一般人生徒リツカ!   作:ブタどもの一人

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空白の二年に関しては、一部フワフワ設定しかないのでしばらく本編のみ投稿します。







旅支度

「というわけで、お主も同行してもらいたい」

 

「はぁ、元からついて行くつもりでしたが」

 

 何がというわけなのか、学園長室に呼び出されて開口一番にそんなこと言われても全く事情が分からん。

 

「やっぱ付いてく気だったんじゃないか」

 

「一応、使い魔という扱いですし」

 

 エリちゃんと俺は運命共同体。どこに行くのも一緒さ。

 

「……真面目な話、ネギくんの京都行きがちと雲行きが怪しくての。関西の魔法使いが彼の京都入りを嫌がっとるんじゃ」

 

 それは修学旅行編の話だな?

 確か、関西呪術協会とやらが関東の魔法使いを毛嫌いしていて、それで引率のネギくんが来るのを拒んでるとかなんとか。

 過去の大戦の強制徴兵が原因だった気がするが、早い話が戦争絡みの怨恨というやつだ。

 

「一応、あちらの長たる婿殿宛に親書を渡すよう言ってあるんじゃが、それまでに何かされては元も子もない」

 

 原作でも天ヶ崎千草(あまがさきちぐさ)が色々とちょっかい出してきた挙句に、木乃香お嬢様を攫って封印されていた鬼神を復活させたりと、なんか大事件になっていた。

 まあ、エヴァやネギクラスの武闘派四天王の活躍で大した被害も出ずに治まるんだけど。

 ただ、この時に初登場となるフェイト・アーウェルンクスだけは注意しておきたい。この当時からすればオーバーキルに等しい戦力なのだから。要は、序盤に出てくる絶対勝てない強敵、イベントボスのようなもの。

 

「……例の件もある。敵が学園を狙っているのか、個人をターゲットにしているのかは分からぬが、『あの方』が姿を見せるくらいじゃ。万が一を考えて君にも付いていってもらいたい」

 

 例の黒幕か。

 まだ姿も見せず目的も分からないのでなんとも言い難いが、強敵には間違いないのだろう。

 まったく、とんだ原作ブレイカーが現れたものだ。まあ、『アルの話』などでそれ以前からこの世界がそもそも俺の知ってるものではないことは薄々勘付いてはいたが。

 

「瀬頼彦くんも同行させる。彼には生徒の安全第一で動いてもらうから、君には有事の遊撃隊としての役目を任せたい」

 

 それが妥当か。もし、英霊に匹敵するような輩が出てきたら俺らでないと対処できない可能性もある。

 しかしそもそもが仕掛けてくるとも断言できない。だからこその人選か。拠点である学園には学園長という最高戦力と他の魔法先生、ネギくんの方は関西の長・詠春などを護衛に使うつもりか。

 

「分かりました。しかし、アビーはまだ入学したばかりですし学園の守りも兼ねてこちらに残らせましょう」

 

 学園にはアビー、それに裏生徒会の面々がいる。キャスターにはアビーへの連絡役を任せ、二人を学園の守りとする。

 俺はエリちゃんと、霊体化させたメカエリチャンを連れて京都行き。相手が何かしてくるのであれば守りの硬い学園でなく、おそらく京都行きの面々となるだろう。

 まあ、何かあればキャスターの方から連絡が来るだろうし。

 

「うむ、では頼んだぞ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 その後、学園長と警備の詳しい内容を詰めて学園長室を去った俺はその足でダ・ヴィンチちゃんの元へ。

 

「おや、リツカくん。いらっしゃい」

 

「ああ、もしかしてこれからエヴァのところへ?」

 

 なにやら外出の支度をしていたダ・ヴィンチちゃんを見て思う。

 

「うん、魔法なんていう未知の技術の研究となればやる気も出るさ。魔法について、今分かっていること、聞いてくかい?」

 

 昨日の今日でもう何かわかったのか。いや昨日あれだけ二人で熱心に意見交換やらしていたら分かるか。

 ちなみに男の娘計画はエヴァがガチ泣きしたので延期になった。二人で平謝りして彼女の機嫌を直すのに時間を使ったために共同研究はあまり進んでない。

 

「ああ、頼む」

 

 情報は多いに越したことはない。

 俺は工房に備え付けの椅子に腰掛け傾聴する。

 

「まず、あの技術は2600年前に開発されたものだ。ここらへんは事前の調査で分かっていたことなんだが、改めてこの目で見て詳細なことが分かったと言うべきか。

 次に、あの技術、人間ではない『何か』の齎したものだと推測する」

 

「『何か』?」

 

「悪魔、魔獣に神仏。色々と候補はあるがこの世界で一番有力だと思うのは魔族だ」

 

 魔族といえば原作でもさして語られなかった種族。もっぱら召喚され使役されている奴らしか出てこなかった。

 魔界は金星にあるらしいがそれも詳しくはない。

 

「ただ、魔族についての情報も乏しくてね。何らかの手掛かりはあるはずなんだが、今はなんとも。

 だが術式を見ていてその癖というか、影響を受けたであろう門派は分かったよ。

 ズバリ、『拝火教』だ」

 

 拝火教といえば、型月ではアンリマユが様々な物語のキーパーソンとして登場している。

 確か善悪二元論を主体とする古くから続く宗教だった気がするが。

 

「アンリくんとか我々カルデアにとっては懐かしい名前が出てくるだろうが、まだあくまで推測だ。詠唱はラテン語に古代ギリシャ語、そもそも魔術の形態と魔法は異なるものだしね。頭の片隅に置いておくくらいでいいだろう」

 

 そうだな。しかし拝火教か。魔法を齎したのはてっきりギリシャ系のオリュンポスとかローマのディーコンセンテスかと思ってたが。

 魔族についても謎が多い。

 拝火教と魔族を結びつけるのは早計だが、何らかの繋がりがあると見ておいた方がいいだろう。

 

「分かった。じゃあ引き続き研究を頼む」

 

「ああ、任せてくれたまえ」

 

 その後、修学旅行中のことについて簡単に伝えた後、俺は工房を去った。

 

 

 

 

 

 

「リツカ!!」

 

 工房を出た廊下で、今度は衛宮ではなくはくのんと出会った。いつもの無表情はどこへ行ったのかとても焦っているように見える。

 

「やあ、はくのん。今日もクラスで三番目くらいにかわいいね」

 

「なんかムカつく言い方だなぁ。

 ……そんなのより。大変なことに気付いてしまったんだ」

 

 俺の煽りもスルー気味にはくのんはちょいちょいと手招きする。

 お、休日の学校で秘密の授業ですか?

 はくのんになら……ああ、だめだ。俺はエリちゃんに全てを捧げると決めている!

 

 はくのんに誘われるままに来てみたのは保健室。やっぱり秘密の授業なのだろうか。いよいよ現実味を帯びてきたR-18展開に俺の鼓動も高まる。

 

「ちょ、顔怖っ……いいから、アレ見て」

 

 保健室の窓を指差すはくのん。なんだなんだ先客か?

 いいぜのぞいてやる。

 

 大人しく覗き込むと、部屋の中にはーー

 

()()()()()()……!?」

 

 この世界にいてはいけないエロ尼が淑やかに座っていた。

 え、どゆこと?

 世界滅亡フラグ? この世界は彼女の玩具(意味深)にされてしまうのだろうか?

 だめだ、ここにはBBちゃんもメルトも、保健室AIの方の桜ちゃんもいない。

 終わった。はい、世界は終わりぃ!

 

「やっぱり知ってたんだ。あの破戒僧のこと」

 

 破戒僧ってレベルじゃねぇよ、歩く18禁というか存在そのものが放送禁止レベルにやばいやつだよ。

 いるだけで世界滅亡だよ。

 

「いや、なんでここにいる?

 まさか、精霊があいつまで呼んだのか?」

 

 それはゼパる。絶対、ゼパる。精霊、死す!

 

「っ、こっち気づいた!

 リツカ!!」

 

 はくのんが必死に俺の袖を引っ張ってくる。

 分かってる、こんなところで死んでたまるかよ!!

 分かったからそんな引っ張るなって!

 

 ガラリ。無情にも扉は開かれた。中からはグラマラス過ぎる尼さんが出てくる。

 思わず固まる俺たちに、彼女はにっこりと笑いかけてきた。

 

「あら、もしかして私の受診に参られた方ですか?」

 

 しかし、俺らとはまるで初対面のような言動。それに、なんだか普通の人みたいな気配だ。

 

「あ、あ、えと……」

 

 見たこともないくらい動揺しているはくのん。小声でアーチャーに必死に助けを求めている。

 丸聞こえだから。

 

「え、と。貴女は、どなたですか?」

 

 思い切って聞いてみる。もしかするともしかするかもしれないし。

 隣のはくのんは「何言ってんのコイツゥ!?」と睨んでいるが気にしない。

 

「私ですか?

 私は殺生院キアラ、この学校にはカウンセラーとして参っております。よろしくお願いしますね」

 

 あくまで礼儀正しく、淫猥さを一切感じさせない綺麗な雰囲気、優しい声で彼女は述べた。

 こいつ、もしかして『キレイな方のキアラ』か?

 

「こちらこそよろしくお願いします。

 ……そうですね、もしお時間あるならば診ていただきたいのですが」

 

 まだ分からない。ならここではっきりさせて置かないといけない。もし汚い方のキアラだったら、今のうちに仕留める、なんとしても。彼女には時間を与えることこそ悪手なのだから。

 隣のはくのんは、得体の知れないものみたいに俺を見ている。

 

「ちょうど本日の予定は終えたところです。構いませんよ。

 ……隣のお嬢様はーー」

 

「実は、彼女とのことで相談があって」

 

「は?」

 

 はくのん、演技だよ演技。そんなガチで嫌そうな顔しないでよ、普通に傷付くよ。興奮するけど。

 

「まあ、恋愛相談ですか?

 私で良ければ、はい。とりあえず中にお入りくださいな」

 

 ポワポワした雰囲気のキアラは俺たちを部屋に招く。そこに邪念は一切なくただただ穏やかな空気のみがあった。

 実に信じ難い光景だが、まだ油断はならん。

 

 保健室のベッドに二人して腰掛け、対面には椅子に座ったキアラ。

 

 はくのんはガタガタと震えている。

 

「粗茶です」

 

「あ、どうも」

 

 ほんのり暖かい湯呑みを手渡される。

 やけどしないように熱すぎずかといって緩くない絶妙な温度だ。

 

「ゆっくりでいいですよ。落ち着いて。

 どんなお話でも受け止めますから」

 

 優しすぎて引く。

 だれだ、こいつは?

 

 はくのんなんか混乱しすぎて目が点になっている。

 目を覚まさせてやるべきか。

 

「え、と。僕たち、学生の身分で、その……い、致してしまいまして。生で」

 

「まあ」

 

「っ!!!?」

 

 一瞬で正気に戻ったはくのんが俺の腕をギリギリと抓っている。

「ありもしないことほざくな」とドスの効いた小声を出すなどという器用なことまでしてる。

 

「俺、どうしたらいいのか……

 先生は、そういったことは、なかったんですか?」

 

 一気に切り込む。

 

「私、ですか?

 そう、ですね……なにぶん、幼少期は山奥で過ごしていたもので。あのお医者さまに出会うまでずっと、一人で。

 学生となってからもずっと勉強ばかりでしたから」

 

 ううーん、嘘を言ってるようには見えない。

 でも、快楽だけでビーストになっちゃうような奴だ。油断はできない。

 ただ、事実なら綺麗なキアラの方の経歴と似ている。汚い方は誰も助けてくれなかったらしいからな。

 

「いえ、こちらこそすいません。いきなりこんな話を……」

 

 性に食いつかないところを見るとどうやらキレイな方?

 

「構いませんよ。

 私は恋愛というものをしたことがありませんから、的確なアドバイスをする、というのはお約束できません。

 ただ、愛というものは年齢に関係なく、育まれるべきものだと思います。ですから、貴方が本当に彼女を大切に思っているなら、そのような道に進まれるのも良いでしょう。

 ですが、他の方よりも一層険しい道となることは心に留めておいてくださいね」

 

 聖女すぎて死ぬ。

 快楽じゃ無くて罪悪感で死んでしまう。

 もう無理。こんないい人に嘘付き続けるとか無理。

 

「……ごめんなさい、嘘つきました。

 今迄の全部嘘なんです」

 

 俺は土下座する勢いで頭を下げる。

 

「まあ!

 ……嘘はいけませんね。ここは真に心に傷を負われた方のための場所。冷やかしは看過致しかねます」

 

 少しムッとしたキアラが述べる。まったくその通りである。キアラだからと少し軽率に過ぎた。

 あと、人を外見で判断しちゃダメだよな。

 

「ですが、なにやら事情があってのことと存じます。宜しければその辺りのお話を聞かせていただけませんか?」

 

 だが次の瞬間には穏やかに諭すように告げた。

 

 もうこれ白だよ、あの快楽天ビーストじゃないよ。

 ちゃんとお詫びして帰ろう。

 

「いやほんとすいませんでした。貴女が知り合いに似ていたものでもしやと思い、試してました。

 本当にごめんなさい」

 

 はくのんが怒ってる。「私にもちゃんと説明しろ」と腕を千切れるくらいに抓ってくる。

 もう出よう、ここにいると、なんか居た堪れなくなる。

 

「そんな、頭を上げてください。私気にしてませんから」

 

 おどおどとこちらに手を差しのべるキアラ。

 そうか、歪まないとこんなにもキレイなキアラが出来上がるのか。歴史とは実に不思議だ。

 

「ほんとごめんなさい。ほら、はくのん出よう」

 

「???」

 

 よく分からない、といった顔のはくのんを連れて部屋を出る。

 

「あ……もし、何かお悩みがありましたらいつでもいらしてくださいね」

 

 聖母のような優しい声を背に受けて、改めてお辞儀してから廊下に出てしばらく歩く。

 

「ちょっと、一体何のつもりであんなこと!」

 

「ごめんな、でもあの人。俺らの知ってるキアラじゃないわ」

 

 直接話して分かった。アレはビーストや真性悪魔にはならないキアラだ。

 

「は? ……どういうこと?」

 

 訝しむはくのんに、全てを説明する。

 キアラがfgo世界にてゼパルが余計なことしてビーストになっちゃったこと。はくのんの世界のキアラが山奥で医者も訪れずに病に苦しみ、その果てにあんな歩く18禁になっちゃったこと。

 fgoでは医者が訪れて病を治し、『誰かに助けられる』という経験を得たことにより持ち前の聖女の才能をフルに使って無償のカウンセラーとして活躍していたこと。

 ビーストになったのは、ゼパルがキアラの善性を封印してはくのんの世界のキアラと同期させたのが原因だということ。

 

 全てを聞いて納得がいったはくのんはようやく落ち着いた。

 

「つまり、あの人を試したのね」

 

「まあそうなるな。……いや、俺もこの目で見たことは無かったから信じられなかったんだ」

 

 俺の転生事情を知るはくのんだからこそ信用してくれる話。

 俺だって、この情報を知らなきゃはなから信じなかった。

 あのキアラが無償で人の心を救っているなどと。

 

 だが、キレイなキアラか。

 

「ああなっちゃうと、本当、聖女だよな」

 

 もしかしたらガチでセイヴァーになっちゃうかもしれない。

 

「まあ、貴方が言うならそうなのでしょうけど。

 どうにも私には信じがたいわ」

 

 それは仕方なかろう。だってキアラやし。

 

「それはそうと、やけに素直に信じるな。俺が嘘言ってるとか思わないのか?」

 

 もしかしたらキアラに操られちゃってるかも。

 

「いや、それはないでしょ。

 第一、この前もう色々と聞いちゃってたから。私しか知らないこととか、私も知らないこととか。アレだけ知ってて嘘っていうのは考えにくいよね」

 

 そういうもんか。

 

「まあ、とにかくあのキアラは安全だろう。

 寧ろ、疲れてるメンバーとかに紹介した方がいいかもしれんぞ」

 

「それは、ちょっと気がひける。

 ……私自身、どうしても信用できないし」

 

 まあ、18禁なキアラ知ってる人からすれば正気の沙汰ではない、か。

 まだビーストとか悪魔にならないとも限らないし。

 

 色々と話し合った結果、キアラに関しては保留ということになった。

 

 

 

 





fgo世界でのキアラさんをイメージで書いてみました。
まだキャラが掴みきれてないというか想像し辛かったのでおかしな点があるかもしれません。

あと、医者についても蛇足みたいなのあるんで閑話でキアラさんの話やるかもしれません。
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