ぼくは、世界が公平であると言う事を守る為に、弱き者を叩く事にした 作:Sub Sonic
燃料電池+イオンエンジンで機体を飛ばすのは、中々の無理難題…
現行のDCアークジェットだとkw/pwが130グラムくらいだから、15トン位のAC飛ばそうと思うと一万三千キロワットもの電力が……←(F15のエンジン一機がこの位のパワー)
よし、ジェットエンジン積もう(迷)
轟々と鳴り響く音。それは複合装甲を貫かんばかりに響く。時速数百キロで空中に放り出された人形兵器。セラミックとチタン
DCアークジェットエンジンから吐き出されるプラズマトーチによって、降下速度を減じ、予定の降下地点を探すようにして砂漠の上を蛇行する。
蜘蛛の瞳のように、無数に開いた赤外線センサーが地表の熱源を捉える。地獄の窯の蓋が開けられたかのように燃え続ける油田から出る煙によって可視光線は遮られており、辺りは漆黒の暗闇に近かった。
だが、その合間から見える生物が出す赤外線を正確に捉え、35mm機関砲を射撃。規則的な射撃は、まるで地表にある果実を叩き割るかのごとく、敵歩兵を葬っていく。
死に物狂いで逃げ惑う兵士は、せめてもの一噛みと携帯型地対空ミサイルを放つが、鎧武者の如く、爆発反応装甲を身にまとったACにとっては蚊の一刺しに違いはなかった。
対KE防護性能を持った爆発反応装甲、ERAは直撃したと同時にミサイルの弾頭を弾き飛ばすと、弾体を粉々にして機体を守る。
旧西側諸国の誇る主力戦車の放つAPFSDSの弾体をへし折る技術は、脈々とノーマルACの機体防護システムに受け継がれていた。500mm以上もの鉄板を貫く槍に比べれば、柔らかい航空機を落とすミサイルなど、コンニャクも同然であった。
『こちらハウンド1-1、降下地点に敵歩兵を確認。制圧する』
パイロットが引き金を引くと、再びマニュピレーターに装備された機関砲弾が連続で射出される。戦闘ヘリが使うものより一回りも大きな砲弾は遮蔽物にしていた建物ごと貫き、飛び込んだ砲弾は建物内部で炸裂、内部にいた人員を根こそぎ破壊していった。
薬莢が空から舞い落ち、地上では破壊された設備から漏れ出る炎。それを飛び越える巨人は、イオン化された燃料を燃やしながら降下速度を更に落とすと静かに着地した。
鳥の足にも見える、逆関節型の脚部を持ったACは背部のラジエーターユニットから陽炎を立ち上らせながら地上に補助アンカーを打ち込む。そうして先程まで使っていたマシンガンを肩部ラックにしまうと、大型のスナイパーライフルを構えた。
『ハウンド1-1、タッチダウン』
その横に降りて来る巨体、しなやかな動作で慣性を殺し着地。みしり、と地面が軋み、ブースターの轟音が一瞬にして静寂へと変わる。
『ハウンド2-2、タッチダウン。案外、何も無かったですね』
『ハウンド3-3、着地した。死亡フラグ立てるんじゃねぇよ。例の新型が戻ってこないとも限らない』
『お喋りはそこまでだ。レーダーにボギー4。距離はまだ遠い。お客さんが到着する前に施設内の敵残党を片付けるぞ』
頭部に搭載された地対地レーダーが飛行物体が放つドップラーシフトを探知。コックピットの画面には旧ウクライナ製レーダーが捉えた敵性移動体の表示。
『了解、UAV、射出』
胴体に格納された小型UAVがはじき出されると、空中で素早く浮遊用の嚢胞を展開、水素ガスによる浮力と小型ファンが発生させる推力によって高度を上げていく。
『グリッド2-3にコンタクト。生体反応を確認』
赤外線カメラとレーザー音響解析装置によって生物が発する心音を建物の壁越しに捉える。
『IFFは確認できるか?』
小型UAVに搭載されたアンテナが特定の周波数で、暗号化された信号を送信する。本来であれば電波封止された携帯型端末が、敵味方識別のために強制的にチャンネルを開く為の命令文であった。だが、電波は返ってくることは無かった。
『アンノウン。敵の生き残りが居るみたいですね。どうします?』
歩兵の個人装備である携帯型端末から発せられる電波は正確に敵味方識別を可能とした。かつて、世界で爆発的に普及したスマートフォンの成れの果てが彼等の敵味方識別に一役買っていた。
『HEATライフルに切り替える。さっさと吹き飛ばそう。敵ACと同時に相手するとなると色々と面倒だ』
『ハウンド2-2了解』
『ハウンド3-3了解』
ガシャリ、と肩部に吊るされた大型のHEATライフルを取り出す。125mmのHEAT弾専用のライフルを建物へと向ける。
『
短砲身の滑腔砲から砲炎。フルサイズの徹甲弾よりも幾何か抑えられたマズルブラストと共に、遅延信管に設定された榴弾が射出された。
建造物が爆音と煙に包まれるが、UAVからは未だ生体反応を示す信号が来ていた。
『思ったより壁が多い。弾種変更、HE―FLAG、二枚抜きに設定する』
堅固な建物に隠れた敵兵は通常のHEAT弾でも排除できない場合がある。その為、弾殻が分厚く任意に遅延時間を調整できる砲弾が威力を発揮した。
発射された弾丸が建造物に命中すると電子信管が作動する。それと同時に壁に着弾する度にチップに内蔵されたインパクトタイマが短くなっていく。それは、丁度二枚目の壁に着弾すると遅発モードにセットされ、二枚目の壁を貫通後、炸裂した。数千個以上ものタングステンペレットが撒き散らされ、室内に居た敵兵は
『生体反応消失、グッドキル、ハウンド2-2』
心音が消えた事を確認したACは、移動を開始する。
だが、壁が崩壊し剥き出しになった部屋から転がり落ちてきたのは敵兵だった。
『クソ!まだ敵兵が居やがる!撃て!撃ち殺せ!』
ACが身をよじり、RPG7を構えた兵士を狙い撃つ。だが、35mmの射線が敵歩兵に重なるよりも先に、RPG7が発射される方が半秒程早かった。
装甲貫通力700mm以上もの威力を持つロケット弾は至近距離に居た巨体を外す筈もなく直撃する。
メタルジェットが装甲板を貫こうとしたその時、装甲表面に取り付けられた
爆炎に包まれるAC。
敵兵士は崩れ落ちる巨人を幻視した。
しかし、現実は残酷であった。
『タンデムERAで助かったぜ』
そう呟いたAC乗りは容赦なく35mmマシンガンの引金を引いた。道路に赤黒い染みが出来上がる。煙が晴れていくと傷一つないACが姿を現す。二重爆発反応装甲が損傷を受けていたが、当たったら装甲ユニット毎交換しなければならない複合装甲に比べて安価な物である。その為彼等にとっては、かすり傷程度であった。
二つ重ねた弾頭に対抗するには二つ重ねた装甲。タンデムヒートに対抗するために企業が出した答えはシンプルであった。故に、効果が高く費用も安く済む。成形炸薬弾が装甲兵器の主力とならないのにはこう言った理由が有った。
『あまり生体センサーに頼り過ぎるな。
『冷蔵庫の中に隠れてやがったか。執念深い奴だ』
悪態を付くAC乗りの視線。その先には空っぽになった金属製の箱が半開きになっていた。断熱構造を持った箱はとても良く音を遮る。だから生体センサーが見落としたのだろうと大佐と呼ばれた男は考えていた。
『この先で、味方が交戦中だ。抜かるなよ』
肉眼で確認できる状況が一番安全であったが、敵兵が潜む状態の場所ではその願いも叶わない。願わくば、味方歩兵の支援が受けられる状況が一番良いのだが、と彼は考えた。無論、ヘリ並の戦術機動を行う彼等にとって、それは殆どの場合、夢物語でしか無かった。
◇ ◇ ◇
敵前衛と接触したのは彼等が油田内部から敵残党を排除してからであった。幸運にも敵歩兵と敵ACを同時に相手にするという事態は避けられた。逆に敵AC部隊は、歩兵とACを相手にしなければならなくなった為に、積極的な攻撃に打って出ることができずにいた。その為、互いにリコンとUAVを投げ合うという消極的な戦いが展開されていた。
『ハウンド1-1、敵UAVを確認、撃墜する』
アンカーを地面に撃ち込み、
『グッドキル隊長。相変わらず良い腕してますね』
巨大なお椀のような薬莢が排出される。
『ま、FCSの補助が有れば当てられるのは当たり前さ。それより、リコンの準備は?』
『セット完了。問題ありません』
市街地に散布された埋設型マイクロフォンは敵ACの足音を正確に捉えていた。しかし、UAVでの索敵に比べて精度にかけていた。その為、彼等は小型UAVでの索敵も併用していた。だが、それは敵も承知の上であった。一筋の光が空を駆け抜け、その先で小さな爆発が起こる。
『UAV03大破!UAV04も墜落していきます!』
『残りのUAVは上げるな。敵側にも上手い射手が居るらしい』
水素ガスと小型ファンで飛行するUAVはノーマルACの主力偵察用兵装であったが、リコンと違い、大きなスペースを占有する為、搭載できる数が限られていた。
本来であればこのまま膠着戦が長引く筈であった。だが、敵側は砲兵支援を要請していた。空から無数の砲弾が雨の様に降り注ぐ。
『各機、シールドを展開。すぐに砲弾が切り替わるぞ』
ノーマル部隊は空から降り注ぐ鋼鉄の雨を前にしても慌てずに行動した。肩部に吊るしてあった折り畳みシールドを展開。傘の如く頭上へと掲げ、手近な遮蔽物に身を寄せる。
敵砲兵の砲弾は直ぐに直撃を狙った榴弾から、小型の成形炸薬弾を無数に詰め込んだクラスター砲弾に切り替わった。
『ったく、こっちの砲兵は沈黙してるっつぅのに、やってくれるぜ』
そう歯噛みしつつも、降り注いでくる成形炸薬弾を軽くいなす。斜めに仕込まれた仕切り板とゴム製マットが爆発の圧力によって装甲内を移動し、ジェットを左右から引き裂く。盾に仕込まれた
『こちらハウンド1-1、スネーク4-4、支援射撃を頼みたい。このまま敵に焙り出されるのは癪に障る』
『こちらスネーク4-4、射撃準備よし。照準は其方に任せる。砲弾はどうします?』
『一番良い奴を頼む』
『了解、隊長』
ノーマル部隊の隊長は油田をグルリと取り囲んでいるコンクリート製のビルから銃身だけを敵が展開している砂漠へと突き出すと、おまけと言わんばかりに壁に盾を突き立て、雨避けにする。
「さて、と。まずはノロそうなヤツから行くか」
ガンカメラに映し出されたのはタンク型ACであった。砂漠を疾走する鋼鉄の猛獣は焙り出された獲物を狙うべく、油田の出口に射線を合わせていた。
『ハウンド1-1よりスネーク4-4、砲撃要請、座標2955、6643、送れ』
『こちらスネーク4-4、砲撃支援要請了解、座標2955、6643、隊長、
『開けた場所に拠点制圧型ACが一機居る。その横に中量級が3機。遅延5、瞬発5発。加えて10秒の間隔を空けて瞬発10発。何方も同時着弾で頼む』
『遅延5、瞬発5、及び間隔を空け瞬発10、了解。仰角を変えてマルチプルショット、
240mmスナイパーキャノンから人一人分程の長さの砲弾が発射された。
◇ ◇ ◇
敵側のAC乗りは油田に降り注ぐ砲弾の雨アラレを見つつ、憐れな敵影を只待ち続けた。
『敵影は見えたか?』
『まだ見えない。出てきたらコイツで蜂の巣だ』
四連装90mmキャノンを持ち上げるタンク型AC。その機体には砂塵がこびり付いていたが、塗装は光沢を保っていた。
『企業の連中は気前が良くて助かるぜ。お陰で、ボロイ装備ともオサラバできた』
野良上がりの傭兵達は企業に加担する事によって糧を得て、再び獰猛な獣へと戻ろうとしていた。今回の依頼は丁度良い機会だと捉えていた彼等は、一向に出てこない敵に訝しむ。
『それにしても、ヤツ等、耐えるな』
『この雨の中だ。もう死んでるんじゃないのか?』
一秒間に数十発もの小型成形炸薬弾を降らせる雨の中、生き残れる存在は無い。例え戦車でも撃破できる散弾タイプの砲弾は彼等にとっての自信の源であった。健全な砲兵に守られた地上部隊程、恐ろしい物はない。だが、それはあくまでも通常での戦闘に置いて、である。対AC戦を経験した事のない彼等には計り知れない事であった。
『あと30秒で雨が上がる。その後、市街地に突入する。各機、準備しろ』
指揮官がそう告げる。
傭兵達は何処かで楽観視していた。
企業が付いているのだから――――と。
戦場に置ける希望的観測と、敵を侮るという二重の失敗を犯した彼等にその間違いを正す機会は与えられなかった。
市街地から銃口を覗かせていたACは目標を正確に追尾する。
勿論、それは撃つ為ではない。
空から降って来る誘導砲弾に目標を指示する為の準備であった。
高度数十キロを飛行している誘導砲弾の先端には、セミアクティブレーザーシーカーが取り付けられていた。
この手の誘導兵器は湾岸戦争時代に開発された物であり、未だに使われる骨董品であったが、古いだけあって信頼性は折り紙付きであった。
『弾着まで10、9、8――――』
指揮官である隊長と呼ばれた男はカウントに耳を傾ける。落着速度は毎秒400メートル程、誘導させるならそろそろと、彼は操縦桿の引金を軽く引く。
すると、銃身に取り付けられたレーザー発振器から誘導信号が目標に当てられ、誘導砲弾はその信号を即座に捉える。小さなクリック音が二度聞こえる。それは砲弾が誘導を開始した電波を捉えた音であった。
『―――3、2、1、弾着、今!』
砂丘の斜面を下っていた拠点制圧型ACに数十発の砲弾が同時に命中した。
まるで砂丘が噴火したかの如く噴煙が上がる。ノーマルACの搭載燃料、弾薬、命中した砲弾が同時に爆発したエネルギー。全てが一度に放出される。
『全機!散開!遮蔽物に身を隠せ!』
敵AC部隊の隊長は、その攻撃がレーザー誘導砲弾によるものだと直ぐに気が付くと、レーザーによる直射が不可能な砂丘を目指して即座に移動した。
―――――ふむ、まぁ、そうなるよなぁ
だが、彼はそれを冷静に
『敵の砲弾はレーザー誘導タイプだ!砂丘に隠れれば直撃はしない!』
不意を突かれた状況下で正確に判断する敵の指揮官に感服しつつも、彼は評価を下す。
―――――悪くない。悪くないんだが……場数が足りんな
静寂に包まれたコックピットにクリック音が再び鳴り響く。
時間差を置いて空から砲弾が降って来る。
無論、通常なら誘導は不可能だ。
それは砂丘が邪魔になってレーザーが届かないからだ。
『弾着まで、5、4、3……』
カウントダウンが再び始まる。
誘導砲弾は正確に狙いを定める。
レーザーシーカーは目標を捉え、進路を変える。
『―――――弾着、今!』
轟音と共に、残り三機の敵ACの周りには、計十発もの240mm誘導砲弾が寸分たがわぬ精度で着弾する。敵ACのコアが爆炎と共に舞い上がる。三機のうち、二機に直撃弾。装甲に包まれたACと言えども、数百キロもの重量がある榴弾が直撃したとなると、唯では済まない。装甲が比較的薄い頭部や腕部、それに脚部は破片と爆風でバラバラになった。
『こちらハウンド1-1、スネーク4-4、目標破壊、良い腕だ』
『こちらスネーク4-4、今日の晩飯は奢ってくれよ』
背中を向けて逃げ出す生き残り。
低く低く、砂丘を背にしてブースターで飛行して戦域を離脱する。
それを、
『ああ、奢ってやるさ』
そう答える隊長機のメインカメラからは、敵ACが出す排熱の陽炎しか見えていない。
轟音と共に一発の125mm砲弾が発射される。
それは毎秒1800メートルもの速度で飛翔し砂丘を撃ち抜くと、侵徹体は敵ACの背面装甲を撃ち抜いた。
砂丘からは爆炎だけが顔を覗かせる。
それは、二度上がると黒煙が続く。
『全ての敵ACを排除、各機、損害を報告せよ――――』
部下の通信を聞きつつ、彼は再び辺りを俯瞰する。
相変わらず火災が続き、辺り一面に黒煙を巻き散らす掘削リグ。
鉄の雨は止んだが、施設に降り注いだ砲弾が起こした火災は徐々に勢いを増していた。
彼は安堵した。
何故ならそこに例の新型機が居なかったからだ。
「ふぅ。今日も生き残ったか」
そう言いつつ彼は、クラゲの様に漂っていた小型UAVを回収するのであった。