一般人生徒リツカ!   作:ブタどもの一人

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注意!!

今回の冒頭には『人によっては不快感を覚える』描写及び内容が含まれています。
もし、『えげつない描写』や『残酷・陵辱的描写』に耐性がない人は冒頭は飛ばして見てください。

ご協力をお願いいたします。

























ここから始まるよ!









京都・七

 いつだってそうだ。

 

 我ら一族はいつだって全ての怨嗟を受け止めてきた。

 

 

『穢らわしい、忌々しい呪術師などっ!』

 

『人殺しめ! 貴様らの居場所などあるものか!』

 

『返せっ!! 私たちの家族を返して!!』

 

 

 暗殺、策謀、奸計。そして戦争。

 事あるたびに我らにそれら全ての負債を背負わせてきた。

 

 

『貴様らのせいだ! 穢れの一族め!』

 

『お前たちが起こした、お前たちのようなものがいるからっ!』

 

 

 何も、何も知らない。知らされない。

 我らを囲う者たちでさえ、我らの裏切りを警戒している。だから情報は渡さないのだ。くれるのは対象を殺すのに必要なものだけ。

 故に、本家から遠ざけ、謂れなき誹りを黙認する。

 

 生まれた時から、そういうものなのだと思ってきた。

 だから諦めていた。せめて、家族で静かに暮らせれば俺はそれだけでーー

 

 

 

 

『へへっ、西洋魔導師の犬どもが』

 

 燃えている。家が、唯一、安らげる場所が。

 

『ひひ、嫁の身体はなかなかだったな?

 まあ、穢れの一族だがそこだけは褒めてやらねぇと』

 

『戯けめ、我ら“反西洋魔導連隊”の者が穢れに触れるなど。

 ……だが、穢れの末路としては順当か』

 

 男たちが、燃え盛る家の前に群がっている。

 意味がわからない会話をしている。

 

『おっ!? お、おい、旦那が帰ってきたぞ!?』

 

『む……ふん、一足遅かったな。貴様ら家族は皆殺しにしておいた。穢れめ、あの世で地獄の責め苦に永劫苦しむがいい』

 

『あ、そういやさっき“娘”も事切れちまってたっけ?』

 

 

 そう言って、男の一人がゴミでも投げるかのように俺へと放り投げたのは、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()だった。

 

『いやぁ、嫁も良かったが娘の穴も最高だったぜ』

 

『最初は泣き叫んでうるさかったけどな『おとうさーん、おとうさーん!』ってな!』

 

 

 馬鹿にしたような口調で男たちが娘の真似をしていた。

 理解が、及ばなかった。

 

 

『……我らの家族を殺した咎、()()()()()()()()()()咎、ただ死ぬだけで償えると思うなよ!』

 

 

 もはやピクリともしない娘の身体を見つめる。

 殴られ、斬り付けられ、激しい陵辱を受けたであろう有様のその身体をただ見ていた。股下から零れ落ちる白濁のナニカを俺は理解するのを拒んだ。

 

 なぜ、なぜなぜなぜなぜなざなぜなぜ。

 

 

 

 

 なぜ、娘まで、死なねばならないのか?

 

 まだ中学に上がったばかりだ。

 いつも、仕事を終えて帰れば笑顔で出迎えてくれる。妻と共に家事をこなして。

 ……おそらく学校でのいじめのものだろう傷を、俺に心配をかけないために隠すような、それでも、俺も、あいつらさえ憎まないようなあの子を。

 

 なぜ、殺した?

 

 なぜなぜなぜなぜなぜなぜなぜなぜなぜなぜなぜなぜなぜなぜなぜなぜなぜなぜなぜなぜなぜなぜなぜなぜなぜなぜなぜなぜなぜなぜなぜなぜなぜなぜなぜ!!!!

 

 ーーなぜだっ!!!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 気づけば、男どもがバラバラになっていた。一様に苦悶の表情で固まっている。

 ……だが、まだ逃げようとしてる奴ガ、イル。

 

 アア、殺サネバ。

 殺シテ、殺シテ、“捧ゲネバ”。

 

 

 “モハヤ、()()ニ、カチハ、ナイ”

 

 “スベテ、ニ、『死』ヲ。醜キ、獣ドモヲ、誰一人、逃ガスナ”

 

 

 

 殺セ殺セ殺セ殺セ殺セ殺セ殺セ殺セ殺セ殺セ殺セ殺セ殺セ殺セ殺セ殺セ殺セ殺セ殺セ殺セ殺セ殺セ殺セ殺セ殺セ殺セ殺セ殺セ殺セ殺セ殺セ殺セ殺セ殺セ殺セ殺セ殺セ。

 

 

 ーーああ、そうか。

 

 あなたが、あなた様が我が■■ーー

 

 

『飛弾■■大権現・■面■儺■様』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……かくして、『彼』は『鬼神』となった。

 実に、実に()()()()()()()()()()()()()()()()()()を知りながらも結局は矮小な願望のためにその身を捧げたのですから」

 

 語り合えたダンタリオンに、セイバーは表情を崩さず問いかける。

 

「貴様。それを知って()()()()()()()()()()()()()

 ならば貴様は永遠に魔神というシステムに囚われ続けるだろうよ。

 ……いや、今の我が言うべきことじゃないな。忘れろ」

 

「ふむ……ですが()()()()()。実に非効率、非合理的な判断だと思いますが。

 だって、それら集めた怨嗟は()()に渡ってしまうのですから。いえ、これは『彼』の知らない事実でしたね」

 

 失礼、と頭を下げるダンタリオンにセイバーはもはや視線すら向けていなかった。

 

()()()()()()()()。我が気に食わんのは。

 ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 不義理、不誠実。主人の命が無ければ斬り捨てているところだぞ?」

 

 それでも、濃密な殺気を放つセイバーにダンタリオンは愉快そうに笑った。

 

「ハハハ、やはり貴方も()()()()()()()()。それは『神の視点』を手に入れたからですかな?

 まったく、我が主人も酔狂なお人だ」

 

「黙れ。我は我だ。

 ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()、根幹は変質せぬ」

 

 それがセイバーの誇り。ただ、召喚の義理を果たしているのみ。

 ()()()()()()を内包していようとも、不正な召喚でバグを起こしていようとも、誇りは失わない。

 それほどまでに、どうしようもなく彼は『人間の王』であった。

 

「キャスターの準備も整っているようで。

 ……あとは、彼女らがどこまでやれるか。我らも観戦席でゆっくりと眺めることにしましょう」

 

 そう吐き捨て視線を向けるのは、祭壇にいる千草とフェイト。そして祭壇に括り付けられた木乃香。

 

「初動のキーは近衛の血ですが、顕現後の制御は()()()()()()

 あの小娘だけでは些か厳しい。

 ()()()()()()()()()()()()()も利用せねば」

 

 ダンタリオンの語るキャスター。彼のクラススキルの陣地作成のランクはA+。

 かつては豪族であり、朝廷軍をも退けた功績、その地の民からの信頼も影響していた。

 ゆえにキャスターは()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 しかし、この力は今回必要とされていなかった。

 必要なのは『鬼神を操った』という逸話のみ。

 それだけのためにキャスターは呼ばれた。

 

 生前においては立派な統治者であっただろうキャスターも『伝承の影響』と『不正召喚』の影響を受けてもはやその面影すらない。

 怒りと怨嗟に塗れた『英霊としてのキャスター』だからこそ適任だとダンタリオンは判断していた。

 

 だって、あの祟り神との親和性は最高ランクだから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ボエェェェェェェ!!!!」

 

 エリザベートの『竜鳴雷声』を幾度も直撃した金鬼は激しく消耗していた。

 筋力、耐久ともにランクにしてA。加えて鬼種のスキルにより更にその二つを上昇させている彼をして、二人の敵対者は手強かった。

 

「ハイヤー!」

 

 まず、ただの人間たる少女の動きが異常であった。

 幾つかの拳法を駆使しているのは分かるが中でも()()()()()()が異常な完成度を誇っている。

 

 打撃を食らわせることが出来ずとも、俊敏な動きで金鬼を翻弄し、その拳をいなすことでエリザベートにすら攻撃を行かせないようにしていた。

 

 それでも、膂力に優れた彼の拳を受け続けた少女の腕はもはや傷だらけで、あと数発いなすだけでもへし折れ、千切れ飛ぶ。

 

 だが、彼女が未だ生きているのにはもう一つ、要因があった。

 

「強いな。その歳でその技量は凄まじいばかりよ」

 

「ほ、褒めてもなんにも出ないアルよー!」

 

 そう言いつつちょっと照れて、内心嬉しいと古菲は思っていたりする。

 その技と才、まさしく鬼神たる自分たちに立ち向かう気概に金鬼は素直に感心していた。

 

「このまま、抑えに徹することができるならば良いが……」

 

 金鬼たち三体が受けた命令はあくまで『足止め』。

 ならば、この場に彼女らが止まる限りは彼らも()()()()()()()

 逆もまた然り。ここを無理にでも越えるならば『殺してでも止めよ』と命ぜられている。

 まるで、彼らの心境を知り得ているかのような指令に金鬼は()()()()()()()()()()()()()()()

 

 金鬼は、三鬼たちは。()()()()()()()()()()()()()()

 

 

「お主のような気骨ある若人がもう少しいれば……いや、すでに負けた戦など憂いても仕方なし」

 

 必死に拳を振るう古菲にどこか優しげな瞳を向けていた金鬼だったが、その隙をエリザベートが見逃すことはなかった。

 加えて、『マスターからの強化を受けた』彼女の全力が炸裂する。

 

「これで、終わりっ!!

 ボエエエェェェェェ!!!!」

 

 渾身の魔力を込めた『竜鳴雷声』。一度、宝具を開帳していて尚、衰えを知らぬ彼女の『肺活量』によって必殺の一撃となって飛来する。

 超音波のドラゴンブレスが金鬼の胸を直撃した。

 

「ぐっ、うおぉぉぉぉ!?」

 

 ビシビシ、とこれまでの攻撃から生じていた大小様々な傷から亀裂が広がる。本来の攻略法とは全く異なる、反則に近い戦法により金鬼は敗れた。だが、彼自身に怒りはない。

 寧ろ()()()()()()()だ。

 

「み、見事……願わくば、他の者も、『理性』を保つ、うちに」

 

 命を果たせず破れたとは思えぬほど安らかな表情で、金鬼は砕け散った。

 

 

 

 

 

 

 

「く、大蛇!!」

 

 一方、隠形鬼と対峙する千代女も苦戦を強いられていた。

 必ず倒すと主に宣言した手前、負けなど死んでも認めない覚悟の彼女だったが、明確な力量差に押し切れないのが実情であった。

 

「ふっ、さすがはアサシンのサーヴァント。

 速さだけでも我に迫るか」

 

 余裕で大蛇を躱しながらお返しとばかりにカウンター気味の攻撃を繰り出す隠形鬼に、千代女は手に持つクナイでなんとか防ぐ。

 

「ぜぁ!!」

 

 負けじと二刀に増やしたクナイを振るい弾き飛ばす、続けて駄目押しとばかりに『呪い』を込めたクナイを複数投擲する。

 

「笑止」

 

 しかしそれらも全て容易く叩き落とされる。

 

 しかしこの力量差も仕方のないことではあった。

 何せ、彼ら四鬼は『忍びの祖』とも称されることがあるのだから。それらの逸話が少なくとも認められているためにこうして隠形鬼は、絶大な力を発揮して、本場の忍を圧倒している。

 それらに鬼種のスキルを合わせれば、もはや勝てるものなど限られてくるだろう。

 それがサーヴァント、引いてはそれに匹敵する存在として召喚されたものの力であり、意地である。

 

「はぁ、はぁ……!」

 

「……ふむ」

 

 息を荒げる千代女に対して、隠形鬼は何事か考えるような素振りを見せていた。

 千代女にとっては戦闘中に物思いに耽るなど舐められている、と恥辱を感じると同時に、チャンスでもあると複雑な心境になっていたのだが。

 

「……ひとつ、頼みごとをしたい」

 

「なに……?」

 

 突然、話し始めた彼に、当然千代女は訝しんだ。

 しかし、優勢の彼から態々そのような真似をしてくる理由が思い至らず様子見をすることにしていたが。

 

「我等、四鬼は()()()()のもと使役されている。

 ゆえに、僅かな隙であればその『命令』を拒むこともできよう」

 

「っ……!?」

 

 声に出さずとも、千代女はその予想外の内容に僅かな動揺を見せた。

 しかしその隙を鬼は狙わない。

 

「その間に、貴殿の『全力』を我にぶつけよ。

 ……それで、恐らくはこの()()()()()()()()も終焉へと導くことができるやも知れぬ」

 

 嘘を言っているようには見えなかった。第一に先ほどの隙を自覚していたからこそ、それを狙わなかった彼の言葉は少なくとも真実なのではないか、と検討の余地が出たことは確か。

 それでも、ここは戦場、敵の言葉に簡単に乗るほど彼女も迂闊なサーヴァントではなかった。

 

「三十秒、いや一分は保たせてみせよう。それでケリをつけてくれ。頼む」

 

 心からの懇願。もはや彼に彼女たちを害する意思はなかった。

 それでも戦うのは『自刃を禁じられている』のと『足止めの命令』ゆえであった。

 

「……言葉は、要らぬ。行動で全てを見極めよう」

 

「分かった。ならば……」

 

 最大限の譲歩を出す千代女、彼女も生前をくノ一として『潜入』や『奸計』を行なったからこそ『心の機微』には聡い自信があったのだ。

 

 それを受けて隠形鬼も自身を封じようとしてーー

 

「ぐぉ!? いかん、これは……!?」

 

 突然、苦しみだした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「粉塵、爆符!!」

 

 インを結び、風鬼の周囲にばら撒いた呪符を一斉に爆破させる楓。

 

「甘い」

 

 しかしそれらは纏めて、風鬼が呼び招いた風によって吹き飛ばされてしまった。

 爆風ごと吹き飛ばされたそれは、逆に楓たちに牙を剥く。

 

「ぐっ、この風は、どうにかならないものか!」

 

 憎々しげに呟く龍宮の言う通り、風鬼の操る風は驚異であった。

 彼女の弾丸はもとより、先ほどの爆風ごと吹き飛ばす芸当や、ネギの魔法なども纏めて弾き飛ばされてしまう。

 唯一、刹那の神鳴流のみは接近戦の兼ね合いかあのプロペラのような刃で対応している。

 

「すまぬ、拙者の爆符が裏目に出た」

 

「構わん。それよりも、これは予想以上の能力差だな」

 

 飛び回りながら謝罪を入れてくる楓に軽く返しつつ、苦笑交じりに呟く龍宮。

 彼女は明確に、風鬼と自分たちの間に埋めがたいほどの力量差があることを感じ取っていた。

 それも、この人数で相対してまだ辿り着かない領域なのだ。

 

 銃で、手裏剣とクナイで、魔法で必死に迎撃する彼女らの奮闘を嘲笑うかのように風鬼は呼びまねく風、竜巻、嵐にて全てを弾き飛ばす。その隙を突いて刀を振るった刹那をも、その手に持つ珍妙な形の刃でいとも容易く受け止め、弾く。

 はっきり言って、無理ゲーだった。

 

「あんな、風っ!!」

 

 しかし、その状況に危機感を覚えた明日菜は単身で風鬼の操る風に向かって突撃した。

 

「待て、神楽坂!!」

 

 それに気付いた龍宮が呼び止めるも、その頃には明日菜はハマノツルギを振り下ろしていた。

 

「っ、なんと!」

 

 その光景に、風鬼も思わず声をあげた。

 当たり前だ、自らが操る風がハマノツルギによってせき止められているのだから。

 まるで、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()に風鬼や龍宮、刹那や楓、ネギでさえ目を見開いていた。

 

 

「ぐ、うぅぅ!!」

 

 しかし、それで止め切れるならば皆、苦労していない。

 次第に、明日菜の『魔法無効化能力(マジック・キャンセラー)』……

 いや『幻想否定(イマジン・デナイアル)』だけでは防げなくなっていた。

 

「も、もうこれ以上、は!!」

 

 しかし、驚きに動きを止めた風鬼の隙を見て、即座に楓と龍宮は動いていた。

 

 まずは、龍宮が所持している特殊弾、威力よりも相手を全力で押さえることに特化したあらゆる束縛の呪文が込められた麻痺弾をニ、三発撃ち放つ。

 

「ぐっ!」

 

 直撃を受け動きを完全に止めた僅かな隙に、今度は楓が、鎖と呪符を持ってさらにその動きを止めるべく動く。

 何重にも巻かれた特別な鎖と、封印の呪符を手持ちにある限り貼りまくる。

 

「が……ぐ……!!」

 

 展開された封印の結界に、『幻想封じ』の鎖の効果により風鬼はその場での停止を余儀なくされた。

 

「今だ! ネギ先生は神楽坂と刹那を連れて先を急げ!!」

 

 それは最善の策であった。鬼たちの事情を知らなければ最適の方法。

 

「龍宮さんたちは!?」

 

「案ずるな、必ず仕留めて後に続く。それよりも早くせねば近衛木乃香の身が危険だ!」

 

 ある程度の事情を知っているような口調。

 

「先生、ここは任せた方が良いかと」

 

 あくまで戦闘に携わるものとしての言葉。

 それを理解するからこそ、ネギは少し迷いだけで龍宮の判断に従うことにした。

 

「すいません、皆さん!

 ……明日菜さん、刹那さん! 僕の杖に!!」

 

 ネギの叫びに、明日菜と刹那は即座に対応して杖に飛び乗った。

 ふわり、と吹き上がった杖に明日菜は「きゃっ!」と少しの悲鳴をあげるも、ネギは龍宮たちに目を向ける。

 

「お願いします!!」

 

「任せろ。……これでも、名の知れた掃除屋だ」

 

 口の端を上げた龍宮に頷き、ネギは木乃香のいる方角へと飛び立った。

 それを見て、風鬼は驚愕する。

 

「待て……今、先に行かれると……!?」

 

 必死に手を伸ばす彼に龍宮と楓は警戒し構えた。

 

 しかし、風鬼は予想外の行動に出る。

 

「ぐ!? う、うオォォォォォォ!!!?」

 

 突然、特大の雄叫びを上げ始めた風鬼。それに応じて肌を刺す魔力が()()()()()()()()()

 

「ば、ばかな! まだ上がるのか!?」

 

 仕事でもついぞ見ることのないほどの、膨大な魔力。

 ただしく、『鬼である』と思い知らされる絶対的なまでの力を風鬼は見せ始めていた。

 苦しみに悶える風鬼はしかし、なんとか言葉を紡ぎ、彼女たちに伝える。

 

「ぐっ……時間がない、頼む……お前たちの全力で、()()()()()()()!!」

 

 必死に、懇願するように述べる鬼に、二人ともそれが真に彼が望む言葉だと感じ取った。

 

 だからこそ、楓は即座に手に持つ手裏剣に呪文を付加していく。あらゆる障害を『打ち破る』概念をありったけ付け加えていく。

 対して、龍宮も『切り札の一つ』であるリボルバーを取り出してそれに特殊弾を詰める。

 

 そして両者ともに自身の全力と思われる力を同時に風鬼へと叩きつけた。

 

 

 巻き起こる爆発と衝撃。風圧は放った二人でさえ目を覆うほどのもの。中でも龍宮の『五大属性の衝突エネルギーを利用した弾丸』による威力は凄まじく、反発作用と込めたエネルギーの総量が膨大だったこともあり、それだけでドームを形成するほどであった。

 

 やがて衝撃の止んだ頃、楓は心配げに龍宮に声をかける。

 

「拙者の手裏剣、壊れてないでござろうか」

 

「知らん。構っていられる余裕もなかった」

 

 二人ともに、爆発の煙が充満する中で勝利を確信していた。誰でもない敵本人が動きを止めて当たってくれたのだ。

 それゆえの溜めを含めた攻撃で死んでいないなどあり得ない、と。

 

 しかし、その予想は呆気なく覆される。

 

「っ!? こ、これは!」

 

 辺りの煙を吹き飛ばすほどの暴風。それらは四つの巨大な竜巻となって周囲を蹂躙する。

 立っているのもやっとなその風は突然吹き始めた。

 そして、煙の晴れたその中心にはーー

 

「グルゥ……」

 

 ()()()()()()風鬼が浮いていた。

 頭部だけにあらず、筋力の増大した身体のあちこちから角のようなものが生え、その肩からは天を突かんばかりの巨大な突起が表出していた。

 加えて魔力。とても、並の人間が意識を保てるものではなかった。

 近づくだけでも意識を失い、最悪弾け飛んでしまうような濃密にして膨大な魔力。いや、恐るべきは()()()()()()()()()()

 生物として、人間としての摂理のように嫌でも理解してしまう目の前の敵の強大さ。

 

「真名……これは、しくじったかもしれぬな」

 

「ああ…………どう足掻いても勝てん」

 

 敗北を覚悟する二人に、風鬼はもはや理性の無くした雄叫びを上げる。

 

「グルルルァァァァァァァ!!!!」

 

 それだけで魔力が放たれ、周囲の木々は吹き飛び粉々になる。

 

 能力を最大限解放した鬼神がそこにはあった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「水陣・瀑布領(ばくふりょう)!!」

 

 短い詠唱で水の防壁を張る水鬼。

 

「くらいなさい!!」

 

 メカエリはソニックシャワーとスカートフレアで正面から崩しにかかる。

 それらを目眩しにして接近した彼女は尻尾の電撃によって内部の鬼ごと攻撃する。

 

「ぬぅ」

 

 水の鬼である彼にとってその攻撃は有効なもので、若干の麻痺を生じさせるほどのものであった。

 俊敏の値が低いメカエリは、豊富な武装を駆使してその差を全力で埋めにかかる。

 

 痺れる鬼にチャームサイトを見舞いつつ、拳と尻尾による直接攻撃を加えた。

 

「ぐ、がはっ!?」

 

 筋力にしてA。膂力と耐久には優れる彼女。

 その重い攻撃は一撃一撃が『オールラウンダー』である水鬼の耐久を貫通していく。

 

「これで!!」

 

 おまけとばかりにロケットパンチをゼロ距離から放つ。

 

「ぐぅぅあ!?」

 

 ズシン、という重い音が響き、一瞬、鬼の身体が浮き上がる。

 しかしそれでも水鬼は倒れなかった。

 

「くっ、やはり幻想種は手強いですね!」

 

 日本の固有種・鬼。それらは個体差はありながら総じて人間には強大すぎる天敵として古代から激闘を繰り広げてきた存在だ。

 中でも『鬼神』に到達する者は、時に神すら凌駕する力量を持つ。

 

「はは、やるなからくり仕掛けの女傑よ」

 

「メカエリチャンです。あと、エネルギーはエリザ粒子なのでお間違い無く」

 

 どうでもいい訂正をする姿に、水鬼も思わず吹き出した。

 

「……何が、おかしいのです?」

 

 少しイラっときたメカエリが問いただす。

 

「いや、すまぬ。しかし、貴殿ほどの度量と、力量があれば或いはと思ってな」

 

 敵を賞賛し始めた水鬼に違和感を感じながらもメカエリはそれを聞いていた。当然、武装の射出準備をしながら。

 

「ふっ、今告げるは不粋か。よかろう、掛かってくるがいい『めかえりちゃん』とやら。

 貴殿の全力が我に届き得るか否か。それこそが今は重要だ」

 

「言いましたね?

 いいでしょう、貴方は全力でもてなしてあげるわ!」

 

 鬼の宣言に、メカエリは一気に武装を発射させる。

 ミサイル、マシンガン、そして己自身も突撃しながらチャームサイトと、接近後は電撃、口からの火炎放射。

 あらゆる武装を絶えず注ぎ続ける。

 先の戦いで『マスターの治療』受けたメカエリは今一度、全力解放の宝具を放つ余力を得ていた。

 使わねば倒せない相手がいる、そして『マスターからの強化』が届いた彼女は今こそ放つべきだと理解していたのだ。

 

 そして、ゼロ距離から彼女は撃ち放つ。

 

「『鋼鉄天空魔嬢(ブレストゼロ・エリジェーベト)』!」

 

「ぬ、おぉ、ぉぉぉ!!」

 

『魔力の封じられた』、あるいは『封じた』状態で直撃を喰らえばサーヴァントとてタダでは済まない。

 現に、水鬼は全身に大きなダメージを負っていた。

 しかし、それでもまだ足りない。

 

「生殺しとは……些か、趣味が悪いぞ?」

 

「全力でした、変な言い方しないでください。

 あなたが頑丈すぎるのです」

 

 それは仕方のないことであった。

 彼も鬼神の一人。いや一柱。

 古代日本にて千方の従えた四体の一騎当千の鬼なのだから。

 

「ふ……トドメを刺せ。それで全て終わる」

 

「一つ聞きます。()()()()()()()()()()()()()()()?」

 

 メカエリとてそれは気付いていた。

 あるいは相討ち覚悟での自爆くらいしか有効打を与えられないのではと当初は想定していたほどだ。

 それが、こうも連撃を受け、あまつさえ宝具を受け止めようとするなど。彼の戦闘スタイルにも合っていない。

 

「我を仕留めた褒美に教えよう。

 ……今の主は、()()()()()()()()()()

 貴殿らが阻止せんとする忌まわしき邪神の囚われよ」

 

「神霊(仮)、リョウメンスクナのことですね?」

 

 データの上ではそうなっていた。

 あくまでマスターの想定する敵としてだが。

 

「うむぅ……早めに頼む、もはや()()()()()()()()()()()()

 

 その言葉を聞き、即座に理解したメカエリは今一度開いた腹のハッチからドラゴンブレスを吐き出した。

 

「さようなら」

 

 咄嗟の展開にしては威力の高いブレストゼロ。

 その破壊力は瀕死とはいえ水鬼を跡形もなく吹き飛ばすほどであった。

 砂塵となり、やがて光の粒子になって消滅した水鬼を確認してメカエリは次の指示をマスターに仰いだ。

 

 

 

 

 





『良かれと思って』
汎用性が高い言葉だと思いますね。


えげつないかもしれないけど、現実でもそういう無自覚に墓穴を掘るとかそういう失敗ってあると思うし、うん。

ちなみに今作の四鬼の強さ順↓

隠形鬼>>風鬼>水鬼=金鬼

単純な能力差じゃなくて対処のし易さで格付けしました。
隠形鬼は気配遮断A+をどうするかで、風鬼は俊敏と魔力に優れた術師型で、水鬼はバランス型。金鬼は筋力耐久に全振りした壁です。
いずれも一応『鬼種の魔』スキルをAで所持しています。一応。
まあ、作ったはいいけど全力出したらゲームオーバーになっちゃって正直困ったりもしました。まだ生き残ってる奴いるのでそれは次回に回します。
また、気が向いたら詳細データも公開したりします。
ステータスとかスキルとか。


完全な活躍は出来なくて私も悲しい(泣
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