ぼくは、世界が公平であると言う事を守る為に、弱き者を叩く事にした   作:Sub Sonic

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第七話 財団

 巨大なガントリークレーンが銀色の輝きを放つそれは、ゆっくりと吊り上げられていく。

 四つに束ねられたその杭は、人型兵器の右手に近づけられていく。

 

「良いんですか?隊長。今回の話、キナ臭いってもんじゃないですよ。司令部の連中、絶対何か隠しています」

 

「馬鹿、今更降りれる話じゃない。それにな、俺はあのトンガリ帽子をぶっ壊せるって言うから日本に帰ってきたんだ。尚更引く訳ねぇだろ」

 

「サラエボ、ですか」

 

「ああ、そうだ。あの時奴はあそこに居た。だから俺はAC乗りになった」

 

「そう言えば、奧さんの命日、もう直ぐでしたね」

 

「俺はあそこで全てを失った。だが、まだ運には見放されていなかったみたいだ。司令部の連中の思惑なんか知るか。それにあのトンガリ帽子が来た国に良いことが有った試しが無い。この国は俺たちの故郷だ。サラエボの二の前にさせて堪るかよ」

 

 そう言いつつ、傭兵である彼は入念に装備を吟味していく。

 

「ま、そうですよね。あの国、復興に向かって順調に歩んでましたからね。それが、企業が来た途端、あっという間に混沌の渦に落ちたら誰だって疑いますよねぇ。戦争って奴は、企業からしたらイイ市場ですからね。スクラップアンドビルドってやつですか。怖いもんです」

 

「企業なんてもんはなぁ、ネクストさえ持っていなきゃ、国家がコントロール出来たんだ」

 

 彼は怨嗟を込めて言った。

 

「そして―――――リンクスさえ居なければ…」

 

「ですけど、無茶は辞めて下さいよ。隊長に先に死なれたら、死んだ部下達に示しがつきません」

 

「解ってるよ。死ぬつもりはねぇさ。勝つために戦う、負ける戦なんぞするもんか。喋ってる暇あったら新型装備の射撃テスト、早めに済ませておけ。もう換装は出来ているぞ」

 

 彼等の視線の先には銀色の杭を腕に装備した鋼鉄の人形が有った。

 左腕に巨大な盾のような物を装備したそれは、中世の騎士のような出で立ちであり、格納庫の奥の方までズラリと並んでいる様子は、戦列歩兵のような見た目であった。

 

 

 

 数時間前、指令室では傭兵である彼にある指令が下されていた。

 

「――――つまり、今回の停戦協定は企業側から反故にされる可能性が高いと言いたいのですか?」

 

「そうだ。諜報部はその類の情報を掴んだ。それもかなりの信頼が置ける情報の様だ。パイロットの休憩でも取らせてから我々を叩くつもりなのだろう」

 

「しかし、それなら複数機のネクストを持ち込んだ企業側に今回の停戦協定を持ち込むメリットがありませんが…」

 

「君は知らなくていい事は聞かなくて良い。ネクストを破壊する事だけに集中したまえ」

 

「―――はッ!了解であります!」

 

 そうして部屋を出ていくと、手渡された指令書に目を通す。

 

 横から顔を覗き込ませる部下が言った。

 

「良く出来た作戦書ですね。それに、何故レイセオングループのネクストが指定エリアから出てこないって解ってるんですかね。司令部は魔法でも使ってネクストの足を縛るつもりなのでしょうか」

 

 おどけて見せる部下に、乾いた笑いで返す男。

 

「さぁな。だが、企業側も一枚岩じゃないらしい。見て見ろ」

 

 そう言って一枚の記事を見せる。それは、テレビで流されていたニュースの切り抜きであった。

 

「これがどうかしたんですか?例の停戦協定のインタビューじゃないですか」

 

「いや、記事の内容じゃない。そこに映ってるネクスト、三機しかいないだろう。トンガリ帽子が映ってない。それにレイセオングループの重役も居ない。これがどういう事か解るか?」

 

「いえ、全然」

 

「だぁ~! ったく。お前は操縦は出来るのに頭はからっきしだな。つまりは企業の連中も一枚岩じゃないってことだよ、縄張り争いでもするつもりなのかもな」

 

「成程、GEとヨーロッパ連合企業、それとレイセオングループ、お互いに連携する気が無いと言う事ですね」

 

「そうだ。ま、それならそれでこっちとしては、やりやすい。付け入る隙は残されているってのは良いことだ」

 

「そうですね。真面に4機のネクストとやり合ったんじゃ、命が幾つあっても足りやしない。ですが、何だか嫌な気もします」

 

 そう言って部下は窓から見える新しく搬入されたパーツ群を見つめる。

 それらは工場から直送で送られてきたように磨き上げられており、塵一つ付いていない。

 続々と運び込まれるそれは、野外整備場で着々と組み立てられている。

 

「財団、か。確かにキナ臭い連中だ。だが、もう碌な装備が無い自衛隊側に、思わぬ支援を申し出てくれたんだ。飲まない訳にもいかないだろう」

 

「タダより怖い物は無いって言いますしね…でも、渡りに船って言う感じも有ります。複雑ですね」

 

「そうだな。だが、俺たちに出来る事は、渡る川が三途の川じゃない事を祈るだけさ」

 

 そう言って、沈んでいく西日を眺めるのであった。

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