真・幻想創星録   作:青銅鏡(銀鏡)

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 ほぼ二月ほど空きました、申し訳ありません。
 ギリギリと言えないレベルで年末に滑り込みました。
 お時間があればゆっくりご覧ください。
 


第百十七話 幻想郷

 

 幻想郷。

 八雲紫の下、人間と妖怪が共存を可能とする、理想郷に近い場所として作り上げられたこの場所。過去には理想郷と呼ばれていた事もあった。名が変わったのはとある理由のため。

 人間からすれば長く、妖怪からすればまだ短いような年月が、幻想郷というものが誕生してから過ぎることとなった。

 そこに中心部分があるとすれば、中心から少し離れた小さな丘の上。

 ひっそりと建つ神社の境内を、一人の少女が掃除していた。

 

 

 「ふぅ・・・」

 

 

 彼女の名前は博麗霊夢。

 幻想郷に構える、博麗神社と呼ばれる小さな神社の巫女。

 彼女は幻想郷にて、人間と妖怪の調和を図る存在として存在し、その務めを果たしている。

 そして現在、幻想郷内とはいえまだ成人していない彼女には保護者のような立場として八雲紫が様子見に来ることがしばしばあるのだが、

 

 

 「お疲れ様、霊夢」

 

 

 「また様子見に来たぞ、元気か?」

 

 

 その八雲紫の隣に、ほぼ毎回龍神がいる。

 最初こそ彼女も龍神の自己紹介に目と耳を疑ったが、ある程度慣れてしまえば、ただの気の優しい年上の男の人でしかなかった。

 ちなみにその事を本人に言うと、非常に機嫌を良くしたらしい。

 

 

 「また来たのね。まあ適当に座ってて」

 

 

 「そうさせてもらうわね」

 

 

 「毎回悪いな。・・・ここまで持ってくるのも重いだろうし、土産持ってきたんだが、裏の倉庫に放り込んで大丈夫か?」

 

 

 「いいわよ別に。そっちも親切心で様子見に来てくれてるんだし、龍一さんは紫と違って気の利いた事してくれるしね。良かったら入れといてくれる?」

 

 

 「・・・紫と相談して持ってくるもん決めてるから、気を利かせてる点では俺と変わらんと思うがな。・・・短時間で腐る物は持ってきてねえから慌てて消費しなくて良いぞ」

 

 

 「はーい。と言うか、相変わらず龍一さん、紫に甘いわよね」

 

 

 「まあ惚れてるしなあ。・・・紫ー!荷物これで全部だよな!?」

 

 

 「そうよー!?さっきから何話してるのー!?」

 

 

 「秘密ー!!」

 

 

 「ずるーい!」

 

 

 「ガラにもねえ事言ってんじゃねえよバーカ!座って待ってろ!」

 

 

 「はーい!」

 

 

 ほんの少しだけ口角を上げる龍一に、霊夢は呆れたように目を細めた。

 

 

 「・・・なんだよ、よくもまあそんな恥ずかしいやり取り出来るなってか?」

 

 

 「もう慣れたわよ。なんでこんな奴らが幻想郷作って、神様やってるか疑問に思っただけよ」

 

 

 「そりゃ俺らが一番疑問に思ってる事だな。なんで俺が龍神様なんだろうなっと」

 

 

 博麗神社の縁側、紫が座っていた横に龍一が座り、龍一の反対側に霊夢が座る。

 そして紫と霊夢は同時に視線を龍一に向けた。

 

 

 「なんだ、茶入れろってか?」

 

 

 龍一は面白そうに二人を眺めると、ケタケタと笑いながら立ち上がった。

 

 

 「はいはいかしこまりましたよーっと。龍神に茶入れさせるとはおっそろしい神社だな」

 

 

 「龍一さんが入れる方が美味しいからしょうがないわよ」

 

 

 「私はお客だものね」

 

 

 「その理論でいくと俺も客なんだがな。・・・ほら、火傷するなよ」

 

 

 「ありがと」

 

 

 「ありがとね、龍一」

 

 

 はいはい。と笑ったまま龍一は紫の横に再度座り、長い息を吐いた。

 それを見た霊夢は、ニヤリと笑った。

 

 

 「また出た。龍一さんのやけに長いため息」

 

 

 「あー?」

 

 

 「それもよ。そのやけにくたびれたオッサンみたいなの、なんとかならないの?」

 

 

 龍一はきょとんと首を傾げるが、やがて苦笑いをしながら頭を掻いた。

 

 

 「実際もうオッサンだからなあ。それにこう、ここに足をつけて百年ちょい経つが、やっぱこう平和だと気が楽だなあって思ってな」

 

 

 「毎回そんな事言うけど、逆に龍一さんの今まではどれだけ平和じゃなかったのよ」

 

 

 「・・・責任と不安と身分に押しつぶされた人生」

 

 

 「ホントに神様なの?」

 

 

 名義上はな?とカラカラと笑う龍一に、不審そうに霊夢は目を細めた。

 そしてそんな龍一をどこか嬉しそうに眺めながら、紫は茶を啜った。

 

 

 ふと、龍一は近づいてくる三人分の足音に気がついた。

 龍一はゆらりと立ち上がり、霊夢はそんな龍一を不思議そうに見上げた。

 龍一は先程の表情よりは少し硬くなり、しかし何処か歓喜に溢れた表情をしていた。

 紫はそんな龍一に嘆息した。

 

 

 「霊夢が掃除してたのよ。荒らさないでよ?」

 

 

 「向こうも多分理解してるさ。・・・まともにやりあうのは十五年ぶりか。相変わらず老けねえなあ」

 

 

 石畳の上に立ち、龍一はいつ取り出したのか、腰に打刀を提げている。

 そしてそれに手をかけ、構えた。

 

 

 「龍一さん、何して」

 

 

 次に霊夢の視界に入ったのは、龍一にシンプルな作りの大太刀を振り下ろし、やや長めの打刀に受け止められた男。

 その男はさも突然現れたかのようにしか見えず、今になってようやく打ち合った音が鳴り響いているのに気がついた。

 男は龍一に笑うと、大太刀を背に仕舞いながら背後に飛び退いた。

 龍一も刀を鞘に仕舞うと、はあ。と息を吐いた。

 

 

 「・・・腕は落ちていないようだな、龍一」

 

 

 「そっちこそな、風魔。・・・んで、これで終わりか?」

 

 

 「続行だな」

 

 

 「だろうな」

 

 

 カラン、と互いの得物を投げ捨て、龍一は木刀を一本ずつ頭上に落とす。

 二人はそれを手にすると、再度石畳を蹴り、木刀のぶつかり合う甲高い音が鳴り響いた。

 予測の難しい連撃を龍一が叩き込み、風魔はそれらを確実に受け流し、弾き返す。

 風魔が間隙を突くように度々鋭い一撃を放つが、龍一はさも予測していたかのように避け、風魔もそれを見越して更に鋭い突きを放つ。

 

 

 「貴様、未来視は使わんのではないのか?」

 

 

 「視えるもんは仕方ねえよなあ?そっちこそ何手先まで予測してやってんだ?」

 

 

 「読めるものは仕方ないだろう」

 

 

 「互いに難儀だなあ!」

 

 

 打ち合いは更に加速し、紫からしてもそろそろ目視出来ない速度へと達していく。

 そんな中、残りの二人組は霊夢の隣に一人座り、紫の横に一人立った。

 

 

 「よお霊夢」

 

 

 「あら、珍しく歩いてきたのね」

 

 

 「途中で侵二さんとそこで龍一さんと打ち合ってる人に会ったからな。道も知らないのに先に飛んで置いてくってのもアレだろ?」

 

 

 霊夢の隣に座ったのは霧雨魔理沙、魔法使い。

 彼女は霊夢の友人の一人であり、度々と言うよりはほぼ毎日、彼女の所へ遊びに来ていた。

 そんな魔理沙に湯呑みが出され、霊夢と魔理沙は顔を上げる。

 

 

 「お、ありがとな、侵二さん」

 

 

 「いえ、主上が適当に残していた急須がありましたから。・・・霊夢も元気そうですね、何よりです」

 

 

 「そう言う侵二さんもね。今日は何しに来たの?」

 

 

 侵二と呼ばれた男は困ったように笑うと、木刀で斬らず刃風で斬る男を指差した。

 

 

 「久しぶりにあの男・・・風魔ですね。風魔が主上に挨拶に行くとの事で、道案内として来てたんですよ。まあ薄々分かってたんですが、目視して早々アレですよアレ」

 

 

 ついに木刀が力尽きたのかへし折れ、二人は再び飛び退く。

 そして龍一が再度木刀を出し、再開した。

 

 

 「龍一も最近動いてなかったから、暇だったのかしら」

 

 

 「どうでしょうね」

 

 

 それきり座ろうとする侵二と、茶を入れ直そうとする紫に、堪えきれなかったのか魔理沙が口を開いた。

 

 

 「いやいやいや!ちょっ、止めないのか?」

 

 

 「無理よ。挟まれたら私でも死ぬわよ」

 

 

 「まあ、そうなるのね。侵二さんも論外だし・・・」

 

 「そりゃそうだが、だからってアレ放置するのも不味くないか?弾幕勝負以外であんなスピード感溢れる勝負見た事ないぜ?」

 

 

 「止めて来ましょうか?」

 

 

 ぴたり、と霊夢の動きが止まり、信じられないような表情で侵二の方を向いた。

 それと同時に魔理沙もやや引き気味に侵二を見た。

 侵二はさも不思議そうに首を捻ると、やがて得心がいったように手を打ち鳴らした。

 

 

 「・・・もしや、二人とも私の事を人間だと思ってました?」

 

 

 「そうに決まってるだろ!?」

 

 

 「確かに藍の彼氏だったり、龍一さんとやけに仲良いのは知ってるけど、アレと一緒の部類なの?」

 

 

 「アレって言い方も言い方よねえ」

 

 

 「なるほど、それで・・・とりあえず止めて来ますね」

 

 

 呆れたように紫が笑い、侵二は微笑んだまま龍一の元へ向かう。

 霊夢達の制止する間も無く、侵二は手を伸ばせば龍一に触れ合う距離まで近づいた。

 そして両手が消えたかと思うと、侵二は二本の木刀を掴み上げていた。

 

 

 「ストップです、主上、風魔」

 

 

 「む」

 

 

 「あ、悪い。熱中してたわ」

 

 

 「それは結構なんですが、会って早々始めると言うのもキリがありませんし、また都合を合わせたらどうです?」

 

 

 「そうするとして、お前の事だから仕事が埋まってるだろ」

 

 

 「馬鹿言え、理想郷に呼ばれて尚仕事に潰されてたまるか。ここが私の理想郷だ。・・・理想郷に来る前に大半を終わらせて来た

 

 

 「おい今最後なんて言った」

 

 

 龍一の言葉を咳払いと共に聞き流した風魔は、霊夢と魔理沙の前に立ち、刀傷が薄く浮かぶ顔で見下ろした。

 

 

 「おそらく侵二から名前程度は聞いただろうが・・・名乗らせて貰う。風魔だ。以後宜しくだな、博麗に霧雨」

 

 

 ニイ、と威圧を放つ姿に反し、柔らかく笑う風魔に、霊夢と魔理沙は頷くしかなかった。

 

 

 次回へ続く





 今年もありがとうございました。
 また良ければ来年もよろしくお願い致します。
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