真・幻想創星録   作:青銅鏡(銀鏡)

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 なるべく早く(大嘘)
 このサイトに来られるのが2ヶ月ぶりとか頭おかしいんじゃないですかね。
 何十年かかろうが死なない限り書き続けますので、今後ともよろしくお願いします。


第百二十五話 万能の無能

 紅魔館、凍土と化した大図書館内。

 氷を背後に出したまでは良いものの、構えることもなくのんびりと立つ幻夜に、龍一は小手試しと言わんばかりに打刀を翳し、横一文字に薙ぎ払った。

 

 

 「ほいっと」

 

 

 幻夜は避けることもなく、その刀を身に受ける。

 が、刀は幻夜の体を割くことはなく、ただ空を切った。

 

 

 「いやあ、相変わらず凄いね。これを傷一つなく受け止める壊夢はなんなんだって話になるよね」

 

 

 「そうだな」

 

 

 龍一が横に凪いだ刀はいつの間にか拳銃へと持ち替えられており、鬼や天狗ですら撃った反動で体が浮く威力の弾丸を片手で放った。

 最早大砲と呼ぶべき破壊力の弾丸は幻夜の額に吸い込まれるように飛び、そして再度幻夜に当たる事なく背後の壁どころか、館の外壁まで容易く破壊した。

 

 

 「・・・こっわ。え、ねえ、僕が失敗したら死ぬのわかってる?」

 

 

 「ああ。しないだろ?」

 

 

 「まあね」

 

 

 ひょい、と幻夜はいつの間にか手にしていた短槍を龍一に向けて突く。龍一はそれを蹴り上げ、幻夜の突き出した腕を掴み、床に放り投げた。今度は幻夜は何も出来ず、地面に叩きつけられた。

 

 

 「ぐえ。・・・ちょっと、あんまり痛い技仕掛けるのやめてくれない?」

 

 

 「んじゃなんで来たんだよ。時間稼ぎするならするで、もうちょっと真剣に止めろよ」

 

 

 「いや・・・ほら、僕ってあの子と幽香の評価的に優しいお父さんじゃん。息子、娘のためならなんだって出来るような。でも世間的な評価は龍一に向けてここ数千年牙を剥かない部下って評価を受け始めたたんだよ。・・・ただの優しい妖怪になってるんだよここ最近の評価。もうちょい凶暴だって印象を植え付ければ良かった」

 

 

 「・・・便利だと思ってたが、不便な能力だな」

 

 

 「まあね。人格が他者の評価を丸ごと受けるってのがね。・・・後悔はしてないよ?」

 

 

 「そうだろうな。じゃ、これでどうだ」

 

 

 龍一はおもむろに拳銃を壁に向ける。その行動になんの意味があるのか、パチュリーと少し前に目を覚ました小悪魔には分からなかった。

 だが、幻夜は。息子より二手三手先を読める男は理解した。

 銃口の方角は、霊夢達が戦闘している廊下へと向けられている。

 

 

 「なるほどね」

 

 

 幻夜は龍一の拳銃へと人差し指を弾く動作をし、それと同時に幻夜の指先の空気が凍結、小さな氷の弾丸が龍一の拳銃を弾いた。

 しかし既に引き金は引かれ、再度大砲並みの音を響かせ、壁を破壊しながら霊夢達へと直進した。

 そののち、破壊された壁は幸夜が何か仕込んでいたのか、自動で新たな壁がシャッターのように降り、修繕されていった。

 

 

 「・・・今、俺は霊夢と魔理沙を相手してる奴に、意図して撃った」

 

 

 「その子は偶然女の子だった。だから僕はあの子を助ける為に、君を止める。そう、僕は縁、女の子を見える範囲で命の危機に合わせない。・・・これ相当なこじつけだけど、そもそも僕に騙されてるの分かってる?「幻夜と対決しなければここから移動できない」って認識が発生してるのはわかってるよね?」

 

 

 分かってらあ、と龍一は笑い、幻夜に剣先のように尖った視線を向ける。

 

 

 「だから先に進むためにテメエを倒すんだろうが。お膳立てはした。早く来い」

 

 

 「・・・勿論。この幻夜、時期が来るまで君を足止めする」

 

 

 ____________________

 

 

 幻夜が龍一と正面からぶつかるほんの少し前。

 霊夢の放った自律軌道を描く弾幕が咲夜を捉え、魔理沙から注意を離し始めていた。

 その霊夢の少し背後で魔理沙は手を後ろで組み、その手には八卦路を構えている。

 おそらくこの場に龍一がいれば、顔を顰めて弾幕全てを薙ぎ払う選択をしたであろう密度の弾幕は、咲夜に能力を使わせる事は簡単だった。

 そして、手元のナイフが残り数本になった咲夜は、仕切り直しも兼ねて能力を行使する為に、僅かに視線を手元に落とした。その瞬間。

 

 

 「貰ったあっ!」

 

 

 カッ、と魔理沙の突き出した八卦路が光を放ち、光線が炸裂する。

 しかし咲夜は既に能力を行使。つまるところ、時を止める事に成功していた。

 霊夢は弾幕に意識を割き、魔理沙は正面に集中している。このまま二人の周囲に弾幕をばら撒けば勝利はほぼ確定していたが、それは不可能だった。

 十六夜咲夜は安堵する暇もなく、能力を直ちに解除するしか無かった。

 

 

 「くうっ・・・!!」

 

 

 それどころか、咲夜は何かを喰らったように、顔に手を当て、背後へと後ずさった。

 だが、彼女はナイフを何も見ずに標的に当てることなど造作もない。

 故に、時間停止から解除され、先程と動きも意識も変わらない霊夢と魔理沙に命中する軌道で、ほぼ勝利への王手をかけるナイフを全て投げた。

 ただし、この状況で彼女の師匠が咲夜の立場だったならば、一本ずつしか投げなかった。

 それは、何が起こるか分からないから。

 

 

 「取っ・・・」

 

 

 轟音と共に廊下の壁を何かが突き破り、霊夢達と咲夜の間を凄まじい衝撃が通り抜ける。

 それは、図書館から無造作に龍一が放った弾丸だった。

 しかし彼女達はそんな事を知る由もなく、咲夜の投擲したナイフが全て衝撃であらぬ方向に飛ばされた、という結果のみが残った。

 

 

 暫し呆然とする三人だったが、やがて咲夜は自嘲の笑みを浮かべ、両手をヒラヒラと振った。

 

 

 「降参するわ。降参」

 

 

 「っ、はぁ!?いや、そりゃ助かるけど、なんで!?」

 

 

 「なんでって、もう出せるものが無いのよ。終わりよ、終わり」

 

 

 「・・・今のがなけりゃ、私達は負けてたと思うが?」

 

 

 「それは結果論。それに、これだけ仕込んで万策尽くしてやっと互角よ?今の意味不明な何かで戦意なんて吹き飛んだわよ」

 

 

 「いや、まあ。私も今の状況であんなのに切り札潰されたら、嫌になるぜ」

 

 

 「でしょ?」

 

 

 ほんと何よあれ。とぼやきながらもあっさりと敗北を宣言する咲夜に魔理沙は苦笑し、霊夢は目を見開いた。

 

 

 「・・・それじゃ、先に進んで良いのね?「ええ、どうぞ」ありがと。ところで魔理沙、あの切り札ってなんだったの?」

 

 

 「んあ?ああ、あれか?ただのマスタースパークの火力を極限まで弱くしただけの目眩しだぜ。・・・あのタイミングで、咲夜だっけ?「ええ、合ってるわよ」咲夜の能力は分かってなかった。それで、もし瞬間移動なら私達の背後に回るだろうし、もしそれ以外で動きを止められる手段があるとしたら、時間かもなって」

 

 

 「それで目眩し?・・・ああ、成る程。時間が止まったなら、そのまま眩しさが残るって考えたのね」

 

 

 そう言う事。と魔理沙はニヤリと笑い、しかし次には肩をすくめた。

 

 

 「ま、ただの一点読み。ダメならダメでまた考える必要あったけどな」

 

 

 「あんたねぇ・・・」

 

 

 「それよりさ、咲夜「ん?何?」さっき、意味不明な何かって言ってたよな」

 

 

 「ええ。それが?」

 

 

 「んじゃ、私達以外に誰か入ってきたって事か?」

 

 

 「そうね」

 

 

 「そうね。・・・って、それで良いのか?」

 

 

 「ええ。ここまで言うと仕込んだようで悪いのだけれど、私が貴女達二人を相手するのは事前に言われていた事で、おそらくもう一人程度侵入者が出る事も、あの人、そうね、私の先輩は予測して待ち構えてるのよ。だからおそらくだけど、二人は落とし穴か何かで必ず二人で行動させられた、みたいなこと、なかった?」

 

 

 「・・・ありまくりね。すると何?あんたの先輩は全部ここまで、私達が二人で、なおかつこの場所まで来る事を予想してたの?」

 

 

 「ええ。私がナイフをトラップに仕立て上げたように、入念に、緻密にね」

 

 

 「最悪だなそいつ。よっぽど性格も悪いんだろ?」

 

 

 「ええ。戦闘になると最悪よ。何をしても勝とうとするから、あの人は。・・・色々とひどいことになるのよね」

 

 

 咲夜は少し誇らしげに言い、苦笑する。

 霊夢と魔理沙は互いに顔を見合わせると、軽く笑った。

 

 

 「それで?私達は次どう行けば良いの?」

 

 

 仕込まれてるんでしょ?と霊夢はやや諦めたように肩をすくめ、それを見た魔理沙がやれやれと首を振る。

 咲夜はそんな二人に頷き、頭を下げて一礼した。

 

 

 「勿論です。この先は対化け物専用の罠ばかりですので。当館のメイド長、十六夜咲夜が責任を持って、御二人を目的地まで安全にお連れ致します」

 

 

 「よろしく・・・待って、化け物専用?」

 

 

 「ええ。先輩曰くもう一人の侵入者専用らしいわよ。ほら」

 

 

 床に落ちたナイフを拾い上げ、咲夜は進行先の通路へと軽く投げる。

 ナイフは途中まで難なく宙を舞ったが、突如上下左右から高速で突き出た壁に押し潰され、床に出来た落とし穴へとただの鉄の塊は吸い込まれていき、何かに切り刻まれる音とともに消えていった。

 その明らかに殺す事に重点を置いた罠に、霊夢と魔理沙は乾いた声を漏らした。

 

 

 次回へ続く

 




 【万物を欺く程度の能力】について。
 他社の想定する、彼なら出来るかもしれない、彼ならやるかもしれない、もしかしてこうなってしまうのでは、などといった思考に現れる予想を自動的に具現化、ある程度を選んで具現化出来る能力。
 周囲の評価、つまるところ予想をそのまま受ける事になるので、万が一世界中の人間が幻夜は腕が四本ある、と考えると、いつの間にか腕が四本になっている。その中から四本の腕はそれぞれ別の生物の腕、機械の腕、と言った認識を選び、適応させる事が可能。
 自身を信頼し、また自分自身も信頼する相手の予想ほど効力が強く本人の意思もあり具現化されやすい。
 そのため、彼は一番最初に溺愛した人間の考えた通り、永久に優しい父親であり続ける。
 
 逆に自己のイメージを周囲に押し付けることも可能であり、幻夜はその能力を大昔から使用し続けている。
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