一般人生徒リツカ! 作:ブタどもの一人
とりあえず頭は空っぽにしておこう!
三月某日。
高校の連中、遠坂凛を始めとした『裏生徒会』の面々に俺の素性が知られてから、特にこれといって面白いこともなく数日が過ぎた。
もう今年度もあと僅か、来年からは怒涛のハードバトル展開が続く。
すでに原作に突入している現状、俺も暇だからとうかうかしていられない。
ヘタを打てば死人が出る魔法世界編に向けて、俺も準備をせねばならない。
当初の予定では全く関わる気のなかった本編だが、エリちゃんのネギクラス行きに始まり、型月転生者まで登場してしまった今となっては俺も何らかの策を講じるしかない。
しかし、現状唯一の手がかりたるあの『初めての英霊召喚』も遠坂凛に没収されてしまっており、仕方なく、俺は教会に通うことにした。
「いや、ほんと仕方ないよね。仕方ない仕方ない、こうしてココネちゃんにお菓子を持ってきちゃうのも仕方ないよね」
「むぐむぐ……全然仕方なくない、お菓子はいいけどリツカはだめ」
しかし、ココネ嬢はビニール袋いっぱいのお菓子を貪り食いながら顔色一つ変えずにそういった。
土曜の教会にはココネ嬢とミソラ嬢しかおらず、相変わらずシャークティーは仕事だった。休息日って、この世界には存在しない概念なのだろうか?
あの人、会いにいくたびに運悪く外出してるんだけど。
もしかして、これがすれ違いの恋……?
「リツカ、お菓子無くなった」
しょーもないことを考えていたら、ココネ嬢が持ってきたお菓子を平らげていた。
あれ、スーパーのお菓子コーナーで大人買いしてきたはずなんだけど……。
「ごめんねぇ、お菓子はそれでおしまいなんだ」
「じゃ、もう帰っていいよ。バイバイ、リツカ」
無表情で手を振るココネ嬢。
俺はお菓子輸送機として扱われているらしい。……だが、そこがいい!!
こんな小さな子どもに召使いのごとくお菓子を運び奉仕する、そして持っていくたびにチクチク罵られる。
大枚はたいても買いたかったものが、ここにはあった。
ああ、我が桃源郷はここに……。
「はいはい、掃除の邪魔だから退いてねー」
そんな俺の至福の時を邪魔するのはミソラ嬢。
手に持つモップでグイグイと顔を押してくる。
「って、これ! 水! 水すごいから! お兄さんびちょびちょになっちゃうよぉ!」
「気持ち悪い嬌声を上げるな!!」
ベシッ、とモップで叩かれる俺。地味に痛い。いや普通に痛い。
「ちょ、お前! やめろって! いたっ、痛いから!」
べしべしと容赦なく振るわれるモップ。
それ、そういう使い方するもんじゃないから、床を綺麗にするやつだから。
「いやいや、しつこい汚れは念入りに擦らないと」
怖いっ! 目が座っておられる!!
これは完全に殺られると感じた俺は座っていた長椅子から離脱する。
「わかったわかった! お前にも飴ちゃんやるから!」
「いや、そんなので釣られねぇよ!? あたしを何だと思ってんだアンタ!」
流れるようなツッコミ。個人的には満点をあげたい。
うそ、五十点。
というか何だと思ってるか、と問われると。
「……猫?」
「割とまともじゃねぇか……なんて反応すりゃいいんだよ」
なんとも言えない反応を返すミソラ嬢。
そうだよね、何とも言えないよね。ごめん。
「っていうか、シャークティーまだ仕事? 俺、一ヶ月近くあの人に会ってない気がするんだが」
教会を訪ねた時はもとより、魔法関連の仕事でも一切会ってない。
出張でも行ってるんか?
「んー、どうにも教会関連でなんかあったらしいよ。なんでも、新しい“神父”が来るとかどうとか」
神父。
「……」
「いやー、ぶっちゃけ麻帆良に教会とかここだけで充分な気が……って、あれ? おーい、リツカ?」
神父、てあれだよな。魔法使い関係者の神父だよな?
間違っても、素で大木へし折ったり、マシンガンの弾を叩き落としたり、心臓を一撃で破壊したり、コンクリート壁に素手で大穴開けたり……あれ、ネギま!の世界的にありえそうな感じがしてきたぞ?
いやいや、そうじゃなくて。
このタイミングでどうしても勘ぐってしまうのが、『あの破綻者』のことだ。
言峰綺礼。
最近のスマホで打つと一発で変換に出てくるくらい有名過ぎる神父だ。
詳細は語らずともググれば出てくるくらいの有名人。
神父といったら彼というくらいには名が知られているラスボス候補。
だが、さすがにそれは出来過ぎというものだ。
いくらちびちゅき!学園があるからといってそうホイホイと関係者が集まってきてたまるか。
第一、型月主人公たちと彼では致命的なほど相性が悪い。
FGOでも擬似サーヴァントっぽい感じで出てきたばかりである。
神父=言峰綺礼というのは安直な考えである。
「おーーーい、リツカーー!!!!」
「聞こえてるよ、そんなに大声で叫ばれると鼓膜破れるからやめてね」
脳を震わせる大音声に苦言を呈す。
「じゃあ返事くらいしろよ……」
「うん……ちょっと神父って単語に敏感になっていてね」
FGOでも現れてしまったのが運の尽き。彼が冬木以外でも現れる可能性、それどころか擬似サーヴァントとしてどの世界でも現れる可能性が出てきてしまったのだ。
あいつが出てきてロクな展開になったことがない。
「ちなみに名前とか、分かるか?」
「神父? 苗字が、確か言峰とか言ってたような……」
はい、言峰綺礼さんですね。
あの神父の皮を被った暗殺者さんですね。
八極拳という名の人体破壊術の使い手さんですね。
ったく、まるで天啓とでも言うように型月関係者がワラワラと。
何度も言うがここはちびちゅき!じゃねぇ!!
「なあ、美空。俺たちは果たして生き残れるのだろうか?」
「藪からスティックだな……どうしたよ?」
うん、とりあえずスティックは古いね。
あ、いやこの時代だと別にそうでもないのか。
2002年だということを忘れていた。
「もし……もし、お前があからさまに死地に送られるフラグが立ちまくったらどうするよ?」
他愛ない質問。その答えに意味はない。
しかしミソラ嬢は真剣な顔で悩んだ。
「逃げる。これに限るね」
そうだよな、君はそう答えると思っていた。
たぶん、それが正解なんだよな。正直、その気になれば何処へなりとも亡命は出来そうではある。
頑張ればなんとかそれくらいはできると思う。
「……それが正解だよ。うん。お前は正しいよ美空」
「お、おう。なんかあんたにそんな言われると不安になるけど」
どういう意味だよ。
俺だってセンチメンタルな気分になることがあるんだ。慰めてくれよ。
まあ、だからと言って逃げるという選択肢は存在しない。
俺はあえて取らない。
エリちゃんの意思を尊重する場合、きっとそれは悪手となるからだ。彼女はきっとネギたちの手助けをしたいと思うはず。
必然、マスターたる俺も側にいなければならない。
というか俺がエリちゃんから離れたくない。
「はぁ……」
なんだか気が重くなる。
これから始まるドタバタ死亡フラグパーティーを思うと胃がストレスで死にそうになる。
『……心配しないでマスター。あなたは私が絶対に守ってみせるわ』
不意に、霊体化したアビーが声をかけてきた。
「アビー……ありがとう」
「アビー?」
思わず口に出てしまったが、彼女は天使か何かなのだろうか?
あまりにも可愛過ぎる。
そりゃあヨグソトースも目をかけるわけだ。
「そうだ、まだお前に飴ちゃん渡してなかったな」
「まだそれ続けんのか……いらないよ」
そんなこと言うなよ、ほら、サ◯マドロップだぞ?
おはじきじゃないから安心しろ。
「……じゃあ、貰っとくわ」
サ◯マドロップ推しをし続けると、渋々受け取るミソラ嬢。
「んー、結構美味しいね」
「だろ? 俺昔から飴はサ◯マドロップって決めてんだ」
「リツカ」
サ◯マドロップ談義を開始しようとしたところ、いつの間にか横にココネ嬢が立っていた。
相変わらず無表情だがなんとなく剣呑な雰囲気を放っている。
「リツカ、嘘ついた」
「え!? な、なんで!?」
冷たい声でそう告げるココネ嬢。
いつもは冷たいながらも、次に持ってくるお菓子のリクエストを混ぜたりしてきたのだが。
「まだ、お菓子ある」
そう言って指差すのは俺のサ◯マドロップの缶。
振ればジャラジャラと音を立て、まだいっぱい残っていることを証明する。
「っ! いっぱい、いっぱい入ってる! リツカ、リツカ!!」
おおう、そんな無表情で興奮されると少し引くぞ。
ただ、一心不乱に俺のサ◯マドロップ缶を指差して叫ぶ彼女は見ていてほっこりした。
もっこりはしていない。
「いや、でもこれ俺のだし……」
生憎と、俺専用缶なのだ。
こいつは俺の私生活で実に役立っている。
ストレスを感じれば甘い飴を食べ、眠気覚ましにハッカを食べ。
用途に応じて様々な活躍を見せてくれる。
俺の相棒といっても過言ではない。
……エリちゃんには内緒だ。
「飴……くれないの?」
「はぅ!?」
しかし、ウルウルさせた瞳で彼女に上目遣いをされると流石の俺も嫌だとは言えない。
というか可愛い。どうしよう、麻帆良製の最新デジカメ持ってきてない!!
「とりあえずパシャらせて。そしたらあげるよ」
携帯を構え要求する。
「ぐぬぬ……リツカのオカズにされるのは死ぬほど嫌だけど、仕方ない。お菓子のために我慢する。心底嫌だけど、吐き気を催すくらい嫌だけど」
三回も言うなよ。ゾクゾクするだろ。主に興奮で。
ぐぬぬ顔を披露するココネちゃんをとりあえずパシャる。
「うんうん、じゃあ今度はスカートを持ち上げてーー」
「させねーよ!?」
ミソラ嬢の鋭い平手が俺の後頭部を打ち抜いた。
パコーン、という漫画みたいな音が響いて一瞬、意識が飛ぶ。
「……あのさぁ、俺まじでいつかお前のツッコミで死ぬと思うんだわ」
視界がチカチカする中、背後にいるであろうミソラ嬢に物申す。
「え、ロリっ子に殺されるなら本望じゃないの?」
信じられない一言に思わず振り返る。
そこにはキョトンとした顔のミソラ嬢。
ふざけてやがる。
ちょっと幼女にセクシー写真をねだったからって。何も殺すことはないだろう。
世の中間違ってるよ!!
「大変よ、子イヌ!!」
その後、なんとかココネちゃんのフルヌードを撮影しようとミソラ嬢と格闘していると、教会の扉を
な、何を言ってるのか(ry
「どうしたんだエリちゃん、俺は今、ココネちゃんのフルヌードを撮るのに必死で」
「子イヌの性癖なんかどうでもいいの! それよりも大変なのよ!」
なにぃ!? 俺の性癖をドウデモイイだと!?
そんな、待ってくれよエリちゃん。俺は今まで君がいない間どれだけ寂しい思いをしてきたと思ってる。
その寂しさを埋めるためにy
「さらっと流してるけどウチの教会! ここウチの教会だから、扉壊しちゃダメだから!」
ミソラ嬢が何か言っているがたぶん些細なことだ。
それよりもエリちゃんが取り乱すなんて一体……。
「バカレンジャーのみんなが、図書館島に行ったまま行方不明になっちゃったのよ!」
おおっと、まさかの期末試験編か。
すっかり忘れていた。確かそんなイベントがあったわ。
期末試験で赤点回避する自信がないバカレンジャー五人が図書館島にあるという『魔法の本』を探しに行くという今考えたら途轍もなく阿呆らしいイベント。
まあこのイベント、ネギくんは先生権剥奪、強制送還とか勘違いしてるし。
生徒も退学などという与太話を信じてしまっているわけで。
かなり学園側に踊らされてるのだけどね。
「どうしよう、このままじゃみんな退学だわ!!」
エリちゃんまでも信じてしまっている。
いや、エリちゃんは純真無垢だからね、仕方ないね。
「任せろエリちゃん、図書館島なら俺は最も詳しい男の一人だ。一緒に探しに行こう」
「子イヌ……! 子イヌならそう言ってくれると思っていたわ!
さあ行きましょう!!」
まるでブレイブのように槍を掲げるエリちゃん。
……さすがに外で槍は出さない方がいいと思うのだが。
「おうさ!」
残念ながらココネちゃんヌード写真集の撮影は今度に持ち越しだ。
今はエリちゃんの意思に答えてネギくんたちを助けに行こうじゃないか!
「おい、ちょ、待て! リツカ、扉! 扉直せリツカァァァァ!!」
俺は虚しく吠えるミソラ嬢の声を背に受けながらエリちゃんと共に図書館島へと走った。
美空、お前の犠牲は忘れない。シャークティによろしくな。
「着いたわよ、子イヌ!!」
エリちゃんの宣言通り、俺たちは図書館島についた。
片道十五分、意外と近かった。
「うわぁぁぁ!!」
……なぜか、遠くの方で悲鳴と爆発音が響いているが、俺には関係ないことだろう。
あと、なぜかシスターシャークティの怒声が聞こえてくるけどこれも関係ない。
あと、教会から抜け出すのに必死で忘れていたが。
このイベント、別に俺が絡む必要はない。だってこれ、学園長が仕組んだ話だから。
ネギ君の正式な教師への昇格試験として2-Aの学年最下位を阻止するミッションを与えた学園長だが、バカレンジャーのあまりの頭の悪さを考慮して、『魔法の本』の噂を聞いてやってきたバカレンジャーたちを勉強させるために図書館島地下に叩き落とし、勉強道具一式と生活品一式まで揃えて勉強させる、という計画を立てた。
というのが今回のイベントの概要。
そして、学園長の目論見通りしっかりみっちりと勉強した彼女らはなんとか地下を脱出して期末試験に臨み。
見事、学年一位に輝いてしまうという顛末。
徹頭徹尾、俺が出張る必要性がない、皆無である。
しかし。
「さあ、子イヌ、行きましょう! 私たちでバカレンジャーを助けるのよ!!」
ノリノリなエリちゃんを前にして、ここまできて「必要ないから帰ろ」なんか言えるわけもなく。
「ああ、やってやろうぜ!!」
とりあえず図書館島内部へと入るしかない俺なのであった。
素直に裏口から入り、地下を目指す。
一回行ったことがあるのですでに道は知っている。途中のトラップもエリちゃんは元から平気だし、俺もアビーの手助けで足止めされることもなく地下に到達した。
「はーい、じゃあこの単語の意味が分かる人ー」
本棚の陰に隠れながら何やら集まっている人影を観察する。
教室を模した作りの一角には、綾瀬夕映を始めとしたバカレンジャーの面々。
何気に俺も初めて見るメンバーがいた。
赤に近いピンクの長髪をツインテールにした活発そうな女の子・神楽坂明日菜。
同じような髪色で二つ結びの穏やかそうな女の子・佐々木まき絵。
中学生には見えない高身長の糸目女子・長瀬楓。
そして、中国拳法という今もっとも聞きたくない単語を得意としている褐色美少女・アルヨ。……違った、
これにデコ助を加えた五人がバカレンジャーと言われる集団である。
そして、それらの前、教壇に立って授業を行なっているのが、赤髪の少年、ネギ・スプリングフィールド。通称・ネギ先生である。
「おお、やはり原作主人公は違うな。オーラが出ている。俺のようなパチモンには真似できないぜ」
「ちょっと、こそこそしてどうしたのよ子イヌ……って、あーーー!!!!」
俺の後ろからネギくんたちを見たエリちゃんが唐突に叫んだ。
……いやぁ、これはバレバレですね。
「やっと見つけたわよ、バカレンジャー!!」
バカはお前だ。この時は素直にそう思ってしまった。
だって、何のために俺がコソコソしていたと思っている。
バカなのか、やはりエリちゃんはバカなのか!?
でもそこがいい。
「わっ! え、エリザベートさん!?」
えらい。慌てながらもよくエリちゃんの名前を言えたねネギくん。
というかバートリ・エルジェーベトって英国で有名なんだけどどう認識しているのだろうか、ネギくん。
「エリちゃん!? なんであんたがいるのよ!?」
一番困惑気味なのは明日菜嬢だ。彼女は実にいいリアクションをしてくれる。ネギクラスでのリアクション担当だ。
他の面々はそれぞれ「へー」みたいな顔であまりにも驚きが薄い。
まき絵嬢を見習え、うっすらと汗を浮かべて実にお手本通りな驚きを表現しているぞ。
よし、現実逃避終了。
「もー、探したんだからね。……ほら何してんの子イヌ、こっち出てきなさいよ」
ちょ、袖引っ張らないで。……って、触ってる!? エリちゃんが俺に触っている!!!?
「あれ、その人……どこかで」
引っ張り出された俺は、ネギくん含めてバカレンジャー五人組にしっかりと注目されていた。
そりゃそうだ、突然、エリちゃんが連れてきた男だもんな。怪しいもんな。
「どうも。藤丸立華です」
「ご、ご丁寧に、僕はネギ・スプリングフィールドと……」
お辞儀をすると慌ててネギくんも返してきた。
「何馬鹿正直に自己紹介してんのよ!?」
明日菜嬢に叱られるネギくん。大丈夫、君は間違っていないよ。
明日菜嬢の反応も正しい。
「え、エリちゃん。その人と、どういう関係なの?」
そんな中、恐る恐るエリちゃんに尋ねるのはまき絵嬢。
なんだかんだ肝が座っている子だ。
「子イヌのこと? 私のプロデューサーに決まってるじゃない」
「ぷ、プロデューサー。本当にいたんだ……」
なんだか彼女たちの間で、俺はいつの間にか都市伝説のような扱いを受けていたようだ。
「まあ、そんな感じのことさせてもらってます。『あのライブ』の時も一枚噛ませてもらいまして」
「ちょ、あれ仕組んだのあなたなんですか!?」
驚きと怒りを込めた声を発する明日菜嬢。そうだよ、俺がやったんだ。エリちゃんのライブ聴きたさにな。
反省してる、だが後悔はしていない。
ごめんね。
「それよりも、早くあの子たちを連れてーー」
「おおっと、そういえばエリちゃんも一緒に勉強したくてここに来たんだったよね? そうだよね?」
「は?」
「……ちょっと、こっちきて」
察しの悪いエリちゃんを本棚の裏に招いて密談を開始する。
「エリちゃん。ずっと黙ってたんだけど。これ学園長が仕組んだことなんだ」
「えーー!?」
大きい大きい、声が大きいよエリちゃん。
慌てて口を抑えるエリちゃん。
「でね? これ別に俺たちが助けなくても上手くいくんだよ」
「そ、そうなの? よく分からないけどそうなの?」
だよね。俺もなんて説明したらいいか。アホらしすぎて説明する方が恥ずかしい。
とにかくここまで来てしまった以上は引き返すわけにはいかない。
エリちゃんには俺と口裏を合わせてもらう。
「とりあえず、エリちゃんは一緒に勉強しようとここに来て地下に落ちちゃった設定で行くから、OK?」
「お、おーけー!」
少し心配だが、とにかく話し合わせてくれればいいと言っておく。
そうして本棚の裏から出てきたのだが、みんな疑惑の目線を向けてきた。
だが、まだ大丈夫。彼女らはバカだ。なんかノリで誤魔化せる。
「それじゃあエリちゃん、みんなと勉強頑張ってね」
「う、うん。私頑張るわ!」
それは果たして勉強に対してなのか、それとも俺と口裏を合わせることに対してなのか。
たぶん後者だ。
「それじゃあ、ネギ先生。私も授業の手伝いをさせていただきたいので少しお話よろしいですか?」
「え? あ、分かりました!」
未だ二巻の頃のネギくんは実に素直だ。
こちらに走り寄ってくる。
大丈夫だよぉ、僕はいい高校生だからね。
「ちょっとネギ! 絶対怪しいわよ!?」
そのあとを追うのは明日菜嬢。作戦通りだ。
未だ未熟なネギくんのサポートをするのが彼女である以上、共に来ることは把握済み。
さて、とりあえず素性をバラしておかなければ。
明日菜嬢を除くバカレンジャーの面々から距離を取ったところで俺は口を開いた。
「……さて、ネギ・スプリングフィールドくん」
「は、はい」
「はじめに言っておくと、俺は魔法関係者だ」
魔法生徒でも教師でもないが、学園長との関わりは深い。あと高畑。
「えぇ!? あれ、じゃあエリちゃんも!?」
「その通りだ明日菜くん。彼女は俺の使い魔、という扱いになっている」
「つ、使い魔!? でも彼女、エリザベートさんはクラスの皆さんと変わりないように見えますが」
ほほう、あのエリちゃんをして普通に見えてしまうとは。
2-Aというのは思った以上に魔境らしい。いやぁ、高校生で良かった。
「まあね、彼女は英霊という普通の使い魔よりもずっと高位の精霊なんだ。端的に言えば後世の信仰によって人から上の霊的存在に昇華したもの。それが英霊と呼ばれるものなんだ」
「昇華……それって、つまり英雄と呼ばれる人たちのこと」
やはり頭がいい。これだけの情報ですぐに辿り着く。
「その通り。君が一番分かりやすいのがアーサー王とかかな」
ただし女性だが。
まあ、この世界では普通に男かもしれないし、そもそも呼んでいないので分からない。
「アーサー王……! いや、そうしたらエリザベートさんは!」
もうそこまで思い至るか。
さすがに察しが良すぎるぞネギくん。直前のエリちゃんの鈍感っぷりを見習ってほしい。
「ああ、彼女はそのまま本名を名乗っている」
「エリザベート……バートリ・エルジェーベト!!」
「なになに、なんか凄い人なの? 全然話についていけないんだけど」
明日菜嬢が寂しそうに言う。
だがもう少し待ってくれ。詳しい話はネギくんから聞いた方がいいだろう。
「『血の伯爵夫人』とも呼ばれているね。
ただ、彼女は少々特殊でね。確かにエリザベート本人なのだが、伝説に聞くような残虐性はかなり鳴りを潜めている」
「え……?」
「つまりね。彼女は死後に成長したんだ。まあ、何が言いたいのかと言えば、『彼女は安全で、どうかこれまで通りに接してほしい』というだけのことだ」
それだけは伝えておきたかった。
後世で色々と語られる彼女だが、少なくともエリちゃんは過去の罪を自覚してそれに向き合おうとしている。
だから、個人的にはそこでとやかく言って欲しくないのだ。
「……分かりました」
「ありがとう、その言葉を聞けてよかった」
「任せてください。エリザベートさんも僕の大切な生徒、絶対に守ります!」
おっと、エリちゃんのボディガードは俺の役目だぜ?
いや、エリちゃんが俺のボディガードなのか。そっか。
「……じゃあ、俺は授業に使う参考資料を見繕っておこう。ああ、大丈夫、今の君たちの状況は概ね把握している。
では、ネギくんは明日菜くんに事情説明をしておいてくれ」
そう言って足早に本棚に向かう。
いやぁ、まず最初に救助を頼まれなくてよかった。
誤魔化すつもりではあったが先にこれを話せて良かった。
まあ、今はまだ土曜日だ。これから存分に勉強の時間は作れる。
二回も中学生を体験した俺の手腕、存分に振るわせてもらうとしよう。
期末試験編は一見どうでもいい話なんですが、場所が重要なのです。
今日の一言。ココネはもっと活躍すべきだった。
補足:かなり誤解を与えてしまった方がおられるようなので、一応今のパワーバランスを書いておきます。
現状、遠坂たちは高校を拠点にしていますが、魔術の使用も基本高校で行います。これは結界が張られていることに関連します。
で、学園側はそのまま学園全体を支配してるわけで、もっと言えばスポンサーは魔法世界のMMさん。さらに言えば今の世界は魔法使いたちのホームグラウンドなわけで単純に魔法使いと魔術師で比較してみると悲しいくらいに遠坂たちが不利なわけです。
加えて、魔術師のほとんどが戦闘向きでない中、ネギまの魔法使いはある一定の実力を超えると肉弾戦も普通にこなしてきます。
士郎じゃないと対処は難しいです。
また、魔眼持ちや例の姫君については、魔族たちとの対比にさせていただいております。
造物主勢力も実力としては上位ですし、紅い翼、白い翼ともに戦闘能力は士郎に匹敵、単純な自力では圧勝と考えています。
ネギま世界への全方位対決を想定するとこういう感じになるわけで。
そして忘れちゃいけないサーヴァント。
これに関しては目を瞑っていただきたい。
だって、神話の時代を駆け抜けた英雄が魔法使いにボロ負けというのは違和感バリバリです。
まあ、作家勢や戦闘が不得手なサーヴァントに関しては致し方なしですが。
つまり何が言いたいのかというと、両作品ともに私は好きなので仲良くやりましょう。ってこと。
真祖の姫君に関してもあくまで志貴の味方ということを忘れないでいただきたい。