一般人生徒リツカ!   作:ブタどもの一人

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やってしまった……。

もう後戻りはできない。
俺の世界へようこそ(開き直り




二章 京都動乱
京都・一


 修学旅行当日。

 高校は公欠になってる俺は生徒より一足早く集合場所に行く。

 

 アビーにはしばらく帰らない旨を伝えてあるが、すごく寂しそうにしていたのでダ・ヴィンチちゃんに預かってもらうように頼み込んだ。

 ただでさえ多忙な彼に頼むのは気が引けたが、裏生徒会のメンバーが交代で見てくれるというのでお願いした。

 

 エリちゃんはまだ布団の中だ。

 今回は警備でついて行くことは伝えてあるので問題はないだろう。

 

 次にメカエリチャン。彼女には霊体化してもらい付いてきてもらっている。

 整備は昨日のうちにダ・ヴィンチちゃんに軽く診てもらってるので大丈夫だろう。

 

 

 

「あ、藤丸くん。おはよう」

 

 集合場所にはすでに瀬頼彦先生がいた。

 若々しいイケメンだが腕の立つ魔法使いだ。

 

「おはようございます。遅れてすいません」

 

「別にいいよ、まだ集合時間前だし。

 今日はよろしくね」

 

 いつもフレンドリーで気のいい人である。

 それから、世間話をしながら警備の詳細を確認し合う。

 

 生徒の安全確保のために瀬頼彦先生は前の他の先生方と同じ車両に。俺は生徒たちの乗る車両の一つ後ろに乗ることになった。

 分担と緊急時の合図などを決めてから俺たちは一旦別れる。

 

 それからしばらくして他の先生や生徒たちが集まり出した。

 俺は彼女らが車両に乗った後に乗車する。

 

 アナウンスの後に車両が動き出す。

 

「いやぁ、新幹線とか久しぶりでちょっとワクワクするよ」

 

 今世で乗る機会には恵まれなかったので、年甲斐もなくそわそわしてしまう。

 

『ワクワクするのはいいですが、本来の目的を忘れないように』

 

 ちょっとwktkし過ぎた。メカエリチャンのいう通りだ。

 改めて気を引き締めて、警護に当たろう。

 そう思い、俺は弁当の蓋を開けた。

 

 

 

 

 

 

 

 その後、カエル騒ぎがあったりしたが無事に京都に辿り着く。

 俺の存在は保険であるため、どうしてもヤバイ時に瀬頼彦先生から連絡が来るようになっている。

 そのため、原作の通りにカエル騒ぎの際は親書は刹那が取り返して、京都に付いてからも天ヶ崎千草の地味な嫌がらせ行為が幾つかあったくらいで特に危機はなく終わった。

 

 俺は一日、ネギくんたちのストーカーをして終わった。一応、戦闘服の新機能である探知機能を使ってあたりを調べたが、特に怪しい存在は確認出来なかった。

 

 そんなこんなで宿についてしまい既に夜。何事もなく一日が終わってしまった。

 

「いや、何もないのは良いことか」

 

 このまま原作通りに進んでくれれば、と。

 そこでふと思う。

 

 確かに原作通りに進めば一件落着となるのだが、それにしたって千草の存在やこれからの出来事を知っていて何もしないのはどうなんだという。出発に際してダ・ヴィンチちゃんから手渡された小型通信機も三つあるし一つくらい……

 

「いや、下手に乱して取り返しがつかなくなったらマズイ」

 

 忘れちゃいけないが俺は凡人だ。今のところ何事も起きていないのだからこのまま正史のままに歩ませてやった方が危険も少ないだろう。

 

 というかこの考えへの解答は既に出ていたはずなのになんで今更蒸し返しちゃったのか。

 

「『召喚の影響』か……」

 

 厄介なものである。だが、『恩恵』もあるので今は身を委ねておこう。

 と、そんなことを考えていたらなにやら女子の悲鳴が聞こえてきた。

 

 声から察するにお嬢様?

 ということは千草が仕掛けてきたのか。まあ、ここも明日菜や刹那の活躍で無事にお嬢様を取り返して終わりなので気にせず、安心なんだが。

 

「……様子を見てくるか」

 

 万が一がある。

 俺は彼女たちのストーキングをすることにした。

 とはいえ、風呂場での襲撃であったため霊体化しているメカエリチャンに偵察を頼む。

 

「どうだ?」

 

『……猿の使い魔に襲われたようですが、無事に取り返しました』

 

「そうか」

 

 ひとまずは平気、と。

 とはいえ安心はできない。相手はアルクを唆すような奴だ。油断はできない。

 

「これは徹夜かなぁ」

 

 そんなことをぼんやりと思いつつも、俺はメカエリチャンと協力して明日菜たちの監視を続けた。

 

 

 

 

 

 

 就寝時間。

 俺もうとうとしてきたので、ダ・ヴィンチちゃんに作ってもらった『お薬』を服用する。

 一粒飲んだらシャキッとした。

 大丈夫、変な成分は入ってないはず。

 

『ターゲットが連れ去られました』

 

 そんなところにメカエリチャンからの念話が入る。もうそんな時間か。

 確かこの時は結構遠くまで追いかけてたっけ。

 

『あの、マスター。本当に監視だけでよろしいのでしょうか』

 

 戦闘服の機能を起動させていると、メカエリチャンが不安そうに語ってきた。

 まあ、そうだよな。

 

「問題ない。俺の知る結末なら無事に取り返すはずだ」

 

 とは言うものの、俺自身迷っている。

 果たしてこれで平気なのか、と。

 エリちゃんは今もぐーすか寝ているので平気だが、ここでお嬢様が拐われたりしたら。

 

「俺も行く。万が一に備えて追いかけよう」

 

『了解』

 

 下手に動くべきではない。俺は礼装を起動して明日菜たちを追った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 結果として、特に問題はなかった。正史通りである。

 千草の挑発にキレた明日菜と刹那が、千草をボコボコにしてお嬢様を取り返す。

 懸念していたイレギュラーは起きなかった。

 

 お嬢様に話しかけられて照れた刹那が走り去ったところで、ネギくんたちも宿に戻った。

 

「……問題なし、と」

 

『……』

 

 責めるような雰囲気のメカエリチャンには悪いが、俺は積極的に正史に介入するほど勇気のある人間じゃないんだ。

 原作ブレイクがないならそれに越したことはない。

 今はおとなしく見守ろうじゃないか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 翌日、ネギクラスの朝倉に魔法がバレたり、不完全なネギくんの式神が暴走して、ネギクラスでキス争奪戦があったりしたが、特に異常を見受けられなかった。

 ただ、ここまで何もないと逆に心配なので、ダ・ヴィンチちゃんから手渡された小型通信機をエリちゃんを呼び出して手渡す。

 

「ふーん、通信機」

 

「そ。何かあったらそれで連絡してくれ。すぐに駆け付けるから」

 

 エリちゃんの命には変えられない。そうなればこちらから積極的に介入するのみだ。

 そうでないなら、できる限りエリちゃんには旅行を楽しんでほしいというのが本音。

 せっかく、学生やってるんだ。それくらい楽しんでもらわないと可哀想である。

 

「ところで子イヌ、私たちが旅行してる時って何してるの?」

 

 ふと気になったようにエリちゃんが尋ねてきた。

 

「そりゃあ警護に決まってんだろ。まあネギくんも明日菜もエリちゃんだっているから本当に万が一の補欠だけどな」

 

「ふーん。……エッチなこととかしてないよね?」

 

 疑うような目つきでエリちゃんが問う。

 

「さすがにしてないよ。俺だって仕事は真面目にやるさ。いつもそうだったろ?」

 

 魔獣退治とか、魔獣退治とか。

 魔獣退治ばっかしてんな俺ら……。

 

「ならいいけど。みんな浮かれてるからって、変なことしないでよね?」

 

 釘をさすように述べて彼女はさっさと部屋に戻ってしまった。

 信用されてない、悲しい。

 

『当たり前です。普段の言動をよく反省しておくように』

 

 厳しいメカエリチャンのお言葉を受けて俺はスゴスゴと警護に戻った。

 メカエリチャン来てから結構控えてると思うんだけどなぁ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あ、エリちゃん」

 

 部屋に戻る途中、エリちゃんは偶然にも明日菜に遭遇した。隣には桜咲刹那の姿もある。

 他のクラスメイトと異なり二人ともキス争奪戦に参加していないので新田教諭の折檻を受けずにいたのだ。

 

「あら明日菜。何してんの?」

 

 こんな夜更けに出歩くなど、珍しいとも。

 明日菜は夜は早くに寝てしまうという認識があっての発言であった。

 

「ちょっと、魔法関係でね。またイザコザがあって……」

 

「ちょ、明日菜さん!?」

 

 刹那は慌てて明日菜を止めにかかる。刹那は未だエリザベートが魔法関係者であることを知らなかった。

 

「あぁ、平気平気。エリちゃんも関係者だから」

 

「は?」

 

 衝撃の発言に刹那は思わず素っ頓狂な声をあげた。

 

 

 そして明日菜の口からエリちゃんが関係者であること、図書館島での一件を説明する。

 エリちゃんからは魔獣退治をやってることを伝えられた刹那はーー

 

「初耳です。いえ、それより単独で任務を……?」

 

 刹那も木っ端な魔獣に関しては一人で退治してしまうこともあるが、強力な魔獣に際しては同クラスの龍宮との共同任務となることも多かった。

 それ故の疑問。

 

「ああ、あのエネミーたちね。なんかどれも弱っちぃから私と子イヌだけでやっつけてるわよ?」

 

「子イヌ?」

 

 聞き慣れない言葉に刹那は首をかしげる。使い魔か何かだろうか、と。

 

「さっき話したプロデューサー名乗ってる変態のことだよ」

 

 明日菜が補足する。

 

「ああ、なるほど。しかし、子イヌ呼びとは、従者か何かですか?」

 

「違う違う。子イヌはマスターで、私はサーヴァント!」

 

 自信満々に述べるエリちゃんに刹那は驚愕した。

 

「サーヴァント!?

 え、と召使い、という意味ですか?」

 

 プロデューサーとやらはそんな呼び方をしているのか、と刹那は顔も知らない変態のことを少し嫌悪した。

 

「召使いじゃないわよ!

 サーヴァント、英霊よ!」

 

「英霊?」

 

 さらなる疑問符が現れて困惑する刹那に、エリちゃんは英霊について事細かに説明するのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 同時刻。

 ネギたちが泊まる宿から少し離れた位置にある林にて、天ヶ崎千草率いる集団が集まっていた。

 

「くっ、あのクソガキども。もう少しでお嬢様を攫えるとこやったのにぃ」

 

「まあ、まだチャンスはあるんや元気出しぃや」

 

 悔しそうに拳を握り締める千草に、雇われの少年・犬上小太郎(いぬがみこたろう)が慰めの言葉をかける。

 

「当たり前や!

 もう後には退けん、なんとしてもお嬢様をーー」

 

「千草さん、それ以上進むと彼の索敵範囲内になります」

 

 怒りのままに、宿の方へと足を向けた千草に、()()()()()()()()()()()()

 

「……ほんまか?」

 

「彼の言葉は事実です」

 

 驚く千草に、白髪の少年・フェイトが声をかけた。

 この()()は、千草の呼びかけに集まった中でも新入りのメンバーであった。

 初期組たる女剣士・月詠(つくよみ)、小太郎に比べて腹の底が知れないところが千草にとっては薄気味悪かったがそれでも能力は本物。目的のために仲間に迎え入れたのだ。

 

「というか、ほんまにあんたらの言う厄介な召喚師なんかおるんかいな?」

 

 また、二人の中でも特にスーツの男が熱心に述べた強力な召喚師。男の話では非常に強力な使い魔を二体も使役しているとのことだが千草自身はその話の信ぴょう性を疑っていた。

 

 現に、先ほど自分が木乃香を攫った時は一切手を出してこなかったのだ。木乃香の警護が目的なら必ず出てくるはずなのに。

 

「彼にとって警護すべきなのはお嬢様ではないのかもしれませんね」

 

「なんやと?」

 

 おかしな話である。

 桜咲刹那も明日菜とかいう少女も魔法使いの少年も。皆、お嬢様を守るために動いている。そんな中で他の誰かとは。

 候補に上がるような人物に千草は心当たりがなかった。

 

「あるいは、全員。なのかもしれません」

 

「んなあほな。うちらかて、あんな小娘ども襲う必要もない。あくまでお嬢様さえ手に入ればええんや」

 

 馬鹿馬鹿しいと手を振る千草は次の作戦のためにその場を離れる。

 

「ほら、あんたらも!

 今日は撤収や」

 

 疲れたように声をかけながら去る千草を目で追いながらも、男はフェイトに声をかけた。

 

「……明日あたり、少し仕掛けますか」

 

「そうだね。……何か手土産がないと『君の主人』に叱られてしまうものね」

 

 探るように述べたフェイトに、男は軽く笑い飛ばす。

 

「ご冗談を。私は主人より『使命』と共に『好きにせよ』とも命じられております。何をするのもしないのも、全ては私の気分次第ですよ」

 

「……まあいいさ。ただし、僕への連絡は怠らないように」

 

「承知しております。()()()()()()

 

 わざとらしいほどに紳士的な態度を取る男に、フェイトもこれ以上詮索することを諦めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 翌日、朝からエリちゃんの小型通信機から通信が入った。

 礼装の受信ボタンを押して応答する。

 

「はいよ、エリちゃん。何かあったか?」

 

『ちょっと、子イヌ!!

 明日菜から聞いたわよ!!』

 

 通話に出て早々にエリちゃんに怒られた。何事!?

 

「な、何がだ?」

 

 明日菜?

 昨日もその前の日も、というかエヴァの件以来会ってないと思うのだが。俺、何かした?

 分からないが何かしてしまったに違いないと耳を傾ける。

 

『木乃香たちが襲われたの!

 警護してたんじゃなかったの!!』

 

 おぅふ……そうか、明日菜たちから聞いたのか。

 いや全くもってその通りなのだから、言い逃れのしようがない。

 

『いいからさっさと来なさい!(ブツ』

 

 カンカンに怒ったエリちゃんはそう言い残して通話を切った。

 

『自業自得ですね。早く向かいなさい』

 

 通話を聞いていたメカエリチャンから痛烈な一言。俺のライフはゼロだ。

 いや、正直な話、これ絶対、エリちゃん以外もいるよなぁ。

 ああ、やだなぁ。

 こんなことならさっさと合流しておくべきだったか。

 

「いや、今言っても仕方ない」

 

 俺は諦めてエリちゃんのいる場所に歩いて行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「遅い!!」

 

 仁王立ちするエリちゃん。

 その周囲にはネギくんや明日菜、桜咲刹那までいる。

 あ、ついでにオコジョも。

 

「ご、ごめんエリちゃん。

 ……と、久しぶりです。ネギさん」

 

「なぜ敬語……」

 

「ちょっと、ごめんじゃ済まされないわよ。

 危うく攫われちゃうとこだったのよ!?」

 

 珍しくエリちゃんがガチギレしてる。

 

 ……いや当然か。

 

 エリちゃんも、もう二年もこのクラスで生活してきたのだ。彼女らを大切に思っているのは普段の会話からもなんとなく察していた。

 そのクラスメイトの危機を見逃していたのだとしたら、怒るのも当然である。

 本当は傍観というもっとひどい仕打ちなのだが。

 

 今更、気付くとは。

 

「ま、まあまあエリザベートさん。一番近くにいた僕たちが助けるのが本来の役目ですし。

 無事に木乃香さんも助けられたんですから」

 

「ええ、近くにいた私が防ぐべきものでもありますので、一概に誰かのせいにするのは……」

 

 ネギくんに刹那が庇ってくれてる。

 だが、彼女らよりも年上で、学園長からも任されている俺に責任があるのは確かだ。

 第一、見てて放置したのは俺だ。

 

「いや、本当にすまなかった。

 エリちゃんの言う通り、警護を任された俺の落ち度だ」

 

「藤丸さん……」

 

 いいや、同情する必要はないぞネギくん。

 君はまだ10歳。責任は俺ら大人が取るべきだ。

 

「……ふん。なら、今日からはしっかりと警護してよね!

 

 ……あと、ちょっと言いすぎたわ。

 気づかなかった私にも責任はある。

 だから!

 私もこれから全力でフォローするわ!」

 

「エリちゃん……」

 

 エリちゃんは優しい。

 この二年、共に暮らしてそれは十分に分かっていたはずなのに。自分のことばかりで、俺は彼女の本質を見ていなかった。

 

 彼女も、成長しているのだ。

 英霊に対して成長という言葉は間違っているかもしれないが、彼女がこのクラスで過ごして、他者への博愛を育んだのだとしたら、俺もこのクラスに対して礼をしなければならなかった。

 

「……そういえばオコジョ。あんた珍しく静かね?」

 

 思い出したように明日菜がオコジョ妖精のカモミールに声をかけた。

 そういえば、エヴァの時も一切言葉を発しなかったが。

 俺を警戒してるのか?

 

「い、いやだなぁ、姐さん。俺はいつも紳士で静かっすよ」

 

 激しく動揺しているカモミール。

 どうしたんだ?

 

「自己紹介、してなかったよな。

 俺は藤丸立華だ。よろしく」

 

 これからはこちらから歩み寄るべきだと思い俺は彼に手を差し出した。

 

「お、おう。俺っちはカモミールっす。よ、よろしくっす」

 

 おどおどしながら手を取るカモ。

 なぜそんなに怯えているのか不明だが、とりあえず嫌われてはいないようだ。

 

 彼には、これからも色々と活躍してもらわねばならないし。

 

「ひっ……!」

 

 と、突然カモはネギの首の後ろに隠れてしまった。

 

「……変なオコジョ」

 

 明日菜も不思議そうに見ていたが特に気にはしなかった。

 なので俺も気にしないことにする。

 

「では、改めて藤丸さん。これからよろしくお願いします!」

 

 眩しいネギくんの笑顔に、俺は目を合わせ辛かったがなんとか差し出された手を取ることはできた。

 

「ああ、よろしく頼む」

 

 

 

「それじゃあ、護衛の件、どうしましょうか。

 藤丸さんとエリザベートさんは一緒の方がいいですよね?」

 

 刹那の言葉に俺は首を振る。

 

「いや、エリちゃんはこう見えて強い。

 俺とは分けた方がいい」

 

「こう見えてって何よ!」

 

 プンスカと怒るエリちゃんの頭を優しく撫でる。

 それだけですぐにふにゃりとした顔になった。

 今は話を進めるべきだ。

 

「て、手懐けてる……」

 

 微妙な表情でそれを眺めるネギくんたちはスルーする。

 俺とエリちゃんは大体いつもこんな感じだ。

 

「しかし、藤丸さんは召喚師ですよね?

 エリザベートさんがいた方が……」

 

 苦言を呈す刹那に首を振る。

 

「いや、もう一人連れてきている。ただここで出すと廊下を破壊しかねないから紹介は後にさせてくれ」

 

『私の重量について、何か言いたげですね。

 いいですよ、聞きますよ?』

 

 なんか怒ってるメカエリチャンが念話でしつこく語りかけてくる。ごめん、でも本当のことだし。

 

「そ、そうですか。えーと、じゃあ。

 エリザベートさんには私たちと一緒にお嬢様の護衛を」

 

 破壊という単語に若干引いてる刹那。

 事実なんだ、すまない。

 

「じゃあ、僕たちの方に藤丸さんですね」

 

「げっ……」

 

 ネギくんの言葉にあからさまに嫌な顔をする明日菜。

 だが今日はセクハラとかしてる余裕はない。

 

「今日は仕事だ。仕事はちゃんとやる」

 

「ほ、ほんとでしょーね?」

 

 疑いの目で見てくる明日菜。

 まあ、これは実際に見て判断してもらうしかない。

 ともかく今後の方針は決まったか。

 

「それではみなさん!

 本日はよろしくお願いします!!」

 

 ネギくんの声に、俺たちは頷いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 俺は一旦宿を離れ、クラスメイトに見つからないようにこっそりと抜け出してきたネギくんの後を追う。

 

 忘れちゃいけないが彼女らは修学旅行に来ている。そんなところへ見ず知らずの高校生が混ざるわけにもいくまい、と少し離れた位置からの警護を承った。

 

 ネギくんの後から来た明日菜たちは、案の定、一般生徒の早乙女たちに見つかっていて結局一般生徒も含めた面々で観光することになっていた。

 

 宿を離れる前に確認しておいたのだが、ネギくんは原作通りに親書を届けることを優先したようだ。

 つまり、観光のどこかで一般生徒と別れる。

 その時は、一緒に行った方がいいだろう。

 

 

 

 

 

「お、ここで行動開始か」

 

 一行がゲームセンターに入り早乙女たちがゲームに夢中になっている隙に明日菜とネギはこっそり抜け出して関西の本山へと向かった。

 俺もその後を追って、合流したのは電車だった。

 

「うーん、なんか落ち着かないわ」

 

「すまんな。だが護衛はしっかりする」

 

 なんだかチラチラと明日菜が見てくる。

 そんな警戒しなくてもセクハラしないから。

 今もバリバリ探知機能使ってるし。

 

 というかネギくんを挟んでるんだから、それで構わんだろう。

 

「……すいません、明日菜さん。こんなことにまで付き合ってもらって」

 

「……」

 

 申し訳なさそうな述べるネギくんに明日菜はツーンとしている。

 やがてーー

 

「別に。まだ10歳のあんたが危険なことしてるのが放っておけないだけ。

 ……それに。

 一生懸命頑張ってる奴は、嫌いじゃないわよ」

 

 少し優しそうな顔でそう語った。

 

「……」

 

 どうやら彼女たちの絆に影響はないようだ。

 と、こんなこと考えてるとまたエリちゃんに怒られてしまうな。

 

 今は警護に集中しよう。そのために俺はここに来たのだから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふわぁ、すごいわねぇ」

 

 電車を降りてしばらく歩くと、そこにはでっかい鳥居と、その先に幾つもの小さな鳥居が連なっているのが見て取れた。

 どうやらここが本山とやらの入り口らしい。

 

『みなさん、大丈夫ですか?』

 

 と、そんな俺たちの元にちっちゃな刹那、ちびせつなが現れた。

 

「わぁ!?」

 

 驚く明日菜たちに、彼女は自らちびせつなと名乗り、刹那の分身として来た式神であることを伝えた。

 そういえばそんな奴もいたか、と思い出す。

 

 そんな俺たちにちびせつなはこの先の警戒を怠らないように注意を促した。

 

「ん? 鳥居……」

 

 何か、忘れている気がする。

 警護に集中していて、今後の流れをど忘れしてしまった。

 何か、鳥居に関係する出来事があったはずだが。

 

「よぉし、行くわよ!」

 

 一人で熟考していると、明日菜たちは既に鳥居に向かっていた。

 そこで、ようやく思い出す。

 

「っ、待て二人とも!

 その鳥居は!!」

 

「いや、そのネタバレは困りますね」

 

「っ!!」

 

 ネギたちに声をかけた俺の背後から、急に誰かの声が響いてきた。

 咄嗟に振り返りガンドを構える。

 

「っ! お前は!?」

 

「……」

 

 ニヤリと笑った『その男』は、燕尾服に身を包んだ金髪の若い男。

 知らない。こんな奴はfateにもネギまにもいなかった!

 

 俺がガンドを放つよりも先に、そいつは俺に掌打を叩き込む。

 

「ぐぅぅ!?」

 

 凄まじい威力のそれは、俺を一気に鳥居内部まで吹き飛ばす。

 飛ばされる最中、僅かに男に目を向けた。

 

「っ!!!!」

 

 鳥居の中、即ち原作にあった結界に入る寸前、俺が見た男の顔はーー

 

「お久しぶりです、()()()()()()()

 

 丁寧にお辞儀するその男、その顔はさっきの金髪の青年とは変わっていた。いや、先ほどのは『偽装』か?

 

 俺の方を向くその顔、それは亜種特異点にて初めて明らかにされた人型のーー

 

「魔神、柱……!」

 

 それを最後に、俺は間抜けにも結界に取り込まれた。

 

 

 






これ、警備の話って原作読んだ時。
厳密には麻帆良祭の時ーー

『あれ、瀬頼彦お前何やってたんや?』

って疑問に思った。
かと言ってリツカは外道ですけどね。
ここで助けに入れるのが最後のマスターの方。
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