一般人生徒リツカ!   作:ブタどもの一人

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京都長い、ひたすらに。

あと、本作では原作で出てないところとか出てるところも色々と弄ってあるのでそこも楽しんでいただければと思います。

見返したらなんか駆け足気味だお(^ω^)
とりあえずパライソは可愛い(エリちゃん…




京都・八

 龍宮真名は『半魔族(ハーフ)』である。

 

 その身に流れる血は人だけにあらず、()()()()()()()()()()()()()()()()()()という扱い故に、魔族からも人からも恐れられた。

 だからこそ、『研究所』を壊滅させた『彼』の誘いに、当初は乗り気ではなかった。いや、正確には『信用していなかった』。

 

『魔界の老害ども』の思惑から作られた彼女は、その半生を兵器として費やした。黒幕に魔族の重鎮を置く悪しき魔導師の主導のもと計画は動いていた。

『全てを見る者』を目指して造られた彼女は、しかし、計画よりも大幅に『劣化』した状態で誕生した。

 

 “失敗作”

 

『とある魔眼持ちの男』と『堕ちた女神』の力を同時に宿すことに失敗したことにより、彼女には『在り得ざるモノを見る眼』しか発現しなかった。とはいえ、『因子そのもの』は優秀であったために基礎能力は遥かに高く、失敗作と罵られながらも一定の戦果を上げる使い勝手のいい『兵器』として運用されていた。

 

 それらの経緯により『彼』を最初から信用することは出来なかった。

 だが、そんな彼女に『彼』は笑って告げた。

 

『一緒に来い、俺の望みが真実だと行動で証明する』

 

 かくして彼女は『彼』との長い旅に出てその瞳の()()()を解放することになるのだがそれはまた別の話。

 

 今回重要なのは彼女が『ただの半魔族ではない』ということである。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「グルァァァァァァ!!!!」

 

 鬼種としての暴走、いや、『その仕様』により鬼神となった風鬼は、溢れんばかりの魔力を湯水のごとく使い周囲に嵐を巻き起こす。

 

 それを受けて楓と龍宮はいかにこの鬼が『異常であるか』を認識することとなった。

 

「退魔の術は一通り修得しているでごさるが、果たしてあの鬼神に通じるかどうか」

 

 風鬼のあまりの迫力に楓は自信なさげに語る。

 それを見て、一つ小さな溜息を漏らした彼女は、次の瞬間には何かを決心したように瞳に強い意志を宿していた。

 

「楓、すまないが()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()をお願いしたい」

 

「……何か、手があるのでござるか?」

 

 強い決意の篭った彼女の瞳に、楓も何かを悟る。

 それは『負い目』であるのか『悲しみ』であるのかは分からないが、彼女が滅多なことでは言わない言葉を発していることは分かった。

 

「ああ、足止めならできるかもしれん」

 

「分かった。お主が言うのだ、拙者も誓って約束を守ろう」

 

 故に些細を尋ねることはやめた。

 彼女という『人間』が、ただ仕事にのみ傾倒する人物でないことは前より察していた彼女だ。

 加えて、あのように()()を見せられては頷く他にないとも。

 

「奴は私が受け持つ。お前はあちらの忍者の手伝いをしてやってくれ」

 

 龍宮が目を向ける先には、リツカにより使役される新たなサーヴァント、千代女の姿があった。

 

「なんと、いつの間にやら援軍が来ていたとは」

 

 僅かに驚きながらもほのぼのと語る楓だが、その忍者が使う技はどこか見覚えのあるものだったことに不思議な親近感を感じていた。

 

「あそらく『あちらも同じ』だ。油断はするなよ」

 

「お主もな」

 

 軽口を述べて離脱する楓に、龍宮は「ふっ」と笑いをこぼした。

 そして目を閉じ気を鎮める。

 

「さて」

 

 再び見開いたその瞳は片方だけが『淡い煌めき』を放つ。

 加えて、その身体からは『人ならざるモノ』の気配が滲み出し、腰からは魔性を意味する翼が生え出る。

 

「無闇矢鱈と魔力を垂れ流してくれるおかげで、ちょっぴり本気を出せそうだ」

 

 魔族。知る者が見ればそう判断するだろう『異様な雰囲気』に包まれた彼女は宙に浮かび静観する鬼神を睨みつけた。

 その手には二丁の拳銃。愛用のソレを構えて龍宮真名は絶望の具現に立ち向かう。

 

「私の『魔眼』がどこまで通じるか、測らせてもらうぞ!!」

 

 威勢良く、地を蹴り彼女は拳銃の引き金を引いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 対して、隠形鬼と戦う千代女も『鬼神』となった隠形鬼に押されていた。

 

「グァッ!」

 

 短い咆哮と共に放たれる刃の一撃は以前よりも遥かに重く、加えてその速さも向上していた。

 

「くぁ!」

 

 さらには得物とするクナイもあくまで使い捨てに過ぎず、隠形鬼の生涯の得物とした『首狩り刀』の一撃に耐えられず四散する。

 それでも忍の術を織り交ぜた『伊吹神の巫女術』により呼び招く(しゅ)を用いて対等に渡り合う。

 

「っ、消えた!?」

 

 しかし、理性を失おうとも『隠形鬼』としての特性である『影となり、獲物に襲いかかる』性質は本能に近いものであり、依然として発揮されていた。

 

 影となりて必殺の一撃を。

 ただしくアサシンとしての戦法を『気配に気づかれてからもう一度実行に移す』出鱈目さに千代女の身体はすでに傷だらけになっていた。

 それでも休まずに、今度は背後からの奇襲を仕掛ける鬼の刃をなんとか刀で受け切る。

 

「くっ!」

 

 鬼種の膂力を、奇襲で食らうなど『必殺』に等しいもの。

 それでも千代女は意地でそれを耐える。

 

「縛鎖・爆炎陣!!」

 

 そこへ、呪符を張り巡らせた鎖で鬼へと奇襲を掛け返した楓が加勢に降り立つ。

 不意の一撃に、隠形鬼も直にそれを受けその周囲は爆炎に包まれた。

 

「退魔の爆符にござる。いや、効くかは分からぬが」

 

「……忍びか。お館様の味方なれば共闘ありがたく受け入れる」

 

 楓の技にどこか見覚えを感じた千代女も、素直に彼女の加勢を受けた。或いはこの強敵を相手に、味方での腹の探り合いなど下策と判断したからかもしれない。

 すでに炎の中で悠然と佇む鬼の姿が見える。

 

「されど、貴殿はあくまで人間。拙者の援護に止まるがよろしかろう」

 

 主の味方ならば出来る限り守るべしと千代女は『現代を生きる人間』である楓に注意を促した。

 

「心配無用にござる。自分の身は自分で、にござる」

 

 しかし、忍として『同じ流派の誰かには負けられぬ』と意地を見せる楓は、あくまで共闘を望んだ。

 その姿に、千代女もようやく『彼女が自分たちの技を受け継ぐ者』であることに気付く。

 だからと言って、正体を明かすなどと失態を晒すこともないが。

 

「致し方なし。ならばその通りにして見せよ!」

 

 それならば、と千代女も共闘を許し、大蛇の呪を鬼に放ちながら戦闘を再開する。

 或いは、『甲賀の末裔』に対する先達としての教示の意図があったのかもしれない。いざとなれば助けるが、この戦いをあくまで試練として与えるのも悪くはないか、と。

 忠義に揺らぎはない。もともとサーヴァントとして呼ばれれば素直にマスターの指示に従う類の英霊だ。使命も必ず果たすと決めている。

 その上で、『自分たちの子孫』の成長を見るのも悪くないと判断しただけである。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はぁ……はぁ……!」

 

 痛む身体を無理やり叩き起こして、追加の『魔力』を礼装に補填して放った『強化』。タイミングとしては両者ともにバッチリだ。

 二人ともにほぼ同時に敵を倒してくれた。

 

「ぐぅ……!!」

 

 とはいえ、身体の負担も大きいのは確か。

 内臓が裂けるような痛みに思わず膝をつく。

 

『すごいじゃないか。ただの人間のままで、根性だけでこれだけ魔力を使うのは賞賛に値するよ』

 

 相変わらずの皮肉っぽい精霊の言葉に答える元気もなく、スルーを決め込んで改めて戦場を見た。

 

「くそ、どうなってる?」

 

 そうして分かるのは、『風鬼と隠形鬼の変異』である。

 突然、枷でも外れたように膨大な魔力を解き放ったと思ったら数段上の能力で急襲を仕掛けてきた。

 それも、どこか我を忘れたような暴れっぷりだ。

 

 幸いにして、風鬼の方は『魔人化』した龍宮がなんとか押さえてくれているようで。

 隠形鬼も、楓と共闘する千代女が全力で仕留めに掛かっている。意外にも息のあった連携で戦う彼女らに、もしかしたら隠形鬼すらも倒せるのではと思わされた。

 

 そしてーー

 

「行っちまったか。いや、これも『成長』には必要なイベントだとは思っていたんだが」

 

 まさか三人だけで行ってしまうとは思わなかった。

 急いで追いかけた方がいいだろう。

 敵は千草とフェイトだけではない。

 あの魔神柱と、神霊レベルのセイバーがいるのだ。

 無理ゲーにも程があるが、加えてスクナまで出て来られたら手が付けられない。何としても復活だけは阻止する必要がある。

 

『千代女、そいつの相手は任せたぞ。

 なんかあったらすぐに連絡するように』

 

『承知!』

 

 念話でそっと応援を飛ばすと予想以上に元気な返事が返ってきた。千代女のテンションが異様に高い件について。

 

 続けてエリちゃん’sにこの先に進むことを伝える。

 こちらもすぐさま了承して両脇まで駆けつけてくれた。

 

「ネギくんたちは先に行ったようだ。俺らも急いで後を追う」

 

 俺の言葉に頷きを返した彼女らと共に、俺は敵の本陣まで全力で駆け出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 その頃、杖で移動していたネギたちの元にも新たな刺客が現れていた。

 

「っ! 危ない!」

 

 飛行中、突如として向かってきた『犬を模した影たち』の攻撃により一行は地上へと半ば強制的に着地する。

 

「ふぎゃ!?」

 

 案の定、いきなり宙に投げ出された明日菜が地上に顔面から落ちて奇妙な鳴き声を発していたが、皆んなスルーした。

 

「待てやネギ。昨日の続き、ここでやろうや」

 

 好戦的な笑みを浮かべて彼らの前に姿を現したのは先日結界の中で交戦した半獣人の少年・犬上小太郎。

 

「悪いけど、今は急いでるんだ。意地でも抜けさせてもらうよ」

 

 しかし木乃香の救出が目的であるネギはそれに取り合う気はなかった。なかったのだが……

 

「ほー、逃げるんか?

 なんや、やっぱ英雄の息子言うてもただのガキみたいやな」

 

 あからさまな挑発、しかし未だ10歳のネギにとってその発言は何よりも侮辱に相当する言葉だった。

 ゆえに「ブチッ」という音とともにネギも激しい怒りを込めた瞳で小太郎を見つめ返す。

 

「……いいよ、やろう。決着? さっさと着けてあげる」

 

「先生!?」

 

 ネギのまさかの煽り耐性の無さに刹那は思わず目を見開いた。

 しかしすぐに彼の年齢を思い出し、それゆえの熱しやすさと理解する。

 

「マズイな、アニキもあれで負けず嫌いが激しい。こうなっちゃ止まらんねぇぞ」

 

 カモも常にネギの側にあったからこそ、この状態のネギは手がつけられないと判断して唸る。

 

「ですが、今はお嬢様を!

 ネ、ネギ先生!?」

 

 まさか、こんなあからさまな時間稼ぎに嵌るのかと声をかける刹那。しかし返事は返ってこなかった。

 予想外の事態。まさかあの鬼どもの他にもこんな伏兵がいたとは。

 

 こうなれば致し方なし。ここは全員で一気に押し切るべきか、と悩み始めた刹那の元に一人の女性が近寄ってきた。

 

「あれ、もしかしてあの子も敵なわけ?

 ……うーん、まああんまりタイプじゃないから倒すのも止むなしだけど」

 

 真剣な顔で呑気なことをいきなり宣う彼女に、刹那は当然のごとき疑問を投げかけた。

 

「だ、誰ですか?」

 

 しかしひと目見ただけで、この女性が『小次郎と同じ領域にいる剣豪』であることを感じ取っていた。

 何せ、放たれている剣気が半端じゃない。

 ともすれば剣気だけで押されてしまいそうなほど。

 

「ん? 私?

 ああ、ごめん! いきなりじゃアレよね。

 じゃあ名乗りましょう、そうしましょう!」

 

 妙に高いテンションで応える彼女だが、さすがに敵とは思えない陽気な態度に刹那もとりあえずは敵ではないと感じる。

 

「新免武蔵、よく宮本武蔵って呼ばれてるわ」

 

 軽く、述べられた名前に、しかし刹那は理解が追いつかなかった。

 この者は今何と申したのか?

 

「まあまあ、詳しい話は後々。

 とりあえず、あの子を倒しちゃえばいいのね?」

 

 さも些事であるかのように問う武蔵にどう答えたものかと迷った末に刹那はおずおずと頷いた。

 

「了解! あ、コレなんか()()()()()()()()()()()()()()()。懐かしいなぁ」

 

 そう言いながら二刀を抜いてゆっくりと小太郎の元へと歩き出す武蔵。

 

「あ、君たちは先に進みなよ。たぶん、もう時間ないと思うからさ」

 

 背中越しにそう告げられた刹那は本来の目的を思い出し急いでネギに再度声をかけた。

 

「先生、我々の目的をお忘れか!?」

 

「っ!!」

 

 その言葉に反応し、またいつの間にか現れた武蔵に困惑するネギに、武蔵は声をかける。

 

「うわっ、可愛い。……あ、ゴホン!

 君、ここは私に任せて先に行きなさい」

 

 一瞬、素が漏れ出たもののすぐに気を取り直してシリアス気味に告げる武蔵は二刀を構えた。

 

「あ、あなたは?」

 

「なんや、姉ちゃん。俺今忙しいねん。

 邪魔するなら眠ってもらうで?」

 

 勝負を邪魔されて少し気が立っている小太郎に、武蔵はしかし憮然とした態度で接する。

 

「そう言いなさんな。これでも結構、武芸には自信があるのよ?

 ……舐めてかかるなら、一瞬だからね」

 

 ゾワッ、と急に溢れ出した武蔵の覇気に小太郎は全身の毛を逆立てた。そして、これまでの敵の誰よりも彼女が強大であることを悟った。

 

 その間にネギたちは彼の杖に再び乗り、祭壇を目指して発進する。しかし小太郎はそれどころではなかった。

 

「……何者や、姉ちゃん?」

 

「新免武蔵。さっきも言ったけど?」

 

 小太郎でさえ、その名前には聞き覚えがあった。

 これでも強い奴は好きな彼だ。いつかどこかで宮本武蔵という剣豪の存在も当然、見知っていた。

 だからこそ、女性であるこの武蔵に疑問を抱く。

 

「嘘つけ、武蔵は男やぞ」

 

「やっぱ『ここ』でもそうなのかぁ……ああいや、そうでなきゃ存在できないっぽいしね」

 

 残念そうにしながらも諦めたように語る武蔵は、次にこう言い返した。

 

「なら、実際に戦ってみて判断してほしいな」

 

 達人、それすら超越した『何か』。

 剣の道では『空位』と称されることもあるその境地に至った武蔵の眼光は小太郎でさえ嫌でも理解する力を持っていた。

 

「へ、言うやないか。なら、見せてみろや!!」

 

 ドバッ、と大量の影を撃ち放つ小太郎。

 対して武蔵は二刀の構えのままに笑みを浮かべた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 二体の鬼の対処を他に任せ、リツカたちはひたすらに祭壇へと急いでいた。

 例によって礼装で脚力を強化しての移動。もちろん、魔力は『直』に与えている。

 先ほど感覚を無くした脚は『また魔力を礼装に入れて無理やり治して』使っている。痛いが耐えられないほどじゃない。

 

「距離、400。もうすぐです」

 

 メカエリチャンの言葉に頷く。

 ここからは全力だ。もはや身体の心配などしていられない。

 正しく神霊のスクナなど顕現させてたまるか。

 

 

 森を駆けるその途上。

 以前の川辺のようにまた拓けた場所に出た。

 こういうところ偶にあるなぁ、などと考えつつも止まる必要もないので一気に駆け抜けようとした。

 その時ーー

 

「っ!!!!」

 

 凄まじい悪寒が身体中を駆け巡った。

 肌を引き裂かんばかりの、特大の殺気。

 或いはただの気配だけか。

 もはや区別が付けられないほどに強大な力が前方に現れた。

 そして、それはつい最近知ったばかりのもの。

 

 ちょうどその場所へと到達した俺たちは再度、その脅威を目にすることになる。

 

「ついさっきぶりだな、人間。

 ……いや、言葉は不要だ。ただ『かのマスターを抑えろ』と言われたからには、出来るならばこの場で刈り取りたいだけだ」

 

 大剣の騎士、あるいは戦士。または王。

 判別がつかないが『凄まじい力を持った存在』とだけは認識できるソレがまたも目の前に現れた。

 どこかこちらを見ていないような虚ろな、しかし鋭い瞳を向けながら神霊クラスのセイバーはそう告げた。

 

 告げてすぐに、こちらに剣を振るった。

 

「っ!?」

 

 反応することなどできようはずもない速度で、いつの間にか目の前に迫った大剣。

 今度は宣告もなく即座に振り下ろされる。

 

「ぐぅ!!」

 

「くっ!」

 

 しかしそれを傍らの二人のサーヴァントが防いでくれた。

 エリちゃんの槍に、メカエリチャンの拳。二つでようやく『勢いを止めた』だけで、じわじわと押されていた。

 

「ほう、やはり『ここの』サーヴァント共は面白いな。

 推測されるステータスを超えた動きをする。

 剣聖しかり、貴様ら然り」

 

 あくまで余裕のままに語り始めたセイバーは一息吸うと、一気にエリちゃんたちを弾き飛ばした。

 

「きゃぁ!」

 

「ぐっ!?」

 

 セイバーということを鑑みてもあり得ない膂力。軽々とエリちゃんたちの身体を遠くへと飛ばしてしまった。

 たった一振り。なす術はなかった。

 

「だが、貴様らでは相手にならん。

 終幕だ、()()()()()()()()

 偽りの英雄譚はここで終わる」

 

 冷めた目つきでセイバーはそう言い放つ。

 ゆっくりと大剣が持ち上げられる。

 

「……終われるかよ!!」

 

 余裕を見せるセイバーにガンドを撃ち放つ。

 しかし、簡単に対魔力で弾かれた。

 

「脆弱な一撃だ。聞かぬと知っていように」

 

 だからってここで終われるか。

 俺が倒れればエリちゃんたちは消滅する。

 あくまでこの世界に繋ぎ止めているのが俺という存在だとダ・ヴィンチちゃんからも言われている。

 なら、ここで終わるわけにはいかない。

 

「……?

 なぜ、そのような目をする。

 貴様の終わりは目に見えているというのに」

 

 訝しむセイバーを他所に、俺は全力で駆け出す。

 礼装に全力で注いでおいた魔力を一気に解放して走り出す。

 

「っ!? が、あぁ!!」

 

 しかし、同時に両脚を襲った痛みにより思わずその場に転げた。

 引き裂かれるような鋭い痛みは、しかし段々と消えて、またも、今度は両脚の感覚が無くなっていく。

 

「……見るに耐えん。

 今、首を落としてやろう。せめて安らかに眠れ」

 

 言って、呆気なくセイバーは大剣を振り下ろした。

 なんの感情もなく、ただ作業のように軽く振るっただけなのに凄まじい速さで迫る刃に、俺はただ見ているだけしか出来なかった。

 

 

 

「おっとぉ!」

 

 だが、ここで、『彼女』が現れた。

 来てくれた。

 

「……見ない顔だ。新手か」

 

 二つの刀で大剣を押し留めるのは着物の美女。

 派手な着物を着こなす彼女は無双の剣豪。

 直にお目にかかるのは初めてだというのに。

 その背中は、今はひたすらに頼もしい。

 ようやく、俺も会えた。

 

「武蔵、ちゃん」

 

「久しぶりね、リツカくん。

 ……あれ、なんか雰囲気変わった?」

 

 振り向くなり、不思議そうにそう尋ねてきた武蔵ちゃん。

 そんなすぐ分かるもんかね、中身の違いって。

 

「……うん。だけど、今は貴女の力が必要だ。

 どうか、俺を助けてくれ」

 

 それしかない。

 今、なんとかこちらに戻ってきたエリちゃんたちがセイバーを囲んでいるが、どう足掻いても彼女らでは相手にならないだろう。

 ならばと俺は情けなくも武蔵に助けを懇願した。

 

「いいよ。だってそのために走ってたんだし。

 ()()()()()()()()()()んだから」

 

 軽くそう答えて、彼女はセイバーの大剣をなんと押し返した。

 

「っ、やるな女剣士よ。

 ……先刻の剣聖のごとき技よ」

 

「剣聖?

 ……ああなるほど。彼ともやったのね。

 でもそれは後回し。今は貴方の相手をしてあげるわ」

 

 二刀の構えのまま武蔵は好戦的な笑みで語った。

 対してセイバーも大剣を構え直す。

 

「ふむ。ここで『貴殿を足止めする』のもまた命と判断する。

 然らば、ここで斬り伏せても問題なかろう」

 

 またも、セイバーの魔力が上昇した。

 もはや、サーヴァントで測るべきではないその出鱈目な魔力量に俺は計測を中断する。

 

「ありがとう。詳しい話は後で必ず」

 

「いいって。……なんか、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 サーヴァント。

 放浪の彼女本人ではなく、彼女もカルデアの記録から呼び出された存在ということか。

 となるとーー

 

「……」

 

 俺はポシェットに伸ばした手を、しかし引っ込めた。

 そして『また』魔力を使って脚を動かす。

 今度は左耳が聞こえなくなったが、これくらいなら支障は少ない。

 

「すまない、ここは任せる」

 

「はいはい、早く行きなさい」

 

 彼女の言葉を受けて、俺は行動を再開した。

 

 

 

 

 

 走り去るリツカの背を僅かに眺めて、武蔵は粗方の事情を悟った。それは彼女に限らず、『彼の縁』で召喚された殆どのサーヴァントが見るだけで察してしまうもの。

 即ち、彼が彼ではないということ。

 具体的にどう、という話ではない。

 違うのだ、明らかに。しかし、それでも『どこか懐かしいような』。『いつかどこかで、或いはいつも見ていたような』感覚も感じていた。

 だからこそ、必ず一度は手を貸す。

 なんなのかは分からないが、『彼も彼なのだ』と感じるが故に。

 

「解せぬな。

 ダンタリオンめの語るマスターとは別人だろう、アレは。

 なれど庇うのか、救うのか。

 度し難い、非常にな」

 

 セイバーは、そんな武蔵たちが理解できない。

 それは彼とは無縁だからではない。

『人の王でありながら神の要素を取り入れてしまった』彼にとっては人間が複雑な感情で、あるいは『絆』で動くことが本質的に理解できないからだ。

 もちろん、誇りを失っていない彼も『義理』と『義務』は理解している。しかし肝心の『仁義』が思い出せない。

 何か、どこか、身体の奥底で感じるものはあれど明確に理解することが難しい。

 それこそが彼の持つ『バグ』であった。

 神にもなりきれず、さりとてヒトに戻ることもない。

 狭間で移ろい行くまるで幻霊のような曖昧さ。

 

 逸話の混成は彼に限った話ではないが、彼の場合は『全く異なる伝承が多過ぎた』。加えて原典も定かでなくモデルも不明となれば正式な召喚であっても何らかの不具合というものが出る可能性があった。

 ただしく『地』の英雄でありながら死せず『嵐の王』となった彼は、全盛期と最期の『両方を取り入れていた』。それでも誇りは『王』であった頃のままに、色濃く残っているのはセイバーというクラス故。

 だからこそ不安定にして不変。

 バグが生じてもその『運用』に支障はない。

 

 

「分からなくて結構。

 今は、ただ剣を交えるのみ」

 

 剣豪としての顔つきになった武蔵が剣気を研ぎ澄ませた。

 

「……ふむ、()()()()()()

 やはり、此度の我は()()()()()()()()()()()()()()()()ようだ」

 

 無表情にして無感情な声。

 されど、なんとなく『楽しげ』なのは武蔵でも分かった。

 

「では、いざ!!」

 

「勝負」

 

 宣言と共に、両者は刃を交えた。

 

 

 

 

 





ちなみに小太郎は瞬殺で。
なんか書いてみると意外に邪魔だったので京都では影が薄くなっちゃった…

ヘルマンとかヘルマンとかで活躍するから許してほしい。
あと、楓はこの時期ですでに相当強い設定で行きます。
魔改(界)造マナちゃんも強いです。あと本編にも色々と絡む設定付けてありますのでご安心を(何が

ー追記ー

この話だけ見直してみたら龍宮隊長が完全にどこぞの金髪生体兵器さんでワロタ。
俺はえっちぃ方が好きです。
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