真・幻想創星録   作:青銅鏡(銀鏡)

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 また遅れました、どうしようもないですね。


 ゆっくりご覧ください。


第百三話 対策

人里。

 数多の人間が通る大通りから少し離れた所に、大きな酒場がある。

 その前は人通りがなく、お世辞にもまともとは言えないような雰囲気を放っていた。

 一人の影がそんな酒場の前に立ち、キイと軋むドアを開けた。

 

 

 「あ、いらっしゃいませ!」

 

 

 人影に言葉をかけたのは、酒場には似つかわしくない、純粋そうな少女。

 彼女の頭からは兎の耳が生え、僅かに揺れていた。

 

 

 「えっと、今幽夜を呼んできますね!」

 

 

 奥の部屋へと消えて行こうとする兎耳の少女、鈴仙は奥の部屋へと消えると、すぐに幽矢を連れて戻って来た。

 

 

 「・・・ここに来るとは、珍しいな」

 

 

 「ま、そうかもな。水でも入れてくれ」

 

 

 「酒場で最初に水頼むんじゃねえよ」

 

 

 人影の正体、龍一はニヤリと笑うと、カウンターの席に腰掛けた。

 幸夜はそんな彼の前に冷えた水を置くと、話は?と問いかけた。

 

 

 「別にねえ。ただの時間潰しついでだ」

 

 

 「・・・なんだよ、久しぶりに来たから何かあるのかと思ったじゃねえか」

 

 

 「ねえよ別に。・・・あ、待て、あった」

 

 

 「お?」

 

 

 「近いうち、俺死ぬから」

 

 

 バリン、とガラスの割れる激しい音が酒場に響き渡る。

 そしてぬらりひょんと鎌鼬、大男が龍一の側に近寄った。

 

 

 「冗談ではない、のだな?」

 

 

 「龍神がジョークで死ぬ死ぬ言わんだろ。ほんとに臨終するかもしれん」

 

 

 「不死だったんじゃねえのかよ・・・?」

 

 

 「紫に告白したら死ぬようになった。龍神補正が一個消えたわけだ。・・・んで、お前はなんで来たんだ、塗り壁」

 

 

 塗り壁と呼ばれた男は、目線を合わせるために龍一の前に膝をついた。

 

 

 「死ぬ、事が、気になった、けど。・・・それより、紫。どうする、の?」

 

 

 塗り壁はほんの少し表情を哀しげなものにして、龍一に問いかけた。

 龍一は嘆息し真正面から塗り壁を見た。

 

 

 「俺なりにけじめをつける。ひとまずは俺が死ぬのがいつか分からんから、しっかり大事にするつもりなんだが。・・・お前はやっぱり紫に思うところあるのか?」

 

 

 第一回月面戦争の生き残りだろ?と龍一が軽く笑うと、塗り壁は首を横に振った。

 

 

 「逆。あの事、は、忘れて、楽しく、生きて、欲しい」

 

 

 「そうか。俺が相方で大丈夫そうか?」

 

 

 「ふふ。変なこと、言う、ね。龍一以外、誰、が、つとまる、の?」

 

 

 「そうかよ、ありがとな」

 

 

 塗り壁は微笑み、膝をついたまま龍一の隣に並んだ。

 ぬらりひょんも龍一の反対側の隣に座り、鎌鼬はその横に座った。

 しばらく黙っていた幽夜だったが、四人の様子を見て、ニヤリと笑った。

 

 

 「ま、ともかく元気そうなのは良かったぜ。久しぶりのここはどうだ?」

 

 

 「当たり前っちゃ当たり前だが、メンツもガラッと変わってるな」

 

 

 「そりゃ二百年もすりゃ色々死ぬさ。あの時のメンバーは、もうここにいる三人と牛鬼と濡れ女しかいねえぞ?」

 

 

 「泥田坊のジジイは?」

 

 

 「老衰。息子がもうジジイくらいの歳。塗り壁の事を後輩だと思ってる以外なんともねえぜ」

 

 

 「お前後輩だと思われてんのか」

 

 

 「まあ、ね。訂正は、しない」

 

 

 「そうか。まあ好きにしろ」

 

 

 そういや、紫さんは?と鎌鼬が聞くと、龍一は気まずげに答えた。

 

 

 「永琳のとこに行ってる。・・・まあ、正直あの二人を長ーい事会わせたくないんだよな」

 

 

 「と、言うのは?」

 

 

 ぬらりひょんが興味ありげに首を傾げると、龍一は空を仰いだ。

 

 

 「根本的に価値観が違うんだよあの二人。誰であれ死を当然としてるのと、大切なものに対しての死を極端に嫌がるのと。死生観に始まり、他にも色々対立する事が多い」

 

 

 成る程な、と鎌鼬が手を叩いた。

 

 

 「紫は永琳さんのとこに薬貰いに行ったのか」

 

 

 「でも、永琳、は、薬での、延命、嫌う」

 

 

 「・・・そう言う事だ。きっとここ一番で永琳が言い合いに勝つだろ?んで、多分。落ち込んで帰ってくるんだろうな」

 

 

 はぁ。と龍一は嘆息し、カウンターに突っ伏した。

 

 

 「分かりきってんのに止めねえって、割と酷え事してるよな」

 

 

 「・・・まあ、紫さんにも踏ん切りつける場所いるんじゃねえの?」

 

 

 「で、良いんかねえ・・・」

 

 

 再び嘆息し、机に顎を乗せ、ぼうっと龍一はカウンターを眺める。

 抜け殻のような龍一に幽夜は頭を掻き、どうすべきかをぬらりひょんと鎌鼬と塗り壁に目で問いかけた。

 ぬらりひょんが頷き、龍一にむけて口を開いた。

 

 

 「ところで、龍一」

 

 

 「・・・んあ?」

 

 

 「何故お前は永琳と親しいのだ?」

 

 

 「あ?まあ性格が合うってのが一因。互いにいいライバルだったからなあ。・・・まあそのせいで不老不死の薬なんぞ作ったんだが」

 

 

 その手の話はねえぞ。と龍一は乾いた笑い声を出す。

 

 

 「俺と永琳は互いに同性扱いだからな。最初こそ意識してたもんだが、慣れてからはそうだな、畳の上で揃って雑魚寝なんて日課だったな。風呂も広けりゃ一緖に入る。とりあえず互いに研究に必要ない時間は減らそう精神だったからなあ」

 

 

 「期待してなかったが、二人ともサラサラし過ぎだろ」

 

 

 「あくまでもアイツは俺の親友だからな」

 

 

 龍一は水を飲み干すと、さて。と体を伸ばした。

 そして顔付きを真剣なものにした。

 

 

 「で、俺からも延命対策を練ってるんだが。何かないかね」

 

 

 「・・・そこまで考えてる上で思いつかねえなら、ねえな」

 

 

 「私も、ちょっと・・・」

 

 

 「そもそも龍一はいつか死にてえんだろ?それなら何も策なんかねえと思うがな」

 

 

 「鎌鼬、の、割に、良い事、言う。・・・悪い、けど、僕、もない」

 

 

 「私もないが、まあ一つこれをやろう」

 

 

 全員が首を横に振る中、鎌鼬は一冊の本を龍一に突き出した。

 

 

 「なんだこりゃ」

 

 

 「地獄についての伝聞録だ。死なないように、ではなく、死んでからを考えるのも策かと思ってな。事前に知っておく事で案外対策できるのではないか?」

 

 

 「お前の中で俺は地獄行きで確定してるんだな」

 

 

 「何、天国や煉獄なら適当に逃げ出すであろう?」

 

 

 ニヤリと笑うぬらりひょんに、龍一は苦笑した。

 

 

 「図星だな。・・・さて、そんじゃ、お前らの手も借りるとするか。地獄対策の相談。・・・何か事前情報ある人」

 

 

 「は、い」

 

 

 「なんだ、塗り壁。・・・ああそうか、お前一回死んでるもんな。生き返らせたけど」

 

 

 「うん。・・・向こう、でも、体格は、同じ。能力も、地獄は壊せないし、鬼も倒せない、けど、使える」

 

 

 「妖怪でそれなら神の補正を入れるか?」

 

 

 「それは却下だ幽夜。補正なしで想定しておこう」

 

 

 「・・・この針山ってキツイのか?」

 

 

 「別に、なんとも、なかった」

 

 

 「手が刃物になる奴と壁にとっちゃどうでも良いわな」

 

 

 「血の池とか普通じゃねえの?」

 

 

 「黙れ半液体」

 

 

 「舌抜きとか、痛そうですし、喋れなくなりそうですね・・・」

 

 

 「龍神は舌が二枚あるから問題はないぞ」

 

 

 「そうなんですか!?」

 

 

 「遠回しに俺が嘘つきって言うなぬらりひょん」

 

 

 「この、最後の一人に、なるまで、殺し合う、の、大変、そう」

 

 

 「俺だぞ?」

 

 

 「・・・訂正。楽そう」

 

 

 「これ落ちたら上がってこれるのか?そこも懸念点じゃないか?」

 

 

 「それは落ちる前の安全な場所に一度でもいればワープ出来るから、なんとかなる」

 

 

 「・・・あの、どちらかと言えば鬼と龍一さんの根比べになりそうですね・・・」

 

 

 「何その見たくもねえ泥展開」

 

 

 「鬼、かわい、そう」

 

 

 「俺の心配は?」

 

 

 「不要」

 

 

 「スッと言葉切らずに言うな馬鹿」

 

 

 龍一は嫌そうに顔を顰めると、ぬらりひょんの持っていた本を取り上げた。

 

 

 「とりあえず・・・もらっておく。また頼みにくるかもしれんが、まあその時は助けてくれたら、助かる」

 

 

 龍一はそう言うと、外へ出ようとした。

 しかしそれをぬらりひょんが制し、龍一に対して口を開いた。

 

 

 「龍神。・・・俯瞰風景を楽しむのも、時にはいいと思うぞ」

 

 

 「なんじゃそりゃ、頭おかしくなったか?」

 

 

 「顔を洗えという事だな」

 

 

 「それ、風魔にも言われたよ。なんだか知らんが覚えておく」

 

 

 龍一は退出した。

 そしてそれをぬらりひょんは見送ると、再び各々のする事のために散った面々に聞こえない声で低く笑い、呟いた。

 

 

 「・・・死なんよ、貴方は」

 

 

 

 

 次回へ続く




 ありがとうございました。

 どのくらい次の期間が空くかわかりませんが、お時間を頂けるならお待ち下さい。
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