真・幻想創星録   作:青銅鏡(銀鏡)

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 全話とそんなに期間が空いていない筈なので、此方に前書きを連結します。

 本当に投稿がカタツムリよろしく遅れていて申し訳ありません。
 このご時世運良くバイトが見つかりまして、学生生活での単位に怯えながら出勤を繰り返しているとこのザマになりました。
 どちらにも慣れましたので、なるべく早く書いて出していこうとの所存でありますので、良ければよろしくお願いします。


 


第百二十三話 侵入成功

 「なんなのよこの館!」

 

 

 少し時間は遡り、龍一が美鈴と打ち合っている最中、霊夢は館の内部で立ち止まり、憤慨に近い叫びを上げた。

 無理もない。この後美鈴に勝利した龍一はトラバサミに挟まれ、高圧電流の流れた扉で感電するのだが、つまるところ館に悪質な罠が所々に仕掛けてある。そしてそれは九割が龍一のみに向けられたものであったが、残り一割は霊夢と魔理沙を対象にしたような罠だった。

 ドアノブを一回転させなければ開かないドア、通常のドアに見せかけた引き戸などの軽い嫌がらせに始まり、浅い落とし穴、立ち止まって居眠りしなければ潰されることは無さそうだが、音で常に意識させる床へ下がる天井、飛行を妨害してくる謎に突き出した柱などの行動を制限してくるものもある。

 要は罠屋敷と化している紅魔館に、霊夢は耐えきれず爆発していた。

 

 

 「まあ落ち着けよ。確かに癪に触るけど、しょうもない嫌がらせだろ?気楽に行こうぜ気楽に」

 

 

 「アンタねえ・・・」

 

 

 「こんなちっちゃい事でカリカリしてたら老けるぜっ・・・!?」

 

 

 霊夢を揶揄うように魔理沙が笑い、壁に手を置いた直後。

 銅鑼の音が鳴り響き、金だらいが魔理沙の脳天を直撃した。

 

 

 「くっ・・・!」

 

 

 館の雰囲気に一切合わない爆音と気の抜けた金属音に霊夢は噴き出した。

 しかし当の魔理沙は崩れた帽子を直すと、にっこりと笑った。目は笑っていなかった。

 

 

 「・・・カリカリしてたら老けるんじゃなかった?」

 

 

 「溜め込んでたほうが老けるに決まってるだろっ!!」

 

 

 魔理沙が痺れを切らしたように八卦路を取り出し、通路の先へと向けて放つ。

 扉や壁はわざとらしく吹き飛び、何もない一本道が出来上がった。

 

 

 「・・・よし!さっさと元凶シメて帰るぞ!」

 

 

 「それは同感ね。・・・とはいえ、面倒なのがいるみたいね、前に」

 

 

 霊夢が目を細め、手に持つ幣に力を込める。

 その視線の先には一人、メイド服に身を包んだ銀の髪の少女が立っていた。

 

 

 「・・・それは、私の事かしら?」

 

 

 「アンタ以外に誰がいるのよ。と言うか、さっきから狙ってたんじゃないの?」

 

 

 「ああ・・・流石に気付いてたのね。てっきりそこまでボケ通すものだから、何も考えて無かったのかと思ってたわ」

 

 

 柔らかく、しかしどこか意地の悪さを秘めた笑みを浮かべ、メイド服の少女は笑う。

 明らかな悪意に霊夢は眉を顰め、魔理沙は軽く笑った。

 

 

 「おいおい、口の悪い挨拶だな。そんなんでメイドしてて大丈夫なのか?」

 

 

 「ええ。ある人曰く、「客は丁重に心を、招かれざる客は確実に心臓を掴め」と言われましたので」

 

 

 それでは口調も改めまして、と少女は笑い、数多のナイフを手元で輝かせる。

 

 

 「私、十六夜咲夜がお相手を務めさせて頂きます」

 

 

 その言葉に返事はなく、弾幕が返答となった。

 

 

 ____________________

 

 

 

 「・・・なんだこの館!人を殺す気か!」

 

 

 それからしばらくして、龍一も館の中へ辿り着き、激昂に近い叫び声を挙げた。

 無理もない。館で足を一歩進めるたびにほとんどの確率で壁から、廊下の先から突っ込んでくる大槍。歩くと唐突に縦横無尽にぶった斬らんと壁から飛び出すギロチン。床には竹槍の敷き詰められた落とし穴に、天井から降り注ぐ硫酸。挙げ句の果て鋼鉄製の部屋に閉じ込められ、四方八方から現れて、弾丸を撒き散らす砲口と、明らかに殺すことを目的とした罠に、龍一はかなりの嫌がらせを受けていた。明らかに怒るなどと言うレベルではない。

 もっとも、彼が嫌がらせで留めているのが異常なのだが。並大抵の妖怪ならば瞬く間に死ぬ。

 

 

 そんな彼は霊夢と魔理沙が咲夜と弾幕勝負を繰り広げている最中、明らかに潰すつもりで落ちてきた天井に道を阻まれ、舌打ちし、回り道を余儀なくさせられていた。

 

 

 「ったくなんなんださっきから、どこもかしこも罠仕掛けーッ!・・・てやがる。ワンパターンか!」

 

 

 龍一が派手な館の中でも一際目立つ大きな扉に手をかけると、最初のように高圧電流が流れ、龍一は感電する。

 しかしそれには大して怒ることはなく、扉の先が大図書館であると言うことに安堵の息を吐いた。

 

 

 「・・・やーっと休憩地点か。流石にあのバカタレも図書館は弄らんだろ」

 

 

 龍一は懐かしげに数に限りがないように見える本棚を眺めながらゆっくりと歩く。

 そして本棚のない少し開けた位置に置かれたテーブルと椅子、そしてそこに静かに座る少女の背中に対して、声をかけた。

 

 

 「よう、パチュリー。覚えてるか?」

 

 

 パチュリーと呼ばれた少女は振り向き、やや疲労の浮かぶ男の顔を見て、少し呆れたように笑った。

 

 

 「あら。・・・ええ。勿論よ、龍一さん。お疲れみたいだけれど、もしかして館の中で罠にでもかかった?」

 

 

 「嫌がらせか?全部知ってるだろうが」

 

 

 「ごめんなさいね。あの子がどうしても仕事納めに仕掛けたいって言うから、皆何も言わなかったのよ」

 

 

 「・・・あいつが仕事納めじゃなくて仕掛けたいって言ったら?」

 

 

 「好きにしろって言ったわね「なんも変わんねえなあ?」そうなるわね」

 

 

 薄く笑うパチュリーに、龍一は舌打ちを一つ、指も一つ鳴らし、その場に現れた椅子に座り込む。

 そしてしばらく息を吐いていると、パタパタとこちらへと走る足音が聞こえてきた。

 

 

 「龍一さん!お久しぶりであっ!?」

 

 

 「おー、久しぶぬおわっ!?」

 

 

 幾つかの本を抱えたまま走って来た少女、小悪魔は龍一に声をかけ、振り向かせたところで盛大にずっこけた。

 そして本は龍一の顔に突っ込んだ。

 

 

 「あ、あわわ・・・す、すいませんっ!!」

 

 

 「あー・・・良いよ良いよ。気にすんな。にしても、今日はツイてねえなあ」

 

 

 龍一は疲れ切った様子で立ち上がり、飛び散った本を拾い上げ、耳に手を当てている小悪魔に渡す。

 その様子をパチュリーは面白そうに眺めながら、ねえ。と声をかけた。

 

 

 「ん?なんだ?」

 

 

 「来てくれたのは嬉しいわ。でもここに来て、これからどうするご予定?」

 

 

 「ああ、そうだな・・・とりあえず数分ほど休憩したら、臨時の館の主人さんをしばきに行くつもりだな。どうせここはクソみてえな罠なんぞねえだろうし、しばらく休ませてもらいたいんだが、良いか?」

 

 

 それなら好きにどうぞ。とパチュリーは微笑し、小悪魔も龍一へ紅茶の入ったカップを出す。

 龍一は最初からこうだったらなあ。と叶うはずもない願望を呟いた。

 

 

 「ところで、貴方は元気にしてたの?」

 

 

 「あ、俺か?それなりに元気してるぞ」

 

 

 「あの人とも順調?」

 

 

 「まあ、多分な。長年バカやりすぎてなーにが順調かわからなくなってるけどな。パチュリー、お前の魔法の方は?」

 

 

 「ある程度は、ってところかしらね。まだ果てには至らないけれど、貴方や幸夜の使う簡易的なものと、その複合までは模倣できるようにはなったわよ」

 

 

 「上々だな。・・・ところで、霊夢や魔理沙がここに来ないってことは、誰かとやってんのか?」

 

 

 「多分咲夜でしょうね。あの子も中々やるようになったわ。ただね・・・」

 

 

 「ただ?」

 

 

 龍一の問いにパチュリーは頭を押さえて唸る。

 そんな姿に小悪魔は苦笑し、代わりに回答した。

 

 

 「幸夜さんにものすごく似たんですよ。戦い方が」

 

 

 「マジか・・・」

 

 

 「だから、中々その霊夢さんと魔理沙さんでも進まないと思いますよ」

 

 

 「なら好都合だ。先にしばいてさっさと終わらせるか。龍神様の愉快な日常話はまたの機会にな」

 

 

 「それは残念ね。書き留めるくらいには中々に好きだったのに」

 

 

 龍一が休息をやめ、椅子から立ち上がる。

 それと同時にパチュリーも立ち上がり、手にしていた本を閉じ、指を鳴らした。

 すると扉があった場所はただの壁になり、パチュリーの手には鍵が握られていた。

 小悪魔も耳に手を当て、何かを呟いていた。

 

 

 「それに悪いけど、好都合ってわけでもないかもしれないわね」

 

 

 「ごめんなさい、龍一さん」

 

 

 「・・・なーるほど?罠はないが、お前らがそもそも足止めか」

 

 

 どいつもこいつも、と龍一は笑い、両手を広げ、背後に大量の弾幕を召喚した。

 

 

 「仕方ねえ、愉快な話はできねえが、相手してやるよ」

 

 

 冷たい風が、図書館の中に入り込んだ。

 

 

 次回へ続く

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