幼馴染が百合ップルだった件について   作:袴紋太郎

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今回掲示板はないっす


夜天の書の闇・前編/八神家

瞼を開いたら知らない天井が見えた。

 

「知らない天井だ…」

 

昨日は…うん? 昨日? あれ?

 

此処何処?

 

靄のかかる記憶を引き出すと、最後は…そうだ、八神邸で夕飯を食って、そこで…

 

いつも使わせてもらっている部屋ではない。

 

見渡せば金かかってますと分かるような調度品に、自室の倍はあるであろう広い間取り。

 

しかもこのデザイン、ヴィクターのとこの屋敷にあったのと似ている…ベルカのものだ。

 

思わず身を起こそうとして、ようやく気づく。

 

「アイエェェェェェェーーーー!? 手錠!? 足枷!? 拘束ナンデ!?」

 

金属製のブロックのような手錠と足枷。

 

渾身の力を込めてもビクともせず、魔力も使えない。

 

AMFのように魔力を阻害するための、言うなれば凶悪犯用に作られた拘束具だ。

 

問題は、何故にそれが俺に付けられているのかだが…

 

明らかな高待遇と拘束の事実があまりにもミスマッチ。

 

混乱する青年であったが、そこで部屋の入り口である扉が開かれたのだ。

 

八神はやて、昨晩もその腕によりをかけて作られた食事は絶品だった。

 

ああ、いい嫁さんになるとも言った気がする。

 

そんな彼女が、喜色満面とばかりに笑みを浮かべて入室してきたのだ。

 

「はやて!? た、助かった、これを外してー」

 

何故に上着を脱ぐのですかな?

 

あの、その、たわわに育ったものが見えそうで、ああ、おやめくださいお客様!

 

生唾を飲み込む青年を横目に、はやては獲物を見つけた狼の如く動けぬ青年の上へと覆いかぶさった。

 

健常な青少年ならばこのあとの展開を想像するのは容易いことだろうさ。

 

「んふふ~♪ ごめんなぁ、痛いとこないかなぁ」

 

首筋に顔を埋めながら、耳元で囁かれる。

 

とろけるような、煮えたぎるマグマを薄い氷で覆い隠すような感覚。

 

直感的に青年は思った、食われると。

 

「はやて! 悪ふざけはやめ」

 

「同棲プログラムにぃ、フェイトちゃんを部屋に連れ込んだんやって?」

 

「―――悪いこや」

 

触れるような頬への口づけ。

 

ベルトを外され、ズボンに手がかけられる。

 

「わぁーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!?」

 

「大人しくしぃや、天井のシミ数えとれば終わるよって」

 

「いやぁーーーーーーー! 男の人呼んでー!」

 

「あんたがその男の人やろうが! それに」

 

「私と守護騎士のみんな、滅茶苦茶にしていいんよ?」

 

 

「組み伏せてぇ、強引に散らして、自分のやって証を刻んでええんよ?」

 

…いや、それは、その。

 

………………………いや、いや、でもなぁ。

 

「い、いかんいかん! それはだめぇ!」

 

いけませーん!

 

いけないのでぇーす!

 

というか、そんなエ○同人みたいなことあってたまるかぁ!

 

惑わされるな愚息! 鎮まりたまえ鎮まりたまえ!

 

プルルルルルルルル。

 

呼び出し音、舌打ちをすると。

 

「また後でな」

 

そう言って部屋から出ていった。

 

ふーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

落ち着こう、落ち着こう、落ち着こう。

 

うん、まぁ、なんだ。

 

たぶん俺を拉致(推定)をしたのは、八神はやてで間違いない。

 

んで、彼女は俺に好意を抱いている…LIKEではなくLOVEの方で。

 

勘違いの類か、誰かに脅迫されてという話でなければ、だが…

 

「でもこれはちょっち無理だわ」

 

尊厳というか、このままでは飼い殺しルートでエンディングを迎えてしまう。

 

言うまでもなくBADだ、そもそも守護騎士が賛同しているのか?

 

いくら忠誠心に満ち満ちていたとしても、これには反対するはずだ。

 

『聞こえているか…?』

 

「その声、ザフィーラか!?」

 

念話をしてきたのは盾の守護獣ザフィーラ、我らが忠犬ザッフィー!

 

『主はやてと俺以外の守護騎士がすまない、だが皆の思いも汲んでやって欲しい』

 

幼い頃に両親を亡くし、最愛の家族の一人を失った少女。

 

気が遠くなるほどの長い時を経てようやく呪いが解けた騎士たち。

 

どれほど心を押し殺してきたのか。

 

どれほど、どれほど…

 

「いやまぁそこはいいんだ(よくないけど)、とりあえず此処は何処で早く助けてくれ」

 

『ベルカ領の騎士カリムが所有する屋敷の筈だ、すまんが俺は力になれない』

 

「…理由は?」

 

『主たちに何をされるか分からんではないか』

 

この駄犬がぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーーーーーー!!!

 

てめぇ結局はビビって安全圏にいるだけじゃねぇか毛皮削ぐぞ!?

 

『貴様には分からんのだ…光のない瞳で悶々と悩む主たちを知らんから…というわけで、協力はしないが邪魔もしない』

 

頑張れよと、駄犬は念話を切った。

 

うあああああああああああああああ!!!!

 

ガチャリッ、再び扉が開かれると思わず身が竦んでしまう。

 

しかし予想に反して入ってきたのはシグナムであった。

 

「すまない、こんな事になってしまうとは…」

 

おお、なんということだ。

 

さすがはヴォルケンリッターのリーダー。

 

感動でむせび泣きそうだ、さぁこの拘束を解いてくれ。

 

「ああ…わかって、いる…」

 

そういえば鍵穴ないしなぁ、これどうやって外すん?

 

「難しい、な…仕方がない、動くな、よ…」

 

あの、シグナムさん?

 

なんでレヴァンティン構えてるの…!?

 

「案ずるな…私の腕は知っているだろう…大丈夫、痛くはしない…大丈夫だ、血はすぐに止まる…シャマルもいるから」

 

いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーー!?

 

ちょっとちょっと、落ち着いてよシグナム!

 

俺右手義手だからさぁ! 最悪片方だけでいいからさぁ!

 

いやぁー! 足にロックオンされちゃってるぅー!

 

車椅子生活はいやぁーー!!!

 

「大丈夫大丈夫だいじょうぶだぁーーーーーーー!!!」

 

ここだぁ!

 

振り下ろされる刃の軌道に合わせて、両足の僅かな隙間を沿うように当てる。

 

股間の愚息が双子になりかけたが、寸での所でシグナムの肩を蹴飛ばして難を逃れた。

 

よし、足はこれでOK!

 

座り込んだシグナムは目を泳がせ、今にも死んでしまいそうなほど青白くなっていた。

 

「わた、しは、主の、だが、いや、すまない、ごめん、ちがうん、だちがう、すまない」

 

明らかに動揺している、心配ではあるが今がチャンスだ。

 

青年は部屋を飛び出し、屋敷の通路を走り出した。

 

「出口、いや先に雲耀がいる、この手枷つけたままで戦えるわけがねぇ!」

 

角を曲がり、階段を駆け下り、さぁどうしたものかと頭を悩ませ。

 

「―――――なにしてんだ、そこで」

 

鉄槌の騎士が立ちふさがった。

 

騎士甲冑を纏い、凶器のハンマーを担ぐ姿に何一つ揺らぎを感じない。

 

あかん、あかんでこれは。

 

覚悟決まってらっしゃる、シグナムみたいに迷っていない。

 

腕は枷付き、魔力は封じられ、手元に武器はない。

 

…やばくね、これ。

 

 




肉欲に落ちても誰が悪いと言えるだろうか…表現セーフ? アウト?

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