真・幻想創星録   作:青銅鏡(銀鏡)

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 ただでさえ何がしたいか分からないこの作品の中で、更に訳がわからない展開となります。

 それでもよければゆっくりご覧下さい。


第百九話 箱庭の中

 龍一が目を覚ますと、一面白い壁に囲まれた小さな部屋だった。

 机が一つ、椅子が二つ。机の上には湯気の立つコーヒーカップが一つ置いてあるだけで、他には音も、匂いも、何もなかった。

 その片方の椅子に龍一は座っていて、ふと目の前の椅子に誰かが座った。

 

 

 「初めまして、龍一君」

 

 

 「貴方は・・・あの時の?」

 

 

 「ん?・・・あー、なんと言うのか。お前が最初に転生して来たときに会った奴ではないからの?」

 

 

 「・・・?」

 

 

 「まあとりあえず落ち着くといい。元気か?」

 

 

 少しだけ、龍一の思考が止まった。

 目の前の人物は、かつてこのような世界にいたある人物に姿形はともかく、放つ空気はどこか似ている。

 が、しかし向こうは初対面と言う。

 

 

 「元気、でしたね」

 

 

 「まあそうだろうとは思ってたが、見てないうちに何かあると困るからな。・・・んで?一応魂抜けてここにおるが、どうじゃった?」

 

 

 「・・・次はもっと普通の人間が良かったですかね。龍神はちょっと疲れました。と言うか語尾それなんですね」

 

 

 「直せと言われたら治せるが、これがいつも通りじゃな。それにその答えも予想通りじゃ」

 

 

 苦笑する龍一の目の前の男は、呆れたように笑った。

 

 

 「耐えられるなんて思っとらんからな。そりゃあ」

 

 

 龍一の笑顔が固まる。

 男はやれやれとばかりに首を振ると、勘違いしてないか?と笑った。

 

 

 「誰も、『龍神としての責務を全うせよ』とは言ってないからの。あやつも龍神として。しか言っておらんぞ」

 

 

 「な・・・でも、あんたは俺と違うからやり直せって」

 

 

 「ん?ああ・・・もしやまだ勘違いしておるか?俺・・・儂は転生させたあの龍一じゃない。なんならそ奴の知り合いですらない。儂はただの神様だ。確かに龍一は儂がつけた名前ではあるが・・・そもそもだ。もしそんな奴なら初めましてから始めないのではないか?」

 

 

 男はニヤリと笑い、指を打ち鳴らした。

 すると、男の周りにいくつもの地球らしき球体のものが現れ、男の周りを漂った。

 

 

 「まず、お前と儂は同格じゃあない。儂の方が客観的に上なんじゃよ。何しろお前を神様に出来るのは儂なんじゃから。つまるところ、儂お前の作者になるわけじゃな」

 

 

 「作者・・・?」

 

 

 「うむ。この私の住む世界には、お前同じような境遇の人間が沢山いる。それこそお主がかつていた世界の人口を超えるほどとは言わないが、それなりにな。それらを全て管理しているのが、儂と言うことになる。お前が会った龍一さんと言う奴もまたお前ではあるのだが、あくまで幾層にも並べられた世界の中の別の龍一に過ぎんのじゃ。詳しく言えば三人目じゃな」

 

 

 「・・・?」

 

 

 「あー、おそらく理解しとらんだろうから補足する。お前の世界をRPGのゲーム内とするじゃろ?お前は主人公としてその世界に転生して行くが、お前を直接転生させた龍一はそのゲームの所有者。まあ未来の自分でいいじゃろ。そしてそのゲームはゲーム内のキャラクターが持っているゲーム機であり、その所有者が儂じゃ。・・・まあ当然この上もおるんじゃがな」

 

 

 その話は置いといて。と男は笑った。

 

 

 「そりゃあ自覚が無ければ責任を持とうとするじゃろ。ただお前にそんな権限は初代じゃあるまいし、渡しておらん。あの創星録だったか、アレで生殺与奪の権限取りに来るのは見事だったが、そもそもお前が本当に全ての権限を持つ神様なら、死ねと思った相手はすぐ死ぬし、自分の不死性が剥がれることもないじゃろ。・・・自惚れるな、人間。お前はたまたま初代龍一に似ていたからこの世界線に放り込まれているだけで、特に選ばれた存在とかそんなんじゃあないぞ」

 

 

 と言うわけで文句はあるかの?と男は口角を吊り上げて笑う。

 龍一は拳を握り締め、しかし困ったような顔で嘆息した。

 

 

 「なら、今まで龍神らしくしてたのは無駄だったんだな?」

 

 

 「まあそうじゃな。儂らから見ればロールプレイングしてるみたいでネタ性は抜群だったが。一人悶絶しておったが見てて楽しかったの」

 

 

 「そうか。・・・なんか、紫に申し訳ない事したな」

 

 

 「ほお、お前も紫の話を出すか。大切な人か?」

 

 

 「ああ・・・大事な人、かな」

 

 

 「初代の龍一がそう答えるのじゃが、それはお前の命よりか?」

 

 

 「そりゃ言い方が悪い。死ねばあいつが泣く、だがあいつの方が大事だ。なんて言えばいい?」

 

 

 「ほう・・・では、お前自身、儂に恨み言は?」

 

 

 「別に」

 

 

 「儂はお前を玩具にしとるんじゃぞ?言えばお前が誰を救おうがそれを全てしょうもない事って言い切っとるのじゃぞ?」

 

 

 「言われて初めて知ったくらいだから、どうとも思えない。しょうもない事してるのも事実だしな」

 

 

 「・・・お主も中々面白いな。基本これくらい言うと自分より上がいる事に腹が立って殴りに来るか、自分を玩具だって言われて怒るかくらいすると思うんじゃがな。まあ謝るとしてもすまんなテヘペロ程度で済ますんじゃが。ブン殴られるのがオチじゃがな」

 

 

 龍一はよく分からないと言うふうに首を横に振る。

 男はほんの少し瞠目し、そして苦笑した。

 

 

 「・・・分かった。本当に儂を恨んでないのだな。ならそのまま向こうの世界で生きてもらおう。そもそも死にかけたからどうするか聞くために呼んだだけじゃしな。それにお前は生きておる方が面白い。せいぜいネタになるような事を見せてみよ。一つ前の世界よりも面白くなりそうじゃ」

 

 

 「期待に沿うつもりはないし、特に何も出来ないとは思うけどな。・・・後、死んでないんだな、俺」

 

 

 「そりゃあ当然じゃろ?お主が死ぬ事を望んでないんだからそんなさっくり死ぬわけないに決まっておろう。そもそも死んでも百年経てばなんか復活するわい」

 

 

 そうか。と龍一は微笑し、男に向けて質問した。

 

 

 「ちょっと聞いていいか?」

 

 

 「なんでも言うといい」

 

 

 「お前の上には何人いるんだ?」

 

 

 「さあ。儂もただの一人の神じゃからな。ただ上の位、上司みたいな奴らは数えきれないほどおる。お前も含めて儂ら、そしてそれ以下らはただの塵に過ぎない。ゲームの中のNPCがゲームしてるようなもんじゃな。後輩は一人おるぞ」

 

 

 「そうか。・・・そう言えば、風魔はどうなってるんだ?」

 

 

 「風魔?・・・ああお前の横に時々おる奴か。あ奴は・・・珍しく前世の記憶を忘れんタイプの人間じゃな。・・・ふむ、前の世界にもおったようじゃから、お主と生きたのではなく、先代の龍一を見ておったのではないかの」

 

 

 「そっか。・・・じゃあ、なんで俺は死ぬ未来を見たのに死んでなかったんだ?」

 

 

 「それは視点の問題じゃな。鏡か何か通して未来視使ってみろ。と言うか他にも言われた筈じゃが。そもそも死ぬ未来なんか見とらんのじゃよ」

 

 

 「鏡を見ろとしか」

 

 

 「揃って遠回しに言うのが好きな奴らじゃの。ちゃんと未来視まで使うといい」

 

 

 「分かった。・・・他はない」

 

 

 「・・・うむ、質問は終わりか?・・・それでは元から怒ってないとは言え、許してくれているお前に面白い話をしよう。今後とも儂的には面白い事が続々と起きる予定じゃ。ただお前の仲間には自分の利益の為に人を殺す悪人はほとんどおらん。それだけ伝えておこう」

 

 

 「・・・正直、今もよく分からないが、ありがとう」

 

 

 「うむ。まあ二度とここには来ないだろうから、達者でな。後二度と権利侵害をするなよ、その時は上の次元の作者として創星録を消滅させるからな。使うとしてもあと一回だぞ。後始末も二人で出来るとはいえ面倒なんじゃ」

 

 

 「あんなもん二度と使うわけないだろ」

 

 

 「さあ、分からんぞ?では引き続き幸運を。龍一」

 

 

 「わかったよ、神様」

 

 

 「ああ、儂には名前があっての・・・ってもうほぼ話す事も出来んほど消えてしまいそうじゃの。それじゃあ向こうのほうも適当に目を覚まさせるか。ほれ」

 

 

 男が掌を閉じると、龍一のいた場所には何もなくなった。

 その様を眺めていた男は、嬉しそうな顔で一つの球体を手前に寄せ、机の上に浮かべた。

 それはまるで、過去の誰かを思い偲ぶようだった。

 

 

 「おい■■、遊んでるならこっち手伝え」

 

 

 「遊んどらんぞ。これはそもそもお前が途中で壊したからこうなっとるんじゃが」

 

 

 「そんな昔の話よく覚えてるな」

 

 

 「ここではお主らの一年が一日じゃからな。友との思い出を忘れる馬鹿が何処におるんじゃ。引き続き生き延びさせるから、お主が見なかった百年間、せいぜい眺めて悶絶するといいわ」

 

 

 「冗談キツいぜ」

 

 ____________________

 

 

 目を覚ます。

 先程までの夢のような場所とは違い、風の音がする。

 ぼんやりとして立ち上がることの難しそうな感覚の中、左肩から先の感覚がない事に気がつき、戻ってきたのだと理解する。

 ゆっくりと頭を上げ、周りを確認する。足元には布団がかけられており、枕元には食事を置いてくれていた。

 

 

 「いただきます」

 

 

 右手だけでおぼつかないものの、茶碗の米を咀嚼し、味噌汁を飲み、少し焦げ目の多い焼鮭を頬張る。

 全て食べ終える頃には、感覚ははっきりとして、難なく立ち上がる事が出来た。

 食事を載せていた盆を片手に持ち上げて、物音のする部屋へと向かう。

 長い廊下を通り、障子の開け放たれた部屋に向かうと、風魔と妖忌、幽々子が談笑していた。

 風魔と最初に目が合い、すぐさま風魔は幽々子と妖忌に人差し指を見せ、静かにのジェスチャーを取った。

 妖忌と幽々子は不思議そうに風魔を見て、そして此方とも目が合った。

 

 

 「りゅ・・・んんっ、失礼」

 

 

 うっかり妖忌は口を滑らせかけたのか、俺の名前を呼びかけ、そして口を塞いだ。

 幽々子は楽しげに手で口元を隠しながら、奥の調理場を指さした。

 そこには食器を洗っている紫が背を向けていた。

 幽々子を振り返ると、にこにことしたまま行けと指し示してくる。

 当然風魔も乗り気で、妖忌も止める気は無さそうだったので、紫に声をかけた。

 

 

 「御馳走様。食器どうすればいい?」

 

 

 「あ、そこ置いてくれる?」

 

 

 「はいよ」

 

 

 「美味しかった?」

 

 

 「ああ。味噌入れない味噌汁作ってたのにな。上手くなったな」

 

 

 「でしょう?」

 

 

 紫がこちらを見ずに、嬉しそうにふふんと鼻を鳴らす。

 しかししばらくしてその一連の会話がおかしいと思ったのか、こちらを振り返った。

 

 

 「・・・あ、れ?」

 

 

 「おはよう、寝坊したわ」

 

 

 返事はなく、体当たりだけが返ってきた。

 

 

 次回へ続く




 この話に対して、良くわかんねえよボケが。と言われそうなのでヘタクソながら説明させてもらいます。
 第一話で鏡一を二話以降の龍一にした旧龍一
 この話で龍一と話している神様は別人です。

 旧龍一と龍一は権限的には同じ位置の別世界として属しますが、流れている時間のみが違います。旧龍一の世界の西暦2000年が龍一の世界の始まりとなっています。当然旧龍一の前の龍一も何人かいます。具体数的には三人いる事になります。
 そしてこの話の神様は、旧龍一よりも更に前の、最初の世界の矢川鏡一を龍一にした存在です。
 龍一の今の世界を作り上げ、長々と管理し続けるのが神様の立ち位置です。
 つまり龍一と旧龍一の間は先輩と後輩、龍一と神様は生徒と教師の位置づけになります。当然教師の上に教頭がいるように神様に上もいますし、教師内でも先輩後輩がいます。


 なら神様は誰か。
 初代龍一だけは、別の神様に任命された事になります。
 そんな任命するキャラブレブレのジジイみたいな神様、どっかにいましたね。


 次回もお楽しみに。
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