もしもなのはに双子の妹がいたら?   作:赤いUFO

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番外編8:高町なのは『夢の始まり』

 バンッ!と強くテーブルが叩かれる音が響く。

 テーブルを叩いたのは鋭い視線を親友であるなのはに突きつけているアリサだった。

 

「……突然話されて魔法だの異なる次元だのと色々と言いたいことはあるけどそれは今は置いとく。それで?もう一度言ってくれないかしら……」

 

 今日、すずかの家で行われたお茶会で集まった中でなのはが大事な話があると切り出した。話した内容はこれまでのこととこれから高町なのはが歩む夢のこと。

 最初は半信半疑で聞いていたアリサとすずかもいくつかの魔法という証拠を見せられて渋々ではあるが理解と納得した。まあ、そういうのも在るかもしれないというくらいには。

 重要なのはそんなことではなく、なのはがそちら側に行こうとしているということだ。

 アリサの詰問になのはは目を逸らさずに自分の想いを打ち明けた。

 

「うん。わたしは管理局に行くよ。この魔法の力でわたしはわたしに出来ることをする。そう決めたの」

 

「そんなのこっちには関係ないじゃない!そのお仕事って今しなきゃいけないことでもないでしょう!!」

 

 あくまでも平静に言葉を重ねるなのはにアリサは感情をヒートアップさせていく。

 4年前のジュエルシード事件から闇の書事件のこと。それらの記録映像を交えて話された事実。

 自分たちが知らなかった数年前に親友が死んでいたかもしれない事件に巻き込まれていたことも。

 それらがアリサの頭を沸騰される。

 

 しかし、真っ直ぐとこちらを見据えて何一つ恥じ入ることがないと言うように。

 

「勝手にしなさいっ!!」

 

 そのまま勢いよく立ち上がってその場を去ってしまった。

 一緒に居たはやても辛そうに呟く。

 

「アリサちゃん。わたしにも怒ってるんやろな……」

 

 はやては闇の書事件の後からずっと管理局に勤めてきた。その事実をアリサとすずかに話したことはない。集まる時にどうしても時間が合わない際には不思議に思われていただろうが、そこはずっと飲み込んでくれていたのだ。

 そこでよつばがスッと立ち上がる。

 

「アリサちゃんの方は任せて」

 

 そう笑ってアリサの去って行った方に歩いて行く。

 そこでなのはがすずかに意見を求めた。

 

「すずかちゃんはどう思う?」

 

 ティーカップを置き、難しい顔をして自分の意見を言う。

 

「私は今回、アリサちゃんの意見寄りかな。これから、もっと楽しくなると思ってたのにって。それに中等部を卒業したら気軽に会えなくなるって言われたら、ね……」

 

 これから高等部や大学部。5人で楽しく過ごせるのを望んでいたすずかからすれば、2人の進路は純粋に応援できない。ましてやそれが危険を伴うお仕事なら猶更だ。

 

 はやてが自分の想いを伝える。

 

「わたしな。家族が昔、たくさんの人に迷惑かけてもうて。今はその人たちに謝りながら仕事しとる。みんなはそんなことせぇへんでええ言うてくれるんやけど……これはわたしが決めた道やから」

 

 闇の書の被害者に会った際に酷い言葉を投げつけられたことがある。恐くて泣いたことだって1回や2回ではない。それでも逃げ出さないのは闇の書たる夜天の書を受け継いだ最後の主としての責務――――などという殊勝な心掛けではなく、家族と同じものを背負いたいというエゴだ。

 

 闇の書事件の時、家族ははやてを助けるために多くの人や生物を傷付けた。その方法は間違っていたとしても、打算など無くはやてに生きていて欲しいと願い、行動してくれたのは事実だから。

 だからはやては家族とともに石を投げられることを選んだのだ。

 

 続いてなのはも口を開く。

 

「わたしね。子供の頃、胸の奥がモヤモヤしてた。何かしたいのにそれが分からなくて……ずっと胸の奥で燻ぶってたんだと思う。それでユーノ君と出会って、魔法を知って、楽しくて。これがわたしのしたいことなんだって思った。でも、ジュエルシード事件の時によつばちゃんがあんなことになっちゃって、わたしの所為だって思ってた」

 

 自分が魔法に関わらなければ、あの事故は起きなかった。

 ユーノもリンディもクロノも当時、色々な言葉でなのはを気遣ってくれた。

 しかしよつばが入院中に隠れて泣いていたことや退院したあとも失った右腕のことを認めたくなくて料理をしようとして、当然上手くいかなくて震えていたのを見た。

 そんな妹になのはは次第に魔法、というよりは自分がやりたいことをすることに忌避感を覚えるようになった。

 

 しかし――――。

 

「全部、見抜かれちゃってたなぁ」

 

 双子の姉妹故か、それともよつばが鋭いのか。なのはの想いは全て筒抜けだった。

 よつばを抱えての数年ぶりに飛んだ空。水を得た魚のように心が弾んだ。

 久方ぶりに故郷に帰って来たように懐かしくて楽しかった。

 魔法で空を翔る。それだけで心が歓喜に震え、充たされる。

 

 あぁ。私はこんなにも(ここ)へ来たかったのかと涙が出た。

 それを自覚してしまうともう理性でこの気持ちを押し留めておくことは不可能だった。

 

「その為にもっとも良い環境は管理局だと思う。だから行くの。自分の為に自分で決めて」

 

 なのはは首に下げられたレイジングハートを手で包んだ。

 

 

 

 

 

 

 アリサはさほど離れていない場所に居て、膝を折って猫の頭を撫でていた。

 

「アリ――――」

 

「いいの?」

 

 アリサを呼ぼうとしたよつばだが、こちらに振り返ることなく問う。

 

「アンタ、なのはにずっとベッタリだったじゃない。管理局だとか、次元世界だとか。そんな訳の分からないところに行くなんて……アンタは納得してるの?」

 

 それは、よつばにとって辛い質問だった。

 これからなのはが行こうとしている道を心から応援できるのか。

 取り繕った嘘は聞きたくないという雰囲気だった。

 

「覚えてる?小等部の頃に将来はどんなお仕事をしたいかってお話をしたこと。その時にわたしは翠屋で働きたいって言って。アリサちゃんがお父さんの会社を継ぐって言って。すずかちゃんが工学系に進みたいって言った。でもなのちゃんだけはその答えを出せなかったよね」

 

 アリサもその時のことは覚えている。

 どこか彷徨っているような不安な表情で笑っていたなのは。

 それに大したことも言えなかった自分に対するもどかしさも。

 

「ようやく見つけた夢も、すぐに抑え込んじゃったから……たぶん、わたしの所為で」

 

 フェイトが謝罪に来たあの日。

 もしあの時に高町よつばがフェイト・テスタロッサの謝罪を受け入れるだけの強さを有していたなら、きっと違う未来も在ったのだろう。

 

「なのちゃんが遠くに行こうとするのは正直言って淋しいよ。でもいつまでも甘えて、枷になるのはイヤだって思ったから」

 

 見たから。空を飛んだなのはのあの嬉しそうな満ち足りた表情を。

 アレを見れば、夢の背中を押す以外の選択は取れなかった。

 

「いつまでも甘えて繋ぎ止めておけない。ずっと我慢してくれてたなのちゃんが安心して飛べるように、わたしも強くならないと」

 

 まだうまく動かせない右の義手に触れる。

 よつばはよつばの夢を追う。だから気にせずになのはも自分の夢を追って欲しい。

 それが高町よつばの願いだった。

 

「うん、でも……わがままを言わせてもらえればね。もっと大人になった時、なのちゃんと一緒に翠屋で働いてみたかったなぁ……」

 

 それだけは残念、とよつばは淋し気に本心を吐露した。

 

 

 

 その後、戻ったアリサはなのはとはやての額にデコピンをして、「もっと早く教えなさいよね」と最終的に2人の進路を受け入れた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 誰かが、自分の身体を揺すっている。

 それに高町なのは目を覚ました。

 

「あれ……?」

 

 いつの間に眠ってしまったのか。しかも自分が体を預けているのはどう見ても学校の机だった。

 若干霧のかかった思考のまま顔を上げるとそこに居た人物を認識して一気に目が覚める。

 

「え?フェイト、ちゃん……?」

 

「うん。授業の最後の方、ぐっすりだったけど、だいじょうぶ、なのは?」

 

 自分と同じ、聖祥大付属小学校の白い制服を着たフェイトが居た。

 

「なん、で……」

 

「どうしたの、なのは?」

 

 戸惑うなのはにフェイトは小首を傾げている。

 その自然な態度に違和感を感じる。

 ここ数日、闇の書に対応するために一緒に行動することはあったが、こうではなかった筈。

 こちらを伺うように、どこか怯えた感じで。そしてお互いに余所余所しい関係だった。

 まるで友達同士のような距離感に戸惑う。

 

 そこでなのはは自分が眠っている前の記憶を掘り起こす。

 

 たしか今日は聖夜でよつばとすずかの新しい友達であるはやてに病院へ会いに行ったのだ。

 そして自分たちが今まで敵対していた闇の書の騎士であるヴォルケンリッターと遭遇した。結果闇の書の主がはやてと判明。

 それから色々とあり、はやてが完成した闇の書の主として覚醒。表に出て来た闇の書自身の人格と戦闘し、最後に本に吸い込まれたところで意識が途切れている。

 

(ここ、もしかして闇の書の中?)

 

 確証はないのだが、そうとしか思えなかった。

 そこで近くにいて呆れているアリサとクスクスと笑っているすずかが話しかけてきた。

 

「まったく最後の10分くらいって言ってもあんなに堂々と寝てるなんてちょっと緩み過ぎじゃない?」

 

「フェイトちゃんも言ったけど大丈夫?もしかして具合が悪いとか」

 

 だとすればこの世界は何なのか?

 

「そんなことは、無いと思うけど……」

 

「ま、いいわ!よつばが戻ってきたらお昼にしましょ!あー今日はお天気がいいからまた屋上で!」

 

 提案するアリサになのはは戸惑いながらもうん、と頷いた。

 そうしている間に廊下側から聞き慣れた声が届く。

 

「ゴメン、待ったかな?」

 

 教室に入ってきたよつばが右手を上げて手を振っている。

 そんな、当たり前だった筈の光景を見て、なのはの心は大きく揺さぶられた。

 

 当たり前だったが、もう見れる筈はない姿。

 

「――――――」

 

 立ち上がり、フラフラとよつばに近づく。

 

「ん?どうしたの、なのちゃん。すごい表情だよ?」

 

 そんなにお腹空いてるの?と訊いてくるよつばだがなのはの耳から脳には届かない。

 なのははよつばの右手を掴むと、抱きしめるように胸の位置に置く。すると、じわりと目頭が熱くなった。

 

「え?なに!?どうしたの!?」

 

「―――――っ!!」

 

 次の瞬間、なのはは声を上げて泣いた。

 半年ぶりに触れた妹の右手の感触が温かく、嬉しくて。

 だけどそれ以上に、どうしようもなく哀しかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「それとね。そろそろ右手離してくれないかな。お弁当食べられないんだけど……」

 

「うん……ごめん……」

 

 屋上に上がってからようやく離された手でよつばは自分のお弁当箱を開ける。

 泣き出したなのはにちょっとした騒ぎになったが、アリサが強引に屋上まで連れ出したことでこれ以上騒ぎにならなくて済んだ。

 

「フェイトちゃん!このほうれん草入りの出汁巻き卵、わたしが作ったんだよ!よかったらおひとつどうぞ」

 

「わぁ!綺麗に巻かれてる!あ、よつばもどれか私のお弁当からどれか持っていって」

 

 そんな2人の会話になのはは当然違和感を覚えた。

 いったいこの世界ではどのようにしてフェイトがここに居るのか。

 

「あの……ちょっと訊いてもいいかな?」

 

「どうしたの、改まって?」

 

「うん。そのね……わたしたちとフェイトちゃんっていつから知り合いだったっけ?」

 

 なのはの質問に4人の動きが止まる。

 1番初めに反応したのがアリサだった。

 

「ちょっとちょっと!どうしたのよなのは!!アタシたち、アンタの紹介でフェイトと友達になったんじゃない!?」

 

「え?」

 

「えーと。今年の5月の終わりか6月の初めだったかな?なのはちゃんが紹介したい子が居るって言って。でもフェイトちゃんが故郷のイタリアに帰ったから、ビデオメールでやり取りしてたでしょ」

 

「それで、フェイトちゃんの保護者のハラオウンさんがこっちに移住したのを機にフェイトちゃんも聖祥大に転入して来たんだよ」

 

 すずかとよつばの説明を聞いても今の状況に違和感が抜けない。

 胸の奥でよく分からない、気持ち悪い感覚に襲われる。

 

「まったく!フェイトと1番仲が良いくせにその質問はないじゃない。それに知り合いって何!。友達って言いなさいよ!」

 

 呆れと怒りの表情でこちらを見るアリサ。フェイトも不安そうにこちらに視線を向けている。

 

「なのは……」

 

 縋るように呼ばれた名前。しかしなのはは結局フェイトを『友達』とは言えなかった。

 そして、何かが欠けているような気がして、胸の辺りで何かを掴むように握り拳を作った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 帰りに皆と別れてよつばと2人で短い帰路を歩く。

 

「ねぇねぇ、なのちゃん。ご飯の後のデザートは何が良い?」

 

「え、と……なんでもいいよ?」

 

「そういう答えが1番困るんだけどなー」

 

 以前は当たり前だった会話。それがとても幸せだった。

 あまりに都合が良過ぎて。

 

 ―――――だから、もう夢から醒めないと。

 

「ねぇ、よつばちゃん……」

 

「ん~?」

 

「ここは……夢、なんだよね……」

 

「うん。そうだね……」

 

 なのはの呟きをよつばはあっさりと肯定した。

 しかし心なしか声に乗せられた感情が一気に減った気がする。

 両手を広げたよつばが笑顔でなのはに振り返る。

 

「ここはなのちゃんが『こうで在って欲しかった世界』だよ。ジュエルシードの時に高町よつば(わたし)が傷つかず、フェイトちゃんとも友達になれた世界。なのちゃんが想像できるもっとも欲しかった結末が成された世界」

 

 ここでプレシアとアリシアの存在がないのは、プレシアはモニター越しで1回見ただけで情報が少ないから。遺体を見ただけのアリシアならなおのことだ。

 なのはの記憶の下に作られたよつばの話は続く。

 

「ここは確かに作り物かもしれないけど、なのちゃんが望んだすべてがある在る世界だよ。ここなら、わたしは無事だし、フェイトちゃんとも仲良し。素敵な世界でしょ?」

 

 だから、夢から醒める必要はないと囁くよつば。

 それは、なんて甘美な誘いだろう。

 きっとここでなら、満たされて過ごせるだろう。

 

「でもやっぱり、夢は夢だよ」

 

 だからこそ、高町なのははこの世界を否定した。

 

「この世界はとても優しいと思う。でも、わたしにとっては夢でしかない世界なんだよ」

 

 一時的に逃げ込むならそれもありだと思う。実際この世界に嫉妬しながらも浸っていたいという気持ちがないわけじゃない。

 

「よつばちゃんが怪我をして、右腕が無くなって。わたしがフェイトちゃんに本気で怒って仲が拗れたのも事実だから。それを嘘にすることになんて、できないよ」

 

 利き腕を失った妹の喉が裂けるような絶叫を聞いた。

 涙を流しながらごめんなさいと繰り返す姿を見た。

 生まれて初めて本気で憎しみをぶつけた。

 それは、友達になりたかった女の子だった。

 

「もう行くよ。きっと外でみんなが頑張ってるのにわたしだけ寝てるなんて出来ないから」

 

「そっか……うん!きっとそう言うだろうなって思ってたよ」

 

 なのはの答えを受け入れて、よつばは右手を差し出した。

 その手の中には、なのはの相棒であるレイジングハートがあった。

 

「ここから脱出する方法はこの子が知ってる。さぁ、もう行って。どうか悔いを重ねないように」

 

 レイジングハートを渡すとよつばはその場を去ろうとする。

 それを、なのはは後ろから抱きしめた。

 

「……ごめんね。あの時、助けられなくて。守れなくて、ほんとうにごめんね……っ!!」

 

 意味のない謝罪。それでも、どうしても言っておきたかった。

 自己満足でも構わない。

 それでも、言いたかったのだ。

 体を離し、振り返ったよつばは柔らかく微笑んでいた。それで本当に役目が終わったとばかりにそこから掻き消えた。

 

「ごめん、待たせちゃったね。行こう、レイジングハート!」

 

『はい、マスター』

 

 こうして高町なのはは夢の世界へと別れを告げた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 まだ着慣れない正式な管理局の制服に身を包みながらなのははある人の下を訪れていた。

 彼が居るであろう場所に行き、僅かに視線を動かすと、目的の人物はすぐに見つかった。

 

「ユーノ君!」

 

「なのは!」

 

 なのはが呼ぶとユーノは振り向き、こちらに向かってくる。

 メールなどのやり取りはしていたが、直に会うのは3年ぶりくらいか。

 

「今日から本格的に配属されるの?」

 

「うん!しばらくは武装隊でお仕事しながら教導官資格かな。あ、聞いて聞いて!さっきそこでヴィータちゃんに会ったんだけど、わたしを見るなり、馬子にも衣裳だなって言ったんだよ!それに認めてほしかったらちゃんと成果を出すんだなって先輩風吹かせて来るの!」

 

「ははは!ヴィータは素直じゃないからね。なのはと一緒に飛べるのを楽しみにしてるんだよ」

 

 既に無限書庫の司書長という立場であり多忙であるにも拘らず、こうして時間を作って話をしてくれるのが嬉しかった。

 

 他愛のない話を終えてユーノから切り出す。

 

「本当に良かったのかい、なのは?管理局に来て」

 

「うん。家族友達には心配かけちゃうって分かってるけど……わたしは少しワガママになるって決めたから」

 

 そう言ってチロリと舌を出した。

 一拍置いてなのはは過去に思い返す。

 

「ありがとうね、ユーノ君」

 

「?」

 

「あの時、ユーノ君に出会ってなかったら、ずっと何をしたいのかも分からずにいたと思うの。だから、気付かせてくれてありがとう」

 

 それにユーノも笑顔で返す。

 

「それを言うなら僕のほうこそ。あの時、なのはが来てくれなかったら僕の命はなかった。ありがとう、なのは。あの時気付いてくれて」

 

 お互いに笑うとなのはは無限書庫を出た。

 次に向かう場所を確認しながら歩いていると『彼女』と再会した。

 昔は2つに結わえていた金の髪も今は毛先に一束で纏められている。

 4年も経っているので当たり前だが随分と大人っぽくなった。

 向こうもこちらに気付いて一瞬驚いた表情を見せたが、次に話しかけるか迷っている様子だった。なのはもフェイトの居る位置が通り道だった為、彼女の前で止まると敬礼を取った。

 

「お久しぶりです、テスタロッサ執務官。此度は武装隊に配属されることになりました」

 

「あ、うん。久しぶり、だね……」

 

 昔と違ったなのはの言葉遣いに委縮しながらなんとか言葉を返す。

 

「まだ配属されたばかりですので機会が有ればご指導を宜しくお願いします」

 

 それでは、と言う事を終えたとばかりにフェイトの横を通過する。

 

 高町なのははまだフェイトに対してしこりが残っている。

 フェイト・T・ハラオウンはなのはに対して踏み出す勇気を持っていない。

 2人取り持てる唯一はこの場にはいない。

 

 

 同じ組織に所属していても、高町なのはとフェイト・T・ハラオウンの道はまだ交わらない。

 

 それはもう少し先の話。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




次が高町よつば編ですね。ようやくここまで来ました。

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