一般人生徒リツカ!   作:ブタどもの一人

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くーふぇ活躍と言ったが……

あれは嘘だ!!
(二回目

久方ぶりなので短めに。
なんか抜けてたらゴメン。



追記

金さんが銀さんになってた……
may-rinさん誤字修正感謝いたします。


京都・十四

 “お前は鍵だ”

 

 昔、誰かにそんなことを言われた気がする。

 

 “人の世を恨む素体……『■■■・■■■』の実験に相応しい”

 

 誰かは思い出せない。でも、あれは確かーー

 

 “さあ我が手を取れ。『■■の■』を取り戻すために、その栄誉を貴様に授けてやろう”

 

 ーーああ、思い出した。

 ()()()()()()()()のに、どこか『聞き逃せない』。『魅力に溢れた悪の極致』。おまえはーー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ハハハハハハハハハハ!!!!」

 

 高笑いをあげながら怨霊は、待ち続けた復讐が果たされることを確信していた。

 

 神霊サーヴァントとなった自身、その肉体の解放感に一人(全員が)悦に浸っていた。

 

 素晴らしい、肉体とは斯様な清々しさを齎すものだったか、と遠い記憶の果てに(彼等)が骨肉を持つ生者であった頃を思い返す。

 もはや『自らが誰なのかも分からない』、が。それでもこの爽快感の前では瑣末なことでしかない。

 なぜ、恨んでいるのか。

 分からないが憎い。怨霊とは、『彼等』とはそういうものである。

 

 ただ憎いから滅ぼそうとするのだ。

 

 神でも鬼でもない。人の想念、その一端である『憎しみ』が凝固して出来た『ナニカ』であるこの者らは、殺すことしか出来ない。憎しみに染まった思考を思考と呼んでいいのかさえ戸惑われる存在。

 

 1400年前に『中東の神』によって唆された神官がいた。

 18年前に同じく『中東の神』によって唆され、最後の仕込みを済ませた。

 

 そして今回、ついに『コレ』は形となった。

 数えきれないほどの怨念を迎合し、『一つの概念』となろうとしている。

 

「ハハ……自らが育てた『兵器』に殺されるのだ。自業自得だろう」

 

 はて、兵器とは誰が言ったのだったか?

『彼等』の中の中心、要となっている『男』はふと疑問に思った。

 同時に、敵対している奴らの中に、なぜか懐かしい雰囲気を感じていた。

 

『近衛■■』

 

 ーーかつて、自らを助けようと、救おうとしてくれた、あのーー

 

「っ! まだ調整が不完全だったか。思考にノイズが入る!」

 

 フラッシュバックするように、何かのイメージが思考をかき乱してくる。

 思わず頭を抱えた隙を突いて頼光たちは総攻撃を仕掛ける。

 

 雷撃、氷撃、ミサイルなど一手に注がれ彼はその衝撃にたたらを踏む。

 

「ぐ、小蝿どもが……まとめて吹き飛べ!!」

 

 一瞬にして矢を番えた彼は限界まで引き絞る。

 ギシリ、と空間ごと歪ませる魔力が一瞬にして凝縮され、今まさに放たれんとした時ーー

 

 

「せぇい!!」

 

 二刀の斬撃が彼の背中を直撃した。

 

「ぐぉ!?」

 

 堪え難い強力な一撃に、矢を落としながら振り返る。

 

「もう一丁!!」

 

 その顔面に二刀による怒涛の斬撃が刻まれた。

 仮にも神霊たる彼の顔に傷を与えるなど、それこそ頼光のように神秘特攻を持っているか、神霊レベルの力でしか不可能なはず。

 

 その犯人を見て、彼はようやく理解した。

 

「宮本武蔵……魔眼保持者か」

 

『体内に溢れるデータを参照』し、この者が異界の宮本武蔵であると判断する。同時にその能力が『必ず勝ちの目を引き寄せるもの』であることも。厳密には『可能性を一つに絞る』のだが。

 

 憎々しげに見つめる彼に、武蔵は快活な笑みで応える。

 その身体はこれまたボロボロで、しかし力強さすら感じる剣気を放っていた。

 武蔵の魔眼がすでにこちらの『弱点』を探っていることに気付いた『体内の己ら』が騒ぎ出す。

 

「っ、泡沫の幻風情が!」

 

 自らも魔眼のごときピンポイント爆撃、即ち呪詛による攻撃を行うも、スキル『無空』を用いた変則的な回避行動に、容易に避けられてしまう。

 

 その間にも、エヴァとメカエリ、頼光による波状攻撃を受け上手く狙いを定められない。

 

 おかしい、と彼は思った。

 スペック上ではとっくに頼光や武蔵をも上回っているはずなのに。

 神霊をも超えた『(のり)』に至ろうとしているのに、たかが数匹の蝿に手こずっている現状が納得いかなかった。

 

 そこへ、またも襲いくる不可思議なノイズ。

 もはや誰だったか思い出せないが忌々しい『三人の女』。

 見るたびに、どこか自らの奥底が疼き、動きを鈍らせる。

 

 彼は段々と苛立ちを募らせていた。

 

 

「おのれ、『ヒト』どもがっ!

 

 “二面四腕ノ鬼神ハ、剛力ニテ。

 ……サレド、『まつろわぬ』ト蔑マレシ遺骸ナリ”」

 

 突然、周囲に呪詛のバリアを張った彼は腕に持った刀を二振りとも足元に突き立て『衝撃への支えとする』。

 

 残る二つの腕で弓を引きしぼる。

 先ほど放とうとした一撃とは異なる『現在の彼の宝具』に値するもの。

 

 

「まずいぞ、何かやるつもりだ!!」

 

「これは……宝具!?」

 

 メカエリの言葉に、エヴァと頼光も全力で攻勢を仕掛ける。

 特に頼光の雷撃は『魔性そのもの』たる呪詛を次々に引き剥がしていく。

 それでも、彼が全力で張った防護壁を抜けるには至らず。

 永い時間をかけて育まれた怨念は、到底短時間で引きはがせるものではなかった。

 

 

 

 

 

「ぐっ……!」

 

 一方、戦いを見守っていたリツカもあまりの魔力の消費に吐血する。厳密には『とめどなく流れる膨大な魔力に身体が耐え切れていない』ことが原因であるが。

 

 

「リツカさん!」

 

「平気。……せめて、燃料だけはちゃんと与えないと」

 

 自分の存在意義が無くなってしまう。

 その意地だけで意識を保つ。

 

『……今更だが、よく精霊の誘いを断ってくれた。

 それだけの覚悟を見せられたら……ああ、その覚悟の半分くらいは背負わせてくれ。

『例の件』、今できる限りで施させてもらうよ』

 

 こんなときになんだ、と思いながらも俺はダ・ヴィンチの言葉に安堵した。

 

「ありがたい」

 

『ただ……代償は覚悟してくれ。100%はあり得ない。万が一の場合、君の自我は消滅するだろう』

 

「そうなったら()()()()()()()()使()()()()()。サーヴァントを現世に留める(かなめ)くらいには使えるだろう」

 

『そんな悲しいこと言わないでくれ。

 万が一の話だ、私も無茶はしないししたくない』

 

「ああ当然だ。というか、この戦いに勝ったらの話だ。今はアレをなんとかしないと。

 

 ……さあ、いい加減、決着をつけてしまおうか」

 

 

 

 俺は礼装に魔力を込める。

『全体強化』。

 対象は頼光、エリちゃん、メカエリ、そして武蔵。

 全員に今できる援護の最大を叩き込む。

 

「“宝具の開帳を許す、何としてもアレを打ち倒せ”」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「っ!!」

 

 リツカの念話を受けて頼光は、覚悟を決めて宝具の準備に入った。どちらにせよ、アレを放たれたら終わりだ。纏めて吹き飛ばされるのは明白。

 桁違いの魔力がスクナを中心に集まってきている。対軍は当然として対城に匹敵するかもしれない。

 

「“来たれ、四天王”!」

 

 

 

 

 

 

 

 

「墜チヨ……『祟神・剛力鬼神弓(死ヲ招ク者)』」

 

 頼光の宝具を待つことなく怨霊は自らの最大火力を撃ち放った。

 撃ち放つと同時に周りを包み込んでいた障壁は一瞬で砕かれ、膨大なエネルギー体が、『絶対に人間を殺す呪詛』を纏って周囲へとーー

 

「“南無、天満大、自在天神”」

 

 死が振りまかれる前に、武蔵が剣を抜いた。真の剣を。

『アレを断ち斬る未来へと全存在を投影』し、剣気を解き放つ。

 

 彼女の背後には『剣圧によって写し出された仁王が立つ』。

 

「剣気にて、その気勢を断つ!」

 

 やがて、迫る呪詛に対して仁王がその手に持つ四本の剣を振るう。

 振るう度に、彼女が生前に納めた五輪の書のうち、地水火風の概念と共に呪詛を否定する。

 

 小天衝。相手の気勢を剣気にて削ぐべく威圧するもの、その究極で以って武蔵は、呪詛ないし怨霊どもを威圧する。

 

 押し留められた呪詛を前に、武蔵はゆっくりと自らの『剣を上段に構える』。

 研ぎ澄まされた剣気が、因果を断ち斬る力が光となって視覚化され彼女の一刀をきらめかせる。

 

「この一刀こそ我が空道、我が生涯! 伊舎那大天象(いしゃなだいてんしょう)!!」

 

 満を辞して振り下ろされた一刀は、たった一撃にて怨霊の宝具を一刀両断にした。

 呆気なく二つに分かれて消滅する呪詛を、その場の全員が圧倒されながら目撃する中、背後では特大の雷が四度落ちるとともに四人の頼光が新たに現れた。

 

 その手にはそれぞれ、鬼火を纏う鬼切、氷を発生させる長巻・氷結丸、風を纏う無銘の剛弓、そして坂田金時の振るう雷電の斧・黄金喰い。

 それら魔性を祓う武器を手に一斉に怨霊へと襲い掛かる。

 

「ぐっ、がぁぁぁぁ!!」

 

 怒涛の連撃に彼の肉体も大きな損傷を受ける。

 さらにおまけとばかりに残った本物の頼光は手に持つ刀を構えて雷撃を充填した。

 

「“牛王招来(ごおうしょうらい)天網恢々(てんもうかいかい)”!」

 

 真名解放と共に振るわれる刀からは特大の紫電が解き放たれる。頼光の獲物・童子切安綱のスペックを全解放して放たれる頼光の宝具。

 数多の怪物を斬り伏せた逸話そのものが宝具となった類のそれは神秘に属する存在に対して絶対的なまでの特攻を発揮する。

 

「ぬぅ!?」

 

 怨霊の集合体である彼が直撃を受ければどうなるかなど容易に予想できる。加えてマスターからの強化を最大限施された一撃ともなれば着弾と共に凄まじい衝撃を放つことも当然のことだった。

 

 スパーク、視界を占有する閃光の連続にリツカたちは目を覆う。

 空気を破るような破壊音と、神秘の砕ける衝撃から辺りは凄惨たる有様に変貌する。

 湖の水が弾け飛び、全体を干上がらせんばかりに一切を消滅させていく。

 

 

 平安最強と謳われることもある彼女の宝具の威力はそれほど凄まじかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はぁ、はぁ! あ、あんなバケモン同士の戦い、付き合ってられんわ!」

 

 一方、スクナの解放により戦場から離脱していた千草は京の森の中を必死で逃げていた。

 

 

 最初こそ、必ずや復讐を果たしてみせると意気込んでいた。スクナを解放すれば必ず成し遂げられるとも。

 

 しかし、二人の仲間を引き入れたことでそれは疑念に塗りつぶされた。

 特に燕尾服を纏ったあの得たいの知れない男。

 ダンタリオンを名乗る彼は特に気味が悪かった。

 底が知れないという次元ではなく、根本から人間とは異なる精神構造をしているような、根本から人間とは相容れないような。

 

 また、男の連れてきた召喚師も不気味だった。

 常にぶつぶつと何事か呟きながら血走った眼でこちらを見つめる、まるで親の敵を見るかのように。

 あの狂気を正しく表す言葉を見つけられない。

 

 

 

 結局、スクナは破壊され代わりに出てきたあの『常軌を逸した化け物』に本能的恐怖を揺さぶられ咄嗟にここまで逃げおおせてきたのだ。

 

 復讐計画は呆気なく頓挫した。そもそもスクナ一体でいかほどのことが出来ようか?

 冷静に思考を巡らせればバカでも分かる答えに千草は半刻前までの自分を恨んだ。

 

「月読はどこにいったんや!!」

 

 加えて、仲間の一人である祝月読は忽然と姿を消し大事な時に一切姿を見せない。

 

 ダンタリオンの自分を無視した独断専行、裏切りに近い行動、小太郎の呆気ない敗北、そもそもの防衛網の脆弱さ。

 度重なる失敗に千草は精神的にも追い詰められていた。

 

 "もう、全てどうでもいい。とにかくここから逃げたい"

 

 変異したスクナの呪詛の波動を浴びて千草の野心は完膚なきまでに粉砕されていた。

 とにかくアレから逃げたかった。

 

 

 

 そんな彼女の思いを見透かしたように『運命』は残酷な仕打ちを与える。

 

 

 

 

「……自らが呼び出した災厄の後始末もせずに逃げ出すとは」

 

 夜の帳が降りた森の中、重厚でありながら嘲笑の滲み出る声が響く。

 地面を踏みしめる音と共に、その声は千草の背後から聞こえてきた。

 

 彼女は咄嗟に振り返る、振り返ってしまう。

 或いは全力で走れば僅かでも命が延び、なおかつ『破綻した魔人』の姿を見ずに済んだかもしれないのに。

 

「本来ならば極上のワインを片手に静観を決め込んでいたかったのだが、『主』の命ならば仕方ない」

 

『それ』は聖職者の装いをしていた。

 その本質はそんなものとは到底かけ離れているのに。或いはそれも『愉悦』を促すための要素なのか。

 見た目は至って普通の『神父』。しかし千草でも『気持ちが悪い』と感じるほどにこの男の狂気は異常であった。

 加えて、『ナニカの加護を得ている』。

 その加護すらも『どこぞの悪しき女神』のものであったが。

 

 

 

 

 かつて、別の世界にて『聖杯戦争の関係者の心を弄び、悪逆の限りを尽くした大罪人』。

 それでいて『歪みながらも揺るぎ無い信仰心を持つ狂信者』。

『生まれた時から破綻した心を持つ者』。

 

 或いはこの世界でも誰かの人生を弄ぶつもりなのか、そんなことは千草には当然分かるはずもない。

 

 ただひとつ確かなのは『千草を殺すためにやって来た』ということ。

 

 濃厚な殺気はスクナには及ばずとも人間が出すものとしては破格のもの。

 

「お初にお目にかかる。

 私の名は『言峰綺礼(ことみねきれい)』。

 早速だが死んでもらおう」

 

 

 

 

 

 

 ーー言峰綺礼。

 

 善を心地よいものと感じられず、悪逆・悲劇にこそ悦びを感じる根っからの破綻者。

『この世界の』正史であれば今頃は自らの悪性に苦悩しつつも聖職者として生涯を閉じるはずであった男は『悪しき神々の思惑』によって覚醒した。

 

 干渉があっとはいえ、彼はこの世界においても自らの答えを得るために、人々を弄ぶことを選択したのだった。

 

 

 

 

 




仮称スクナさんの宝具は対城です。
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