは呆然として、床にガックシと膝をついた。その衝撃で床にヒビが入る。
「なんて嘘嘘! 頼むから私の工房を破壊しないでくれたまえ!」
今ので割れないなら大丈夫じゃないかなぁ。とか考えていたら騙されたメカエリチャンが烈火のごとく怒った顔で立ち上がる。
「な、そんな嘘つかないでください!
人一人の命に関わることなのですよ!?」
「君がつけた傷だけどね」
「うぐっ!」
そのままダ・ヴィンチちゃんに抗議したメカエリチャンだが彼の一言に押し黙る。
「まあまあ、こうして生きてるんだし。メカエリチャンも加減してくれてただろうし。
もう良くね?」
俺も反省している。いきなり召喚してしまって、いきなり恥ずかしい所を撮られたら誰だって怒るだろう。
俺は変態ではあるが紳士たるべきであった。
「そういうレベルじゃないんだけどねぇ……というか彼女、新規に召喚されたサーヴァントじゃないよ」
さらっと重要な言葉を述べるダ・ヴィンチちゃん。そういうとこホームズに似てると思うよ?
「なっ、あんな腹黒探偵と一緒にしないでくれたまえ!!
私はもっと美しくてチャーミングだよ!」
はいはい万能万能。
「……どうやら君は自分の状況が分かっていないようだね」
そう言ってグリグリと傷を押すダ・ヴィンチちゃん。
「痛い痛い痛い、痛いから!
ごめんって!」
「ふーんだ、もう教えてあげないもんねー」
子どもかっ!
結構重要そうな話だから頼むよ。何でも、は出来ないけどできることはするから。
「よし分かった。エヴァに会わせてやろう」
「やった! リツカくん大好き!!」
むぎゅー、と抱きつくダ・ヴィンチちゃん。
どうでもよくないけど、傷押してるからね?
「まあ、傷はもうほぼほぼ治ってるしね。このくらい平気平気」
俺は平気じゃない。意識飛ぶかと思ったじゃんか。
やはり本人の言う通り治療には向いていないな彼。
「……じゃ、こっから真面目な話。
彼女はアルターエゴだよ」
うん知ってる。アビー攻略に重宝した。
そうじゃなくてさ。
彼女はどうやって来たのか、そもそもどこから来たのか。新規召喚じゃないなら一体?
「あの、Mr.ダ・ヴィンチ……」
「はいミスターとか言ったからバラしちゃうよー」
今日のダ・ヴィンチちゃんは妙なテンションだ。
原因はやはり二度も礼装の修理を頼んであまつさえ俺の治療まで行ったからだろう。
慌てているメカエリチャンを見てほくそ笑んでいる。
「彼女はエリザベートの一側面。それも『この世界に』召喚されたエリザベートから派生したものだ」
「ああ……」
ドヤ顔で真相を述べたダ・ヴィンチちゃんにメカエリチャンは両手で顔を覆って俯いてしまった。
でもごめん、何言ってるか分かんない。
「だから、彼女は
「なるほど、理解した」
メカエリチャンであってメカエリチャンでないと。
つまり、あくまでfgoでの記録を有したメカエリチャンとして、俺が召喚したエリちゃんの中にいた一側面。アルターエゴってわけね。
面倒臭いが、そういうことなら新規のサーヴァントではないという発言もなんとなくわかる。
「要は、ハロウィンでの記録、記憶はあるけどあくまでエリザベートでしかないわけさ」
「む、その言い方には訂正を求めます。
私はオリジナルとは違ってちゃんと『
メカエリチャンは少し不機嫌そうに語る。
「属性はそうなってるね。まあ、君も記録があるなら分かっているとは思うが、ここはカルデアとは違う。人理を守る戦いでもない。補給やその他に関してもーー」
「分かっています。二年もの間、彼女の中にいたのです。状況も、『彼』がどういう存在なのかも理解しています」
そうか、エリちゃんとしての記憶も共有しているわけか。
それってかなりこっぱずかしいのだが。
「……その上で、私は彼を仮の主人と認めましょう。カタチは違えどもオリジナルを大事に思っているのは確かなようですし、その在り方を否定するつもりはありません」
「メカエリチャン……」
「ただし。私がこうして分離したからには、あくまで私は私です。チェイテの守護は『あちら』に任せるとして、メカエリチャンとして正義を執行することに変わりはありません」
そうだ、彼女はあくまでアルターエゴ。エリちゃんと違い『秩序』に生きることを良しとする存在なのだ。
「ごめんな、俺、本物の候補生じゃないけどーー」
「何を言っているのです?
貴方は貴方、彼は彼です。そして私は私。『あちらの私』とは別の個体です」
「メカエリチャン?」
「つまり!
貴方は、まあ、この私の仮の候補生として認めてあげてもいいということ。いや、認めてあげます。泣いて喜びなさい」
つまり、どういうこと?
「だから! 貴方を認めると言っているのです!
全く、思考処理速度まで低下しているとは……あくまで仮であることを忘れないように」
プイッとそっぽ向いてしまうメカエリチャン。
おお、おお……!
まさか本当に、メカエリチャンに認めてもらえる日が来るとは。
「ありがとう! メカエリチャン!!」
感極まって思わず彼女のボディに抱きついてしまう。
「ちょっと!? や、やめなさい!
このボディは鋼鉄製、おまけに敵を殲滅するためのもの!
ただの人間である貴方が不用意に触るとーー」
「ありがとう……」
「っ! ……仕方ないですね。ですが、あまり不用意に触らないように。一応、乙女ですから」
ああ、分かってる。だが、こうも度重なって
俺は、前世よりもはるかに幸運である。
たとえ得体の知れない敵に狙われていても、死ぬような戦いがあったとしても、俺は確かに幸運である。
だって、俺を認めてくれる人がいるのだから。
「私は、本来のメカエリチャンではありません。あくまで記録を有したこちらのエリザベートのアルターエゴ。オリジナルには本来あり得ない秩序を依代とする者。
……なので、貴方がもし、
「……」
「
メカエリチャンは確かに、
「……確かに、君は“あの”メカエリチャンじゃないんだな」
「ガッカリ……しましたか?」
無表情は変わらないが、何処と無く不安そうな声。
全くもって見当違いなことを口にするな君は。
「いいや、愛してるよ」
「…………ほんと、吐き気を催すほどに邪な人ですね貴方は。
悍ましいほどの愛です。私に、愛の本質を理解することは出来ませんが、それが歪んでいることは分かります」
分かっている。歪んでいるのも、汚いのも。
だが、どうしたって善を信じきれない俺はこうするしかない。そうしないと信じられない。
自分も、それ以外も。
ダ・ヴィンチちゃんは少し悲しそうな顔でこちらを見ている。
「ですが、あくまで私は貴方を認めましょう。
チェイテの守護者でなく、エリザベートのアルターエゴたる私は貴方の愛を本物と
その上で貴方を正しき道に導きます。
混沌という『枷』から抜け出した私ならば導けます。エリザベートではなく私が導きます」
無表情でも、その声に熱が篭っているのが自然と感じ取れた。
「ああ、頼む。俺は弱い。吹けば飛ぶような弱者だ。だが君たちを『守りたい』」
俺も、自然と熱くなってしまうのも仕方のないことだろう。
「では、共に守りましょう。私は貴方を守ります」
「俺は君たちを守る。たとえ
「……信憑性100%。まさか本気でそんなことを言う人がいるだなんて。以前の私や『私』は思いもしなかったでしょうね」
可笑しそうに笑う彼女。
「だが本気だ。俺はお前たちが無事ならそれでいい」
「私は困ります。なので守りましょう。たとえ、このボディを失うことになっても」
それは俺が困るなぁ。
そんなことを言い合いつつ、俺は彼女が確かにエリちゃんのアルターエゴであることを思い知らされていた。
「はいはい、ラブコメするのは構わないけどここは私の工房だからね。やるなら自分家でしたまえよ」
パンパンと手を叩いて俺たちを追い出しにかかるダ・ヴィンチちゃん。
「ま、待て待て。まだ礼装の修復が」
「はい。君たちがイチャイチャしてる間に治しておいたよ。……さすがに今日だけで三回目は無しだからね?」
ぽん、と戦闘服を渡してからすごい威圧感で語る彼。反省してる、今日はなるべく大人しくしてるつもりだから。
もう夜だしね。
「じゃあ、あとはごゆっくり〜」
パタン、と入り口が閉じられる。
「……じゃ、帰るか」
「ええ、なんなら私の背中に乗せてあげても構いませんよ?」
「いいや、遠慮しとくよ。風圧で落ちる」
というか、ふと気になったのだが。
「霊体化って、できるのか?」
「サーヴァントです、当たり前でしょう。
……理解しました。この姿で電車に乗るというのは些か問題がありましたね」
そう、メカエリチャンはメカメカしい。まあ茶々丸も十分メカメカしいのだが。
なにより彼女は、重い。
「なぜか、唐突に貴方にお説教をせねばならない気がしてきました。主にレディの扱いについて」
本当に重いんだもん、仕方ないだろ。
「それに、寮の床はダ・ヴィンチちゃんが補強してくれたらしいし、部屋では実体化できるよ」
「当然です。あと、私のメンテナンスは欠かさないように」
分かってる。ダ・ヴィンチちゃんに見てもらうさ。
「……別に、貴方がしてくれてもいいのですよ?」
「え、俺無理だよ。知識無いし」
無理無理、と拒否するとなぜか尻尾でビンタされてそのまま彼女は霊体化してしまった。
……どうやら加減を覚えたらしく生身でも首が吹っ飛ばなかった。
『データはインストール済みです。これで安心してツッコミができますね』
いや結構痛いんだが。
『我慢なさい。男の子でしょ?』
ちょっと楽しそうに言っていることに彼女は気付いているのだろうか?
「まあ、楽しいならいいけどさ」
俺たちはそのまま電車で普通に帰宅した。
補足すると(補足してばっかだなぁ)エリザベート召喚時に混入していた全てのエリザのデータの中のメカエリチャンが、エリちゃんの心の一部になって、ブレスで分離することで出来たメカエリチャンです。
なので、エリちゃんには本来あり得ない秩序の部分が色濃く出ていますがあくまで本作のエリちゃんから派生したモノなわけで。
もうこれわけわかんねぇな。
忘れてください。