真・幻想創星録   作:青銅鏡(銀鏡)

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 新年初投稿となります。
 まあ二十日吹っ飛んでるわけですが。


 ゆっくりご覧下さい。


第百二十六話 幻日

 概念の枷が外れ、跳躍した幻夜と龍一が空中で激突する。

 龍一の膝や肘を主に使用した抉り込むような一撃は、それを鏡で跳ね返したように、幻夜に同じ部位で受け止められた。

 龍一は自身が作り上げた空気の壁を蹴って加速し、幻夜は空気中の水蒸気を凍らせ、小さな氷を蹴って移動する。

 

 

 「相変わらずなんでも出来やがるなお前は!これ見よがしに同じ場所で防御しやがって!」

 

 

 「鏡がどんな動作にも合わせられるんなら僕も合わせられる。結構不便だけどいいよ、決まり切った概念が自分にかかるのは」

 

 

 それに、と続けながら地上に降りた幻夜は巨大な剣、それも壊夢が持つような剣を何処からか生み出し、片手で軽く振るう。

 

 

 「僕の身体能力がどこまでかをほとんどの人が知らない。壊夢並みかもしれないし、能力で物の重さを誤魔化すひ弱かもしれない。だから両方できる」

 

 

 幻夜は重さを無くした大剣を跳躍しながら軽く振り上げ、叩きつける瞬間、重さを元に戻す。

 質量の塊が龍一に振り下ろされ、龍一は飛び退く、が、地面に叩きつけられた大剣は衝撃波で周囲を吹き飛ばした。

 

 

 「っー!?」

 

 

 衝撃は大図書館中に及び、小悪魔とパチュリーも吹き荒れる本と棚から身を守るように手を翳し、暴風の中辛うじて目を開ける。

 しかし風が止んだ後には、何一つ散らかることもなく片付いていた。

 

 

 「荒らすな、馬鹿タレが」

 

 

 時間操作。図書館内の生物を除いた全てが元の状態に戻った。

 風切り音と共に、龍一は抜き身の打刀を取り出す。

 幻夜は大剣を木の枝のように、事実木の枝程度に軽くなっている大剣を振り回しながら、少し微笑んだ。

 

 

 「久しぶりじゃん、それ使うの」

 

 

 「あっちが危なすぎてここじゃ使えねえからな。そもそもお前らにはよく使うが、ありゃ本来禁じ手だ。それに、紫を見てたら案外こっちも相応に使える気がしてな」

 

 

 準備もなく龍一は最高速で飛び出し、幻夜へと刀で斬りかかる。

 幻夜はそれでも大剣を盾にするように構えた、が、大剣はいとも容易く両断された。

 

 

 「お?」

 

 

 その後も素早く振るわれた刀は大剣を微塵に刻み、幻夜の右腕へと振り下ろされる。

 幻夜は瞬時に存在を曖昧にして実体を無くしたが、だからなんだと言わんばかりに右腕は斬り飛ばされた。

 

 

 「やっぱりな。なんでも斬れる刀なんだから、こうしねえと」

 

 

 「へええ、風魔の居合い、侵二の捕食、壊夢の拳すらスカせる技を斬れるってのは凄いね。何したのさ?」

 

 

 右腕から出血はなく、飛んだ右腕が吸い寄せられるように幻夜へと近寄り、切り口同士が結合されながら、幻夜は龍一の刀を指差した。龍一は少し誇らしげに、簡単さ、と返した。

 

 

 「紫は境界を操ることができる。だから固有の空間、境界の狭間も持てるし、空間をつなげる、なんてこともできる。多分物の創造と破壊もキャパシティさえあれば可能なはずだ。・・・だったらアイツの隣に立つ俺が出来ないわけないよなあ」

 

 

 再度龍一は刃を輝かせ、幻夜の首と胴、右足を分断する。

 幻夜はそれでも結合し直すが、明らかにヘラヘラとした表情は抜け始めていた。

 

 

 「物がある、ない。もしそれを調節し、なおかつ可視化できるなら、この刀の力も合わさって、なんでも斬って壊せる。だろ?」

 

 

 「要は視えてるんだね?」

 

 

 「ああ。よーく視えてる。どこを斬ったらお前の体を分断できて、有効な致命傷を残せるか。もう出し惜しみする意味もないんでな」

 

 

 「・・・やっぱあれだね、吹っ切れてから強くなったね」

 

 

 「そりゃあそうだろう。俺は世界より紫を優先したんだ。何に配慮する必要がある」

 

 

 「・・・いいね、凄くわかるし、羨ましい」

 

 

 幻夜の顔から笑みが消え、漂っていた陽気さが凍りつく。

 龍一も再度白刃を構え、幻夜の動きを探る。

 

 

 「だからこそ、僕もあの子達の事を何よりも優先する」

 

 

 幻夜は龍一へと一歩足を踏み出し、形を無くし、居なくなった。

 そして数瞬ののち、真正面から龍一に近づいていた幻夜は、龍一の腹部をにこやかな笑みと共に氷で刺し貫いた。

 

 

 「・・・何しやがった」

 

 

 「簡単なことさ。消した。今常世にいる全ての生命体から、それこそ君も幽香も関係なく、僕の記憶と実体を。だから今僕が君の体を貫くまで、確かに僕は存在してなかった。だから斬れる斬れないの境界はおろか、消えてた時の記憶もないでしょ?一歩踏み出した後には刺されてた。違う?」

 

 

 「・・・この世全ての生物の記憶を曲げたんだ。そのまま消えっぱなしかもしれなかったぞ?」

 

 

 「・・・いや、それはない。常世に僕の記録がなくても、向こうに一人、僕のことをお父さんとして残してくれている子がいる。だから必ず帰ってこれる。大事な命綱はちゃんとある」

 

 

 「そうか、お前、ずっとその因果を抱えてたのか」

 

 

 自分に刺さった氷を無理やり引き抜き、傷を修復する龍一は優しく笑う。

 幻夜は誇らしげに、しかしどこか困ったように笑う。

 

 

 「うん。僕はいつまでもあの子のお父さんだから」

 

 

 ____________________

 

 

 小悪魔からすれば、何が起きているのか分からなかった。

 幻夜とは過去に数度面識があり、幸夜の父親なのは知っている。その彼が、先程から気がついた時には龍一へと攻撃を加えていたり、遠くに離れている。

 

 

 速いと言うよりは、咲夜の時止めのような違和感。だがそれに怯むことなく、龍一は攻撃を避け、あらぬ方向に斬撃を放つ。

 到底戦闘しているとは言えない光景のような視界に困惑しているが、主人であるパチュリーも同様らしい。攻撃が及ばぬよう防護壁は築いたものの、呆然としている。

 次元が違う。と呟きそうになったのも、仕方がないと小悪魔は思った。

 それ程までに何をしているか分からないが、熾烈な勝負が繰り広げられているのは、自分が動けないことで確定していたから。

 

 

 「・・・そろぼち鬱陶しいぞ幻夜ァ!」

 

 

 「性分だから勘弁してほしいなぁ!?」

 

 

 姿形はおろか、小悪魔の記憶内の幻夜のイメージでさえ歪みきった幻夜の、おそらく手だと、なんとなしに脳が辛うじて理解したそれが、龍一の喉笛に迫る。

 龍一はその手を掴み上げると、地面へと叩き付けた。

 

 

 『・・・おい、聞こえてっか、小悪魔』

 

 

 ふと、耳鳴りのように声が響く。

 はっ、と小悪魔は耳に手を当てると、声は強くなった。

 

 

 『聞こえてるっぽいな。さっきから何回か連絡も通してくれてたみたいだし、助かったぜ。そんで報告だ。・・・お嬢様と妹様が負けた。見た限り本気で相手したようだったから、まさかの結果だ。つうワケで、俺は予定通りトラップを異変解決者のお二人に注ぐ。そこで質問なんだが、先生は何してる?予想してたより十分も遅い』

 

 

 「えっと・・・先程からここにいらっしゃるんですが、私とパチュリー様は負けました。今は何処からか現れた幻夜さんが相手されてます」

 

 

 『げんっ・・・マジぃ?』

 

 

 「先程からその状態が続いてます。何が何やら・・・」

 

 

 『・・・了解。今、通路に仕掛けといたもの全部外しといたから、後は親父に退いてもらいたいんだが・・・どうやって伝えるかなあ』

 

 

 「いいよ」

 

 

 「ぴっ」

 

 

 短い悲鳴と共に、死んだ。と小悪魔は思った。

 背後に気配はなく、まだ龍一が動いているのは間違いない。

 それでも恐る恐る背後を向くと、幻夜はやはり龍一への攻撃の手を止めていなかった。

 ただ、こちらを向いてはいたが。

 

 

 『・・・小悪魔共々心臓止まったかと思ったわ。んじゃ言えば止めてくれるんだな?』

 

 

 「・・・そりゃあね?息子の晴れ舞台な訳だし。小悪魔も悪かったね。急に声出して。でも龍一に隠れてこっそりやり取りするのは感心しないね、僕は。何使ってるの?」

 

 

 『・・・小悪魔に小型マイク持たせたんだよ。「凄いじゃん」・・・親父は当然のように電波に入り込むな』

 

 

 「そりゃ失敬。じゃあ今の喧嘩、止めるよ?」

 

 

 『・・・正直助かる。頼んだ』

 

 

 直後、なんのつもりだ、と背後で龍一が問いを幻夜に投げるあたり、本当に動きを止めたのだろう。

 幻夜は陽気さを取り戻した声で返す。

 

 

 「いやね?・・・もう龍一を止める必要が無くなったからね」

 

 

 「・・・ああ、そうか。してやられたワケだ」

 

 

 どこか諦めたように、それでも何処か、実は期待していましたと言うような顔で、龍一は武装を解いた。

 

 

 「何処だ」

 

 

 「多分ねぇ・・・こっから先のあの辺?」

 

 

 「了解した」

 

 

 龍一は飛び上がると、空を蹴って開いた扉から消え去っていった。

 幻夜はやれやれと首を横に振り、誰に言うでも無く、空へと呟いた。

 

 

 「・・・勝てなくても誰も責めない。けど、頑張りなよ」

 

 

 『言われなくても』

 

 

 次回へ続く

 

 

 





 ありがとうございました。

 次回もお楽しみに。
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