一般人生徒リツカ!   作:ブタどもの一人

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途中、砂糖のような塩のような『ナニカ』がぶっ込まれたり、強すぎる奴とか出ますけど。

全ては作者の世界。

ようこそ、私の世界へ……
(2回目

ゲート・オブ・スカイ!!(持ってない



ー追記ー

四が二つになってました。題名です。
ごめんなさい!



京都・五

 夜の深まった頃、近衛家の屋敷を抜け、一人の少女が山門へと足を運んでいた。

 

「む……おや、このような時間に外を出歩くとは。感心せんな」

 

 ゆっくりと歩み寄るその少女に気づいた山門の守護者、佐々木小次郎はあくまで飄々とした態度で声をかけた。

 

「お久しぶりです……昼間は、その、ちゃんとした挨拶を出来ずに。申し訳ありません」

 

 気まずそうに頭を下げる少女・桜咲刹那に小次郎は軽く笑い飛ばす。

 

「構わんよ、このような棒振りに堅苦しい挨拶など不要だ」

 

 棒振りなどと、謙遜も甚だしい。と彼女は思った。

 その剣技を直に受けたことがあるからこそ分かる、彼はすでに達人の域を超え、極限られた者しか到達できぬ領域に座しているのだと。

 

「しかし、お主が夜分にこうして外を出歩くなど。……昔は夜の厠にも付いていく必要があったのに成長したものよなぁ」

 

「なっ!? いつの話してるんですか!? もう!」

 

 頬を赤らめ、ポカポカと涙目で叩いてくる刹那に小次郎は笑うばかりであった。

 

「ははは……いたっ、ちょ、お主……『気』を纏ってないか?」

 

「……」

 

 無言で叩く刹那、その威力は段々と地味に強くなっている。

 サーヴァントとはいえ、小次郎の耐久は最低ランクのE。ずっと気を纏った拳で殴られれば地味に痛い。

 

 やがて、ピタリと止まった刹那を、小次郎は痛む肩を撫りながら見つめる。

 

「……学園に行って、私はまだお嬢様を守ることだけを考えてました」

 

 ポツポツと語り出した刹那に小次郎も優しい目で黙って聞く。

 

「でも、この修学旅行でお嬢様とまた触れ合う機会を得て。少しだけ、分かったことがあるんです」

 

 刹那の顔はあくまで穏やかであった。

 

「私、お嬢様と一緒にいたい。ただ影から守るだけじゃなくて、一緒に触れ合っていたいんだって」

 

 まだ迷いはある。だけど、ここ数日の交流で刹那も木乃香に対する愛情めいた友情に、幼い頃のような仲良しな関係に戻りたいと思い始めていた。

 

「だけど、まだ私は未熟なまま。剣も、心も。

 ……だから、また稽古をつけてくれませんか?

 以前は半ば強引に仕合に誘ってしまったけど、今回は純粋に貴方の指導を受けたい。だめ、でしょうか?」

 

 最後に少し自信なさげに語る刹那に、小次郎もフッと柔らかな笑みをこぼした。

 

「やはり子どもの成長は早いな。ここ数年でこうも移り変わるとは。

 いや、嬉しいことだよ。其方の成長を見てきた者として。

 ……まあ、拙者は主と違い親ですらないのだがな」

 

 それでも、幼少からその成長を陰ながら見守ってきた小次郎としては感慨深いものがあった。

 本来、英霊とはそれほど長い期間を現世で過ごすことはない。聖杯戦争はもとより、世界を救うために呼ばれようとも、十年以上の時を過ごすことなど到底あり得ない。

 しかし、此度の現界にあたっては一人の幼な子が自立を志すまでの長い期間を過ごしてきた。

 

 成長のない英霊でも、それだけ『生きれば』親心のようなものが芽生えても不思議ではない。

 

「貴方は……小さい時から私の憧れですよ。

 まだ、右も左も分からない頃から私は貴方の話を聞いてきた。どれも荒唐無稽な話だと今は分かりますが、それでも貴方のお話は楽しいものばかりでしたよ」

 

「ははは、拙者の昔話なぞでそこまで言われるとはな。

 それくらいならいつでも聞かせよう」

 

「はい、また聞きたいです。……あなたも、お嬢様や長と同じく『余所者』で『得体の知れない』私を受け入れてくれた人だから」

 

 幼い頃から彼女は聡かった。あるいは周囲の人間の心の機微に敏感であったとも言える。

 だからこそ、家中での自らの扱い、陰口が彼女の心に暗い影を落としていたのは確かだった。

 そんな中で最初から偏見なく接してくれた人の一人が彼だった。

 

「……以前より、断然強くなった。

 技量ではなく、その心がな」

 

 等しく斬り伏せる刃であった彼女は確かに強いのだろう。今よりも。しかし、心無くしては絶対に勝てない相手はいる。

 つまり、壁に当たっていた彼女はそれを乗り越える道を発見したということ。

 技を鍛え、心も鍛えれば彼女とていずれは彼と同じ領域に立てるかもしれない。あくまで可能性の話だが、確かに彼女はその道に降り立ったのだ。

 

 今は弱い。刃と人の間で揺れる彼女はこれまでで一番弱い時期なのだろうと小次郎は思う。ただ、それを超えた先は以前よりも遥かに強い剣士になることも同時に理解していた。

 

「……いいだろう。新たな道を見つけし若き剣士よ。拙者の剣で良ければ存分に学び、得てほしい」

 

 小次郎はすでに到達した剣士である。その先には何もなく、ただ『空』のみが広がる境地に彼は立つ。

 彼を超えられる剣士は『零に至った剣豪』のみである。

 だからこそ、未だ未知数の可能性を秘めた刹那が今後どう成長するのか。あるいは自らを超える新たな剣士となることをも彼は望んでいた。

 

「はい。これからも、出来ればずっと私をーー」

 

 強い憧れの眼を向ける刹那に小次郎も照れ臭そうに目を伏せーー

 

「っ!!」

 

 ーー背後に迫った『異常』に、即座に気付いた。

 

 

 

 

 

「……あの、どうされました?」

 

 突然、後ろを向いて固まった彼に、刹那は不思議そうに問いかける。

 その視線の先には夜の闇しかない。

 

「……急ぎ、我が主の元に向かえ」

 

 しかし只ならぬ声色でそう告げる彼に、刹那も『何か』が迫っていることに気づく。

 そして、その頃にようやく、彼の見つめる先の『異常』を認識した。

 

 

 ガシャン、ガシャン、と。夜道を進み行く鎧の音がする。

 

「……東洋の剣士。奴の命に従うのは不服だが、これも主命なれば」

 

 やがて、闇の中から一人の男が現れる。

 

「っ!!」

 

 だが、その闘気、覇気、存在感。どれを取ってもこの現代、この地上にて味わうことなどあり得ない『異常』な『モノ』を醸し出していた。

 

 例えば『魔力』。男の内部の『煮え滾るナニカ』を中心に発せられるソレはおよそ人智を超えたもの。

『神』と人が呼び畏れたモノ。

 

『勝てない』。そう自然と、しかし確信を持って述べるほどの圧倒的な力を目の前の『ヒト』は放っていた。

 それは()()()()()()()()()()()()()

 

 対人戦、特に剣と剣の戦いにおいて遅れを取るなどあり得ない技量を持つ彼ではあったが、こと乱戦、遠距離からの狙撃に関してはあまり得意とも言えない。

 あくまで『ただの人』であった彼は魔力に乏しく、またその身体も人のものでしかない。

 それでも守勢であれば一定の成果をあげることの出来る彼をして、この人物は強大すぎると感じていた。

 

 かつては理性を失いし大英雄をも退けた彼が、明確に守り切る手を見出せなかった。

 

「……っ!」

 

 守らねば、と無意識に抜刀した刹那は、しかしその決定的な力の差に戦う前から心を折られていた。

 それを見ずして感じ取りながら小次郎は再度撤退を促す。

 

「逃げろ、三度目は言わせるな。お主は急ぎ主へこのことをーー」

 

「それは困る。ゆえに()()

 

 膨大な殺意が明確に放たれると共に、男は刹那へと突撃していた。

 その速さ、小次郎をして間一髪と言えるもので、寸でのところで小次郎はその凶刃から刹那を守っていた。

 

 大剣と細く長い彼の刀。このままギリギリと鍔迫り合いをすれば幾ばくかも保たずにへし折られてしまう。

 

「ぐっ……拙者とて、負ける気は毛頭ない!!」

 

 圧倒的な脅威を前にして、小次郎はあくまで平静を保つ。それは明鏡止水の境地をスキルにまで昇華させた彼の類稀なる技量ゆえ。

 

 ギャリッ、と大剣に刃を這わせ、搦めとるように弾き返す。

 

「ほぅ……やるな剣士よ」

 

 筋力で遥かに劣る相手に容易く返されたことに、しかし男は素直に感嘆の意を示した。あくまで彼も武人。

 かつては『仁義の王』として国を治め、その死すらも超越した『亡霊の主人の一人』。

 今は『神の要素』が紛れ込んでいるが、その心に根付く武の誇りは不変のものであった。

 

「……行けっ! 刹那っ!!」

 

「っ!!」

 

 似合わぬ大声を出した小次郎に、刹那はようやく砕けた足腰を奮い立たせて、駆け出した。

 その背も見ることなく、小次郎は目の前の脅威に憮然とした態度で相対する。

 

「只人が成り代わっただけと聞いていたが。存外、その気概は英雄に値するもののようだ。

 認めよう、貴様は確かに英雄である」

 

 対して、鎧の男も真に褒め称えるように告げた。

 

「ハッ……本場の英霊と仕合うことは数あったが、『神となった英霊』と刃を交えるのは拙者にとっても得難い経験よ」

 

 小次郎も、男の『本質』を理解しながら怯むことなくその勇壮に立ち向かった。

 ランクにしてA+。単純な数値の上でも最高位の俊敏を持つ小次郎の刃を、男はあくまで大剣を持ち直すことで全て受け切る。

 

「なかなかどうして、攻め難い技を用いるな。相討ち覚悟の太刀筋とは」

 

 その最中にも相手を讃えることを男はやめない。

 純粋に彼は感服していたのだ。小次郎の圧倒的な武技に。

 剣の技量だけで言えば、自分など児戯に等しいほどにこの男は超越した剣の猛者なのだと。

 

「ゆえに、残念だ」

 

 ーーいくら技量を持とうとも、『■血の鎧』を超える力無くしてこの王を仕留めることはできないのだから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「よぉし、感度良好」

 

 風呂を出てしばらく。

 戻ってきたメカエリチャンに整備を強請られたりしたが、なんとか『通信機』の設置を終える。

 

「同期開始……」

 

 メカエリチャンも通信機との同期を始めている。

 これで無事に通信が繋がれば、この街の中ならばメカエリチャンを子機として学園側に連絡が取れる。

 夜もだいぶ更けてきたが、そろそろ敵も攻めてくるはず。

 俺は通信機の呼び出し音を静かに聞いていた。

 

「っ!! 山門に魔力反応!

 マスター!」

 

 しかし、突如として敵を感知したメカエリチャンに、俺も一瞬ドキッとした。

 

「……誰が攻めてきた?」

 

 問いながら、メカエリチャンの持ってきた『余剰魔力炉』を礼装の背中に取り付け、『本』を腰のポシェットに入れる。すぐに出れるように準備は素早く整えた。

 もう攻めてくるとは、願わくばダ・ヴィンチちゃんとの通信が繋がってからにして欲しかったが。

 

「データにない反応……しかし、この魔力量は」

 

 新手か。またポコポコと新しい奴出して来やがって。もしかして俺が原作知識持ってるの知ってるのかと問いたい。

 

「とにかく膨大ってことね。周囲には?」

 

「山門のアサシン・佐々木小次郎が交戦中と思われます」

 

 なるほど、ならさっさと加勢に行こう。

 メカエリチャンが動揺するほどの敵となれば小次郎一人に任せることはできない。

 

「よし行くぞ」

 

 告げて部屋から飛び出す。礼装の感知機能も遅れて反応をキャッチしている。……なるほど、確かに馬鹿みたいにどデカイ魔力が小次郎の近くにいる。デカすぎて最大値が測れない、一体どういうこと?

 

『エリちゃん! 敵だ、そちらの状況は!?』

 

 走りながら念話を発動させる。しかし、待てども返事は来ない。

 と。

 

『んにゃ? こ、子イヌ……?』

 

 やがて眠そうな声が返ってきた。

 可愛い、けど今は急いで合流したい。

 

『山門に敵だ、急ぎ向かってくれ、そこで合流しよう!』

 

『デジマっ!? わ、分かったわ!

 ……おっとと』

 

 何かに躓く音がする。ちょっと心配だ。

 だが、そう時間はかからないだろうと気にしないことにした。

 すでに、俺も山門に到達している。

 

「っ!! なん、だ。ありゃあ……?」

 

 視線の先、ようやく目にしたことで、今回の敵の『強大さ』に気付いた。

 加えて、またも『見覚えのない英霊』であることも。

 

 同じく立ち止まったメカエリチャンが息を飲んだ。

 

「っ、計測、完了。……マスター」

 

 魔神柱の時のように、メカエリチャンはその先の言葉を渋る。

 今は緊急事態、どんな情報だろうと伝達が最優先だろうに。

 

「なんだ、早く報告をーー」

 

「アレの霊基は()()()()()()()()()()

 ……該当項目、合致するカテゴリーを発見。

 ()()()()

 

 告げられたその言葉に、俺は言葉を失った。

 

「神、霊……?」

 

 なんとか絞り出した言葉も、実感を伴っていない。

 しかし改めて『敵』を視認し、メカエリチャンから送られたデータをもとに魔力を測定することで納得する。

 

「魔力量、規定オーバー。……類似する存在が『獅子王』などと」

 

 送られたデータにある、同率の存在は『獅子王』。

 魔力そのものは獅子王に及ばないものの、存在の核、霊基の形は紛れもなく『神霊』のそれであった。

 あるいは、まだ力を隠した状態かもしれない。

 

「っ! 何れにせよ、小次郎が耐えているうちにどうにかするしかない!」

 

 彼が倒れれば、メカエリチャンとエリちゃんで対処することになる。無茶だろう。魔力量では圧倒的に劣っている。

 現状でも小次郎を加えているのみで、魔力量自体の総数は劣るが一人いるのといないのとで違うくらいは分かる。

 

 いざとなれば令呪だって。

 

「ガンド!!」

 

 俺は強化してチャージ時間の減ったガンドを敵に放った。

 狙いは上々、今は小次郎との鍔迫り合いになっているから。

 

 このガンド。fgoで当たりまくっていただけはあり速度はある。サーヴァント並みの速度で迫る弾丸に、敵も対処に遅れる。

 

「っ!! 弾いたか!」

 

 しかし、到達する寸前に見えない壁のようなものに阻まれ霧散するガンド。

 そして大剣を操るとなればこいつはセイバーだろう。

 三騎士とはまた厄介な。

 毛ほども気にしていないことから対魔力はA相当と見る。

 そうなると、魔法使いにとっては天敵そのもの。唯一、神鳴流の詠春が頼みの綱だがーー

 

「っ、そういうことか!」

 

 そこまで考えて敵の狙いを今更悟る。

 なぜ、正面から攻めてきたのか。

 なぜ、知らない敵なのか。

 

 残るフェイトは今どこにいるのか。

 

「囮だ、くそ!」

 

 急ぎ念話を繋ぎ直す。

 

「マスター!

 今は目の前の敵に集中を!!

 援護、行きますよ!?」

 

 メカエリチャンの声に、小次郎がすでにボロボロであることに気がつく。全くもって、俺は三下なマスターである。

 

「っ、援護だ!! どちらにせよあいつの方がやばい!!

 最初から全力でぶっ放せ!!」

 

 フェイトはまだ非殺生のセーフティがある。

 ならば殺されることはないだろう。

 それよりも、この『神霊に匹敵する』敵の方が危険だ。

 余剰魔力炉もフルで運用して何としても倒す。

 

「了解、スカートフレア最大展開!」

 

 宣言と共に彼女のスカートから大量のミサイルが放出される。

 それに合わせて、彼女も突撃しながら指のマシンガンをぶっ放す。

 

「どきなさい、アサシン!!」

 

「っ!」

 

 彼女の声に、小次郎も限界まで敵を引きつけてから離脱。

 

「むっ!?」

 

 回避の遅れた敵をミサイルの爆発が覆う。

 凄まじい爆音と煙を出しているが、メカエリチャンは尚もマシンガンを撃ち続け、目からの光線、尻尾からの電撃と口から炎を吐いてミサイル爆心地に猛攻を加えている。

 

「っ、『鋼鉄天空魔嬢(ブレストゼロ・エリジェーベト)』!!」

 

 そしておまけとばかりに、最大圧縮のドラゴンブレス、即ちメカエリチャンの必殺宝具をぶちかました。

 レーザーみたいな超音波の光線は爆心地に直撃するとともに、さらなる爆発を齎した。

 もはや、山門はおろか、反対側の屋敷の縁側まで爆風で吹き飛ばすほどの威力。

 俺は礼装で肉体を強化してなんとか踏みとどまった。

 

「はぁ……はぁ……!

 やり過ぎました。残留魔力により敵の感知は不能」

 

 やり過ぎとは、言い難い。神霊に値する敵ならばこれくらいはやって当然だ。

 煙が凄まじいが、中から何かが出てくる気配はない。

 呆気ないが終わったのか?

 

「いや、見事な判断だメカエリチャン。あと、すまない。俺の判断がもう少し早ければーー」

 

「っ!! マスター!」

 

 突然、煙にポッカリと穴が空いた。

 気づいた時には目の前まで迫る分厚い刃。

 

「え……」

 

 視界には、刺突の構えを見せた鎧の男の姿が明確に捉えられた。

 

「終わりだ」

 

 短い呟きとともに駆り出される神速の突き。抗うだけの力を俺は持たない。ただ、明確に、これが俺の終わりの姿だと理解してしまった。

 

「っ!」

 

 ーーだが、俺の刃が到達する僅かな隙に、その間に彼女が入り込んだ。

 

 グシャリ、と聞き慣れない、聞きたくない音が耳に響く。

 

「ぐっ、あぁぁぁぁ!!!!」

 

 雄叫びをあげながら腹のハッチを開き、残っていた魔力で『鋼鉄天空魔嬢』を撃ち放つ彼女。

 その左胸には深々と大剣が突き刺さっている。

 

「……!」

 

 対して、鎧の男はドラゴンブレスの直撃を受けて後方に飛ばされながらも大したダメージを負っていなかった。

 

 着地と共に、煙をあげる鎧を一瞥しながらも表情すら崩さない。

 

「……予想以上の対処の速さだ。よもや人形ごときが想定を上回るとはな」

 

 大した感情も込めずに吐き出される男の言葉に激しい怒りを覚える。だがそれ以上に、目の前で膝をついた彼女に俺は動揺していた。

 

「メカエリチャン!!」

 

 肩を抱いて呼びかける。すぐさま、礼装の霊体復元機能で回復処置を施す。

 

「回復など、後にしなさい……逃げ、て。

 アレは、倒せる相手じゃ、ない!」

 

 バチバチとスパークを零しながら必死に言葉を紡ぐ彼女を、当然ながら置いていくことなどできない。

 俺は必死に、礼装に魔力を込め続ける。

 

「なにを、しているの!?

 早く、逃げて!!」

 

「置いていけるかよ……俺がなんのために生きてるのか、知ってるだろ!」

 

 全ては彼女たちのためだ。

 命も、魔力も、身体も、心も。

 俺が呼び出してしまったことに対する義務だけじゃなく、俺はエリちゃんが大好きだからこそ、全てを彼女に捧げる。

 

「……哀れな人間よ。聞いていたよりも、よほど矮小で脆弱だ。ダンタリオンめ、謀ったか?」

 

 男の呟きを受け止めつつも、もはや眼中にはエリちゃんしか映っていない。

 

「……ワタシ、ハ。アルターエゴ……あなタの知ル、エリザベートで、ハ……」

 

 思ったよりも損傷が激しい。発声機能まで阻害し始めている。核を傷つけられたのか?

 

「お前も、エリザだ。いや、メカエリチャンという俺の大切な人だ」

 

 たとえ核が傷つこうと、俺には令呪がある。

 余剰魔力炉に溜まった全てを使えば核くらいーー

 

「仮令呪・起動。『霊基復元』!!」

 

 迷うことなく炉心を起動させて、復元機能を発動する。

 ギュルギュルと身体を流れる『誰かの魔力』『世界の魔力』が身体組織を傷つけていくが、痛みなどいくらでも我慢できる。

 

「ヤめ、なさい! それは、奥の手の……!」

 

 奥の手に取っておいてメカエリチャンを失っては元も子もない。いいから黙って治療を受けろ。

 

「すまん、小次郎……奴の相手を」

 

 動けない俺たちに変わり、俺は小次郎に抑えを頼む。

 すでにその身体はボロボロだ。だけど頼む。

 俺には力がない、何もない。だからこそ頼むことしかできない、エリちゃんを守るために全てを犠牲にすることしかできない。

 

「……お主は治療に集中しておけ。

 なに、技量では拙者の方が数段上よ」

 

 このような状況でも、重傷に等しい傷を受けながらも小次郎は笑っている。平静を保っている。

 俺にはない、正しく英雄のみが持つ気概だ。

 

「ふん……幾らか期待はずれでもあったが、『貴殿』のみは予想を超えている。受けて立つぞ、無銘の剣聖よ」

 

 あくまで余裕を崩さず、警戒も解かず男は大剣を構え、満身創痍の小次郎に向かっていく。

 

 嵐のような戦い、激しい剣戟が延々と続き、その度に小次郎はその身に傷を増やしていく。

 技量は圧倒している、しかし地力が違いすぎた。

 この男、セイバーと目される英霊は自前の魔力だけで技量を覆している。例えるならば、怪獣と蟻。いくら技があっても乗り換えられない壁というものが存在した。

 

「まだか、復元はまだ終わらないのか!!」

 

 対して俺も、未だ衰弱するメカエリチャンの姿に焦りを感じていた。なんでもいい、早く、彼女を助けてくれと礼装に魔力を込め続ける。

 

 ……確か、これら機能は俺に注がれる『世界の魔力』を変換していると言っていた、同時に変換にコストがかかっていると。

 ならば()()()()()()

 

「っ、マスター! 何を、しているの!?」

 

「騒ぐなメカエリ。大丈夫、絶対に助ける」

 

 ビシビシ、と身体の組織が壊れる感覚がある。痛い。

 身体中が鋭い痛みに襲われている。

 だが、耐えられる。

 

「ほら、傷も塞がってきた!」

 

 先ほどまでは雀の涙ほどの効力しかなかった復元機能が、今では急速に速まり、あっという間に傷を塞ぐに至った。

 

「そ、そんな……あなた、どれだけの魔力をっ!?」

 

 叫んだ拍子に、どこかが軋んだ音がしてすぐに俯くメカエリ。

 

「大丈夫、助ける」

 

 身体のあちこちが悲鳴を上げている。

 だがやめない。未だ核の復元が終わっていないことは礼装から送られるデータで把握している。

 それを治すまで幾らでも魔力を流し続ける。

 

「……どうやら、対象の回収に成功したようだ」

 

 そんな時、突然、セイバーは剣を下ろした。

 対する小次郎はその隙を突くほどの体力を残しておらず、刀を持ったまま静観する。

 

「はぁ……はぁ……!」

 

 息は荒げていても、その心は静寂のまま。冷静に敵の動きを警戒していた。

 

「任務は果たした。見事だった、無銘の剣聖。我が矛を受けてここまで耐えるなど『我が戦友』以来よ」

 

 そう言って背中のホルスターに大剣を収めると、セイバーは何事もなかったようにその場を去っていく。

 だが、この場にそれを追える余裕のあるものはいない。

 誰一人。

 

「マス、ター……」

 

 やがて、機能の回復してきたメカエリチャンが俺に手を伸ばしてきた。

 咄嗟にその手を取る。

 

「ああ、大丈夫。安心して」

 

 たった一撃で、彼女のボディはボロボロにされていた。主に左半身を中心に損傷が激しい。

 こう見えて彼女の耐久はAである。当たりどころが悪かったはいえ、あまりにも重い一撃。これがあと数cmズレていれば……

 

「子イヌっ!!」

 

 そこへ、屋敷の奥の方からエリちゃんが駆け寄ってきた。

 その身体も幾ばくかの傷が見える。

 駆け寄るなりエリちゃんは涙ながらに告げる。

 

「ごめんなさい、私、木乃香を……」

 

 どうやら木乃香は結局攫われてしまったようだ。

 彼女の後からはネギくん、明日菜、刹那も向かってきた。

 ……詠春はダメだったか。

 

「っ、()()()()()!!」

 

 と、刹那は小次郎を見るなり血相を変えて彼に駆け寄った。

 

「おお……無事だったか。いや、なにより……」

 

 刹那を見て、ホッとしたような顔を見せた小次郎は力が抜けたようにその場に膝をついた。

 ボタボタと数多の傷口から鮮血が滴り落ちる。

 

「あ、ぁ……そんな、お嬢様だけじゃなくて、貴方まで」

 

 激しく動揺する刹那に、しかし小次郎は強い意志の篭った目を向けた。

 

「拙者は『英霊』、この程度は死なぬ。それよりもお主はまだ為すべきことがあるだろう?」

 

「で、でも……!

 長も、やられてしまって……貴方まで」

 

 やはり詠春は敗れたか。いや、仕方あるまい。ブランクがあるのもそうだが敵はこの世界でも最強格のフェイト。今後の歴史でも太陽系最強とか称されはじめる奴だ。

 

「お主は託されたはずだ。木乃香を、この先の戦いを」

 

「む、無茶です。……私など、貴方がたの足元にもーー」

 

「無茶でも、通すのが義理であり意思であり、心。お主が決めた道だ」

 

「っ!」

 

 悲壮な顔を浮かべる刹那を見て思う。どうにも、彼女は正史よりも心が脆いのではないか、と。

 

「たとえ、不可能でも、その志が……ぐっ!」

 

 呻き、血を吐き出す小次郎。

 もはや彼は限界だ。

 当たり前だ、彼はすでにその身体を何箇所も深く斬り裂かれている。すぐに治療しなければ、消滅すらあり得るだろう。

 

「小次郎さん!!」

 

「聞け。お前の道が、真にお前が進むと決めた道なら。

 諦めるな。折れようが潰されようが、その道の先を見たくてこれまでの自分から変わろうと思ったのだろう?

 なら、ここで倒れるな。ここでそれすら辞めれば、これまでのお前すら無意味となる」

 

「っ……うぅ……わ、わたし」

 

 泣きながら愛刀を握りしめる刹那。

 その姿に、何かを感じたのか小次郎は優しい顔で彼女の頭を撫でた。

 

「……拙者が、人であれば。あるいは妻を娶っていたなら。

 このような気持ちに、なれたのかもしれんな」

 

 やがて、その手すらするりと地に落ちて、小次郎は力無くそのまま倒れ伏した。

 

「っ……!」

 

 今にも泣き崩れてしまいそうな彼女を見兼ねたのもあるが、メカエリチャンの治療も殆ど終わったところ。

 俺は小次郎の身体に手を置き、礼装を起動した。

 

「な、なにを!?」

 

「慌てるな。俺が治療する。

 だから行け、俺も後に続く」

 

 もはや余剰魔力はない。が、小次郎ほどなら治せる。直に注げば数分で治るはず。

 幸いにもその核は傷つけられていないのだから。

 

「マスター!!」

 

 その手を掴んだのはメカエリチャンだった。

 

「これ以上、本当にっ!!」

 

「分かってる。だが現状、それしか手はない」

 

 他の人が来ないところを見るに、全員石化してるのだろう。

 なら、今この場で治せるのは俺しかいない。

 

「メカエリチャンはこの場に残ってくれ。

 敵が引き上げたのを見るに、もうここには用がないのだろう。たぶん安全だ」

 

 これから敵の本拠地に攻め込むよりも圧倒的に。

 

「っ!!」

 

 しかし、次の瞬間には俺の頬はエリちゃんのビンタを食らっていた。

 

「ぐおっ!?」

 

 遅れて、メカエリチャンからもグーで殴られる。加減してくれてるのだろうがサーヴァントの拳はやはり重い。

 しかしそんな考えは彼女らの顔を見て吹き飛んだ。

 

「バカ! 子イヌってばほんとーにバカよ!!

 ……私だって、貴方の傷つくところは見たくない、見たくないの!」

 

「……オリジナルと意見が被るのは不服ですが。

 同じく。マスターたる貴方が私たちより傷つくなど言語道断です」

 

 泣き腫らすエリちゃんと、怒りに震えるメカエリチャン。

 

「……ははっ、女子を泣かせてまで拙者も生きたくはない」

 

 そして、意識を失ったはずの小次郎ですら起き上がってきた。

 待て、お前の治療は終わってない。

 

「拙者ならば心配無用。……お主なら知っていよう、ただ一度の勝負のために主を無くしても現界し続けた拙者を」

 

「っ!? お前、なんで、それを……?」

 

「なに、()()()()()()

 さ、続きは帰ったらからにしよう。

 今は、お主も為すべきを成せ」

 

 強い瞳、彼はここで出会ってからずっと諦めることをしていなかった。無謀な戦いでも、絶望的な局面でも。

 これが英雄。

 マスターが従える存在なのだと思った。

 

「……わかった。

 俺も、()()()()()()()。役目を果たそう」

 

 そうだ。この世界では俺が藤丸立華。

 現状では唯一、複数のサーヴァントを召喚できる存在。

 俺がやらねば、両面宿儺は蘇り、きっと正史よりも悲惨な事態になるだろう。

 それだけは止めねばならない。

 今後のためにも、エリちゃんのためにも。

 

 やれるのは俺。

 ならばやるしかない。

 

「……お主も、厄介な性格をしているな」

 

 俺を見て、小次郎は不意に苦笑した。

 理由はわからなかった。

 

「刹那、気を辿れるんだよな?

 頼む」

 

 俺は、すでに決意を固めていた刹那に声をかける。

 

「いけます。奴らの足取りは克明に」

 

 はっきりと答えた刹那に頷きを返す。

 

「よし、なら行こう。エリちゃん、付いてきてくれるか?」

 

「当たり前でしょ。……子イヌ、私頑張るから。だから、いっぱい頼ってね」

 

 すっと俺に腕を絡めた彼女に、一瞬二度見してしまう。

 そんな、自然にやるなよ。心臓に悪い。

 

「私も、ですよね?」

 

 反対側の腕はメカエリチャンがギリギリと引っ張ってきた。千切れちゃうから、取れちゃうから。

 

「うん。行こう。

 エリちゃんたちがいるなら心強い」

 

 確かに技量や力量は足りないかもしれないけど、でも、彼女たちが信頼を向けてくれるから俺も前に進める。

 というか、両手に華状態でテンションが上がりまくってる。

 神霊がなんぼのもんじゃい!!

 軽く捻ったるわぁ!

 

「ネギくん、きみたちはお嬢様の救出最優先。

 絶対に無理な戦いはダメだよ?」

 

 敵はサーヴァント。今の彼らには荷が重すぎる。

 

「はい、木乃香さんは絶対に助けてみせます!」

 

 ネギくんはすでに強い意志で立っていた。

 彼は折れても進む意思を、運命を持っている、まるで『錬鉄の弓兵』のような。

 

「私も、やられっぱなしはいやだし」

 

 ハマノツルギを肩に背負い、明日菜も戦意はあるようだ。そのツルギがどれだけ効くのか分からないが、魔法は彼女に任せて大丈夫だろう。

 

「敵はすでに森の奥深くまで到達しています」

 

 刹那の言葉に俺は頷く。

 

「ああ、マスター。伝え忘れていたが、()()()()()()()()()()。戦力としてはこれ以上ない助っ人ではないか?」

 

 にやりと笑う小次郎。

 気づいていたのか、彼女がいることに。或いは『宿命』の関係にあるが故の勘なのか。

 いや、彼の発言で武蔵があの武蔵であると確信した。

 

「ああ、頼もし過ぎる。

 ……あとは任せろ、小次郎」

 

「うむ、あとは任せる。……拙者も少し休憩に入るとしよう」

 

 そう言って腰を下ろす小次郎。そのまま消滅とかやめてくれよ?

 

「行きましょう」

 

 刹那の宣言と共に、俺たちは彼女の先導のもとで敵の追跡を開始した。

 

 




オリジナル展開待った無し!

さぁ、神殺しの準備は万全か!?

いくぜ、ヒャッハー!




ちなみに忍者とか半魔とかアルヨとか。出ます!!
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