一般人生徒リツカ! 作:ブタどもの一人
いやぁ、アビーは強敵でしたね。
え?俺は淫獣でフィニッシュでしたけど?
黒王さんは素直に令呪使いました。
バフ盛り盛りインフェルノちゃんが予想外に使えてびっくり。
ーー誰か、
ーー否、
マダ、殺シ足リナイ。
ーー我が末裔か。いい加減、お主も現実を見よ。
ーー我らはすでに『過去の遺物』。時代は過ぎ去り、争いの火種は燻るとも、世は太平に等しく。
ーーもはや、恨み、憎む世界ではなかろうよ。
ソレデモ、私ハ、私タチハ、殺サレタ。
『家族』トノ、安寧スラ、奪ワレ。
許スマジ、人ヨ、人類ヨ。
私ハ、
忘レサセヌ、イツマデモ、イツマデモ殺シテ殺シテ殺シ、コロ、殺シ殺殺殺殺殺殺ーー
ーーふむ、これも
ーー良かろう。我が末裔。その怨み、その無念。
ーー我が物として、いや、我が力
「っ、遅かったか!!」
セイバーの相手を武蔵ちゃんに任せ、祭壇まであと一歩と迫ったところで、前方に巨大な光の柱が立ち上った。
その中からはゆっくりとだが、見覚えのある巨体がせり上がって来る。
リョウメンスクナ。
二面、四つ腕の大鬼神と呼ばれた古き神。
原作において描写されたそれと同じ容姿にて、そいつは現れた。
「反応あり、前方の光柱内からの反応です。規模はサーヴァントにも匹敵するものかと」
メカエリチャンからの報告に、そんなにあったのか、と素直に驚いた。
いや、それでもまだ神霊としての力は封じられているのだろう。
ならばその状態のまま封じ直すまで。
「ッ、前方50mにも反応あり!
……サーヴァントです!」
まだいたのかよ!
「殺す。殺す殺す殺す。
幼子、老害問わず皆殺しである」
メカエリチャンの報告のすぐあとに、前の木々の間から一人の男性が姿を現した。
分厚い着物を纏い、裾をずりずりと引き摺りながらも何事か呟いている。
その髪は長くボサボサで、しかし顔は壮年の凛々しい男のものであった。しかし、赤く爛々と輝く瞳は狂気に堕ちている。
即座に戦闘態勢に移行する二人と共に俺もガンドを構える。
あと何発打てるか分からないが、この場を超えねば勝利はない。
「邪魔立てするか、またも。またしても。
……良かろう、殺す。その傲慢を許し、殺す。生きようと足掻くことを許し、殺す。殺して、殺す。殺す殺す殺す!
貴様ら『ヒト』は全て死に晒せ!!」
発狂したように叫びながら、男は式神をばら撒く。
それらは魔力によって形を変えていく。
鬼。日本の角と巨躯。長い牙と棍棒を担いだ姿はまさしく日本人の誰もが想像するであろう鬼のものであった。
それらが複数体。
「式神使い……いや、『
先ほど襲ってきた四鬼、そして鬼の形の式神を使うサーヴァントとくればもはやその正体は分かりきったようなもの。
かつて地方の豪族であり、朝廷から討伐軍を出されてもそれらを四体の鬼で撃退していたという陰陽師でもある男。朝廷側は千方がその地で悪政を敷いていたと言うが、現地に伝わる話とは真逆であったりもするが定かでない。
だが、
「殺せ、殺せ殺せ。
全ては死によって償われる。……いや、死すら生ぬるい。貴様ら『ヒト』はその罪を永劫にして悔いるのだ!!」
もはや理性は感じられない瞳で狂ったように喚く男。
これが、千方だと?
いや、よくよく考えればサーヴァントの真名などあってないようなものが殆どだった。
アストルフォきゅんだって女装好きの可愛い男の娘だしね。
「連戦だが頼むぞ二人とも」
「任しといて!」
「戦闘行動に支障なし。指示を、マスター」
士気は上々。ならば突撃あるのみ。
「鬼どもを蹴散らし、サーヴァント本体を叩け。
いくぞ!」
「おー!」という可愛らしい掛け声を聞きながら、俺らはサーヴァントとの戦闘に入った。
「ほう、なかなかやりますねあの少年たち」
賞賛しながらダンタリオンが眼下に眺めるのはネギとその生徒たる女子中学生二人。
彼らは祭壇まですでに辿り着き、木乃香奪還を終えてフェイトとの戦闘を繰り広げていた。
その際に刹那が烏族とのハーフであることで一悶着あったものの、結果として木乃香の奪還は成功していた。
『あとはスクナを倒すだけ』。
「セイバーも送り出してしまったことですし。
そう言ってパチンと指を鳴らした彼の背後に、大きな椅子が現れる。
それに腰を下ろし、足を組んだ。
「『人の生み出した殺戮兵器』を前に、彼らはどう戦うのでしょうか。興味深いですね」
ダンタリオンはあくまで
彼らが何らかの奇跡で木乃香嬢を奪還するならばそれも良し。あるいは『解き放たれた呪詛』に殺されるならばそれも良し。
結果はどうでもいい、彼にとっては
ダメだったならばまた別の機会を探せばいい。
主からは『人形どもとの共闘』を申しつけられているものの、その計画の成否について問わないとも聞いている。
加えて、共闘の命を違えないならば『好きにしていい』と。
「ならば自由にさせてもらいましょう。
……願わくば、かのマスターにもご参加いただきたかったが」
それは無理だろうとダンタリオンは考えていた。
なにせ、あのセイバーを討伐に赴かせたのだから。
些か、過剰戦力であったかとも。
しかし、その程度の修羅場なら『彼はいくつも乗り越えてきた』。だからこそ念入りに、スクナの降臨までの時間稼ぎを行なった。
すでに『封印状態』のスクナは姿を現している。
あとは『枷』を取ってやればいいだけ。
「……いや、それは彼らに任せましょうか」
にやり、と彼は嗤う。
ふと思いついた名案に思わず口角を上げてしまったのだ。
なにせ、
『自らが制御を解いてしまったおかげで現れた神霊に、どう反応するのか、どう争うのか』
という素晴らしい考えを思いついてしまったのだから。
「で、どうするんだい?」
光柱からせり出すリョウメンスクナを背に、フェイトは冷静に言い放った。
目前では満身創痍のネギたちが荒い呼吸をしながらも立っていた。その瞳に撤退の二字は無く、いずれも『勝つ』という意思が確固として刻まれている。
それはそれとして、戦況は確かにネギたちの圧倒的劣勢であった。木乃香を取り戻したものの、すでに出てきてしまっているスクナと千草、フェイトをどうにかしなければならないのだ。
それでも彼らは諦めていない。
なぜなのか、そうフェイトが疑問に思ったところで、『ネギは確かにニヤリと笑った』。
「っ、何を企む、ネギ・スプリングフィールド?」
「何も。ただ、
ネギのその言葉にフェイトが何かを返す前に、
「っ!」
咄嗟に振るわれたフェイトの腕を、しかし『何者か』は容易く受け止める。そしてその全身をズルリと抜け出て露わにした。
些か刺激的な衣装に黒いマントを羽織り、ブロンドの長髪を月光が照らし上げる。
「貴様は!?」
「くく、うちのぼーやが世話になったな」
幼子の姿をしながら膨大な魔力を放つそれ。
鋭い牙を口の端に覗かせながら黒く縁取られた黄金の瞳を有するそれはまさしく、『吸血鬼』。
「エヴァンジェリン!!」
魔法界において有名過ぎる悪党の出現にフェイトは苛だたしげに呟いた。
その直後にエヴァは彼の懐に軽く入り、拳を撃ち放った。
「っ!!!!」
たったそれだけでフェイトは湖の彼方まで弾き飛ばされる。障壁などあってないもののように、軽々とエヴァはフェイトを殴り飛ばしていた。
「ふむ、『闇の福音』とやらですか」
その光景を眺めながらダンタリオンは興味深そうに呟く。
彼の預かり知らぬことではあるが、エヴァは事前にネギからの連絡を受けた学園長によって半ば強引に『呪い』を解いてこの地まで来ていた。
もっと言うと、その直前にネギたちに『念話』を繋いで到着までの時間稼ぎに徹するように言い含めておいたのだ。
まあ、『登校地獄』の呪いの精霊を誤魔化すために今も学園長は『エヴァの京都行きは学業の一環である』という旨の契約書にハンコを押し続けているのだが。
そんなこんなで現れたエヴァは、一緒に連れて来ていた茶々丸に『結界弾』を撃たせてスクナの動きを封じ込めていた。
科学を取り入れた技術を以って作られたこの結界弾は強力であり、すっぽりとスクナを覆っている。
その間にエヴァは特大魔法の詠唱を行う。
「
エヴァの詠唱と共に、半身が抜け出たスクナを根元から氷が覆っていく。
「おわぁぁ!?」
その肩に乗っていた千草は、その衝撃によろける。
それに文句を述べる千草に、エヴァも煽って返しながら追加の詠唱を終わらせた。
「『
……フッ、砕けろ」
パチン、とカッコつけて指を鳴らしたエヴァ。
それに応じて全身を氷漬けにされたスクナの身体にヒビが入る。
「これで、さらに貸しひとつ……ヒヒ」
楽しそうに呟きながらポーズを決めるエヴァ。
その背後でスクナは『全身を砕けさせた』。
そのあまりの巨体、それが崩れたことによりいくつものデカイ氷塊が落ちていくのは当たり前ながら、それらが放つ冷気も凄まじく、辺りは煙によって包まれた。
ガラガラと、バチャバチャと落ちていく幾つもの氷塊を前にエヴァは高笑いを続ける。
「バァカめ!
伝説の鬼神か知らぬが、私の敵ではないわ!!」
その光景にネギたちも沸き立つ。
「や、やったー!
すごーい、エヴァちゃん!」
声援を送る明日菜に、エヴァも満足そうに笑みを浮かべる。
ーー同時に、それらの光景を眺めていたダンタリオンも口の端を上げた。
「くそ、なんだこいつら!?
意外に強いぞ!」
一方、キャスターと戦うリツカたちも苦戦を強いられていた。
すでに連戦ばかりで消耗した彼らにキャスターが差し向けた式神。鬼の形をしているだけかと思えば、その能力は強力だった。
サーヴァントには流石に及ばずとも、シャドーサーヴァント、その末端には数えてもいいくらいには高い能力値を誇っている。
「くっ、ソニックシャワー!」
バババ……、と指からマシンガンを撃ち式神の一体を蜂の巣にするメカエリ。しかし、その周りには未だ何体もの式神が蠢いている。
「どうなってんの!?
幾ら何でも出し過ぎじゃない!?」
そこへ、同じく一体の式神の腹に槍を突き入れて仕留めたエリちゃんが降り立って愚痴を述べた。
彼女の言う通り、『これは異常であった』。
シャドーサーヴァントにも匹敵する式神。そんな代物を湯水のように次々と作り出すキャスターの『魔力量が異常』なのである。
加えて、絶大な魔力を誇ったという逸話もなく、そもそもが四鬼を操ったという人物でしかないキャスターがこれほどの魔力を持つとは、リツカも考えられなかった。
と、苦戦する彼らを他所にキャスターは突然ピタリと動きを止めた。そして光の柱の方へと目を向ける。
「来た。遂に、遂に
狂気に満ちた叫びを上げた彼は、
「っ!!」
おまけに、溢れんばかりに周囲を覆っていた式神たちも一緒に消え去っている。
あまりにも唐突な出来事にリツカたちは揃って唖然としてしまった。
しかし、最も早く立ち直ったリツカが声をあげた。
「なんだか分からんが、今のうちにスクナをーー」
そして言い掛けた彼の言葉を遮るようにメカエリは、報告を行なった。
「光柱付近の魔力に変動あり!
これは……!!」
焦った様子のメカエリに、リツカも己の礼装で急ぎ反応の探知を行う。
「……これが、サーヴァントだと?」
そしてキャッチしたその反応、『サーヴァントでありながら、かの大剣のセイバーをも超える魔力量を誇るソレ』に恐怖した。
「?……アレは、何でしょう?」
勝利に沸き立つネギたちの中で、最初にその異変に気付いたのは刹那であった。
魔法使いでもなく普通の女子中学生たる明日菜は仕方ないとして、消耗の激しいネギも言わずもがな。
そんな彼女らにカッコいいところを見せられたエヴァも嬉しさで索敵を怠っていた。
「え、どうしたの、刹那さん?」
そんな刹那の様子に明日菜が不審そうに声をかける。
遅れて、ネギとエヴァも刹那の様子に気がつく。
「何か、巨大なものが……いえ、これは」
煙が晴れていくにつれて、段々と露わになるソレ。
ソレに刹那も段々と最悪の想定を始めていた。
次に、エヴァもソレの反応に気が付いた。
「……おかしいな。確かに壊したはずーー」
依然として佇む魔力に訝しむエヴァに、茶々丸からの通信が入った。
『……対象、未だ健在。
いえ、
「なんだと……?」
確かに手応えはあった、とエヴァは疑問を深める。
事実としてそれも正しかった。
確かに彼女は破壊した。
『リョウメンスクナという制御装置を』。
そんな彼女らの元に、燕尾服の紳士が現れた。
宙に浮かびながらステッキ片手に彼女らを眺めている。
「……何者だ?」
得体の知れない闖入者の存在に、エヴァは即座に爪を構えて警戒する。また、この紳士の魔力の『底が知れない』ことも警戒する要因となっていた。
そんなことは御構い無しに紳士は仰々しく拍手をした。
「素晴らしい。
まさか『魔導師』とやらがここまでの力を持っているとは思いませんでした。
闇の福音はもとより、貴女がた若い世代の力と意地にも感服します。まさに、新世代」
芝居掛かった口調で語り始めた紳士に、エヴァ始め全員が訝しむ。そもそも、この紳士は一体何者なのか、と。
敵なのか味方なのか。
「再度、聞いてやる。何者だ?」
ドスの聞いたエヴァの警告。彼女は既に返答次第では即座に攻撃できるように小さく呪文を唱えていた。
「これは失礼。
私の名は『ダンタリオン』。いやなに、単に
微笑み語るダンタリオンは返答を待つことなく続ける。
「貴女方が復活を止めようとしたリョウメンスクナ。
本当に、『あんなもの』なのでしょうか?」
少し口角を上げた彼の背後に、『巨大な人型の影』が浮かび上がる。
「っ、バカな!?」
それは倒したと思っていたリョウメンスクナ……ではない。少なくとも同じ姿ではない。
『数多の人面を身体に浮かび上がらせた鬼の形相のまさしく鬼神』。
四つ腕二面でありながら、その体色は先ほどまでの白亜にあらず、もっと痛々しくて悍ましい。黒と赤で彩られた醜悪な巨体。
「飛弾の地にて討ち取られた大鬼神。
かつてはその地を守護する『土着神』でした。
……しかし、朝廷に屈したがために貶められ、その地も荒らされることになった。当時の神官はその暴虐に怒りを覚えました」
彼の語りを他所に、背後の影は明確にその姿を露わにする。
それらはすでに全身が抜け出ており、湖にしっかりと二足で佇んでいた。
「あ……ぁ……」
あまりにも巨大。
半身だけであった先ほどとは比べものにならない。単純に『二倍でも計算が合わない大きさ』。
「
『ただ殺すための力を』。『群れなす朝廷軍を討ち滅ぼす力を』。自分たちが受けた屈辱、恨みを全て込めて『神の在り方を捻じ曲げたのです』」
「……これが、神」
呆然と呟いたネギの言葉は的を射ている。
まさしく神。少なくともその姿は当時のものであるのだから。
「残念ながらそうまでした鬼神は封じられてしまいましたが、ここからがまた面白いところでしてね?
当時、封印を施した者は『それだけでは呪いが抑えられない』ことに難儀していました。
……そこで彼らは考えました『恨みを受け止める受け皿を作ればいいのだ』と」
かつて、滅ぼされ封じられた鬼神には子孫がいた。
当時の陰陽師たちは『その子孫に全ての責を背負わせた』。
「そうして出来たのがとある呪術師の家系。
彼らは何世代にも渡り、ずっと全ての恨み辛みを受け止めてきた。
ああ、なんたる悲劇か。
……そうして、世代を経て、遂に彼らは耐え切れなくなった」
なぜ、自分たちがこんな目に合わねばならないのか?
なぜ、皆、我らを憎むのか?
ーーなぜ、私は家族を殺されねばならないのか?
「それが『十八年前の真実』。
家族を惨殺された『彼』は無事に『反転』し、自分たちの祖先の真実を知った!
そしてあろうことかその力を利用しようとした!
悲劇の人物が、今度は世にあだなす復讐鬼に成り果てるはどこの国でもお約束のようにありますね」
研究し、ようやく鬼神を操ることに成功した。
「とはいえ、前回はナギ・スプリングフィールドに阻止されたようですが。
……まあ、今回に至っては『拘束具すらあなた方が外してくれましたしねぇ』?」
にやり、と悍ましく狂った笑みを浮かべる彼に、ようやくネギたちは彼の語る話の意味を理解した。
「まさか、『まだ本気ではなかった』と?」
あれだけの魔力、存在感を出しながらスクナは未だ『封印状態にあった』。
その事実を正しく理解した時、彼らは初めて今回の敵の強大さに気付いた。
「……そういう魂胆で、私に、破壊させたのか。
外道め」
憎々しげに呟くエヴァにダンタリオンは心外と言わんばかりに否定する。
「まさか、あなた方が勝手に破壊したのでしょう?
いえ、いえいえそこには大変感謝しておりますとも。
だからこそこうして、『本体を引きずり出せたのですから』」
心底愉快そうに微笑むダンタリオンに、エヴァは思わず歯を軋ませた。
そんな彼女に見せつけるようにダンタリオンは拳を突き出し、言葉を紡ぐ。
「しかし、私とて『神霊の制御』など面倒ですからね。
ここは本職にお願いするとしましょう。
……“令呪を以って命ずる、キャスターよ今すぐ我が下へ”」
突き出した拳の甲が赤い輝きを放つと同時に、彼の隣にワープするようにして新たな人物、キャスターが姿を現した。
「おぉ!!
我が懐かしき本体!!!」
転移早々歓喜の声を上げるキャスターに、ダンタリオンは冷静に命令を下す。
「キャスター。その本体の制御を。
……あとは貴方の好きにして構いませんから」
楽しそうに、愉しそうに嗤うダンタリオンに、キャスターは目もくれずスクナの制御を始めた。
一瞬で刻まれた五芒星はスクナの全身を包み、やがてキャスターもその頭の上へと浮かび上がる。
「如何です、いかがです?
自らが解き放ちし鬼神の暴虐。
果たしてあなた方に止められるでしょうか?」
楽しみで仕方ないとばかりに高笑いをあげたダンタリオンはやがて、魔法陣を出現させてどこかへと去っていった。
残されたネギたちは一様にして暗い表情をしている。
否、絶望に沈んでいた。
解き放たれた両面宿儺の圧倒的な魔力に。
「……くっ、怯むな!!
たかが一撃を持ち堪えただけに過ぎん!
……仕留め損ねたならば今一度、食らわしてやるまでだ!!」
エヴァは恐怖に竦む彼らを激励しながらも、再び宙へと飛び立ち魔法の詠唱を開始する。
それと同時に念話にて茶々丸に再度、結界弾を撃つように命じる。
『了解』
指示を受けた茶々丸も、素早く次弾を装填し、二発目となる結界弾を両面宿儺に向けて撃ち放った。
しかしーー
『っ、結界弾。弾かれました!』
「なんだと!?」
確かに着弾し、結界は展開された。だが、両面宿儺はそれを容易く打ち破った。
それは神霊という存在ゆえのごく当たり前の性能。
神秘の薄れた、いや、『神秘の混迷した現代』においても色褪せることなき確かな神の力。
人の紡ぎし技では抑え切れない力。それこそ神。
「くそ、
無詠唱から放たれる魔法。彼女ほどの大魔法使いが放つものであれば無詠唱であろうとも絶大な力を発揮するもの。
だがーー
パシン、と軽く弾くような音ともに魔法は呆気なく消滅した。
「なに!?」
それは通常ではありえない光景。
エヴァは魔法世界でも一、二を争う実力者である。
ナギやラカンと言った最高峰には一歩劣るまでも、次席に数えてもいいくらいには強い。
……ただ、その魔法をたやすく弾くのはこの巨神が『神』だからと言うほかにないのだが。
身体にすら届いていない攻撃ながらも、それに怒りを感じたのか両面宿儺はその口を大きく開けて咆哮する。
「■■■■■■■■■ーーーーー!!!!」
理性の感じられぬまさしく獣のごとき雄叫び。
濃密な魔力の篭ったそれは湖に特大の波を起こすほど。
そして、それを直に受けたものに『堪えきれない恐怖を与えた』。
「うぁ……ぁ……」
全身を突き刺すような鋭い『殺気』。
ネギは思わずその場に尻餅をついた。
刹那ですらガチガチと本能的恐怖から歯を打ち鳴らし膝を震わせている。未だ目覚めない木乃香を抱えたままに。
「……っ」
明日菜は声すら出なかった。
恐怖、ただそれだけが身の内に起こり、絶えず全身を駆け巡っている。気を保つことすら難しい。一瞬の緩みで即座に意識を飛ばしてしまうだろう。
事実としてその咆哮は『殺気』だけではなかった。
ただの殺気ならばまだ、エヴァも耐えられた。
しかし、『数多の怨霊が放つ憎悪』を全身に浴びれば誰であろうと膝を折るより他になかった。
千四百年。ひたすらに『恨み』を溜め込んできたこの巨神の放つ呪詛は並みのものではない。
人では到達できない領域にあるまさしく神の力。
幸いにしてサーヴァントである今は、その一声で人が死に至ることはない。ただ、『呪いとして放てばその限りではない』。
今この場にて誰も意識を飛ばしていないのは、ネギが英雄の血を引き『抑止に背中を押されているだろう人物』であること。
明日菜が身に秘めた『幻想を拒絶する異能』によるもの。
刹那が『半分人ではないからこそ完全な理解に及ばない』がためのもの。
木乃香は『その身に秘めた高貴な血筋による』もの。
エヴァは言わずもがな吸血鬼という人外であるが故に、『対人類用呪詛』の影響を受けないだけなのだ。
完全に、抵抗するという行為を忘却してしまった彼女らに。
鬼神はゆっくりと歩みを進め始めた。
その度に、湖の水は『呪詛に穢され』黒く濁り腐っていく。
鬼神が近づく度に、『ネギたちの肌が黒ずんでいく』。
歩くだけで、ただそこにあるだけで世界を滅ぼしていく鬼神に、しかしネギたちは『どうやって相手にすればいいのか』分からなかった。
ただしく神。サーヴァントの枠にありながら神霊としての能力を保持する鬼神はもはや天災と呼ぶ他にない脅威だった。
その頭上に浮かびながらキャスターは愉悦の笑みをこぼす。
「ああ……素晴らしきかな我が本体、鬼神!
いや……
『
気持ち悪いくらいオリ設定なので別に読まないでも問題ないです↓
【スクナさんの詳しい経緯】
※フィクションに加えてオリ設定なのであしからず。
まず、飛弾の領主が『現人神』となり『土着神』となる。
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年月が過ぎて朝廷から『国渡せよ』と軍が来る。拒否。
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朝廷軍、飛弾攻撃、飛弾の地の民降伏。その際に略奪を行う。その後もしばらくは駐屯軍によるアッセイ!が続く。
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神官ブチギレ。他にも憎しみを抱く者たちとともに自分が崇めるスクナさんに呪いをかけてその在り方を歪めて祟り神にする。
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スクナさん大暴れ、しかし『朝廷の派遣した英雄』によって倒され、同行した陰陽師に封じ込められる。
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しかし、封じただけでは『滲み出る呪い』を抑え切れないと悟る。
陰陽師たちは閃く「アレ?そういやこいつ子孫いなかったっけ?」
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子孫さん、直系ゆえにスクナさんとの共鳴率が高く、無事に受け皿にされる。
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しかし、その一族から溢れる呪いが周囲に災いを齎したために故郷を追われて、その後も各地を転々とする。
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何代か前の近衛家当主に呪術の力を買われて子飼いになる。
しかし、呪いを恐れる彼らからの扱いは酷かった。
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十九年前、呪術師さん家族惨殺される。
ブチギレて犯人たちを殺す。愛娘殺され発狂。
その時に『声』を聞き、スクナさんのことを知り、利用しようと思い至る。
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家の古い文献等を読み漁り研究。
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裏の市場で(魔法世界の)鬼神ボディの一部ゲット。
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スクナさん制御装置完成。当時の近衛の『娘』を使ってスクナさんを起こし制御装置つけて暴れる。
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スクナさん、ナギに封印される。呪術師、『とある儀式』を行なった後に自害。
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今。