ゆっくりご覧ください。
朝だ。清々しい朝だ。朝っぱらから侵二が神の公開処刑をしていなければ最高の朝だった。
「お前、こんな朝早くから殺すなよ・・・」
侵二は申し訳ありませんと頭を下げ、俺に手紙を差し出す。
「これを今殺した奴が所持していました」
俺はよれよれかつ血塗れの手紙を開くと、血文字で書いてあった。相当消耗してんなぁ。
「・・・ん、対談の時期かな。野郎集めてくれ」
「御意」
俺は血だらけの手紙を書いたシーンを想像してお悔やみ申し上げようと思ったが体は正直で笑ってしまう。次に侵二が現れると、やけにテンションの低い幻夜を除いて諏訪子を含め、全員揃った。
「あー・・・やる気ないわぁ」
「お前は朝から何テンションだだ下がりなんだよ」
「縁が好きな子出来ましたーだって。萎えるわあ〜、もうやる気ないわぁ〜。しかもその相手もしっかりしてるからなんとも言えないんだよねぇ〜」
「・・・孫の顔見れるんじゃね?「よし頑張ろう」手順飛び過ぎで笑うわ」
逆にテンションが跳ね上がった幻夜に安心し、俺たちはとうとう大和を封鎖していた鉄板を下ろす。彼らからすれば三年ぶりの直接の日差しだろう。喜べ、俺が帰ってきた。
たちまち何人かの神が現れ、俺たちの姿を見た途端、その場に平伏した。・・・どうやら恐怖は染み込んだらしい。
「悪い気分じゃないね。縁馬鹿にした奴は何処かなー」
「この程度では満足しませんが、やはり神を折るのは楽しいですね」
愉悦部に推薦される二人組が人相最悪の笑顔を浮かべていると、一人の神がやつれながらも正装で現れた。
「・・・お久しぶりでございます。そして、今回の和平、いえ、正直に言えば降伏を認めてくださり大変ありがとうございます。私が案内させて頂きます」
髪や髭は伸びていたが、須佐男だった。須佐男は諏訪子に一礼し、俺にも一礼して案内を始めてくれた。
「・・・正直に言いますと、貴方達の策略で、ウチは大荒れです。一月降り続ける大雨、数名が攫われいつしか死体になってその場に捨てられる事もあり、時に鳴る轟音で姉・・・天照を含め、皆疲弊しております。この効率だけを求めた見事な策略はいったいどなたが?」
「私・・・いや、俺だ。なかなかに悲惨になったな、須佐男。嫁さんはどうだ?」
やはり、と言ったように須佐男は天を仰ぐ。
「やはり兄上でしたか・・・櫛名田は大丈夫ですよ。元はといえ大和の神ではありませんから、丁重に、そして愛しています」
そう言いながら須佐男は照れ臭そうに頬を掻く。
「なら良いんだがな。・・・で、疫病はどう?」
「疫病・・・ああ、食物の腐るアレですか。おかげ様で食料は全部ダメですね。そのせいで半数が使い物になりません」
隣でガッツポーズをする風魔に苦笑する。
「じゃあ、おそらく諏訪子のトコに攻めようという意見を出した引きこもり大神は?」
「引きこもり・・・姉上は奥で待っておられます。兄上の正体は私しか存じていませんので・・・」
構わんよ、と、俺は背後の化け物を指す。
「こいつらは諏訪子やあの村に何かあればお前の国ごと滅ぼす。特に、そこでにこやかに笑ってる一見紳士的に見える奴は親を神に殺されてるせいで異様に殺意が高い。お前も前の訪問で運や態度が悪ければ頭からモグモグされてたぞ」
モグモグ・・・と、引きつった笑いを浮かべる須佐男と駄弁っていると、目の前に大きな引き戸が現れた。
「ここですね。・・・先に挨拶をさせて頂きます。洩矢諏訪子殿、此度は我々の高圧的な態度、本当に申し訳ありませんでした。私個人から、謝らせて頂きます」
「よ、よして下さい。私なんかの祟り神なんかにそんな・・・ちょっと龍一・・・」
「お前須佐男には敬語で俺はタメ口かよ。謝罪は受け取っておけよ。今回お前は本格的に被害を被ってんだ。たまたま俺らが暴れてお灸どころか溶けた鉄を据えてやったからなんとか収まったがな」
俺は慌てる諏訪子の頭を掴んで押さえ、須佐男に顔を上げさせる。
「お前の誠意は染みるほど知ってるが、あいにく大和のお偉いさんから謝って貰わんとこっち、主にそこの娘を弄られた幻夜が納得いかん。入らせてもらうぞ?」
「元よりそのつもりです。これは私のケジメですね。・・・姉上!客人です!「入れ」・・・失礼します」
「し、失礼します・・・」
「失礼します」
「失礼させて頂きます」
「邪魔するぜよ」
「入る」
「おっ邪魔ー」
役三名クソみたいな挨拶をするが、目の前のバカシスターはなんとも思っていない様子。なお隣のアホブラコンはてんてるだいじんの隣に座っている。そして周囲にはやや高位の神が座っているように見える。
「よかろう、座れ」
あまりのてんてるの威圧のショボさに俺は欠伸しそうになるが、隣の諏訪子に効いているのだから相当だろう。俺はそのまま座った。
「・・・まず、此度の策、見事だった。我々も流石に疲弊し、もうこれ以上は戦えぬ」
「それはどうも。まあ生物を苦しめることが私含め犯罪者、絶影一団の特技ですから」
「・・・どうだ?我々の下に下らぬか?地位や神としての立場は保証する、悪い話ではないはずだが?」
天照の微笑みながらの提案に、俺は微笑み、諏訪子を野郎共に囲ませて、舌打ちをした。
「いきなりそれですか?こちらの言い分はどうなりました?」
「・・・それは、受け入れることは出来ん」
「何故?」
「申し訳ないが、大和としての威厳が落ち」
無言で発砲。天照が絶句し、周囲の神も硬直する。
「すみません、私は月に落とした針の音が聞こえるぐらい耳が遠いものでして、もう一度お願いします」
月読命は俺が誰か分かったのか、口をパクパクさせている。
「だ、だからだな、我々大和の長い歴史に傷が」
2連写。天照の背後の障子がズタズタに破れ、俺は唾を吐く。
「ケッ、威厳、歴史、そんなんで飯が食えるかっての。それしか言えんのか?ええ!?」
何人かの神が立ち上がるが、瞬く間に喉元に侵二の翼が突きつけられ、硬直、数名は失神してしまう。
「そんな事しか言えないようなら・・・いっそ滅びろ。さぞ貴様らの生みの親もクソであろうな」
俺の言葉に天照を覆う威圧が変化する。
「黙れ!貴様、いや、アンタなんかに龍一兄さんの事が分かるもんですか!」
「やめなさい天照!この人はダメです!」
俺は仕方なく、息を大きく吸った。
「分かってねえだろうが引きこもり大神ィ!!」
俺は立ち上がり、天照に詰めかかる。
「なーにが兄さんの事が分かるものか!だ!本人前にして言うセリフじゃねえだろうが!!それになんだ、上から目線で会話しろって誰が教えたゴルァ!!」
「まさか・・・あ、兄上・・・!?」
「あ?今更かよ?周りのお前らもだ!ブッ殺すぞ!」
天照は俺の威圧、というか説教に硬直する。周囲の神もようやく俺が何なのか分かったようで、騒ぎ始める。そして、別の部屋からトテトテと音が響き、天照の背後にあった障子の引き戸が激しく開かれた。俺の発砲もあったせいか引き戸が壊れた。
「にーさまーっ!!」
もちろん龍華だ。慌てる神々と天照と諏訪子を無視して俺は飛び込んでくる龍華を掴むと肩車し、天照を睨みつける。
「天岩戸の時みたいに長い説教喰らうのと、ここで土下座するの、どっちが良い?」
「兄さん・・・よしてやって欲しいです。天照、説教は私も嫌です」
天照は、
土下座した。
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「オルァ!皆の者!俺の帰還だ!覚えがなくても懺悔しろ!!」
あの後、俺は土下座した天照を担ぎ上げ、大和の神々をこぞって引きずり出して目の前で正座させている。約八百万人の神が正座するのもなかなかシュールだ。
「まず天照。なんだあの態度は!!ええ!?教育し直すぞオルァ!」
「ご、ごめんなさい・・・」
「次やったらマジで夢に出るぐらいな事するからな!次に月読命!お前も止めろぉ!!何隣に座ってんだオルァ!!」
「もうしません・・・」
「次すると二度と来国してやらねえからな!んで須佐男ォ!は除外して、「はあ!?」「ずるーい!」黙ってろアホ二人!!残りの貴様らァ!!調子乗りすぎじゃオルァァ!!」
周囲一帯が全て平伏する。
「次やると一回死んだ奴もまだ死んでない奴も一回モグモグされる事になるからな!以上!解散!八岐殺しとアホブラコンと引きこもり大神と龍華は残れ!「あー!またその名前で呼んでますー!」「その名前で呼ぶのやめてよ!」「その名前は勘弁してください・・・」「はーい!」元気でよろしい。では龍華、デコピンだ」
「ええー!?」
「ええー!?じゃねえんだよ馬鹿野郎!龍華、お前何してた?」
「ちゃ、ちゃんとお仕事してました!」
「どこがちゃんとだ。声を大にして言ってみろ。ええ?」
「あうぅ・・・ごめんなさい・・・」
「即落ちかよ!・・・まあいい、歯ぁ食いしばれよ。ほらよ!」
最低火力のデコピンを叩き込み、龍華がその場で悶絶する。
「うにゅぅ・・・」
「気の抜けた声出すな。・・・で、御三方、色々あるが・・・久しぶりだな」
「お久しぶりですよ兄上〜!私は元気でしたよー!」
「先ほども言いましたが、お久しぶりです、兄上。・・・私も特には何も」
「・・・久しぶり、兄さん。その・・・ごめん」
無事どころか死人が出まくった大惨事ではあるが、何とか交渉には成功したようだ。
次回へ続く
ありがとうございました。
平和回にまた戻ります。
次回もお楽しみに