真・幻想創星録   作:青銅鏡(銀鏡)

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 ・・・オリジナル展開が続きます。

 ゆっくりご覧下さい。


第十五話 悪神と変人と

 ___???周辺

 

 

 三台の大きな馬車が、砂利道を走っていた。

 

 

 一台目には鎧を着こみ、武装した男達が談笑しながら馬車を走らせていた。

 

 

 二台目は戦闘には向かないような衣服を着こんだ、老若男女問わず様々な者たちが、子供や赤ん坊をあやしながら、馬車を走らせていた。

 

 

 三台目には誰もおらず、大量の衣服や食料が積まれており、二台目の馬車と繋がっていた。

 

 

 二台目に乗っていた物腰の柔らかそうな男が、同じ馬車に乗っているが、一人だけ身なりの違う男に声をかけた。

 

 

 「旅の人、本当に付いてくるのかい?我々は流浪の民故、定着しないよ?」

 

 

 「構わない。元から俺も元の場所には帰る気はないんでな」

 

 

 問いかけられ、答えた男は、編笠・・・虚無僧傘のようなものをかぶっており、表情は見えない。着流しのようなものを着用しており、馬車の壁にもたれていた。腰には打刀が据えられていた。

 

 

 「そうか・・・しかし、ここいらでは見ない格好だね。どこから来たんだい?」

 

 

 着流しの男は、東を指差した。

 

 

 「・・・海を越えた、東の国から」

 

 

 「え!おじさん、向こうの国に行ったことあるの!?」

 

 

 着流しの男の言葉に、一人の子供が目を輝かせる。

 

 

 「・・・ああ、あるとも。向こうは私の故郷だ」

 

 

 「じゃ、じゃあ、いっぱいお話聞かせて!」

 

 

 「おや、私も気になるね。・・・旅の人、少し話してくれるかい?」

 

 

 「・・・いいとも」

 

 

 着流しの男はもたれていた背を上げると、語り始めた。

 

 

 東の地には八首の大蛇がいたこと、それを見事神が成敗した事。

 

 

 とてつもなく文明の進んだ地が、昔はあったという事。

 

 

 鬼と呼ばれる、正直かつ喧嘩好きな妖怪がいること。

 

 

 「・・・これぐらいかね」

 

 

 いつしか馬車は止まり、男の周りには、馬車に乗っていた人々が集まり、拍手喝采が起きていた。

 

 

 「・・・凄いな!しかもまるで君がその場で見たような言いぶりで、よりドキドキしたよ!君は詩人か何かかい?」

 

 

 「・・・いいや、単なる旅人さ」

 

 

 「おじちゃん、凄い!」

 

 

 先ほど目を輝かせていた子供は、ぴょんぴょんと飛び跳ねていた。

 

 

 「そうかい?ありがとうよ」

 

 

 着流しの男は笑うと、再び馬車にもたれかかった。

 

 

 「・・・そういえば、名を聞いていなかったね。私は張(ちゃん)、君は?」

 

 

 「・・・絶影(ぜつえい)」

 

 

 絶影と名乗った男は、横になると、眠り始めた。

 

 

 再び馬車が動き始めた。

 

 

 ____________________

 

 

 暫くして、絶影が目を覚ました。

 

 

 「おお、起きたんだね」

 

 

 周囲でも何人かは寝ており、張も少し眠そうだった。

 

 

 「ああ、少し・・・」

 

 

 絶影がそう言うと張は微笑み、そして重い顔になった。

 

 

 「・・・して、絶影君、四凶はご存知かね?」

 

 

 「・・・分からない。何なんだ?」

 

 

 張は周りを見渡すと、小さな声で絶影に囁いた。

 

 

 「・・・この国で最近最も恐れられ、恨まれている悪神さ」

 

 

 張は手で四を表すと、ゆっくりと語り始めた。

 

 

 「奴らは四人いる。混沌(こんとん)、檮杌(とうこつ)、窮奇(きゅうき)、饕餮(とうてつ)の四人・・・いや、四匹だね。彼らは四匹で行動し、数百の軍勢も、数人の精鋭も狂わせ、潰し、切り刻み、食い千切る。・・・此処じゃ死神と同じ扱いさ」

 

 

 「ほう・・・」

 

 

 絶影は僅かに檮杌という言葉に反応したが、張は気が付かなかった。

 

 

 「だから会った時のために一番前に精鋭の傭兵たち五十人を雇って・・・」

 

 

 ガタン、と一番前の馬車が止まった。

 

 

 「・・・ごめん、この話はまた後だ。どうした!?」

 

 

 張は話を切り上げ、止まった馬車の方へ絶影と向かった。

 

 

 そこには、

 

 

 「おい!何して・・・」

 

 

 惨殺された馬と、

 

 

 「あれ、あれれれれれれれれ????」

 

 

 泡を吹きながら首がねじ曲がったまま奇声を上げ、血の付いた刀を持った傭兵の一人がいた。

 

 

 「おい!しっかりしろ!」

 

 

 泡を吹いている傭兵の知り合いか、別の傭兵がその男を揺すると、

 

 

 「あ・・・が・・・???」

 

 

 泡を吹いていた男は突然離れ、踊りながら絶命した。

 

 

 「どうなって・・・」

 

 

 どうなっていやがる、そう言おうと口を開いた傭兵の首が飛んだ。

 

 

 「んなっ・・・!?」

 

 

 周囲の傭兵が戦闘態勢に移る。が、風が吹くたびに一人ずつ傭兵が切られてゆく。

 

 

 張は何かを決心したのか、二台目の馬車に向かって叫ぶ。

 

 

 「皆!!逃げろ!!」

 

 

 途端に大勢の人間が馬車から出るが、悪手だった。

 

 

 「ぬんっ!!」

 

 

 気のこもった叫び声とともに、長身の男が飛び降りてきた。さらに男が着地したときに拳を地面に叩きつけ、地面に崖を作った。

 

 

 「うわあっ!」

 

 

 「いやあっ!?」

 

 

 十名ほどが崖に落ち、五名ほどが崖にしがみつく。混乱に陥った者たちは、何かに操られたように、三台目のまだ無事な馬車の中へと逃げた。

 

 

 「くっ・・・!?」

 

 

 図られたと言わんばかりの表情をした張は、次に顔を恐怖に歪めた。

 

 

 コツコツと軽快に響く足音、ややバリトン声の鼻歌、整った人の好さそうな顔が、こちらに向かっていた。一つだけ異様な点を挙げれば、

 

 

 「おお、結構餌かかりましたね」

 

 

 彼の右肩から不気味な翼のようなものが生えている点だろう。

 

 

 「あ・・・あぁ・・・!」

 

 

 張はその場にへたり込み、呆然と翼の生えた男を見ていた。

 

 

 男は張に近づくと、優しい声をかけた。

 

 

 「・・・そんなに怯えずとも、金や食料は取りませんよ」

 

 

 男は張の手を取り、優しく微笑んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「・・・美 味 し く 頂 く だ け で す か ら。・・・ね?」

 

 

 突然男の翼が巨大な顎のように開き、張を飲み込んだ。

 

 

 「・・・うーむ、そこそこですね。混沌!」

 

 

 翼の男が叫ぶと、薄目の男が現れた。

 

 

 「うーい、何ー?」

 

 

 混沌と呼ばれた男は、さも気怠そうに言った。

 

 

 「いつもの処分を」

 

 

 「いえっさー」

 

 

 翼の男が何か指示をすると、混沌と呼ばれた男は、崖にしがみついた男女に近づき始めた。

 

 

 「ねー、助かりたい?」

 

 

 男は崖の傍にしゃがみ込むと、落ちまいとする男に問いかけた。

 

 

 「ああ・・・!頼む!何でもするから上げてくれ・・・!」

 

 

 「いいよー」

 

 

 混沌と呼ばれた男は、崖際の男を掴み上げた。

 

 

 「助かった・・・!ありがとう・・・!」

 

 

 「んーん、いいよー・・・じゃ、お願いするね」

 

 

 薄目だった男は目を開くと、狂気を感じる笑顔を浮かべた。

 

 

 「んー・・・

 

 

 

 

 

 

 落ちてもらうね」

 

 

 「え?」

 

 

 混沌と呼ばれた男は持ち上げた男を崖に落とした。持ち上げられた男は信じられないという表情で落ちていった。

 

 

 「何でも。なんて言うからじゃん?」

 

 

 ケラケラと男は笑うと、他の者たちにも聞き始めた。

 

 

 「助かりたいー?」

 

 

 「ああ!頼む!」

 

 

 「お願い!助けて!」

 

 

 混沌と呼ばれた男は、微笑んだ後、四人全員に近づいて言った。

 

 

 「やだ」

 

 

 男はしがみついていた八本の手を全て蹴り落とした。

 

 

 「元から助けるわけないじゃーん」

 

 

 再びケラケラと笑い始めた。

 

 

 「お見事。・・・窮奇」

 

 

 「心得た」

 

 

 窮奇と呼ばれた髪の長い男は、斬られて瀕死の傭兵たちに近づくと、何も言わずにトドメを刺し始めた。

 

 

 「浅ましきかな。その程度で傭兵ができるものか。・・・死んで出直せ」

 

 

 男は残酷な笑みを浮かべながら、虚ろな目をした最後の傭兵の喉笛を搔き切った。

 

 

 「相変わらずですね・・・檮杌?」

 

 

 「応!」

 

 

 檮杌と呼ばれた巨大な男は、三台目の馬車の壁を、ゆっくりと壊し始めた。

 

 

 「ほれ、逃げんと死んじまうぜよよ」

 

 

 そう言いながらニヤニヤと巨大な男は笑う。等々馬車は丸裸になり、怯える子供や赤ん坊を守る女や傷を負った男の姿などが見えた。

 

 

 「こっから交代ぜよ、饕餮」

 

 

 「どうも、お疲れ様です」

 

 

 饕餮と呼ばれた、翼の生えた男はニヤリと笑うと、一人の赤ん坊を翼で掴み上げた。

 

 

 「・・・この子には罪はありませんが・・・一族郎党皆殺しなのでね。頂きます」

 

 

 母親の制止する間もなく、赤ん坊は翼に飲み込まれた。

 

 

 「うわー・・・心痛いなー」

 

 

 「ほざけ、笑っているぞ」

 

 

 「あ、いけね」

 

 

 「まああんま見てて気持ちいいもんじゃねえぜよな」

 

 

 「そりゃそうですよ。・・・じゃ、絶望して頂いたところで、

 

 

 

 

 

 

 

 全 部 喰 い ま し ょ う か !」

 

 

 翼が布のように広がったかと思うと、馬車の残骸ごと残っていた人間を飲み込んだ。勿論、絶影の話を聞いていた子供も。

 

 

 「あー・・・不味い」

 

 

 「だろうな」

 

 

「ぜーったい赤ん坊とか食べたく無いわー」

 

 

「・・・こちとら仕方なく食ってんのにそれは無いでしょう」

 

 

「まあまあ、んな事言っとる暇があるなら・・・」

 

 

ふっ、と長身の男が消え、傍観していた絶影に高速で殴りかかる。が、絶影は片手で長身の男の拳を弾いた。

 

 

「このよう分からん奴倒す方が先ぜよ!」

 

 

「よく分からん奴とは失礼な・・・」

 

 

絶影が文句を言おうとするが、頭部に浴びせられた斬撃で中断される。

 

 

「今回は檮杌の意見に賛成だ。どう考えても倒さねばマズイ」

 

「そだね、別にそこの人は気味悪いとか感じないけどさ、なんか・・・殺されそうだよね」

 

 

「そこまで言うなら潰しましょうか。・・・絶影、と仰いましたね。何か遺言はありますか?」

 

 

絶影は首を捻り、思い出したように答えた。

 

 

「じゃあ二つ。1個目は勝負して、万が一俺が勝ったら全員部下になってくれ」

 

 

窮奇が噴き出した。

 

 

「クッ・・・ハハハハハ!とんだ狂人だ!我らを悪神と知った上でそれか!・・・どうだ饕餮、貴様にも目的はあるだろうが、万が一この狂人が我々より強ければ変わるぞ?」

 

 

「窮奇・・・いいでしょう。乗らせて頂きましょう。他二人は?」

 

 

「どっちでもー」

 

 

「喧嘩できる方がいいぜよ!」

 

 

「・・・はぁ、では乗ります。二つ目は?」

 

 

絶影は虚無僧笠を脱ぎ捨てると、ニヤリと笑った。

 

 

絶影の片目は山吹色に光っていた。

 

 

「ファンなんとか、ご存知ないか?」

 

 

この言葉には饕餮が反応した。

 

 

「・・・ファンロン、とすれば、何故その名を?」

 

 

「たまたま道すがら聞いた。檮杌の事も聞いてる」

 

 

饕餮は背の翼を撫でながら言った。

 

「どうやら狂人でもないようですね・・・これは我々が一人ずつ丁寧に刃を向けるべき相手、そう捉えましょう。混沌!」

 

 

「いや、なんで僕から?」

 

 

「文句なし、さっさと行って下さい」

 

「うーわ、鬼だ・・・」

 

 

混沌はブツブツと言いながら、絶影に敵意を向けた。

 

 

「まいっか。・・・こっちも色々あるから消えてもらおっかな・・・まあ、ちゃっちゃと行こうか」

 

 

ニヤリと笑った混沌が指を鳴らすと、数百の槍が現れ、一斉に絶影に射出された。

 

 

 

 

 

次回へ続く

 





ありがとうございました。

次回、混沌戦です。


ゆっくりご覧ください。
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