真・幻想創星録   作:青銅鏡(銀鏡)

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台風で隣の家のガレージの屋根が吹き飛びました。ウチは元気です。

何故こうも今年はデカイのばかり来るんですかね・・・


ゆっくりご覧下さい。


第二十九話 勝ちの価値

私はゆっくりと目の前の敵に視線を合わせる。相手は明らかに私より実力は上。勝機など一つもない。

 

 

「さてさて、ではお二方、心の準備は?」

 

 

それでも、前よりは勝率はあるかなと、私は苦笑する。

 

 

突如現れ、私の、私の村の窮地を救ってくれた人、どうしてもあの人に、私だってやれると見せたくて、

 

 

「私は出来てるよ。諏訪子は?」

 

 

だから勝負を挑んだ。これは負け戦、私個人で争った時の結果の証明。分かってる。けれど、

 

 

「出来てる。じゃ、お願いするね」

 

 

今、まるで子供を応援するように旗まで振って応援してくれる縁や、旗を寝ずに作ってくれていた龍一を見ると、どうしても、負けたくないと思った。

 

 

「では、始めましょう。・・・始めッ!!」

 

 

だから、やれるだけやるっ!

 

 

____________________

 

 

「負けだなあれは。全然ダメだ」

 

 

復興の遅さにしびれを切らし、全てを素手と拳で直した変態のせいで早まった一騎打ちを眺め、つい本音を漏らしてしまう。

 

 

「まあ、無理だろうな・・・だが」

 

 

あれを見てはな、と、風魔は隣を指す。

 

 

「諏訪子様ー!!頑張って下さいー!!」

 

 

「諏訪子なら行けるよー!頑張れー!!」

 

 

遠くに座りながら叫ぶ幻夜と、その上に座りながら必死に旗を振る縁を見ると、どうもそう言えなくなる。

 

 

「ま、こういうのを見ると応援したくなるのも仕方ねえぜよな!気張れよ諏訪子ォ!」

 

 

「そう、だな。行け!諏訪子!」

 

 

「侵二の練習活かせよ諏訪子!!」

 

 

ついつい応援してしまう。向こうの大和の奴らの叫び声のせいでほとんど聞こえていないかもしれないが、きっとまあ、一個ぐらい届くだろう。

 

 

____________________

 

 

・・・圧倒的だ。やっぱり私の地面を動かしての攻撃、侵二に教わった付け焼き刃程度の体術では、神奈子の御柱を使っての攻撃には刃が通らなかった。それどころか周囲一帯の土ごと吹き飛ばされる。

 

 

「やっぱ・・・ダメかな!?」

 

 

あまりの絶望に私苦笑しそうになる、が、神奈子の見せた御柱の攻撃の後のぐらつきを見ると絶望は吹き飛んだ。

 

 

「ダメじゃないね!」

 

 

私はここぞとばかりにあるものを取り出す。

 

 

ふと、あの時の回想を思い出す。

 

 

-----仕方ねえな。神奈子と喧嘩するんだろ、何個か貸したりプレゼントしよう。

 

 

-----じゃあまずこれをやろう。【鉄の輪】だ。

 

 

「はあっ!!」

 

 

私は龍一から貰った鉄の輪を回転させて神奈子に投げる。一個は避けられたものの、もう一つは神奈子の体勢を崩し、ダメージを与えた。

 

 

「よしっ!!」

 

 

「っ!やるじゃないか!」

 

 

再び回想が流れ、袖に隠していた物を取り出す。

 

 

-----後、面白い物を貸してやろう。これを見ろ。

 

 

-----何、殺しはしないだろう。

 

 

-----八岐大蛇の牙で作ったナイフだ。

 

 

が、袖のものを捨てる。やっぱりダメでしょ!

 

 

-----てめえ何捨ててやがる。

 

 

直接脳内に話しかけてて回想じゃなかった!?

 

 

-----まーいーや、ちょっと俺らの方見てみろ。

 

 

私はその声通り、龍一達の方向を見る。

 

 

「諏訪子様ー!頑張って下さいー!」

 

 

「ぜーったい行ける!頑張れ!」

 

 

「いっちょかましてこいやオッルァ!」

 

 

「さっさと行けや祟り神ィ!」

 

 

「そんなもんじゃねえぜよが!もっと行けるはずぜよ!」

 

 

「駆けろ!祟り神!!」

 

 

少しトラウマを呼び起こす様な激励は混じっているけれど、それでも、皆応援してくれている。

 

 

「・・・ありがと。これじゃ負けられないねえ!」

 

 

私は再度鉄の輪を投げる体制に移りながら神奈子に突撃した。

 

 

「行くよっ!!」

 

 

「来い!」

 

 

____________________

 

 

強すぎる風圧と土煙の中、鉄の輪や御柱が飛び、俺に向けてナイフが投げつけられ、俺の手元に戻ってくる。

 

 

「あーもう滅茶苦茶だよ。全然見えないね」

 

 

「それでも応援は届いてますよ」

 

 

「そだね!頑張れー!・・・ん?」

 

 

叫ぶ幻夜に御柱が飛び込み、顔面に直撃する。

 

 

「お父さーん!?」

 

 

だが、御柱はぶつかった途端に重力に逆らって静止する。そのままパキパキと音を立てながら御柱は崩れ始める。

 

 

「大丈夫だよー・・・で、変化した?」

 

 

鼻をさすりながら幻夜が問いかけてくる。俺は首を横に振った。

 

 

「いや、相変わらず見えねえ・・・っと、今クソデカい爆音したな。決着かもな」

 

 

それから数分、物音が感じられなかったので、俺は風魔に指示を出した。

 

 

「風魔、薙ぎ払え」

 

 

「承知」

 

 

人が吹き飛んでもおかしくない突風が吹き、周囲の砂埃や土が巻き上げられ、何処かへ飛んで行く。

 

 

「あーっ!!」

 

 

煙が晴れた先には、倒れた姿で動かない神奈子と、立ったまま気絶した諏訪子がいた。

 

 

「同率・・・ですかね?」

 

 

「いや、神奈子の勝ちだ。「そんな!?」・・・見ろ、動いた跡がある。途中で力尽きたんだろ」

 

 

「じゃあ負け、ですか・・・?」

 

 

縁が残念そうに言う。しかし、幻夜はやんわりと縁の頭を撫でる。

 

 

「負けは負けだよ。けど、負けだって悪いわけじゃないし、相手を追い込んでの負けは惜しい。諏訪子は凄く強いって事だよ、誇っていいよ」

 

 

「そう・・・ですか?」

 

 

「そだよ。その辺にいるのが最強目指してたり、敗北は死と考える奴だったり、勝たないと生きていけないやつがいるから縁がそう思ってるだけで、他の価値観もあるからね?僕はまあ、裏も兼ねて勝てたら勝って、負けそうならさっさと降参するか適当に足掻くだからね」

 

 

勝ちに対する価値の価値観は違うわけだ(激ウマギャグ)

 

 

「・・・色々あるのですね」

 

 

「そりゃ十人十色、色々あるよ。・・・もっともその10色全部一人で兼ねるど変人もいるけどね」

 

 

そう言いながら指は俺を指す。誰がど変人だ。

 

 

「勝者、八坂神奈子!第1試合終了っ!」

 

 

審判だったため土煙を払いのける侵二がそう言うと、大和から歓声が起きる。

 

 

・・・諏訪子はよくやった。諏訪子を背負いながらやって来る侵二に、少ないが大和からの拍手もあった。

 

 

「コレでいいんだよコレで。・・・じゃ、ちょっと席外すわ」

 

 

「続いて第2試合、須佐之男命対神谷龍一、両者前へ」

 

 

天照と月読命が茶を吹いたのが見える。呑気に茶なんか飲むなと言いたいが、隣で団子食ってる親子がいるので何も言えない。

 

 

「え!?龍神様も出るんですか!?」

 

 

「まあな。そりゃ・・・負けっぱなしも癪だろ?なぁ須佐男くぅん?」

 

 

俺は須佐男ににっこりと笑顔を見せ、げっそりとした須佐男が首を振る。

 

 

「確かに成長を見て頂きたいと言いましたが、兄上の本気でとは言ってませんよ・・・」

 

 

「馬鹿、四割だ四割。指パッチンで山割る程度だ」

 

 

「何処が程度ですかっ!!」

 

 

「へーへー、お堅いこって」

 

 

俺は新月の形を変えて須佐男に突きつける。

 

 

「ま、やるんならさっさとやろうか!なあ!」

 

 

渋々としていた須佐男だが、草薙剣を抜き、獰猛な顔になった。

 

 

「ええ、折角ですし、お願いします!」

 

 

「暑いんでやめてください。始め」

 

 

やる気のない審判の声と共に双方が動く。

 

 

「行きますっ!」

 

 

初撃は須佐男が草薙剣を縦に振った、それを新月をチェーンソーに変えたもので受け、刃で草薙剣の刀身を噛む。そのままエンジンを回して刀身を流す。

 

 

「っ!?流され・・・」

 

 

「膝蹴りいッ!!」

 

 

刃をガッチリと噛んだ鎖の流れで体制を崩した須佐男の腹に膝蹴りを叩き込む。須佐男は衝撃で身体をくの字に折る。

 

 

「ゴッ・・・!」

 

 

「肘打ちいッ!!」

 

 

折れ曲がった須佐男の背骨の筋に肘鉄を打ち付け、そのまま右膝に須佐男の胸を乗せる。

 

 

「ウゲァッ!?」

 

 

俺の膝の上に胸を乗せた須佐男にトドメを刺す。

 

 

「再度の肘鉄と膝蹴りのギロチンを喰らえッ!!」

 

 

「うあっ・・・!?」

 

 

腹部を肘と膝打ちに挟まれた須佐男はその場にぶっ倒れる。

 

「はあ・・・さて、決着ーッ!!なななんとっ!僅か数瞬でダウンーッ!この勝負、龍一の勝利ッ!!」

 

 

溜息からのいきなりテンションのぶっ壊れた審判の叫び声が響き、月読命はその場に突っ伏し、天照はあまりの出来事に気絶した。

 

 

「ええーっ!?」

 

 

「でーっ!?」

 

 

衝撃の叫び声をあげる縁と、コイツやりやがったみたいな叫びをあげた、ついさっき目覚めた諏訪子の叫び声が響く。

 

 

「あーあ、また簡易デスコンボやったよ」

 

 

「・・・予測可能、回避相当不可だからな」

 

 

「予想では肋骨5本と背骨折れてますね。骨髄大丈夫ですかね?」

 

 

「俺は更に連撃喰らったぜよが、アイツ生きとるぜよか?」

 

 

「んな事言う暇があったら介抱ぐらい手伝って欲しいですよッ!」

 

 

慌てて介抱を始める月読命が悲痛な叫びを上げるので、仕方なく俺は須佐男に俺の生命力を流し込み、回復させる。やべえ骨髄折れてた。

 

 

「っ、はあっ!・・・あれ、兄上と姉上?・・・あ、負けたんでしたね」

 

 

「無事そうだな。「何処がですか!!」どっからどう見ても「死にかけてましたよッ!」お前弟の事になるとうっせえよな」

 

 

「大事だからですよ浮浪者兄上!「んだとアホブラコン!テメエもやんのか?ええ!?」・・・や、やってやりますよ!」

 

 

「よーし言ったなど阿呆。一撃で潰す」

 

 

「か、かかって来いで「始め」ちょっ!?「ほらよ!」うにゃっ!?」

 

 

相棒のど外道のアシストもあって、一撃でデコピンを決めて悶絶させた。

 

 

「・・・ったく、悪かったよ。お前も無理して意地張るなよ」

 

 

「それ、デコピンしてから言わないで欲しかったですぅぅ・・・」

 

 

「わりーわりー、そういや須佐男」

 

 

「何ですか?」

 

 

「刀からお前に向けて、奥さんとよろしくだと」

 

 

「・・・っ!・・・ありがとうこざいます」

 

 

「俺に言うな。あの山に酒でも添えとけ」

 

 

はい!と言って頷く須佐男は笑っていた。凄えな半死半生まで追い込んだのに。てかほぼ死んでたのに。

 

 

「龍一ッ!何やらかしてるんだよって、持ち上げるな!」

 

 

俺は血相を変えて押しかけてくる諏訪子を軽く持ち上げ、ニヤリと笑う。

 

 

「じゃあこの先の事も決まったし、ちょっとぐらい酒飲むか!」

 

 

「無視するなー!」

 

 

この言葉に、俺は後悔することになった。

 

 

次回へ続く




ありがとうございました。


皆様も台風にはお気をつけて。


次回もお楽しみに。
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