一般人生徒リツカ! 作:ブタどもの一人
それとなくなら。
「積もる話はあるだろうが、続きは中で。
……『例のマスター』が来た。……ああ、頼む」
明後日の方向を向いてなにやらブツブツと呟いた後、小次郎はくいっと中に入るよう促してきた。……あれは念話か?
門を抜けると、先に入っていた木乃香たちが巫女さんたちに歓迎されていた。
そのまま荷物を受け取ったりしながら丁寧に屋敷内に案内されていく。
「フジマルリツカ様、ですね?
……中でのご挨拶ののち、長の下までご案内します」
俺の元にも一人の巫女さんが歩み出てそんなことを告げてきた。
長というと近衛詠春か。
俺に話とは、アルと同じく何か知っているらしい。
俺は頷きを返して、ネギたちの後を追った。
その後、長・近衛詠春からの挨拶と、ネギくんが無事に親書を彼に渡したところで、一行のための宴が催されることになった。
「うわぁ、料亭どころの話じゃないわよ、これ!」
「すごい、美味しそうな料理いっぱい!」
宴の席に出された豪華な料理に一行はすっかりはしゃいでいた。一般生徒たちがそれら料理に舌鼓を打つ中、ネギくんや刹那といった魔法関係者に詠春から幾つかの言葉を賜っていた。
それを視界の端に収めていると、俺の元に入るときに会った巫女さんが近付いてきた。
「お待たせいたしましたリツカ様。長は別室での対談をご所望です」
「わかりました。案内、お願いします」
俺の言葉に巫女さんは頷き、歩き出す。その後を俺はおとなしく付いて行った。
宴の会場から少し離れた一室。その障子の前で巫女さんが立ち止まる。
そして向こう側に小声で声をかける。
「詠春様、リツカ様がいらっしゃいました」
「ご苦労、入りたまえ」
中からは詠春の声が返ってくる。
巫女さんはススっと障子を開いて俺を中へと招いた。
「ようこそいらっしゃいました。藤丸立華くん、ですね?」
中に静かに座るのは近衛詠春。穏やかな顔で対面の座布団に座るように促す。
俺が腰掛け、巫女さんが障子を閉めたのを確認して詠春は口を開いた。
「改めて自己紹介しましょう。
私は近衛詠春。関西呪術協会の長であり、かつて『魔術師』と共に戦った『紅い翼』のメンバーです」
魔術師、わざわざその言い方をするということはそういうことなのだろう。
「藤丸立華です。今は麻帆良学園の加護のもと魔獣退治などの仕事をさせてもらってます」
「なるほど、お義父さんの元で働いているのですね。
……今回は我々の内輪揉めで迷惑をかけてしまい申し訳無い」
「いえ、お気になさらず。警護が私の任務ですので」
それに知っていたし。知っていてここまで放置したのだ。
「そう言っていただけるとありがたい。
……では、そろそろ『門番の彼』に纏わる話をしましょうか」
「……」
紅い翼、魔術師、そしてアルの話から既に大まかな予想はついているが詳細を知りたい。それに、アサシンのことも。
「彼は
「っ!」
呼符って、それ召喚チケットじゃん。
てっきり召喚方法と詠唱まで事細かに伝えたのかと思ったが。
「魔力に関しては彼は特に燃費が良いそうで、本山の霊地としての地脈。そして私の魔力で現界させています」
確かに小次郎は架空の英霊であり元が無銘の剣士であること、宝具も無いので燃費は比較的に良い。
それにしたって英霊という存在の召喚維持そのものが莫大な魔力を消費するのだが。
「渡す際に彼は言いました、『いずれそれと同じ存在を従える人物が現れる。その際は協力して事に当たって欲しい』と」
まるで予言だ。俺が来ることもそうだが、協力することを確信しているような……。
……いや、そういうことか、『召喚の影響』を考慮していたのか。
随分と用意周到なことだ。
「そして、先ほどの『アサシン』からの報告で貴方がその人物であると判断しました。いかがでしょう?」
「……仰る通りです。私も英霊を従えるマスター、英霊が何たるかも心得ています」
『その魔術師』が俺の予想する人物なら目的は単純。俺への助力に相違なく、最終目標は『黒幕の排除』だ。
「そうですか……アサシンから貴方のことは聞いています。ここではない世界を救った英雄であると」
英雄ね、それは俺とは違う立華の話だ。俺はただ画面越しにそれを見ていただけ。救ったのは俺ではない。
小次郎が何処まで分かっているのか、それも定かではないが彼の人柄からして詳細を聞き出すのは困難だろう。
「……買いかぶりですよ。俺は単なる一般人、頑張ったのは俺じゃ無くて……」
俺だ、と断言してしまえば楽なのだろう。それが正しい判断だ。
しかし、俺はここまで来て腰が引けてしまった。いや罪悪感というものか。
ここでそう言えば『本当に彼の功績を汚す』と思った。今までそれとなく嘘を言ってきたが、彼の優しさを、勇気を、活躍を否定することがどうしても耐え難い。
だから、断言ができない。中途半端な男だ。
「そうですね、この言い方は少しいやらしいですね。
世界を救うのは簡単なことじゃない。それくらいはわかるつもりだったのですが」
それは俺ではない。
正しく藤丸立華の功績であり彼の力である。
「この話は、やめましょう。
……では今後について。今、貴方が望む助力を私は与えます。
なに、『彼』には私も世話になった身。私にできることならなんなりと申し付けてください」
優しげな瞳で彼は言う。
『その魔術師』とやらはさぞ立派な人物であったのだろう。少し想像し辛いが、英雄とは得てして多面的なもの。誰かにとっては敵でも、他の誰かにとっては英雄となる。
救われた人数が多い者が英雄となるだけのことだ。
「ありがとうございます。それでは先ず、今私が有している敵の情報からーー」
覚えのない功績と、それを隠れ蓑にしている自分への嫌悪感に鋭い痛みを感じながら俺は詠春との対談に臨んだ。
「……千方の四鬼ですか」
「ええ、未だ確証がないながらも。そしておそらく、アレらはサーヴァントの領域にいます」
エリちゃんが苦戦する相手だ。ただの召喚魔でそうなるとは考えにくい。となればサーヴァント、一番考えられるのは千方がサーヴァントとして召喚されているということだが。
「っ! ……それは困りましたね。いざとなれば私が出張ることも視野に入れておきます。
……それと、魔神柱、と言いましたか」
「ええ」
魔神柱。俺は確かに見た。そして奴自身も『最後のマスター』と言っていた。そんな呼び方をするということは本人なのだろう。
「確か、あなた方の世界にて世界を燃やしたという……」
「はい。奴らは根こそぎ殲滅したつもりでしたが、どうやったかこうして現れました。すいません。
……こいつに関しては特に注意してください。ものによりますが、その個体性能はサーヴァント複数体に相当します。本来ならサーヴァント数騎で対処すべき強敵です」
「っ!! なんと、そこまでですか。いやはや世界が違うとはいえ『アサシン』レベルを複数必要とするなど」
乳上やカルナのようなトップサーヴァントなら単騎殲滅も可能だろうが、おそらくあの個体も『自我』に目覚めているだろう。
そうなると固有能力を発現させている可能性もある。
もうフェニクスのようなチートは勘弁してもらいたいが。
「そして、フェイト、でしたか」
「はい。アレはおそらくですが『例の秘密結社』の残党と思われます」
確証はない。実際に見たわけでもなし。もしかしたら歴史が変わって、この件には絡んでいないかもしれない。
しかし、もう原作どうこうと言っていられる状況でもない。
今後を考えてネギくんにも成長してもらわねばならないが、それで死なせてしまっては元も子もない。
敵性集団の排除にネギくんの成長。難儀だがこの後の歴史を考えればどちらもこなすしかない。
加えて、『最後の詰め』に関しても。
「それは、まさかっ!?」
「『
正確にはナギが倒した
それに、個体性能は元より、柔軟性を考慮するとプリームムを超えていると推測する。
今回の件で唯一懸念素材となる相手だ。
彼が、一体何の目的で今回の件に絡んでいるのか。
魔術への知識は如何程なのか。
全ては謎のまま、厄介なことこの上ない。
せめて魔神柱と手を組んでいなければよかったのだが、今日のことを考えるに、手を組んでいるのはほぼ確定。
魔術への知識も受け取っている可能性がある。
対魔力も貫通可能性があり、素体能力も英霊レベルと思われる。現物を見ないとこれ以上は分からないが、魔法世界の神が重宝するようなやつだ、人形の中でも最高クラスの実力者なのは明白となれば戦闘能力は低く見てもエリちゃんと同等、かそれ以上。
「目的は不明です。しかし、危険性は知っての通り。
警戒は十分にしてください、おそらくここにも仕掛けてきます」
「まさか……いや、あの青年と同型ならばあるいは結界も。
わかりました。今夜の警戒は万全に。アサシンにも伝えます」
「お願いします。俺も装備を整え徹夜で警備します」
もはやなりふり構ってられない。
魔神柱、一体何の目的でフェイトと組んだのか、そして此度の騒動に首を突っ込んできたのか。
できるならばこの場で仕留めておきたい。放置するなど危険すぎる。
学校にはキアラさんもいるし。出会ってしまったら世界は滅亡一直線である。
「こちらこそお願いします。
……それと、先ほど述べていた天ヶ崎千草の目的、両面宿儺に関してなんですが」
そう言って詠春が取り出したのは一冊の古びた書物。
「それは?」
「我が近衛家にかつて仕えていた『とある呪術師』に関する書物です」
呪術師?
「私の見立てでは、おそらく『魔術師』の系列に思われます」
「っ!!」
そいつはなんとも……。
しかし、今回の件とどう繋がるのか。
「かつて、両面宿儺はナギが封印し直しました。
その騒動の際に、封印を解き放ったのがこの呪術師です」
ナギが?
京都に来ていたのは知ってるが、そんなこともあったのか。
「私もこの呪術師の家系には詳しくないのですが、なんでも、近衛家に関する『裏の仕事』、その中でも特に『忌まわしい部分』を担当していたようです」
語りながら書物を開く詠春。
しかし中身は達筆過ぎて俺には読めない。
「それゆえに、周りからは特に嫌悪されていたようで。
……情報が抹消されていて定かでないのですが、その呪術師が両面宿儺を解き放った動機は……『家族の復讐』、と思われます」
「……?」
「騒動の前に、彼の家族は『彼らを蔑む者たちに惨殺されました』」
それは、なんというか。
雲行きの怪しい話になってきたな。
「もちろん証拠はありません。私も、配下の者が噂するのを聞いたのみ、一説では『大戦に恨みを持つ者の犯行』とされています。
その呪術師も、大戦の折には徴兵に反抗する関西の魔法使いを命令とはいえ多数呪殺したようですから」
大戦か。
関西呪術協会はその件で関東の協会に恨みを抱いていたと記憶している。天ヶ崎千草も大戦の強制徴兵で家族を亡くした被害者だ。それゆえに今回の騒動を起こしているのだが。
逆もまた然り、というわけか。
大戦の際の恨みを受ける生贄とも呼べる。
いずれも俺が何かを言うべきことじゃないが。
「呪術師は、両面宿儺の再封印と同時に自決しました。だからもう真実を知る術はない。家も騒動で崩壊しましたからね」
黙祷するように目を伏せた詠春。この話は戦争によって起きる隠れた悲劇を示していた。
その話をわざわざ俺に聞かせた意味は。
「この両面宿儺。ナギが対処した時は『鬼神に酷似した装甲』を有していました。
……ナギ曰く、アレは制御装置なのだそうです」
「制御?」
鬼神に酷似とは、まあ原作を見て思ったりもしたけど特に言及はなかったし。
いや、そういうことか。
「……つまり、装甲が剥がれればナギの時以上の力を発揮すると?」
「おそらく。……この書物は呪術師の残した研究資料、呪術師に関連するものの中で唯一現存する資料です。その内容を鵜呑みにするならばーー」
ーー装甲の剥がれた両面宿儺は『神霊』に匹敵する力を発揮します。
「神霊……詠春さん、その意味、わかって言ってますか?」
「はい。『彼』から聞いたことがあります。
神霊とは即ち、神。かつてこの世界におられた本物の神のことだと。そして、我々人の時代に移ってからはここではない世界に旅立たれ、そこから世界を見守っているとも。
加えて、現代に神霊の降臨が不可能なことも」
そこまで知っているか。
ならーー
「仰る通りです」
確かに両面宿儺は神だ。だが祟り神、異形の邪神とされたまつろわぬ神。今尚信仰のある天照などと比べると格落ちが激しい。
それを、どうやって顕現させるのか。
「……この書物には『西洋より伝え聞いたる“降霊の儀”にて、大神の御霊を再定義する』と書かれています。おそらくこれが両面宿儺を神霊として顕現させる方法と推測しています。
私には何のことか、詳しくは分かりませんが。あなたならば」
「……」
降霊の儀。再定義。
おそらく、おそらくだが降霊の儀とはサーヴァント召喚のことではないだろうか。まあ、型月では初めにシステムを人の使える域にしたのは日本の魔術師だが。
いや、確か御三家の一つ間桐家は外来のマキリ・ゾォルケンの起こしたものだったはず。
もし、冬木の聖杯戦争が起きないなら奴は?
だめだ、そもそも魔術師が今どうしているのかが分からない。推測でしかない。ただ、もし。もしマキリがサーヴァントシステムを海外で作ったのだとしたら。
妄想に過ぎない憶測だ。しかし、そうなると再定義という単語も引っかかる。聖杯戦争に無理やり当てはまるならクラスのことを言っているとは思うのだが。
「まさか、一つのクラスに落とし込んだ?」
いや、それなら神霊などとは呼ばれない。
第一、原作でエヴァに瞬殺されていた奴が神霊なんて冗談もほどほどにするべきだ。
「……いや、根本から違うのか?」
当たり前だが原作に魔術や神秘や英霊の概念など無かった。
以前にも考えたが、この世界が根本から異なるならば『両面宿儺が文字通りの神』であってもおかしくない。
いや、そうでなければこれまでの辻褄が合わない。
もしそうなら、神霊をクラスに落としたところでーー
「化け物には変わりない、か」
「何か、分かりましたか?」
ブツブツと呟く俺に詠春が心配そうに語りかけてきた。
「ええ、推測に過ぎませんが。
……神霊を英霊の格に無理やり落として活用、ということでしょう」
それも問題点が多い。第一、神霊は召喚できない。fgoで出てきたのはいずれも依代を介した擬似サーヴァントや、縁深い英霊に無理やり付いてきたどっかのスイーツ女神くらいなもんだ。
出来たら、という仮定の話でしかない。
「ただ、現状ではなんとも。
無難に再封印が最適かと思いますが」
「やはりそうですか。できれば後顧の憂いは絶っておきたかったのですが。……それで神様に暴れられたら困りますしね」
詠春の言も分かる。
これは、想像以上に厄介な事件となりそうだ。
その後も彼と意見交換をした後、時間もいいとのことで共に風呂に浸かることにした。裸の付き合いというやつだ。
できればエリちゃんと……などと一瞬思ったが、今は非常事態、ふざけている場合ではないし気を引き締めてことに当たるべき。
『メカエリチャン、すまないが今のうちに『本』と『装置』を取ってきてくれないか?』
その途中、念話で装備の回収をお願いする。昼間も活動することを考えて宿においてきてしまっていたが、こうなるとフル装備でいた方がいいと思ったのだが……
『いいでしょう。……報酬は、期待しておきますよ?』
などとメカエリチャンは不敵な笑い声を漏らした。
次の瞬間には側から居なくなっていた。霊体化したまま出発したようだ。当たり前か。
「おや、ネギくん」
途中で偶然にもネギくんと遭遇した。ちょうどお風呂に行こうとしていたようで一緒に行くことになった。
「いや、しかし十歳で教師とは。スゴイですね」
「そ、そんなことは」
他愛ない話をしつつ風呂場に入る。
結構広い風呂だ、大浴場とか言ってたしな。
身体を洗って湯船に浸かる。
その際には色々な話をした。
例えば木乃香の魔力が膨大だ、とか。ナギと詠春が友人であることをネギくんに教えたりと。
千草の件に関しても明日の昼ごろには増援が来るとのことで一応ネギくんを安心させることができた。
……まあ、今夜仕掛けてくるんですがね。
警備に関してはすでに詠春の指示で、今ある戦力でできる限りの防衛戦を敷いてあるとのこと。
俺も詠春も風呂を上がったら警備に出ることになっている。
原作ではフェイトに不覚を取った彼だが事前に情報を与えた今ならばなんとかなるかもしれない。
加えてこちらにはエリちゃんやメカエリチャンもいる。
また、『本』さえ戻れば新たな戦力を加えることだってーー
「……召喚か」
召喚の副作用、これまでの症状から大体分かっているが。
厄介なのは『精神操作』だろう。
普段の俺からは考えられない、まるで『彼』のような行動を無意識に取ってしまうことがある。
それだけじゃない。『今も続く世界の不幸を嘆いている』。気持ち悪い感覚だ。俺ではない誰かが頭の中に入ってくるような、数多の人の声が聞こえてくるような……
「おっと、これはマズイですね」
ふと、詠春の声で我に返った。
耳を済ますとなにやらネギクラスの女子たちの声が聞こえてくる。
「どうやらご婦人方のご案内を間違えたようです、裏手から脱出しましょう」
「は、はい!」
大急ぎで風呂場を出ようとする彼らに俺も続く。
さすがには堂々と露出狂を演じるのはどうかと思うし。うん。
逃走する最中、前を走っていたネギくんが何かに激突する。
よく見てみるとーー
「あ、明日菜、さん!?」
倒れた拍子に明日菜の胸を揉みしだくネギくんと、その横で気まずそうにする刹那、そして詠春。
どこのToLOVEるだよと言いたい。
……まあ、不可抗力で明日菜と刹那の裸を見れたのは素直に得したと思う。断然やる気が出てきた。
「あ……」
それだけなら良かった。しかし、ネギくんと明日菜が硬直している間に他の女子たちが風呂場に入ってきてしまった。
「キャーー!」
「お父様のえっちー!」
もはや大混乱である。
まさか俺が騒ぎに巻き込まれるとは思わなかったので、夕映が投じた石鹸を躱すことができずにクリーンヒット。
俺の意識は数多の女体、裸体を脳裏に焼き付けたところで飛んでしまった。
「ちっ、どうするのや新入り。あんたが追うな言うから……」
「大丈夫ですよ、任せてください」
同時刻、本山を遠目に眺める集団がいた。
言わずもがな天ヶ崎千草とフェイトである。
二人とも木の太枝に乗りながら会話している。
「いやぁ、遅くなり申し訳ありません。なにぶん、『彼』の命令権を借受ける交渉に難儀しまして」
そう言って新たに現れたのは燕尾服の男。彼も隣の枝に乗って愉快そうに語りかける。
「……その人は?」
フェイトが目を細めて問いかける。
視線の先にはもう一人の男性が佇んでいる。
「最強の助っ人ですよ。『彼』には『あの門番』を相手してもらいます。いくら貴方でもアレの相手は苦労するでしょうから」
「頼んだ覚えはないけど……まあいい」
興味がないとばかりに視線を逸らすフェイト。
対して男は柔和な笑みを浮かべたままに千草に話しかける。
「ご安心を
「まあ、できるんやったらそれで……っ!!」
疑わしげに男を見た後、不意に、彼の連れてきた人物を見た千草は『そのあまりの覇気に全身を震え上がらせた』。
「……主の命だ。ひとまずは貴様の指示に従おう、ダンタリオン。しかし、主命は絶対。貴様の手駒になるつもりはない故に、そこを履き違えるなよ」
その人物は西洋風の鎧に身を包んでいた。
黒いマントを羽織り、『黒髪黒目』ながらも日本人ばなれした顔をした青年。
その鎧はところどころヒビが入り、年季を感じる見た目をしている『黒』。
背中には身の丈ほどの大剣を携えている。
ーー本来の伝承であれば金髪黒眼の美青年と謳われているはずの人物。
しかし、今は鋭い三白眼を燕尾服の男・ダンタリオンへと向けていた。
そして、『かつては義理堅い王』として知られた面影を欠片も残していない。唯一残るのはその誇り高きオーラのみである。
俗にカリスマとされる覇気は千草はもとより、フェイトでさえも僅かながら影響を受けるほどであった。
「では、王よ。いや、『
「言われずとも。あの『剣士』を抑えれば良いのだろう?」
ガシャン、と地に降り立つ彼の鎧が音を立てる。
彼は不意にフェイトへと目を向ける。その目は何物の価値も認めていないとばかりに冷酷に、しかし澄んでいた。
「小僧、貴様も来るか?」
彼一人に任せようとするダンタリオンにフェイトが不満げな様子を僅かに見せていたのを、彼は見抜いていた。それゆえの問い。
「……加勢が必要なら、構わない」
「ふん、そういうことにしておこう。
……意思なき人形、貴様が何を見据え、何を得るのか。その末路を見定めるのも我が賜りし命の一つである」
言うだけ言って去っていく彼にフェイトは明らかに不満そうな顔を見せた。
それを見兼ねてダンタリオンが声をかける。
「くれぐれも、機嫌を損ねないように。比較的寛容な方ですが、彼も英雄、その矜持を汚せば貴方とてただでは済まないでしょう」
「……厄介な奴を連れてきたものだね」
「お節介でしたかな?
ご安心を、あくまで露払い、保険です。
かの英雄の卵の相手は予定通り貴方に」
「それも頼んでいない……これ以上くだらない話をつづけるなら僕は行くよ」
そう言ってさっさと木から降りてしまうフェイトをダンタリオンはため息混じりに眺めていた。
「では、千草さん。あなたは『儀式』の準備を。
……『供物』の用意は我々におまかせください」
「言われんでも。……『例のおっさん』にも話しとくわ」
「ええ、お願いします。……さて、長い夜になりそうですねぇ」
自分を差し置いて仕切っているダンタリオンに不満げな千草だったがやがて計画を成すべく祭壇へと向かった。
全ての関係者が去った後もダンタリオンは屋敷を見つめていた。
「……あなたが出した答え。その意味、その価値。未だ私には分からない。生きるとは、命とは、人類とは。
だから、見定めさせてもらいます。この世界にて」
頑張って作ってみました。
弄り回してあるので現時点だと殆ど原型留めてませんが……
ちょっとマイナーな英雄です。
ー追記ー
盛大にミスしていた部分があったので修正しました。
謎のセイバーの部分です。眼の色。
ほんと申し訳ない…