真・幻想創星録   作:青銅鏡(銀鏡)

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 相変わらずの感覚クソ開き投稿です。
 入試関係が一段楽着きましたので、なんとか復帰できました。

 ゆっくりご覧ください。


第百十四話 後輩

 「幸、夜・・・」

 

 

 少女は瞠目し、目の前で薄く笑う存在を改めて見上げる。

 

 

 「なんだ?見てくれが人間に近くて意外か?」

 

 

 幸夜。

 紅魔館を拠点に活動し、ふらりと下町に現れては人外を殲滅し、害なす人間を蹂躙する為、多額の懸賞金がかけられている。

 人外に少しでも関わったことのある人間ならば、知らない方がおかしい程の憎むべき人物。そんな言葉を数度ならず聞いたことがある。

 それが目の前にいる。

 彼女はやや絶望したように顔色を青くしながら、それでも睨み上げる。

 

 

 「なにを、するつもり」

 

 

 「いや、だから・・・お前を雇おうとしてるの。よく分からんが、旦那様がお前を連れて来いと言ってたんだよ。・・・んで、その為には真人間になってもらう必要があるから、とりあえず軽いものから勉強して欲しいんだな。ちなみに拒否権もあるぞ?何もせずに帰ってもいいし、俺と館の主人を殺して帰る事も選択肢にはあるが、悪いことは言わない。殺して帰るのはやめとけ」

 

 

 俺じゃない方で詰むぞ。と幸夜はどこか死んだ目で笑い、部屋のドアを開き、退出する。

 退出する間際に、また後で見に来るから、それまでに帰るなら帰れよ。と言い残すと、ゆっくりとドアを閉じた。

 取り残された少女はぽかんとしたように幸夜を見送り、暫し放心していた。

 

 

 ____________________

 

 

 「・・・んで、どうするんですかあの子供。同僚目の前で殺されてますし、はい喜んでって両手挙げて受け入れるとは思わないんですけど」

 

 

 再びオルゴイの寛ぐ部屋に来た幸夜は、跪く事もなく、コーヒーを啜りながらオルゴイに質問した。

 

 

 「確かに、喜んでとは行かないだろうが、あの子はこの提案を受け入れる。そう運命は決まっているのだよ」

 

 

 「お嬢様が聞いたら悶え苦しんで死にそうな台詞ですね。確定してるんです?」

 

 

 コーヒーの渋さか、それともオルゴイの台詞に顔を顰めたのか、渋い顔のまま質問した。

 オルゴイはそんな表情の幸夜を見て薄く笑うと、頷いた。

 

 

 「ああ。きっとあの子は受け入れてくれるだろう。もしそうなったら、お前に教育係を頼むつもりでもあるぞ」

 

 

 「・・・美鈴じゃダメなんです?」

 

 

 「美鈴もお前に勝るとも劣らない立派な使用人なのだが・・・遺憾せん戦闘になると、言葉が足りなくなってな」

 

 

 「ああ、擬音で説明する奴ですか」

 

 

 「・・・うむ。小悪魔もパチュリーの召使いという点で、教育係にさせるわけにも行かんからな。それに振り回されそうだろう?」

 

 

 「成る程ね、それで俺と。・・・ほんとにここ、辞めれます?」

 

 

 「その時はどうにかするし、私が使用人になればなんとかなる」

 

 

 「使用人いなくて自分が使用人になる館の主とか見たくないっすよ」

 

 

 なら、その為にも育成を頼むぞ。とオルゴイが笑うと、幸夜はぐ。と呟き、了承した。

 そして再度少女の部屋へ向かう間、苦笑した。

 

 

 「口先も回るよなあ、あのおっさん。・・・まあそもそも、帰ってるかもしれねえってのにな。入るぞー」

 

 

 幸夜が部屋に入る。

 そしてほんの少しだけ目を見開いた。

 

 

 「・・・残るんだな?」

 

 

 「残る」

 

 

 「そうか。それじゃあ「続き」あ?」

 

 

 「これの続き、どこ」

 

 

 ぐい、と少女が幸夜に本を押し付けるようにして渡す。

 幸夜はそれを受け取り、そして少女の頭を手で軽く押さえつける。

 

 

 「待て待て。先に挨拶だ。・・・俺は幸夜だ。よろしくな」

 

 

 「・・・よろしく」

 

 

 幸夜の突き出した手を、恐る恐る少女が掴む。

 幸夜ニヤリと笑うと、少女の手をしっかり掴み、軽く引いた。

 

 

 「んじゃ、この本の続き取りに行くか。その後はお前の服な」

 

 

 「服・・・?あるけど、どうして?」

 

 

 「館に残る以上それなりの服を着て貰わねえと困るのよ。本読んでる間に髪の毛整えたりもするからな。ボサボサで見てらんねえ」

 

 

 「・・・ん」

 

 

 「よし、じゃあちゃんと掴んでろよ」

 

 

 ____________________

 

 

 幸夜に言われたように手を繋ぎ、新しい本を取り、身だしなみを整えられた少女は、自身の髪を梳く幸夜に、やや言葉が途切れ途切れになりながら質問する。

 

 

 「貴方は私の事、気味悪がらない。何故?」

 

 

 「・・・髪と目のことか?」

 

 

 「そう」

 

 

 「・・・まあ確かに銀髪に赤目は珍しいわな。尚更人の子なら、気味悪がられるか。なんで俺が気味悪がらないかってのは、単にそう言うのもいるって思ってるだけだぞ、多少は珍しくは思うさ」

 

 

 「いるの?」

 

 

 「人じゃあないけどな。色素抜けたように白い髪に、同じく色のない目。そんな人もいれば、緑色をした髪の人もいる。・・・まあなんだ、大抵の人には変だと思われるかもしれんが、俺はそれだけじゃお前を否定しねえよ」

 

 

 終わりな。と幸夜は少女の髪の一部を三つ編みにし終えると、ぽんと背中を押した。

 少女は幸夜が目の前に置いていた鏡の前に立つと、不思議そうにくるりと回った。

 

 

 「・・・私?」

 

 

 「そ。まあ割と身なりも良くなったんじゃねえの?」

 

 

 「そう」

 

 

 明らかに質感の変わった自身の髪を触りながら、咲夜は幸夜の方を見た。

 

 

 「貴方を殺すべきだと思ってた」

 

 

 「そりゃ悪名高いしお前の敵だった奴だ、仕方ない」

 

 

 「けど、今は殺すべきか分からない。・・・それでもここにいていい?」

 

 

 「何度も言うがこっちはウェルカムだ。俺が責任持って面倒見るからな」

 

 

 「うん。・・・ありがとう?」

 

 

 「どういたしまして。・・・しばらくは俺と行動を共にするのだけはよろしくな」

 

 

 「わかった」

 

 

 ____________________

 

 

 「それで・・・その子が私の言ってた子、なのよね?」

 

 

 「そうなりますね。違いました?」

 

 

 「いいえ?私が視た時よりも小綺麗だと思ったのよ。貴方やっぱり妹とかいない?」

 

 

 「それよく言われますけど、いませんからね」

 

 

 大図書館にて、珍しくレミリアに呼ばれた幸夜は自身の隣に少女を置いて、テーブルを挟んで会話していた。

 付近には読書をしながら時折こちらを確認するパチュリーとその側に立つ小悪魔。近くのソファーでオルゴイの膝の上に座りながら本を読むフランドールがいる。

 

 

 「・・・それで、今幸夜の横にいるってことは、予想通り受け入れてくれたのよね?」

 

 

 「そうなるんじゃないですかね。大丈夫だよな?」

 

 

 「大丈夫。幸夜の言う通り殺さないし襲わない」

 

 

 「ほら、大丈夫でしょう?」

 

 

 「貴方いなかったら襲ってきてるじゃない」

 

 

 呆れたようにレミリアは嘆息し、しかし面白げに少女を見る。

 少女はやや警戒はしているものの、幸夜が横にいるせいか、殺意や敵意を向けてはいなかった。

 

 

 「それで、幸夜から見ればこの子はどうなの?」

 

 

 「・・・俺みたいな召使いにするなら五年は確実にかかりますけど、ただの迎撃用にするなら一ヶ月で済みますよ」

 

 

 「五年・・・思ったより早く済むのね」

 

 

 「人間からすりゃ中々だと思いますけどね」

 

 

 「それもそうね。で、やってくれるの?」

 

 

 「そこで本読み聞かせてる方からのご依頼でもありますからね。ちゃんとこなしますよ」

 

 

 「ありがとうね、幸夜」

 

 

 「従者として当然の事ではあるんですが、礼を言われるのは有り難いですね。いい新当主に恵まれました」

 

 

 「休みは増えないわよ」

 

 

 「前言撤回、鬼です」

 

 

 冗談だし私は吸血鬼よ。とレミリアは笑い、幸夜もつられて笑う。

 少女はそんな二人を不思議そうに眺めていた。

 やがてレミリアは席を立ち、少女の前に立つ。やや少女に緊張の表情が浮かび上がるが、レミリアはそれをほぐすように微笑んだ。

 

 

 「初めまして。私が幸夜の主人で、貴女の主人でもあるわ。これからしっかり働いてもらうから、頑張って頂戴ね」

 

 

 「・・・わかった」

 

 

 「ありがとう。・・・それじゃあ幸夜、後は任せるわよ」

 

 

 「御意」

 

 

 やけに大仰に幸夜は頭を下げ、細く、しかし優しい視線を少女へと向ける。

 しかし、それからしばらく彼はこの行動を軽く後悔することになる。

 

 

 次回へ続く

 




 ありがとうございました
 次回もお楽しみに
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