一般人生徒リツカ!   作:ブタどもの一人

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ガイア、クラッシャァァァァ!!

って、何なんですかね。元ネタ知りません。


混沌の中から始めにガイアが現れました。

「リツカ、ご同行願おう。理由は分かるな?」

 

「……はい、刀子さん」

 

「待って、マスターさんは悪くないの。本当に悪い子は私なの……」

 

「もう大丈夫よ、私たちがあの変態を連れて行っちゃうから、安心して」

 

「連れてっちゃうおばさんですか」

 

「連行しろ」

 

「イエッサー」

 

「うわっ、なにをする! やめーー」

 

「……ふん、犯罪者が」

 

「あ、ああ、マスターさん……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ひょんな事から俺は朝一に学園長室に来ている。

 

 高校には学園長直々に連絡を入れ公的な遅刻だひゃっほぅ。

 朝っぱらから同業者の葛葉刀子さんが訪ねてきた時は何事かと思ったが、学園長が呼んだってことはアビーのことだろう。

 ここに来るまでに刀子さんと一悶着あったが無事に事なきを得た。具体的には彼女にアビーを預かってもらってる。

 ちなみにエリちゃんは終始冷たい視線を向けていた。予想外にも一切助けてくれなかった。危うく犯罪者になっちゃうとこだよ!?

 

 

「ではリツカくん、話を聞かせてくれるかね?」

 

「はい。まず彼女は私が新たに呼び出した英霊です」

 

「ふむ、話が早くて助かるよ」

 

 だってそれしかないもんね。ていうかいくら重要案件とはいえ朝から叩き起こさないでほしい。とりあえず、アビーと気持ちよく寝ていた(意味深)俺の頭頂部を木刀で叩いた刀子への慰謝料を要求します。

 

「彼女の名はアビー。()()()()()のサーヴァントです」

 

 ちなみに二年間の付き合いで学園長と高畑にはクラスや英霊の概要は伝えてある。

 尤も、クラスについては七騎と他にエクストラクラスがあることを伝えたのみだが。

 

「キャスター……魔術師のサーヴァントか」

 

「ええ、ただ、彼女自身は逸話を持つ英霊というわけではなく、後世、()()()()()でサーヴァントとして成立して()()()()ただの人間です」

 

「複雑な経緯、のぅ……」

 

 すっ、と細められる学園長の眼。

 さすがにあからさまに濁したところ追求をやめてくれそうにはない。

 だが、彼女に関してはおいそれと真実を口にするわけにはいかんだろう。彼女自身の危険性もさることながら、何がトリガーで“あの世界”を刺激してしまうか分からないのだ。

 というか説明するのもめんどくさい。

 

「……俺は、サーヴァントといえど彼女らにも人権というものがあることを信じたい」

 

「……」

 

「いや、与えられるべきだと思います。エリちゃんしかり、アビーしかり。功績の裏には悲劇があるように、彼女らもかつては人間で、今も人間性のある英霊がほとんどでしょう。

 その過去を無神経に詮索するのは、それが残酷なものであるのなら尚更、人道に反する行いと心得ます」

 

「……」

 

 ピクッ、と眉を動かす学園長。

 

「俺は、これ以上、彼女の古傷を抉る真似はしたくない。散々、()()と罵られてきた彼女の名をこれ以上穢したくない」

 

「ふむ」

 

「アビーに関してはエリちゃん同様に私が面倒を見ます。彼女の召喚に際して追加の令呪を授かりました、制御に関してはこれ以上ないほどに万全でしょう」

 

 これにて俺の弁明を終える。出せるだけの安心材料は出した。

 ぶっちゃけ保険といえば令呪しかないが。

 

 学園長は一度深く頷きこちらを見つめなおした。

 

「よかろう、今後も英霊に関しては君に一任することにする。……どうせ、アビーくんも君の知り合いなのだろう?」

 

「まあ、そんなところです。彼女が故意に事件を起こすことはないでしょう」

 

 いや、あながち絶対とは言い切れないけど。彼女も覚醒するとかなりヤバイやつだからな。

 

「……なんか自信なさげだけど」

 

「いえ、大丈夫です……たぶん」

 

「うぉい」

 

 

 心配する学園長をなんとか言いくるめて俺は部屋を後にした。

 

 なんでも英霊に関してはワシらの手に負えないから君が頼りなのだとか。……俺の知らぬ間に一体何をやらかしたんだエリちゃん。

 

 ふと、ライブを行う彼女の姿が思い浮かんだ。あれはなかなかに壮絶なライブだった。一時的にだが麻帆良が壊滅状態になったほどだ。

 原因は麻帆良全域に放送してしまったことだったが。

 のちにこの事件は『ジャイアンリサイタル事件』と呼ばれている。間違っても本人には聞かせられない呼称だ。

 

 

 

 

 

「あ、マスターさん」

 

 待合室で刀子さんと共に待つアビーの元を訪れる。

 

「終わったよ」

 

「お疲れ様!」

 

「はい、お茶!」と湯呑みを手渡してくるアビー。

 有り体に天使と呼ぶべきだ。

 そんなところに済まなそうにしながら刀子が声をかけてきた。

 

「リツカ、朝はすまなかったな」

 

 本当だよ、藁人形持ってなきゃお陀仏だよ。

 殺人未遂だからね。

 

「いえ、状況から見てそう勘違いしても仕方ないでしょう」

 

「そう言ってくれると助かる。私も守るべき者がいるからな」

 

 例の一般人彼氏ですか。でもいつまでも隠し通せるとは思いませんけどね。

 まあ、俺には関係ないのでそれ以上は何も考えない。

 

「だが、これからどうするのだ?」

 

 そうなんだよなぁ、俺もエリちゃんも学校があるからその間はアビーが一人になってしまう。

 サーヴァントなんだから霊体化させて侍らせておけと思うかも知れないが俺としてはあんまり縛り付けたくない。

 せっかく、平和な世界に来たのだ。あまり戦いばかりにこき使う必要はないだろう。

 

「それなんですが、学園長に一つ提案されましてね」

 

 うちの初等部入らない?って。

 いや、お前どんだけ英霊を学校に入れる気だよと思う。

 この先もしも英霊が増えたらその度に入れようとする気がする。

 その旨を伝えるとーー

 

「学校!?」

 

 ほらやっぱり。学校の話をすればアビーも食いつくだろうと思った、学園長もそれを分かっていて言ってる気がする。ふざけた態度ばかりとっているが彼も組織の長だ、策略にも長けている。

 たぶん、英霊を自分たち側に引き込んで俺への牽制としているのだろう。万が一にも裏切ることのないように。

 エリちゃんやアビーが学友と交流を深めれば深めるほど情が移って学園側に逆らうことができない。

 

 ぶっちゃけそんなことしなくても俺は裏切るつもりはないんだが。この世界で一番安全なのここだと思うし。

 なんとか学園側を味方にしてしまえば強固な城塞として機能する。

 

 ここらで本当にキャスターでも呼べればより盤石な構えとなると考える。

 

「外見からして六年生からになると思うけど」

 

 一年で中等部に上がる。だが今更中等部一年として入ってもすぐ進級だけど。

 

「それなら新年度から一年として入ればいいだろう」

 

 刀子さん、そんな簡単に言っちゃいけないよ。どう見たってアビーは中学生に見えないでしょ。主に言動が。

 

「あら、マスターさん。私は中等部からでも大丈夫よ、それまではマスターさんの側に居ればいいのでしょう?」

 

 なんてことないように言う彼女。

 サーヴァントとは召喚時におけるその地、その年代の常識を聖杯から与えられる。

 それとは別に聖杯戦争における常識も叩き込まれる。

 つまり、彼女もサーヴァントのなんたるかは心得ているということだ。

 英霊の中には知った上で「そんなもの知らん」と一蹴する困ったちゃんが大勢いるから殆ど空気な設定ではあるが。

 

「こんな小さい子どもを……」

 

「刀子さん」

 

 複雑な様子の刀子への声を掛ける。

 俺とて貴女が言おうとしていることは理解できている。

 

「彼女はあくまでサーヴァントとして呼ばれて存在している。その役目を他人がどうこう言うのはそれこそ彼女に対して失礼だと思いますよ」

 

「ぬぅ……」

 

 少し呻いた刀子。やがて渋々頷いた。

 ふ、チョロいな。

 これで合法的(違う)にアビーを四六時中侍らせられるぞひゃっほー!

 

「霊体化、って分かるかな?」

 

「ええ!」

 

 元気に応えてすぐにスゥっと姿を消すアビー。

 いきなり消えてしまったアビーに刀子は目を見開いている。

 

 それから数秒でまた姿を現わす。

 

「どう?」

 

「完璧だ。さすがアビーだな」

 

「うふふ」

 

 褒めてやると満更でもなさげに微笑むアビー。マジで普段はただの女の子なんだよな。

 いまだに『悪い子モード』のアビーを見たことがないからかもしれない。

 

「では刀子さん、アビーがお世話になりました」

 

「お世話になりました! また遊びましょう、刀子さん!」

 

 無邪気に微笑むアビーに刀子はメロメロになった。

 

「あ、ああ。また、な」

 

 少しだらしない笑みを返した刀子。刀子はアビーにメロメロだ。

 

「刀子さんならきっといいお母さんになりますよ」

 

「なぁ!? いきなりなんだリツカ! セクハラで訴えるぞ」

 

 そんな怒らんでも。ただのジョークですやん……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「うふふ、学校ってどんなところなのかしら」

 

 アビーを伴い俺も登校する。彼女には霊体化して付いてきてもらっている。

 

「そうだなぁ、まあ、勉強してお友達をいっぱい作るところかな」

 

 正直、勉強に関しては中身大人なので今更必要ない俺なのだが。

 

「お友達、いっぱい……」

 

 声からして多分目をキラキラさせているアビー。

 彼女と話しながら登校していると、すでに校門まで来ていたことに気付いた。

 

「そうだな、アビーならすぐ出来るとおもーー」

 

 ぞくり、尋常ではない悪寒が背中を駆け抜けた。

 校門を抜けたあたりだ。

 

 素人の俺でさえ分かる殺気、いや、警戒?

 ともかく誰かが俺を見ているという確信があった。

 一体、どこのどいつが……そう思って校内を見渡すと。

 

「……マジかよ」

 

 俺の教室、その窓からほぼ全員がこちらを見ていた。軽くホラーである。え、なに、俺なんかした?

 

 凄まじい覇気を一身に受けながらも俺は渋々教室まで向かう。

 これってアレだよな、たぶん俺のこれまでの所業がバレたんだよな。

 

 俺は校内でも屈指の変態紳士として通っている。

 覗きとかスカートめくりとかそんなチャチなものではなく、何気ない仕草から“イメージ”することを可能とした一ランク上の変態だ。

 例えば髪をかきあげる仕草から俺はいく通りもの妄想を瞬時に走らせることができると同時に、その娘の身体情報をある程度測定できたりする。

 しかしこれはJKまでに限るが。

 

 だがこれまで男子にのみ明かしていた秘密だったはずなのだが、まさか奴ら、俺を裏切ったんじゃ(ガクブル

 

「リツカ」

 

 教室に向かう途中、廊下で声を掛けられた。

 

「遠坂……」

 

 声を掛けてきたのは黒髪凛の方だった。声だけだとわかんねぇんだよな。

 

「いや、誤解だ。俺は変態ではあるがあくまで紳士ーー」

 

「なんで、あなたがサーヴァントを連れているのかしら?」

 

 予想外の質問だった。瞬時に頭を駆け巡る推測。

 なぜだ、あくまでこいつは一般人のはずだった、学園長とか他の魔法先生に聞いても一般人だと口を揃えて言っていた。

 

 なのに、なぜ?

 こいつはサーヴァントを知っている?

 

「マスター!」

 

 困惑する俺の前に実体化したアビーが立ち塞がった。俺を庇うようにして警戒MAXで凛を睨んでいる。

 

「待てアビー! こいつは、まだ敵と決まったわけじゃない」

 

「アビー……クラス名で呼ばないのは真名を悟られる心配がないからなのかしら」

 

 黒髪凛は冷静にアビーの真名予想をしているが、たぶん気付かれることはないだろう。気づかれても何の問題もないが。

 

 確かに、連れてきたのがアビーで良かった。

 だがしかし、仮に彼女が“あの”凛だとしてなぜ今になって仕掛けてきた?

 これまでもエリちゃんと俺で帰ってたりしたと思うのだが。

 

「エリちゃん? 誰よそれ」

 

 一瞬、ホラー的な展開かと思ってしまったがよくよく思い出してみるとエリちゃんと帰る時は校門を出てからだし、この前もはくのんは初対面だった。

 どうにも奇跡的な綱渡りを毎回していたようだ。

 

「まあいいわ、貴方もすぐに敵対する意思はないのでしょ? なら教室まで来てちょうだい」

 

 それだけ言うと俺を先導するように歩き出す凛。おいおい、教室って。まさか全員“あれ”してきたとか言わないよな。

 

「マスター、危険だわ」

 

「いや、俺は信じるよ」

 

 苦言を呈すアビーに俺は躊躇なく答えた。

 だって、もう二年も一緒にやってきた奴らだぜ。なんとなくあいつらの人となりは理解できているつもりだ。

 まあ、ダメだったら俺が死ぬだけの話だ。

 

「そんな……!」

 

「かといって、死ぬつもりとかないからね」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 教室に着くなりクラスの殆どが俺を見てきた。怖い。

 あのぉ、今は授業中だったと思うのですが。

 

「安心して、先生は眠らせておいたから」

 

「あと関係ない生徒たちもね」と黒髪凛が指差す方にはぐーすかと寝息を立てる先生とクラスメイトたち。どいつも型月とは関係ない名前と容姿の奴らだった。

 

「それよりも、問題は貴方よ」

 

 一層語気を強めて凛は尋ねてきた。クラスを見回してみると、クラスメイト以外にも型月風の見た目と名前をしていた奴らが学年を飛び越えて集まっていた。

 皆、一様に俺を見ている。

 

 なにこれ、怖い。

 

 その端っこで一人だけ明後日の方向を向いて、関係ないように振舞っているのははくのんだ。こいつ、知ってて黙ってやがったな。

 

「さあ」

 

 黒髪金髪両方の凛に促されて俺は洗いざらいゲロった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なるほど、つまり貴方も()()()()()()というわけね」

 

「はい」

 

「しかし、人理修復とは……段々と規模が大きくなっていないか?」

 

 確かに田舎の聖杯戦争から月の覇権からついに歴史を世界を巻き込んだ大災害に発展した。そろそろ宇宙行くんじゃないかな。

 ちなみにゲロったと言っても俺は型月から転生してきたことになっている。さすがに「てめーら全員ゲームのキャラなんだよ」とか混沌を招きかねない真似は控えられた。

 もし俺が言われたら死ぬと思う。ショックで。

 

「で、貴方はそこで縁を結んでいた英霊を二年前に一体偶然にも呼び出して、最近、もう一体呼んでしまったのね」

 

「その通りです」

 

 仁王立ちする黒髪凛がもはや仁王像にしか見えない。金髪凛と二人で阿吽の呼吸というやつだ。

 

「……はぁ、まったく、なんてことしてくれたのよ」

 

 ため息ひとつ黒髪がそんなことを漏らした。

 

「いい、今から説明してあげるからちゃんと聞くのよ」

 

 そこからは俺の知られざる高等部の秘密が明かされた。

 

 

 曰く、この高校には揃いも揃って型月から転生してきた奴らが集まったという。これは故意にではなくまったく偶然というところから何かしらの存在の意図を感じたという。

 転生した者たちは総じて、前世よりも良い暮らしを送っており魔術も存在しないとあって中等部までは普通に暮らしていたらしい。

 しかし高校に入ってから知り合いばかりに合う羽目になって、そこから芋づる式に他の転生者たちも見つかっていった。

 

 彼らは何らかの存在が意図的に自分たちをここに集めたと推測した。そうでなければ、本来なら会うはずもない年代もバラバラの人間が殆ど同じ世代で生まれてくるなどあり得ないからだ。

 そして、この世界に魔術の代わりに魔法とやらが反映していることを知った。

 当初こそ型月風の魔法かと狂喜乱舞したが、すぐに汎用的な魔術と大差ないことに気付いた。

 自分たちのものとは根本から異なる技術、しかし限りなく魔術と近い扱いの力が存在することに彼らは警戒を強めた。

 

 そして、この世界に自分たちが集められた意味と黒幕を突き止めるために彼らは結束ーー

 

 

「そこで発足したのがこの『麻帆良本校高等部裏生徒会』よ!」

 

 ババン、と効果音がつきそうなドヤ顔で金髪凛が告げた。

「あ、あたしのセリフ〜」と横で黒髪が涙目でポコポコと金髪を叩いていたがスルーしておく。

 

「俺たちは表向きにも裏向きにも一般人ということになっている」

 

 衛宮士郎が真剣な顔で説明する。

 

「これは俺たちが最初に定めたルールなんだ」

 

「魔術師ほどではないとしても、この世界の魔法使いとやらも結構ゲスいからね」

 

 金髪が説明を受け継ぐ。

 

「幸いなことに奴らは魔術に関して全くの無知だった、だからこそ私たちの魔術を感知できない」

 

「……補足すると、根本的にあいつらと私たちの魔力の扱いが異なるのよ」

 

 黒髪が説明を変わる。

 

「私たちは基本的に回路を通して生命力を魔力に変換して使っているわ。

 でも、魔法使いたちは()()()()魔力を使っている」

 

 黒髪が説明を続ける。

 

「そして、その上で私たちの魔術には気付かない。

 ここから一つの推測が成り立ち、すぐに証明された。

 つまり、私たちの魔力は()()使()()()()()()()なのよ」

 

 その推論は全くの予想外だった。

 要は認識の相違だ。

 少なくともこの世界において『魔法使いの使う魔力と魔術師が使う魔力は別物』となっている。同じ魔力であっても違う存在として扱われているのか。

 

 それはこの世界の理を読み解いたに等しい。同時に魔術師側に圧倒的なアドバンテージが生まれる。

 こちらは広く普及した魔法とやらを存分に学べて、あちら側は魔術師が扱う魔力という名の『正体不明のエネルギー』を感知できない。

 それを用いているから魔術は分からないし正体もバレないと。

 あれ? でもアビーの魔力はエヴァに感知されていたが。

 

「当たり前じゃない。だって同じ魔力なんだもの」

 

 んん?

 いや、そういうことか。自分で言っていて忘れていた。

 認識の違いというやつだ。

 

 あくまでも魔力というものは同一だ。そこから認識を違えていた。

 つまり、魔術というこの世界には存在しない基盤を通して起こす現象をこの世界が正しく認識出来ずに魔法とは別のよく分からない存在だと判断しているのか。

 つまり、魔術を通して魔力を扱うぶんにはバレないと。回路を通して生成した魔力も同じ扱いなのだ。

 

「つまり、アビーやエリちゃんの魔力というのはこの世界に正しく認識されている?」

 

「そこが分からないのよねぇ。まあ、私たちも下手に向こうを刺激しないように英霊召喚なんかやらなかったから、どっかのおバカさんと違って」

 

 悪かったな一般人で。いや、ほんとごめん。軽々しくやるもんじゃないわ英霊召喚。

 

「これは私の憶測だけど、貴方が行なった英霊召喚は魔法技術によるものだったのではないかしら?」

 

「そうするとアビーたちが俺らの世界の記憶を持ってるのもおかしくないか?」

 

「それもそうね……もしくは、私たちがこの世界に来たのと同じ、何者かの意図。或いはこの世界に()が開いているとか」

 

「穴?」

 

 確かに、黒髪の言うように世界に穴が空いてるとかそんなのなら転生云々も理解できなくもない。

 だがそれは神の領域の話じゃないのか? 少なくとも俺の知識では魂を弄れるのは第三魔法くらいだったのだが。

 

「本当に神様の仕業なのかもね」

 

 いたずらっぽく述べる黒髪。

 いや、シャレにならんぞ。彼女は冗談のつもりのようだが俺はFGOで神霊とかそれに準ずる存在が結構無茶やらかしてきたのを知ってる。

 魔神とか結構なんでもありだったしな。並行世界閲覧とか宝石爺かよ。

 

「とにかく、問題はあなたが学園側と通じて英霊について話してしまっていることよ」

 

 本題に戻す黒髪。くそ、うまく話をそらせたと思ったのに。

 

「彼女たち英霊が魔法使い側に感知されてしまうのは仕方ないとして。そもそも召喚なんかしなければバレなかったのよ」

 

 仰る通り。でもエリちゃんはノーカンでしょ!?

 

「まあまあ遠坂。俺もリツカの行動は軽率に過ぎるとは思うが、知らなかったんだ今話しても仕方ない」

 

 士郎……お前やっぱいい奴だな。

 

「相変わらず衛宮くんは楽観的よね……」

 

「そんなことないわよね、士郎!」

 

 呆れる黒髪をよそに、金髪が士郎の腕に抱きついた。

 

「お、おい遠坂……の金髪の方」

 

「なぁに、士郎?」

 

「あーーー!! 何してんのよアンタ! 離れなさい、よ!」

 

 士郎にこれでもかとデレる金髪と、それを必死に引き剥がそうとする黒髪。朝からごちそうさまです。

 

「そういえば、結局なんで今まで俺に気付かなかったんだ?」

 

 結構、バレバレというか考えなしの行動を取ってたと思うのだが。

 

「あー、それに関しては色々あるんだけど。大きいのは結界の存在よね」

 

 麻帆良結界。侵入者探知や大き過ぎる魔力の抑制など結構ハイグレードな性能をもつ麻帆良の重要な防備。

 

「あの変な結界と私たちが高校に張った結界が相互してしまって上手く働かないのよ」

 

「つまり、両方感知できなくなってると?」

 

「その通り。まさかこちらに干渉できる術式があるなんて思わなかったから」

 

 項垂れる黒髪。たぶん、しょうがないと思うぞ、俺も殆どちんぷんかんぷんというか理解が及んでいないし。

 ただ、士郎がエリちゃんに気付かなかったのも理解できた。

 

「要するに、高校内部でしか感知できないと?」

 

「あくまで、これまではの話よ。貴方の話を聞いて気付いたんだから、アレがサーヴァントの魔力だと認識しておけば問題ないわ」

 

 余計なことを言ってしまった。これからは麻帆良で英霊召喚を行えば彼女たちに知られるということだ。

 

「それで、俺にどうしろというんだ?」

 

「ふふ、簡単な話よ。あなた、学園側のスパイになりなさい」

 

 悪い顔で述べる黒髪。なるほど、あかいあくまだな。

 横で士郎も苦笑している。

 

「別に学園側に敵対するつもりじゃないが、普通に考えてこの高校を置いた学園側に黒幕がいると考えるだろ?」

 

 士郎が補足する。なるほど道理だ。だがそんなことするやつはここ二年間でも見当たらなかったが。

 

「スパイと言っても、魔術や私たちについて知っていそうな怪しい奴がいたら知らせてくれるだけでいいわ。現状、手掛かりはこの高校しかないわけだしね」

 

 彼女たちも動くに動けないのだろう。

 話に聞いたところでは、魔法世界や旧世界の魔法業界にも調べを入れているが今の所手掛かりはないのだとか。

 今後も調査は続けると言っていたから確定事項ではない。

 

「とりあえず今日のところは昨日見つけたって言う魔導書を預からせてもらうだけでいいわ」

 

「え」

 

「え、ってなによ。まさか、私に文句でもあるのかしら?」

 

 イイエ、ソンナ、オソレオオイ。

 

「よろしい。なら、そのカバンに入ってるやつをとっとと出しなさい」

 

 くそっ、そんなのまでお見通しかよ!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「アビー、さんでよろしかったかしら?」

 

「……悪い人とはお話しちゃいけないってマスターさんに言われてるの」

 

 俺が尋問を受ける最中、沈黙を保つアビーにフィオレ嬢が声を掛けていた。

 さすが姉御、俺らに出来ないことをやってのける!

 そこに痺れる憧れる弟くんが羨望の眼差しで姉を見ていた。

 

「私たちはリツカのお友達よ、だから安心して」

 

「そ、そうなの?」

 

 こらアビー。そんな簡単に騙されちゃいけないぞ。

 彼女たちは俺に二年も黙ってたんだ。たとえ神様仏様が許しても俺が許さねぇ。

 

「ああ、俺なんかアイツとよくゲームして遊んでるしな」

 

 ここぞとばかりに弟が援護射撃に出た。くそ、真実だけに否定できねぇ。

 

「そ、それなら……」

 

 アビーは呆気なく陥落した。

 

 

 

「私はフィオレ、こっちは弟のカウレス」

 

「よろしくな」

 

「ええ! 私はアビー、よろしく!」

 

 ニコニコして二人と握手を交わすアビー。一応、真名を告げないあたり分かっているらしい。妙なところで聡い娘だ。

 

「で、スパイの件だけど」

 

 図書館島で見つけた本を読みながら黒髪が声をかけてきた。

 

「ん、ああ。怪しい奴を教えればいいんだろ? いいぜ」

 

「そ、そう……結構あっさりしてるのね、てっきり情が移ってると思ってたのだけど」

 

 情か。確かに情はある。なんだかんだ二年の付き合いだ。魔法関係者の友人も出来た。

 高畑との仲はそれ以前からだし。

 

「ただ、お前らと過ごした時間の方が濃密だしもっと信頼できるからな」

 

 学園長たちには悪いが俺はこいつらを信じる。

 どう足掻いてもMMに頭を抑えられてる麻帆良よりも、自分で未来を切り開いてきたこいつらを俺は信じたい。

 

 別に裏切るわけじゃないしね。

 お互いにより良い方法を選ぶだけだ。

 

「……ありがとう。貴方からその言葉を聞けてよかったわ」

 

 よせやい照れる。そんなしおらしい顔はあかいあくまには似合わない、というかそういうのは士郎に取っておけ。

 たぶんイチコロだと思うぞ。

 

「じゃあ、今後ともよろしくリツカ」

 

 黒桐がタイミングを見計らったようににっこりと語りかけてきた。

 だが、その後ろから両儀式がこちらを睨んでいる。

 

「おい、そんな簡単に信用していいのかよ」

 

「式……」

 

「こいつは俺らと同じようにずっと黙ってたんだぜ」

 

 まあ、ぐうの音も出ないわな。

 俺がこいつらを信用していなかったという証明だ。

 

「それでも、僕は彼なら大丈夫だと思うけど」

 

「…………まあ、お前がそう言うなら」

 

 だが黒桐の一言であっさり引き下がった。拍子抜けである。

 そういえばこいつら娘儲けてたな、たぶん寿命で最期を迎えたのだろうし俺には分からないような深い絆で結ばれているのかもしれない。

 

 思えば、士郎と黒髪凛も一見して原作通りだが、どこか、お互いを理解し合っているような不思議な雰囲気を出す時がある。

 おいおい、金髪凛ちゃん付け入る隙ないんじゃないか。

 

「……今更なんだけどさ、もしかして志貴と彼女も?」

 

「呼んだか?」

 

「んー?」

 

 士郎に耳打ちしたつもりだったが、地獄耳のごとく志貴が反応してきた。彼女に至ってはなぜかアイスを頬張っている。相変わらずマイペース過ぎる。

 

「いや、お前も直死の魔眼持ちで彼女に至っては……」

 

「なんでお前が知ってるのか分からんが、持ってるぞ。だから眼鏡掛けてるんじゃないか」

 

「ちなみに青子さんからの贈り物だ」と謎のドヤ顔を披露する志貴。

 

「私も一応、真祖の姫ってなってるけど」

 

 マジかよ、って。

 

「それ仮契約(パクティオー)カードじゃねぇか!?」

 

 これ見よがしに見せてきたのはまさしくそれ。ちなみに志貴が従者となっている。

 するってぇとあれかい? もうラブラブチュッチュしてるわけかい?

 

「例えがオヤジ臭いが、まあ、そういうことになるな」

 

「そうそう、志貴ったら照れちゃって可愛かったんだから!」

 

 いやーん、と志貴に抱きつくアルク。もう、お前ら結婚しちゃえよ。

 

「あら、カードなら私も持ってるわよ」

 

 そうなことを言って見せてきたのまさかの黒髪凛。

 

「一応、お相手を聞いても?」

 

「そんなのーー」

 

 バッ、と士郎の懐からカードを抜き去る黒髪。

 

「こいつとに決まってるじゃない」

 

「やっぱり……」

 

「ええ!?」

 

 分かり切っていた俺とは対照的に金髪凛は衝撃を受けたのか心底驚いた顔してる。

 

「ちょっとちょっとちょっと! なぁに一人だけ抜け駆けしてんのよアンタ!!」

 

 ズカズカと黒髪に詰め入る金髪。黒髪金髪戦争の再発だ。

 

「あらぁ? ご存知なかったのかしら、私と士郎が前世でどういう関係だったか」

 

「な、なな、な!?」

 

 みるみるうちに顔を赤くしていく金髪。ほんのりと目尻に涙を浮かべている。

 最初からそれ言っとけばよかったんじゃね?

 

「そ、そんな、そんな……そんなのあんまりよぉぉぉぉぉ!!」

 

 金髪は教室を飛び出してそのまま走って行ってしまった。

 たぶん、屋上とかで泣いている。

 

「おい、遠坂、やり過ぎじゃないのか?」

 

「いいのよ、いい加減あの娘にも現実見てもらわないと。

 そ・れ・に。元はと言えば貴方がはっきりしないからでしょ!」

 

 ギギギ、と出しちゃいけない音を出して士郎の耳を引っ張る黒髪。

 仲のよろしいことで。

 

「あー、やっぱりそういうことか」

 

「はくのん」

 

「……今更だけどその気持ち悪い呼び方やめてくんない?」

 

 颯爽と現れたのははくのん。いや、最初からいたけどね。

 なに何事もなかったように俺に話しかけてんだお前。

 

「お前、知ってて俺に言わなかったろ」

 

「良かれと思って……」

 

 そんなPみたいなこと言っても許さないからね。あとなんでPの持ちネタ知ってんだよ。

 

「まさか藤丸くんも関係者だったなんてね、今まで黙っててごめんね」

 

 ふざけるはくのんに憤慨していると我がクラスの癒やし綾香ちゃんが申し訳なさそうにそう告げた。

 

「いや、いいさ。俺も隠し事してたしな」

 

 綾香もいるということは、彼女もプーサーと戦ったあとの彼女なのだろう。

 だが現状、綾香の物語に関しては一切語られていないために俺も彼女への知識は浅い。プーサーと主従を結んでプロトアーチャーとプニキに気に入られてたのと、お姉ちゃんがラスボスってことしか知らない。

 上級生でそれらしき人物を目撃した気がするがたぶん空似だろう。そう思い込むことにする。

 

「ありがとう」

 

 改めて見ると、本編よりも成長してるというか断片的な情報から思い浮かべていたイメージとはかけ離れた優しいお姉さんみたいな印象を受ける。

 彼女の物語も、いつか聞かせてもらいたいものだ。

 

 

 

 

 

 その後、他の面々と交流を深め金髪凛が帰ってきた頃に裏生徒会は取り敢えずお開きとなった。

 正午までずっと眠らせたままだった教師やクラスメイトには記憶処理をしたりと隠蔽工作を重ねて、何事もなかったかのように午後の授業は行われた。

 もう、色々とカオスだが、とりあえず彼らとは今後も友人を続けられることに俺は安堵していた。

 

 存外、俺も彼らには情を抱いてしまっているらしい。

 

 

 




ちなみに、学園長はリツカの三文芝居を全く信じてません。
今後、暗躍する可能性があります。

あと、文中の説明がかなり下手くそですみません。
一応、サーヴァントの魔力は通常と異なる状態にあります。なのでこいつはサーヴァントだ、と魔術師が判断することが難しくなってます。
士郎がエリちゃんと会ってるのに何も言わなかったのはそのせい。
そして、『霊体化したアビーを連れて登校』した際に初めて高校の結界に引っかかりサーヴァントと判明。リツカは御用になりました。


全然関係ないけど、刀子さんってアタランテと似た雰囲気を感じる。
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