真・幻想創星録   作:青銅鏡(銀鏡)

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 私が書くと必ずこいつがボス扱いになってますね。


 ゆっくりご覧ください。


第百七話 西行妖

 西行寺幽々子が死んだ。

 それは紫と妖忌にとってはあまりにも唐突で、風魔と俺からすれば、知っている未来の中で最悪の未来だった。

 

 

 「・・・急ぎすぎよ」

 

 

 あんなに元気だったのに。と紫が暗い顔で呟く。

 当然だ。確かに少し寝込んではいたが昨日まで、正確にいえば十時間ほど前までは、俺と彼女が初めて顔を合わせた時となんら変わっていなかった。

 死因は不明。死に方を表すならば、突然死んだ。としか言えない死に方。

 外傷もなく、持病もなく、ただ手に桜の枝を持って死んでいた。

 言わずもがな、その桜の枝は俺を殺すはずの桜の枝だ。

 実際、例の桜は以前まで葉の一つもつけていなかったのが嘘のように、花が三分咲きほどになっている。

 紫と妖忌もその異常さに気がついたのか、幽々子が亡くなってから重苦しい空気に包まれた二日間を通り越し、強張った、紫に至っては涙の跡を残したまま、俺と風魔の前に現れた。

 

 

 「・・・どうした、そんな仇討ちに向かうような顔で」

 

 

 風魔の言葉に、妖忌が膝をつき、頭を垂れる。

 

 

 「お願いがございます」

 

 

 「堅苦しく言うな。なんだ」

 

 

 「力を、貸して頂きたいのです」

 

 

 私からも、と紫が俺の前に立ち、凛とした顔で俺を見上げる。

 

 

 「私からもお願い。・・・幽々子を、取り返したいの」

 

 

 風魔が俺の方を見る。

 それはどうするのか聞くためではなく、行く。と言う意思表示だった。

 

 

 「・・・構いやしねえが、何をどうするんだ?」

 

 

 俺の質問に紫は少しだけ表情を緩め、何が起きているのかの説明を始めた。

 

 

 「・・・昔、幽々子が言ってたんだけど、あそこの今咲いている桜。あそこで幽々子のご先祖様が何人も亡くなっているの」

 

 

 「実際何人ほどだ」

 

 

 風魔の問いに、妖忌が続けた。

 

 

 「十数名亡くなっております。・・・桜の下で自害する者、病に伏す者。理由は様々ではありますが、皆あの桜の下で亡くなることがございました」

 

 

 「それで、この二日の間に私が幽々子の生気の残りを辿っていたのだけれど、幽々子の持っていた枝には、一つもついてなかったの」

 

 

 「そりゃ枝が吸ってるってことか?」

 

 

 「ちょっとだけね。・・・幽々子自身は、あの桜に吸われてるの」

 

 

 そうしてあの桜を指差し、紫は目つきをより真剣なものにする。

 

 

 「だから、私達はあの桜を・・・西行妖を倒そうと、思うの。だから!・・・龍一くらいの力がないと、無理なの」

 

 

 再度風魔がこちらを向く。

 その顔は確認でもなく、少しだけ歓喜が混じった質問だった。

 

 

 「だそうだ。どう殺す?」

 

 

 「・・・一回亡き者にしてから、幽々子の生気取り出しても大丈夫じゃねえかな。逆に不用意に軽く封印して後々フルパワーで復活されてもなあ。気が狂うだろ」

 

 

 「ならば仕留めるのだな?」

 

 

 「まあそうなるだろうな」

 

 

 まあ勝てばいいのよ。と俺は笑い、紫の頭を軽く撫でる。

 

 

 「ただ何もせずに人一人殺せるような奴相手にするんだ。全員死ぬ気で働いてもらうからな」

 

 

 「ええ!」

 

 

 「無論、そのつもりです」

 

 

 「・・・死ぬ気で、とは縁起が悪いな。死なない程度に働く、にしないか?」

 

 

 「・・・わかったよ。んじゃ死なない程度に働いてもらって倒すからな!」

 

 

 風魔がニヤリと笑い、頷いた。

 

 

 

 ____________________

 

 

 

 西行妖の真正面。西行妖に俺が近寄るたび、不自然に枝が靡く。

 それは警戒してはいるが、いつでも付け入る隙があれば襲ってくる。そんな風に見えた。

 自身の指先を軽く切り、滲み出した血で創造していた小さな弾丸を包む。そして使うのはいつぶりか忘れるほどに使っていなかったライフル銃、叢雲に装填する。

 照準を合わせ、ライフルを構える。

 そして引き金を引く直前、西行妖が動いた。

 数百にも分かれていた枝が幹を守るように。それらに美しく咲いていた花弁は、サメの歯のような形に変わり、俺へと切っ先を向けて飛んだ。

 

 

 「今!」

 

 

 枝ごと幹を粉砕せんと、引き金を引いて飛び出した弾丸は直進する。

 当然防御の姿勢を取らなかった俺には数多の花弁が突き刺さらんと迫り来る。

 だが、それらは俺と西行妖の間に開いた裂け目に当たると消え、俺の背後に飛んだ。

 そして横合いの桜の木に隠れていた風魔と妖忌が飛び出し、花弁を残さず切り捨てた。

 風魔の背後には、こちらの様子を見て心配したような紫がいた。

 

 

 「・・・間に合った?」

 

 

 「余裕で間に合ったぞ。引き続き下がってろよ」

 

 

 「あんまり無茶しないでよ?」

 

 

 「囮程度で無茶もないと思うが、無茶しないようにするさ。・・・さてどこ見てんだ西行妖?よそ見してるともう一発ぶっ放すぞ?」

 

 

 弾丸は幹には届いていなかったが、枝を半分程粉砕していた。

 その破壊力に警戒を向けたのか、枝は全てこちらへと向いた。

 

 

 「まあ植物がどこ見てるか分かんねえんだけどな!っと!」

 

 

 枝の一つ一つが鋭利な槍となり、俺を地面ごと縫い付けようと襲い掛かる。

 指を打ち鳴らし、周囲に六角形の薄い小さな防壁を展開、枝の突き刺さるであろう地点に移動させて攻撃を防ぐ。

 花弁がこちらに来ていないのは確認済みなので、紫達の方を振り返る。

 

 

 「セアアッ!!」

 

 

 妖忌が二振りの刀を振り回し、周囲の空間ごと粉々に切り裂く。

 紫はスキマを花弁の迫りくる方向に展開し、花弁が花弁と激突するように位置をズラしていた。

 巨大な根が一本だけ紫に襲いかかったが、紫を守るようにいつの間にか立っていた風魔の前まで迫ると、見事に切り裂かれた。カッコいいじゃねえかよ。

 

 

 「もう一発行くぞ!」

 

 

 囮の俺は枝を防ぎ切り、装填を終えたライフルを再度放つ。

 同じように枝を盾にして受けに来たが、初撃よりは盾が薄かった。

 再度盾を貫通した弾丸は、今度は幹に突き刺さった。

 それを皮切りに、西行妖の枝がいとも容易く防壁を破壊した。

 

 

 「マジか・・・ッ!?」

 

 

 このタイミングで未来視が発動し、やはり自身が倒れることを予測する。

 咄嗟に幹に突き刺さった弾丸を引き寄せ、そのまま周囲の枝を砕くように進行方向を操作。はるか彼方の空へと飛ばす。

 

 

 「避け・・・るわけねえだろ!」

 

 

 次いで目前に迫る新しい枝と花弁。

 花弁を蹴り上げて弾き返し、枝を跳躍して避けようとすると、背後の妖忌に照準を変える事を視た為、枝を避けることを止めて花弁を蹴り上げた脚を振り下ろして踏み砕く。次いで風魔、妖忌、風魔と順に全て違う死に方を視るので八岐の剣を顕現させ、右手で下から上へと体を後ろに捻りながら振り上げる。

 三日月状の軌跡を残して放った斬撃は、ほんの僅かに周囲のただの桜に擦り、根こそぎ吹き飛ばした。

 そのまま剣を左手に持ち替え、右手の時の回転と合わせて一回転になるように振り抜いて枝を斬り裂いた。

 

 

 「次いで俺が半身ぶっ飛んで風魔の目が潰れて妖忌の腕が飛ぶ・・・クソゲーだなこれ!」

 

 

 背後の空間を異次元に繋ぎ、そこからいつぞやの流線形の物体と小さな鏡を以前よりも莫大な量、それぞれ百枚程度を周囲に飛ばす。

 そして流線型の物体からコンマ一秒ごとに遅れてレーザーを放ち、各々を鏡に反射させて縦横無尽に飛び回らせる。

 脳に数百の視覚情報が一気に追加され、脳が熱くなっていく。

 しかし一発も地面に当てまいとレーザーを反射させ、それ以上の数で殺しに来る枝と花弁と根を焼き切っていく。

 しかし当然、操作している間は動きが遅くなる俺は、レーザーの雨の中心地で防壁を展開して目の前に重ね掛けしていく。

 

 

 「・・・ッ!」

 

 

 そうしているうちにも映画であれば左端に爆発するカウントダウンでもついていそうなほど、未来はより濃く、確定しつつある。

 ただ死んでなるものかと頭の中では反抗し続け、更に防壁へと力を注ぐ。

 

 

 

 神矢龍一が倒れるまで、後七分。

 

 

 次回へ続く。




 ※龍一の血に火力が上がるバフ効果はありません。


 次回もお楽しみに。
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