一般人生徒リツカ! 作:ブタどもの一人
ちなみに起源とか考えてあったりするんですけど……どうすか?
あと、誤字修正ほんとありがとうございます。
ー追記ー
魔神さん(褐色ではない)の言う魔法の領域って別に魔法使いだったとかそういう意味じゃないです。念のため。
「御機嫌よう、お嬢さん。
こんな夜更けに、
夜の森。
理解を超えた戦いから逃げている最中に出会ったのは『死神』だった。
燕尾服を着ながらも、深い闇を垂れ流す瞳のその男を目にした瞬間に私の身体は固まってしまった。
「そう怯えずとも良いですよ。
私はあなたに何をする気もありません」
冗談にしか聞こえない。
もしかして油断させようという魂胆?
「ふぅむ、そうですねぇ。
ならば……はい。どうぞ」
しばし顎に手を当てて考え込んだ男は、ポン、というコミカルな音を出しながら手に一輪の花を生み出した。
『青いバラ』
それを私へと差し出す。
「貴方には些か上品過ぎましたかな?」
「な、失礼ですね!」
まるで自分は子供だと言わんばかりの物言いに反射的に答えていた。
「ハハハ、やはり貴方のような年頃は面白い。
固定観念に囚われず常に『変化』の中にいる。
無邪気とも違う。
ある程度の知識があるからこそ、その中から『選択』していくことになる、或いは選択肢そのものを増やそうと知識を渇望する」
急に饒舌になった男を不審に思いながらも、先ほどよりも妙に人間味が増したことに気付いた。
先ほどのは見間違い?
考える私に、彼は一礼した。
「それではレディ。
私はこの後も予定が入っていましてね。
縁あらばまた会うこともあるでしょう」
「あ、待ってください!
……あなたは、『何ですか?』」
何者か、と問うのは自然と憚られた。
この男は『その範疇にいない』と何故か分かったから。
人間、ではない。そう思った。
「何、と問いかけますか。
いやはや、どうにも貴方も勘が鋭いようですね。
……私の名は『ダンタリオン』。貴方の想像通り、
面と向かってハッキリ言われるとゾクリと背筋を悪寒が走る。
「ダンタリオン……それは、ソロモン七十二柱に数えられる」
「おや、意外と博識ですね。そうですとも。
私は
もっとも『こちら』とは『少々』異なりますが……。
ソロモン七十二柱・序列七十一番、魔神ダンタリオンでございます」
悪魔。
確か、ダンタリオンとは悪魔の名前だった。
なるほど、この男の雰囲気は確かに悪魔そのもの。
「本物……」
「……怯えているわけではなかったのですね。
知ってから怯えるのが普通だと思うのですが。
どうやら、貴女は『他』と違うらしい」
意外だ、と彼は興味深そうにこちらを見つめた。
私も、そう思う。
だが、初めて、『非日常』に出会ってしまったのだ。
先ほどまで巻き込まれないように必死に逃げていた『人外じみた戦い』ではない、こうして互いに理性ある形で話しあっている事実がなによりも私の好奇心を刺激していた。
自然と、彼からは敵意というか悪意の類は感じられない。少なくとも私に対しては。
「実に面白い。私を、正体を知って尚も平静を保ち対話を望む姿は……ああ、これが『好感』というものですか。
ふむふむ、実に興味深い。
策を弄さずともこうして、対話だけで『好感』というものは生まれるのですね」
彼は少しズレていると思った。
やはり人間と悪魔では精神構造が違うのだろうか?
「あなたは、どうしてここにいるのですか?」
悪魔がなんでここにいるのか。
素朴な疑問。
「そうですねぇ、仕事と言えば仕事なんですが。
半分はぶっちゃけ趣味ですね」
趣味。
「ああ、ちゃんと仕事もしましたよ?
終わらせて空いた時間を有意義に使用しているのです」
そこはどうでもよかった。
「仕事、とはどのような?」
悪魔だからやっぱり契約とかだろうか?
「ヤケに肝が座ってますね貴女……。
まあいいでしょう。これも『答えを得るため』に必要なものと思うことにします。
それで仕事でしたか。
ええ、もちろん
もう契約相手がいたのか。
もしかしたら私に契約を持ち掛けに来たのかと、ちょっぴり期待していたのに。
いや、契約など怖いからしないけど。
「契約主……」
「おっと、これ以上はプライベートですからね。流石に教えることはできませんよ?」
顔の前に指を立てながら片目を瞑る彼。
……もしかしてカッコいいと思ってやってるのだろうか?
「その、やっぱり、魔術とか使えるですか?」
これが一番気になっていた。
悪魔なのだから当然、魔法やら魔術やらに精通しているはず。あわよくばその一端でも見せて欲しい。
「勿論、使えますよ?
召喚術が一番の得意分野ですがね、たいていのことは指先一つで自由自在」
くるっ、と男が指を振るっただけで宙に炎で出来た精巧な馬が現れた。
「おおっ!!」
「ふ、この程度は造作もありません。
……いかがです? お望みでしたら
さらっと恐ろしいことを言うのは悪魔だからなのか?
「いえ、結構です。
それにしても、魔法が実在していたとはーー」
「ああ、違いますよ。私のは魔法に似て非なる『魔術』。確かに以前はその領域にありましたが……私個人としては魔術の行使が限度ですとも」
?
「魔法と魔術は、違うのですか?」
「違いますとも。まあ、説明はまた今度にしましょう。かなり時間を費やすことになりますし。
……そろそろ、時間です」
呟き、胸元から懐中時計を取り出す彼。
今時懐中時計など、おしゃれのつもりなのか?
確かに服装とは合うと思うが。
「貴女との対話は中々面白そうです。
またお会いしたら、どうか対話の続きを。
「え、私の名前ーー」
問いかけるも、すでに彼はお辞儀しながらその場から消え去っていた。
『……ふむ。
ダ・ヴィンチやメカエリの警戒する中で、呑気に精霊はそう口にした。
『? どういう意味だ?』
訝しむダ・ヴィンチに精霊はただ笑みを返していた。
同時刻、武蔵を相手に剣を振るっていたセイバーのもとに念話が届いた。
「っ!!!!
……
それは紛れもなく
“至急、迎撃に当たられたし”
そう短く伝えられた指令にセイバーは思わず歯噛みしていた。
何処のどいつが差し向けたのか知らんが、このような楽しい斬り合いを邪魔するなど決して許さぬ。と。
とはいえ『義理は果たす』のがセイバーだ。
彼は一太刀、神霊としての魔力を乗せて武蔵の剣を弾き距離を取る。
「お預けだ、剣聖。
……次の機会まで、首を洗って待っているがいい」
「は? あ、待ちなさい!!
ちょっとぉ!!」
慌てて剣を振るうも、セイバーはすでに『次元の狭間』を開き中へと姿を隠し消えていた。
虚しく空を切る刀。
「くっそ〜〜〜! やるだけやってズルくない!?
……今なら“じいさま”の気持ちが分かるわ」
とはいえ、セイバーが桁外れの力を持っていたことも事実。その猛攻を耐えきった武蔵も激しく消耗していた。
「あー、これは最後まで付き合いきれないかもなぁ」
疲れからその場にぺたんと座り込んだ武蔵は大きく息を吐き出す。
あくまでサーヴァントとして現界している彼女はすでに限界だった。
とりあえず消耗分を少しでも補うべく武蔵は、先ほどから周囲に濃く渦巻いている魔力を『吸い込む』ことにした。
慰め程度でしかないが、無いよりはマシだと。
「あ。せっちゃん」
パチリと。木乃香は唐突に目を覚ました。
すでに明日菜から木乃香の身体を返却され大事に抱えていた中での突然の目覚めに、刹那は目を丸くした。
「お、お嬢様……」
やがて、うるうるとようやく目を覚ました最愛の人に喜びを感じ始めーー
「せっちゃーん!」
先に木乃香の方が抱きついていた。
「うわ、こ、このちゃん。……ハッ!」
わたわた、としながら思わず昔のような呼び方をしてしまったことに気がつきすぐに口を手で塞ぐ。
その様子を木乃香はにたぁ、と笑いながら見つめる。
これは、絶対いじられる!
そう思った刹那だったが、しかし、その額につん、と人差し指を当てただけで木乃香はすぐに立ち上がった。
「このちゃん……?」
刹那に向けられたその背は、いつもよりも、格段に『逞しく』感じられた。別に体型が変わったとかじゃなく、なんとなく。
気持ち的にそんな気がしていた。
『おや、お目覚めかねお嬢様
いち早く木乃香の目覚めに気付いた精霊は『いつもの笑顔』で明るく声をかけた。
それによって他の面々も木乃香が目を覚ましたことに気付く。
「木乃香!!」
「木乃香さん!」
明日菜とネギはすぐにその姿に涙と共に喜色を見せた。彼女らの目的は彼女の救出だったのだから当然ではあるが。
「うわわ、二人とも心配しすぎや〜。
でも、ありがとうな」
抱きつく明日菜に戸惑いつつも、その頭を撫でてついでにネギの頭も優しく撫でた木乃香。
その様子にエヴァは、彼女がすでにある程度、状況を把握していると気付いた。
「さて、と。
……まずはこの人を治してあげな」
一通り明日菜たちと抱き合い、木乃香は唐突にそう述べた。
視線の先にはエリザベートに抱かれるリツカ。
「治す、って木乃香?」
「もしかして、魔法のことを……?」
疑問を述べた明日菜たちに彼女は頷く。
「うん。起きたらな、なんかぽわわーって、色んな知識が浮かんできたんや。たぶん、『お母様』が教えてくれたんやな」
「お母様?」
突然の話に首をかしげる一同をよそに、木乃香はリツカのもとに歩み寄り屈む。
「こ、木乃香……?」
涙と鼻水でぐしょぐしょのエリザベートが不思議そうに木乃香を見る。
「大丈夫や、ウチにまかしとき。
……えーと、“
目を閉じ急に何事か唱える木乃香。
「気をやってしまったのか……」
と皆が心配する中で、段々と彼女の背後に魔力が渦を巻き始める。
当初こそ不可視のものであったそれは、やがて視覚化されるまでに練り上げられていく。
「こ、これは……!?」
その異様な光景に、ネギたちもたじろぐ。
やがて、収束した魔力は一つの『形』となって現れた。
鎧甲冑に身を包み弓を携えた色白の美青年。
煌めく銀髪は艶やかで、鉢巻の下には『髪と同色の瞳』が細く絞られ鋭い眼光を放っている。
『……我を呼んだは貴様か、小娘』
厳かな声で問い掛ける『彼』に、木乃香は元気に答える。
「うん、きびつひこ、さまやったか?
……え、と。この人を助けてください」
お願いします、と頭を下げた木乃香に、『彼』は少し眉をあげた。
正確には
『思念体となってまで構うとは、あのお転婆めがしおらしくなったものよ。
……で、この者の治療だったか』
こくこく、と頷く木乃香に『彼』はしばし考えるそぶりを見せた。
『待て、それは……サーヴァント、なのか?』
そこへ、通信越しにダ・ヴィンチが声をかけた。
彼の計測器には、木乃香の呼び出した『彼』がサーヴァントに酷似したデータを持っていることが示されていたのだ。
それでいて、どこかが違う、とも。
『“異邦の術師”か。
……貴様の言うサーヴァントとやらがなんなのかは知らぬが、我は守護を目的に本体より派生した分御霊なり。
“陰陽式守護英霊型決戦兵器・吉備津彦”。
吉備の地にて祀られる本体より派生し、陰陽師どもが守護霊として使役できるよう構築したモノ。
今は近衛の家を守るべくして代々使役されうる存在なり』
それはかつて『吉備の地にて鬼神を討ち倒した神代の英雄』。その武勇を、未だ燻る反乱分子の鎮圧に活用するため守護精霊として使役できるように当時の陰陽師が構築したシステム。以後は時代と共に改良が加えられ、かの『安倍晴明』の考案した効率的な術式を完成形として、日本の霊的守護を司る家柄の一つ近衛家に下賜され現在に至る。
図らずもサーヴァントシステムに酷似した形で完成することとなった『この世界の英霊』。
それこそが吉備津彦。
『さて、では小娘よ。我を使役したいというならば契約を結ばねばならん。それは知っているな?』
吉備津彦の問いかけに木乃香は頷きを返す。
『よろしい、ならば名を述べよ』
「近衛、木乃香です」
『では木乃香よ、今よりはお主を主と定め弓を引くこととしよう。神代の力、見事扱って見せよ』
その瞬間、木乃香と吉備津彦の足元に五芒星が浮かび上がり一瞬だが激しい魔力が吹き荒れた。
「木乃香さん!」
慌てるネギに木乃香は手を振る。
「大丈夫や。きっと、みんなを守ってみせる」
その時、木乃香を優しく包み込むようにして抱きつく『女性』の姿を全員が幻視した。
一瞬の出来事だったので、見間違いかとみんな思っていたが、精霊とダ・ヴィンチだけはそれが『今の木乃香を守っているモノ』であると看破していた。
直後、吉備津彦は両手を広げ、それに応じてこの場に巨大な五芒星が築かれた。
そこからは淡い光が漏れ出し、それに触れた者から『呪詛』が剥がれ落ち黒ずんだ肌がみるみるうちに回復していく。
『凄まじいな、この世界の英霊は……』
一瞬にして重度の呪いを剥がしてしまった吉備津彦の力にダ・ヴィンチは素直に感嘆の意を述べた。
『当然だ、ここは“我の霊地”。このくらい造作もない』
事実としてこの湖は吉備津彦の依り代とする場所でもあった。
分霊であり仮とはいえ、自身の奉られたこの地は『陣地作成』でいうところの『神殿』に相当する。
ともなればこのくらいの穢れ、“斬り捨てる”ことなど容易であった。
しかし、未だ霊脈の大半は両面宿儺に取られているために彼も本来の力を発揮するには至らないわけだが。
「む……?」
リツカの『意識を回復させるだけならばできる』。
「あれ……なんか、目が覚めちゃったけど」
唐突に、本当に唐突に目が覚めた。
確か俺は身体を酷使し過ぎて意識を失ったはずだが。
礼装にも生命活動の維持だけをお願いしてあった。
一体……。
「子イヌーーー!!!!」
「うわっ!」
どいうわけか俺を抱きかかえていたエリちゃんが、叫びながら抱きしめてきた。
「痛い痛い……本気でやるな、本気で」
サーヴァントの膂力で本気のハグをされると死ぬ。
ミシミシと骨が軋む音とか聞きたくなかった。
痛い。
「良かった……本当に」
「……」
やがて静かに嗚咽を漏らしながら俺の胸で泣くエリちゃんに、少しだけ罪悪感を感じた俺は、黙って彼女の頭を撫でた。
周囲を見ると、ネギくんに明日菜、エヴァ。メカエリチャンや刹那など全員が揃っている。
「あ、頼光」
爆音が聞こえ目を向ければ未だ、頼光が両面宿儺相手に激戦を繰り広げていた。
雷とかバンバン落ちて、なんか、すごい神話大戦と形容する他ない戦いが起こっている。
未だひしっとしがみつくエリちゃんをそのままに立ち上がる。
するとーー
「んあ?」
くらり、と足元がふらついて
「む」
メカエリチャンに抱きとめられた。
硬い胸板が地味に痛かった。
「悪い、ちょっとフラついた」
「いえ……あの、本当に、大丈夫なのですか?」
心配そうに尋ねる彼女に腕を振って応える。
「ああ、なんか普通に動くぞ?」
ふらついて気づいてしまった。この足が魔力によって無理やり動かしていることに。
足だけじゃない、壊れた内臓や血管など、補填するようにして魔力が形を成して動いていた。
治ったわけじゃない。
「よ、よかった……」
ほっと一息吐いた木乃香お嬢様。どうやらいつの間にか目を覚ましていたらしい。いや、というかもしかして彼女が治療してくれたのか?
と、その隣に見慣れない男が、イケメンがいることに気づいた。
「だれだ、あんた?」
『我は吉備津彦。
今は近衛木乃香に仕えし守護英霊なり』
守護英霊?
『発言に虚偽はない、彼はこの世界の英霊だ。
今そちらにデータを送る、確認してくれ』
ダ・ヴィンチちゃんの言葉の後にピピッと音がして受信したそれを確認してみれば。
「吉備津彦、なかなかの大物が出てきたな」
あの桃太郎のモデルの一人だ。
確か七代目の帝の皇子で、吉備の地で暴れていた温羅という鬼を退治した古い鬼殺し。
その際に連れていた家臣が三匹のお供のモデルらしい。
……って前世のWikiに書いてあったと思う。
「あんたが治してくれたんだな、礼を言う」
なにやら神様パワーで治療してくれたらしい。
『……いや、構わん。
気づいていると思うが、あまり長くはーー』
「ああ、即効でカタを付けよう。
……木乃香ちゃん、君にも礼を言う、ありがとう」
「えへへ、どういたしまして」
照れ臭そうに返す木乃香。
なぜか、以前の彼女とは違うような雰囲気を感じた。
彼女じゃないような、何かが混ざっているような。
『木乃香よ、あとはあの鬼神を滅ぼせば良いのだな?』
銀の双眼でスクナを捉えながら吉備津彦が問い掛ける。
「うん、もう十分だと思うから。
もう、
哀愁を感じる表情で木乃香は告げた。
あの人、とは誰のことを言っているのか。
いや、おそらくは『中身』のことを言ってるのだろうが。
吉備津彦は静かに頷き、ゆっくりと弓を構えた。
途端に、周囲には穏やかな魔力の風が吹き始める。
『……“幻想のうちに語られし鬼退治の業、鬼殺しの所業。我、
矢筒より取り出した二本の白羽の矢を番え、しっかりと引き絞る。
視覚化された魔力が緑のオーラとして彼の身体から滲み出る。
『“
『
ばしゅん、と放たれた二矢は一直線にスクナ目掛けて飛んでいく。
「っ!」
背後から音速で近づく矢に気付いた頼光は即座にその場から離れた。
対して頼光との戦闘に意識を向けていたスクナは迫る二矢に直前になって気付く。
「■■■■■■■ッ!!」
咄嗟に口から呪詛を吐き出して堰き止めようとするスクナ。
その時、周囲の空間そのものが『歪む』と同時にスクナの行動の全てが『巻き戻され』、二矢のうちの一つが
それにより、無防備なスクナの胸に残りの矢が突き刺さる。
「■■■■ーーー!!!?」
着弾と共に凄まじいエネルギーを解放し炸裂する白羽の矢。
おそらくは『鬼殺しの概念』そのものを『神秘』として解放することによる純粋な対鬼種用宝具。
吉備津彦が最高ランクで保有するであろう『鬼殺し』のスキルにより更に威力を上乗せした一撃は一瞬にしてスクナを飲み込む光球を形成する。
その爆風だけでも、俺の身体を吹き飛ばすほどには強烈で、思わずメカエリチャンにしがみついてしまう。
それを分かってか彼女も俺の肩に手を回してがっちりと掴んで離さない。
やがて、光球が弾けると共に辺りを閃光が包み込んだ。
『……これはもしかして『彼』一人で十分だったんじゃないかい?』
閃光が止み、辺りに煙が蔓延する中でダ・ヴィンチちゃんがそんなことを宣った。
やめてくれ、俺も自分がさっきまで四苦八苦してたのが馬鹿らしくなる。
「本場の鬼殺しとはここまでやるのか……」
軽く身震いしながら語るエヴァ。確かにお前も吸血『鬼』ではあるが、お前の場合は『星』に関係してる可能性もあるし一概には言えないだろう。
「いったい、どうなったの?
倒したの?」
心配そうに明日菜がネギに問いかける。
おいおい、ちょっとフラグっぽい事言うのやめろよなぁ。
「た、たぶん……すいません、僕にも確認することはーー」
『いや、反応は綺麗さっぱり。
確かに両面宿儺は倒された、神霊の降臨は阻止されたわけだ。おめでとう諸君』
慌てるネギくんにダ・ヴィンチちゃんが告げる。
確かに、礼装でも両面宿儺の反応は消えた。
どうやら今回は桃太郎に全部持ってかれたようだ。いや、倒せたならそれで十分万々歳なのだがな。
「ありがとう、
……貴方には辛い役目をーー」
木乃香とは思えないほどにお淑やかな口調で、吉備津彦へと語りかける。
しかし、他ならぬ吉備津彦はそれを半ばで遮った。
『……すまぬ、
その一言に、この場の誰もが耳を疑った。
「……え?」
『……なんだ、これは?』
遅れて、ダ・ヴィンチちゃんが通信越しに呟きを漏らした。
「なんだ、何があったキャスター?」
俺の問いかけに、彼はゆっくりと語り始める。
『
……これは、
彼の言葉の後に、俺の礼装も何らかの反応をキャッチする。
それは段々と大きくなるようでーー
「まさか……あれは」
怯えたような刹那の呟きに、その視線を追う。
そこには煙が晴れ、露わになったスクナ。
半神は砕け散り、下半身だけが湖に膝をついていた。
全身が焼け焦げたように黒く染まり、もはやピクリとも動かない。
……いや、その近くにはまだ『アイツ』が浮遊していた。
「……許さぬ。許さぬ。
未だ蔓延る数多の不条理を許さぬ。
無限の悲劇の上にあるこの世界を許さぬ。
我ハ、人類ヲ、許サヌ」
敵方のキャスター・藤原千方……ではない。
あのような理性なき憎悪に染まった眼をしている者は断じて英霊などではない。人類を呪い、復讐心などでもない、単なる『殺戮兵器』と化した『アレ』はもはや『ヒト』ではない。
俺の予想が正しいのならば、あいつはーー
憎しみに満ちた『彼』の身体は無傷だった。
当然だ、スクナの制御を行うにあたり、自らの全てを『両面宿儺の内側に封じ込めていた』のだから。
ダメージは全て『バーサーカーに計上されている』。
すでにかの鬼神から所有権は譲り受けていた。
あとは、『覚醒するだけ』。
「憎め、非業の死を遂げた数多の『我』よ。
呪え、想い果たせぬうちに絶えた数多の『我』よ。
恨め、『我ら』を貶めた『全てを』」
グズグズと、『彼』の身体が溶けていく。
人の形を保っていたのはそこまでだった。
液体のように形を崩した『彼』は、苦渋の呻きをあげる亡者の顔を浮かび上がらせながらグネグネと蠢き、スクナの死体へと纏わり付いていく。
許さぬ、と数多の顔が叫びながら溶けて、また新たな顔が生まれる。
醜悪の極地にあるような悍ましい光景の中で、確かに『彼は生誕しようとしていた』。
『っ! だめだ、リツカくん!!
急いでアレを止めるんだ!
アレは……!!』
ダ・ヴィンチちゃんの言葉に、俺は咄嗟にエリちゃんたちと頼光に念話で指示を飛ばす。
全力で、アレを攻撃せよと。
「ボエェェェェ!!!!」
「全武装、展開!!」
「はあぁっ!!!!」
エリちゃんのドラゴンブレス、メカエリの宝具を除いた全武装、頼光が刀を払って落とす特大の雷。
全てが『アレ』に集中し、爆発を巻き起こす。
先ほどの吉備津彦の矢には及ばないまでも、それなりの爆風を受けながら、俺は『失敗』を悟った。
「ようやく……ようやく、『この肉体』を手に入れた」
煙の中から悍ましい声が響いてくる。
「苦節、■■■■年。『我ら』の悲願はここに果たされる」
渦巻く煙を吹き飛ばし、『彼』はその全身を露わにする。
鎧甲冑に身を包み、鬼面は先ほどよりも厳かに凛々しいものになり、四つ腕には『弓』、『刀』をそれぞれ携えている。
それら全てが両面宿儺のサイズそのままに。
より明確に理性を宿した状態で、構えすら取っている。
しかしあれはもはや両面宿儺ではない。
「祟り殺そうか、呪い殺そうか。
……いや、この肉体ならば轢き潰すのも面白い」
ニヤリ、と耳まで裂けた口が嗤う。
二面四つ腕にして剛力の鬼神。
確かにそこには伝承に語られた両面宿儺の姿があった。奇しくもその中身は『別物』に成り果てていたが。
その姿に精霊はぽつりと溢す。
『アラヤの怪物』
それは人類が生み出した破滅の化身そのものであった。
(アンリマユじゃ)ないです。
次回とか、語ります。
語りますから待っててください。
(主にキャスターとかスクナ?とか木乃香とか)
ついでにホットリミットらへんとかも。
ー追記ー
サガ2とか3とか好きです(唐突