一般人生徒リツカ! 作:ブタどもの一人
なるべく真面目に書いてみました。次回からはようやくエリちゃんを喋らせることが出来る。数話分空気だったからね。
最後になんか出てくるけどあんまり気にしない方向で。
「感傷だが、別の形で出会いたかったぞ……」
「そうなるとお前は刑務所行きだと思うがな」
機体からスパークを出しながらゆっくりと水底へと沈み行く。黒塗りの先鋭的な機体の肩にはレイレナードの商標が貼られている。
赤くなったモニターから段々と光が失われていく。
数秒と経たぬうちに俺の視界は真っ暗になった。
「ズルくね?」
いや、コジマもグリントも俺が許可したけどさ。
「ズルくない。というか貴様の月光よりはマシだろ」
当然だとばかりに澄まし顔の金髪幼女が述べる。
いや、俺の月光舐めんなよ? 近接技能ゼロなんだからな!
お互いにそれほど得意ではない機体で挑み、そして負けた。
俺は月光の格好良さに惹かれてシュープリスに無理やり組み込んだのが敗因である。彼女は冷静に俺の月光対策で攻めただけ。
間違っても一ヶ月ちょっとしかやってない初心者に技能で負けているはずがないのだ。(言い訳
「ふ、負け犬の遠吠えとはまさにこのことだな」
愉悦たっぷりの笑みを漏らす幼女。
てめぇ……俺のレイレナード怒らしたらヤベェんだからな!
続く二戦目。
「いけ、俺のメフィストフェレス(高機動型四脚)!」
「貴様! 謀ったな、レイレナードではないではないか!」
はて、何を言ってるのかな? もしかして肩部に貼ってあるマークが見えない?
「ふざけるな! 完全にアルゼブラじゃないか!」
あーあー、聞こえません。
言ってるうちに俺の散弾銃がオーギルの装甲をぶち抜いた。
「ハラショー!」
「くそったれ!」
場所はエヴァンジェリン宅。屋敷のリビングで俺たちはゲームに興じていた。
ちなみに4ではなくfaである。
「じゃけん、女は向かんのんじゃ」
「やっぱりかああああ!」
パイルバンカーを打ち込み仕留める。隣の幼女が叫んだ。
やっぱりKIKUは最強だぜ。当たればの話だが。
「お二人とも、交流を深めるのはよろしいですが本題を忘れぬよう」
俺たちの座るソファの後ろから無感情な声が響いた。
「茶々丸……分かっている。だがあといっk」
「そうだな、そろそろ真面目な話をしよう」
金髪幼女エヴァの言葉を遮るように真剣な顔で応える。
「貴様……」と隣で出しちゃいけないオーラを出しているが気にしない。
足掻くな。運命を受け入れろ。
渋るエヴァをなんとか言いくるめて勝ち逃げをした俺は、彼女を伴い書庫へと移動する。ここは彼女の保有するコレクションたちの保管場所でもある。
立ち並ぶ本棚には古めかしい本が所狭しと敷き詰められている。
「ソロモン王の書物? これでいいか?」
「ああ、助かる」
本棚から抜き出されたそれを受け取り読み出す。当然のごとく日本語じゃないので魔導具を使って。
隣の椅子で悠々と本を読むエヴァだが、最初はかなり難儀した。
当たり前だ、これは彼女が彼女のために集めた大事なコレクションなのだ、おいそれと他人に触らせたくはあるまい。
色々と交渉した挙句に、ゲームでの勝負に勝ったことで俺はコレクションを漁る権利を獲得した。
「今更そんなもの見て、一体どうなるというんだ?」
写本だぞ、それ。と指差しながらエヴァが問う。
「まあな、だが写本とてバカには出来んぞ。僅かでもオリジナルの力を有している可能性もあるからな。ルルイエ異本とかルルイエ異本とか」
まあ、fate世界と違ってこの世界では狂気の神々はカケラほども干渉してきていない。つまりは存在しないと考えていいだろう。
fate世界でも架空ではあったが、その有り様を正しく言い当てたという理由で世界線を越えて干渉してきていた。
大雑把にアレとfate世界が同一の大きな『世界』とするならばネギま世界には少なくとも干渉できる範囲では奴らは存在しないと考えて良い。
つまりはこの世界のクトゥルフ魔道書は毛程も役に立たないというわけだ。
「クトゥルフ神話群か。確かにアレを魔法体系として組み上げれば或いは使い物になるやもしれんが。所詮は作り話だ」
と、このように古参魔法使いのエヴァも戯言と一蹴している。魔法体系とやらの話は分からないが、神秘が絶対の魔術でそれは下策だろう。
或いは、fate世界を経由してーー
「……それこそ下策か」
間違えちゃいけないが、かの神話群は狂気の塊だ。その干渉を許すということは即ち、この世界に滅亡を招くのと同義。
わざわざ災厄を持ち込む必要もあるまい。
そもそもアレらを倒せる気がしないし。
「テウルギア・ゲーティアか」
エヴァから渡された書物の名だ。中身はすでに他の写本で読んだことがあるためにさして目新しい情報は出てこない。
他同様に単なるオカルトアイテムだ。
結局、最後まで読んでも魔術に繋がるものは無かった。
俺は元あった場所に本を戻す。
そしてその横にあった本を新たに手に取り読み始める。
「……時に、リツカ」
先ほどまで読書に耽っていたエヴァがこちらに向き直し問いかけてきた。
俺は書物を読み進めながら返事をする。
「お前が言っていた魔術、だったか? 本当に存在していたのか?」
「さてな、だがその産物たるエリちゃんが存在しているならあるのだろうよ、もしくは限りなく近い別の力かもしれないが」
だが十中八九魔術だろう。令呪もエリちゃんの在り方も魔術による英霊召喚のそれだ。
この世界出身の英霊でも召喚できれば詳しく分かると思うが、現状では未だ魔術の存在も定かでない。ともかくは魔術を見つけない限りはどうにもならない。
ソロモン王の書物を漁っているのも彼が召喚術におけるエキスパートだからだ。魔術もそうだがその中でも召喚術に関しては彼が後世の術式を確立させたと思っている。ゲーティアのネガスキルもサモンだったしな。
結局、土曜日一日を丸々費やしても成果は無かった。やはり図書館島が最も有力か。
明日はあの島を探索しよう。
ぶっちゃけた話、マッピングは済んでいる。ただし探検部の回っているエリアに限るが。それ以降は危険も増えるのでエリちゃんを連れて行かないとどうにも出来ない。
本当はエヴァが来てくれれば、魔法による罠も守衛もどうとでも出来て楽なのだが。
エヴァにこれ以上を頼むのは不可能だ。あくまで俺が勝ち得たのは彼女のコレクションを閲覧することのみ。
「それじゃそろそろ帰るよ」
「そうか。なんなら夕飯くらいは食っていっても構わんが?」
ありがたいお誘いだが丁重に断らせていただく。
「うちでエリちゃんが待ってるからな」
サーヴァントには食事など必要ないが、それでも俺は彼女と囲む食卓が一番だ。
「お熱いことだな。まあいいさ、何かあれば相談に来い。乗りかかった舟だ、魔術とやらをこの目で見るまでは付き合ってやる」
お、マジか。案外彼女もノリノリらしい。
ゲームばっかしてるからてっきり興味を無くしたと思っていたが。
「ありがたい、なら早速頼みたいことがあるんだが」
俺は明日にでも図書館島へと探索に向かうこと、その際に深部まで進むため同行してもらいたい旨を伝える。
「ほう、まああそこの方がより確実性が高いな。いいだろう、私も同行しよう」
すんなりと了承を得た。こんなことならさっさと頼めばよかった。
彼女も長いこと生きて楽しみが少ないのかもしれない。
ロリババア最高。
「ん? ちょっと待て」
帰ろうとしたらがっしりと肩を掴まれた。
え? ま、まさかこいつも読心能力を?
ご、ごめんなさい。歳のこと言ってごめんなさい。
「……よし、これで大丈夫だ」
と思ったら俺の懐から取り出した藁人形に何やら細工をしてまた懐に戻した。
単純に俺の“対策”のメンテナンスだった。
「まったく、こうも易々と壊されるとはな」
「あ、そういえば教会で手酷くやられたわ」
思い出すのは先週の日曜に美空にボコボコにされた時に“おじゃん”になったこと。
危ねぇ、俺、一週間も無防備に暮らしてたのかよ。
いくら学生だからって俺も立派な魔法関係者、もしものことがあれば一瞬で殺されていた。
「あくまで貴様自身をベースに作られているのだからな、それを忘れるなよ」
「悪い悪い」
この藁人形。厳密には『携帯型物理硬度強化術式』なんだが、エヴァが作ってくれたものだ。
単純な障壁と異なり使用者の身体を覆うようにぴったりと張り付くタイプで、人体に致命的なダメージを受けると判断された際に自動で保護してくれる優れもの。
要はガンツスーツみたいなものだ。
ただし、俺の身体をベースに作られているのでよく壊れる。もし使用者がくーふぇ並みの身体能力者なら早々壊れないだろう。
この魔道具の欠点は使用者の素質に左右されるところか。
「まあいい、明日は私もいるからな。早々死ぬような目には合わんだろ」
「気をつけるよ」
あながち絶対とは言えないところがネックだ。俺のラック値はぐだ男とはかけ離れたものだからな。
いや、巻き込まれ体質は同じか?
俺はエヴァに今日のお礼を言って帰路についた。
「マスター、よろしいのですか?」
「何がだ?」
あの小僧を見送って早々に茶々丸が問いかけてきた。こいつの方から質問とは珍しいが。
「マスターは未だ魔力を封じられている身。“あの計画”を実行に移す前に危険な場所に赴かれるのは如何かと」
「ふん、図書館島程度なら問題ない。触媒を使えば魔法も使える。十分だろ」
何を気にしているのか。しかし茶々丸は未だ何か言いたげだ。
「ですが、彼、フジマルリツカにそこまで付き合う必要はないかと」
「ほう」
本当に珍しい、こいつが私の意見に反論を述べるなど。
……いや、日頃から結構、小言がうるさかったりするが。
真面目な話で“茶々”を入れるのは珍しい。
「はっきり申し上げて、彼は一般人です。魔法関係者ではありますが魔力も少なく魔法も使えず、使い魔に頼り切りの存在です。加えて彼は学園側。
マスターがそこまで面倒を見る必要はないかと」
なるほどな、私があいつに執心していると?
勘違いも甚だしい。
「間違えるな、単に私は奴の言う『魔術』とやらに興味があるだけだ」
魔術。奴と私が知り合いになったきっかけ。
それはあのサーヴァントとかいう存在が現れた時に遡る。
それまでは他の生徒同様に単なる一般人に過ぎなかった奴が突然、あの様な“強大な存在”を使い魔として従えたのだ。断然興味も湧いた。
だがいざ接触してみれば奴は結局、素人で一般人に過ぎなかった。
普通なら一笑に伏すところだ、素人、或いは狂人の戯言だとな。
だが確かにあの使い魔の詳細は掴めなかった。伊達に数百年を生きていない私をしてアレがなんなのか、分からなかった。
続けて奴はこう宣った。
『これは“この世界にも存在している”』と。
この世界? 妙に引っかかる言い方だ。まるで自分が
魔法使いの常識的に考えれば異なる世界とは魔法世界のことを言っていると見るだろう。しかし、魔術などというものはあの世界でも
魔法の本場とされる世界には存在しない技術。
断然、唆る。
「あれ程の使い魔を魔力の塊として呼び出す未知の技術、解明する他に手はあるまい?」
問い返す。自然と口角が持ち上がる。
「マスター……」
茶々丸も私を見て、ようやく合点がいったと頭を下げた。
「差し出がましい振る舞いをお許しください」
「許す。分かったのなら構わんさ」
そう、そんな瑣末ごとなど今はどうでもいい。今の私にあるのは魔術とやらに対する興味だけ。
「ククク、久方ぶりに楽しみを見つけた。見させてもらうぞ、貴様のいう魔術とやらを」
「マスター、とても悪い顔をしています」
「ふ、そう褒めるな」
なんだかんだもう三月、ネギ君が来てから一ヶ月ちょっとかな?
毎日、帰宅するごとにエリちゃんにネギ君の近況を聞いているが順調にイベントこなしてる。順調過ぎるくらいに。
クラスメイトもエリちゃんの分、一人増えているのに大して変わらないどころか殆ど原作通りの流れ。
これが俗に言う『修正力』というやつなのだろうか。
抑止力とか結構しっかり働いてるのかね。
なにはともあれ僥倖だ。このまま順調に成長していずれ世界を救って貰わねば。
ちなみに、彼のような幼な子に世界の命運を託したり辛い使命やらを背負わすことに俺はなんら罪悪感を感じない。
当たり前だ、彼はもともとそういう歴史を歩むはずでありその素質も器もある英雄だ。
たかが一般人一人加勢したところで焼け石に水、どうにもならんだろ。寧ろ規定コースを乱す可能性すらある。
正真正銘、一般人代表たる俺には関係ない話、遠い世界の存在なのだから。
仮に力を得たとしてもそのスタンスは変わらないだろう。
いくら強大な力を得たとて、扱うものの精神が惰弱では単なる災いにしかならない。それは歴史が証明していることでもある。
突然、チートをもらって転生して無双してハッピーエンドなど所詮はフィクションでしかないのだ。
世界を救えたのは、その者にそれだけの資質があったか器があったか、はたまた俺などには分からない英雄としての資格を持っていたからに過ぎない。
要は持って生まれた“役割”の話だ。
そもそも、俺がエリちゃんのマスターをやってるのもあの非人間の要らぬお節介に過ぎない。コズモなんちゃらとか全く関係ない。
だからこそ俺は“英雄たり得る資格を持つ”エリちゃんが巻き込まれないように動くだけだ。
序でに、今後のために魔術について調べる、と。
今のところ、俺のほのぼのハッピーエンド計画は順調である。
「それでね、朝倉ったらひどいのよ!」
「そうなのかー」
いつもの食卓。俺の作った夕食を囲みながらエリちゃんが今日の出来事を語る。
俺はそれを聴きながらほっこり気分で夕食を食べる。
たぶん、ここは俺にとっての幻想郷なのだろう。
「危うくバレるとこ……って聞いてる?」
怪訝そうなエリちゃんの顔が迫ってきた。
「うん聞いてるよ。まあ、朝倉はジャーナリストとしての素質はあるからね、これからもバレないように気をつけよう」
すでに何度かバレて記憶を消しているが。
あの魔法って改めて思うと人道的にどうなの、って思う。だって絶対脳にダメージ与えてるって。
正直、何度も使っていいものじゃないと思う。何回かバレるようならいっそバラしてしまった方が問題もないんじゃないかな。
「子イヌー」
「ん?」
なんだが面白くなさそうな様子のエリちゃん。どうしたのか、ちゃんと話は聞いてたけど。
「子イヌがげんさく? てのを気にしてるのは分かるけど。それだけじゃなくて、もっと普通に聞いてほしい」
「エリちゃん……」
俺としたことが、エリちゃんを優先すると決めていたのに彼女の気持ちを考慮していなかった。致命的な失態だ。
「ごめんなエリちゃん。次からはちゃんとありのままの君の日常を聞くことにするよ」
「わ、分かればいいのよ。さ、お夕食食べちゃいましょ?」
ちょっと顔を赤くしながらも分かりやすく機嫌を直してくれたエリちゃん。彼女はやっぱりいい子だ。
とても、魅力的だと思う。
俺は改めて彼女と平穏な生活を送ることを決意した。
同時刻、麻帆良図書館島。
その一角に一人の男が降り立った。
「ここか」
真っ白なローブに身を包み顔をフードですっぽりと覆った姿。有り体に魔法関係者に酷似した装いだ。
しかし、彼は少なくとも麻帆良の関係者というわけではなかった。
夜闇に紛れ顔すら見せずに男は図書館島内部へ、魔法関係者のみに進入を許された地下区画へと潜り込む。
火を灯す魔法すら使わず全くの無手でスタスタと闇の中を進んでいく様子から彼が夜目のきく方であることが伺える。
或いは、進入する前の一瞬、手の甲にぼんやりと浮かび上がった
「おっと」
本棚の隙間から飛び出してきた矢を危なげなく片手で掴んで折る。
「危ないなぁ、これってもし一般人が入り込んできたら危険過ぎない?」
彼が思うのは図書館島に入る際に何の警備も見当たらなかったこと。正門からでなく裏の勝手口から侵入したのだが、どうにも何の警備も見当たらなかった。おそらく一般区画なのだろうが、そこからすでにトラップの嵐だった。
魔法関係者区画との境も曖昧だ。万が一を考えるならトラップの前に魔法による結界を張るべきだと思った。
彼がこのような思考についつい夢中になってしまうのは最早性分であった。特に麻帆良に義理があるわけでも関係者でもない、なのに他人の心配をしてしまうお節介なところは、彼の
いや、厳密には
無駄な思考を続けながらも無意識で魔法トラップを避けていく彼は並みの実力者ではない。
ある程度内部に精通している者が、警戒しながら初めて安全に進める道を、初見でしかも無意識に回避していくのは尋常ではない。
「ここら辺かな」
男はいつの間にか拓けた場所にまで辿り着いていた。
眼前に広がるのは水没した本棚たちと、木の幹のようなものが幾つも立ち並び柱の役割を担い、壁がぼんやりと発光する。
そんな、幻想的な風景。
「地下図書室とは、思っていたよりも綺麗だね。近右衛門もなかなか粋な真似するようになったじゃないか」
その光景に満足げに微笑む男。
「おっと、本来の目的を忘れるところだった」
ふと思い出したように懐から一冊の本を取り出す。
それは、一目見て“普通ではない”と分かるほどの魔力を有していた。
加えて、
「さて、何処がいいかな?」
キョロキョロと辺りを見渡して何かを探す男。
数秒して何かを見つけたように男が動いた。
「ここ、かな? うん、なかなかいい感じ」
男は半分水に浸かった本棚の中に紛れ込ませるように手に持っていた本を押し込んだ。
驚くほど雑である。
「ふー、一仕事すると気分がいいね」
額を手で拭い一息吐く男。彼がしたのは図書館島の地下に侵入して本を置いただけである。
他には何もしていない。
ただ、“魔法ではない技術”を用いて侵入した点を除けば。
男は何度か満足げに頷いてからそそくさと館内を脱出した。もちろん回避してしまったトラップを直すことも忘れない。
変なところで律儀な
しかも、悪態をついていたトラップを直しているあたり彼がそれほど深く物事を考えられない人間なんじゃないかと疑いたくなる。
「後は彼ら次第かな。うまくやってくれるといいけど」
一瞬、不安げな顔を浮かべてから彼は何事もなかったようにその場から
夜、麻帆良に存在する全ての者から全く感知されずに彼は目的を遂げて去っていった。
それはもちろん
麻帆良は旧世界においても重要な霊地だ。もちろんのこと警備に関しても他の木っ端な霊地とは比べものにならないほどに厳重だ。
幾重にも張り巡らされたその警戒網をいとも容易く抜けて男はことを成し得たのだ。
その意味が今後の麻帆良、ひいては『世界』を巻き込む騒動に関わるものだとこの時点では誰も予想していなかった。
仮に、予想できているとしたらそれは彼只一人だろう。
だからこそ彼は現れた。
だからこそ彼は
だからこそ彼は
彼は全てを知っている。しかし子細を知ることはできない。
ただ、彼という存在は『人間を信じることに特化していた』というだけの話。
動き出す『観測者』と、それに対抗する『残滓』。
始まりからしてこの世界は正史とは異なっていた、始まりからこの世界は“怪物を孕んでいた”。
事の全ての始まりたる“かの存在の残滓”は希望を託した。
その功績は誰にも知られることはない。
その良心はもう誰も覚えていない。
それでも彼は動いた。残る力を全て使い果たして。
ここで彼の物語は終わった。そも彼の物語ではなかったのだ、この世界は。
語られるべきは図らずも彼の“嘆き”を受け止めた“被害者たち”の物語。『運命』などという悲劇に見初められてしまった正史の英雄と一般人の物語。
時を同じくして、麻帆良にはもう一人の侵入者がいた。
当然のごとく結界はおろか熟練の魔法使いすら感知出来ていない。
男は、彼とは異なる真っ黒なローブに身を包んだ男は高台から町並みを見下ろしていた。
ふと、その視線が動く。
ぴたりと止まった先にあるのは『世界樹』。
この霊地最大の象徴にして根源。この地を管理する魔法使いたちですら気付いていない“宝”を目的に男は動いていた。
「もうすぐだ。
苦節、◾︎◾︎万年。やっと、
これで、ようやくーー
『人類は次のステージに向かうことができる』
それは凡そ
狂気の沙汰だった。
妄執の果てにある狂った
全ては偶然でありその果ての必然であった。
『人理を観測する』。その願いさえ捨てていればこのような結末を迎えることもなかっただろう。
そもそも、この世界に彼の魂が迷い込むことが無ければ。
時は戻らない。すでに発生してしまった事柄は無かったことには出来ない。
それが人類の始まりからのものであれば尚更。
この世界の始まりから続く呪いは遂に動き出す。人類を守護する古き楔を断ち切らんとして。星を守護する古きしがらみから解き放たんとして。
当人達の預かり知らぬところで滅亡へのカウントダウンは刻まれていた。
エヴァも自力でエリちゃん調べようとしてるけど未だ成果はなし。
本作では魔術と魔法は完全にコンセプトの異なる技術と定義しています。
最後のはオリキャラです(ぼそっ