真・幻想創星録   作:青銅鏡(銀鏡)

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まーた台風でしたね。頭イかれてるんじゃないですかね。

来る日も来る日も台風台風、もう通学路ドッロドロですよ。


ゆっくりご覧ください。


第三十三話 私の妻

「風魔ー、お暇ですかー?」

 

 

「バカ言え、補修の仕事だ」

 

 

「・・・私と仕事、どっちが大事なんです「仕事」ひどい!」

 

 

風魔だ。先日の天魔殺害から早くも一年。あれ以来伊織が常にこの調子で困る。

 

 

「良いですよーだ。私は文ちゃんと遊んでますー」

 

 

「文を巻き込むな。アイツも仕事だ」.

 

 

私の殺した先代の対応不足のせいで山は大荒れだったので、今は伊織を除く誰もが多忙を極めている。伊織の仕事?私の食事作りと買い出しだ。

伊織の言っている文とは、私がこの前抜擢した伊織直属の配下・・・まあ言い方を変えると伊織の相手をする者で、射命丸文(しゃめいまるあや)と言う。若くして天狗の能力が優れており、明るい性格や人妖分け隔てなく話しかけるところを気に入って登用した。とはいえ世話係も仕事は別にある為、非常に厳しい仕事となっている。

 

 

「ただ今戻りました!」

 

 

「ご苦労。早速で悪いが嫁が煩い。構ってやってくれないか?」

 

 

「はい!」

 

 

彼女には申し訳ない。本来なら特別に給与を与えるはずだったのだが、彼女が伊織のいない時に頭を撫で、膝枕をしてくれるだけで良いと恥ずかしそうに言ってくれたので、給与増加とそれで我慢してもらっている。

・・・しかし、何故私の膝枕程度でそこまで働けるのかは分からない。男衆も私と握手する事、褒められることを至上としているとか。まったく意図が読めん。

 

 

「文ちゃーん、風魔ったら酷いんですよー!私より仕事が大事なんですってー!」

 

 

「・・・それって、早く仕事を終わらせて、伊織様に構ってやりたいから心を鬼にしておられるのではないですかね?」

 

 

「そうなんですか風魔!?」

 

 

何やら話が捻れてはいるが、この際都合がいいので頷いておいた。

 

 

「・・・ごめんなさい風魔ぁー!私が悪かったから頑張ってー!」

 

 

都合のいい嫁だ。まったく・・・と思いながら、文にはハンドサインで感謝を示しておいた。また後日給料を上げねばな・・・

 

 

「あ、ところで風魔様。周囲の観察に向かっていた同僚からの連絡です。遠く離れてはいますが、何者かが天狗の山を襲撃、一夜で陥落させたそうです。・・・逃げた妖怪はゼロだそうです」

 

 

「そうか。その後の動きは?」

 

 

「それが・・・それ以来動きはありません」

 

 

つまり理解不能な行動だと。そうなると知り合いしかいない。と言うか喰ったなアイツ。

 

 

「なら警戒は最低レベルで良い。・・・たまには休ませてくれんかな。・・・そう思わんか?」

 

 

私が文に愚痴をこぼすと、文は苦笑した。

 

 

「そうですけど・・・風魔様が書類を全て担当され始めたから、風魔様が忙しいんですよ?本来なら我々がすべき事をされているだけですので、いつでもお休みになられて良いんですよ?」

 

 

「まあそうだが。上司がちゃんと仕事をしないと、部下に示しがつかんからな。・・・いわば私は部外者であるべき存在、そんな私が信用を得るにはこのような仕事、当然のようにすべきだ。お前達にもいち早く休んで欲しいしな」

 

 

「・・・皆気にしてないんですけどねぇ」

 

 

「そうは行かんだろう」

 

 

堅物ですねぇ。と、文に笑われる。そうだろうか?

 

 

「ところで文、最近私が外に出ると女性ばかりが寄ってくるのだが、私は何か良くないことをやらかしたか?」

 

 

「・・・さあ」

 

 

何故目を逸らす。

 

 

____________________

 

 

しばらくすると、伊織が立ち上がった。

 

 

「そろそろ私もお暇なので散歩ついでに見てきますねー・・・じゃなかった、風魔、少し外を見てきますね」

 

 

「一々言い換えずとも良いだろうに・・・気をつけてな」

 

 

「はい!」

 

 

伊織は私に軽く口づけをすると、外へと出て行った。

 

 

「・・・行きましたか?」

 

 

伊織が出て行くと同時に、文が視線をキョロキョロと動かし始めた。

 

 

「あのな・・・何でそうやましい事をしているような言い回しで言うんだ?」

 

 

「そりゃ、バレたら怒られるからですよ!」

 

 

「よく分からんな。単に撫でるだけだろうが。・・・まあ良い、好きなように座れ」

 

 

私がそう言うと、文は私の肩に頭を寄せた。

 

 

「・・・今日も、良いですか?」

 

 

「いつもすまんな。・・・しかし、本当にこれだけで良いのか?他にも何か頼みたいことがあれば言ってもらって良いのだが?」

 

 

文が首を横に振った。

 

 

「いえ。・・・ここが落ち着くんです。まるで、父や祖父みたいな・・・そんな安心感があるんです」

 

私が頭を撫でてやると、文は嬉しそうに目を細めた。

 

 

「よく分からんな・・・そんなものか?」

 

 

「んっ、分からなくて結構ですよ。・・・しばらくこのままでお願いします」

 

 

「そうか、分かった」

 

 

しばらく文をそのままにしながら書類を書き、終了して伸びようとすると、左肩から静かな寝息が聞こえてきた。文が頭をもたれかけたまま眠っていた。

 

 

「・・・やれやれ、面倒な嫁の次は、疲れ気味の部下か。・・・まあ、人徳と見るか」

 

 

苦笑しながら文を抱きかかえ、客人用の布団を出して寝かせる。こうして疲れていると言うことは他も同じ。ここ一週間ほど休むべきかもな・・・

 

 

「今戻りましたー・・・あれ、文ちゃん寝てます?」

 

 

伊織がわざとらしく戻ってきたので、私は口元に人差し指を立てる。伊織は察してくれたのか、小声になった。

 

 

「寝てるぞ。・・・ちょっと無理をさせたかもな」

 

 

「まあ、皆ここ一ヶ月お休みないですからね。・・・それより、前々からですけど、文ちゃんと何してるんですか?」

 

 

伊織がジト目でこちらを見てくる。・・・特に何もしていないはずだが?

 

「頭を撫でただけだが・・・」

 

 

「そうですか。・・・喜んでました?」

 

 

「こうして寝てるんだ。落ち着いたのかもしれんな」

 

 

伊織は微笑むと、座っている私の膝の上に乗った。

 

 

「なら良いんですけどね。風魔はちょっと自分の顔をみた方が良いですよ。その顔と性格でで撫でたり口説かれたら、大抵の人が勘違いしちゃいますよ。そんな軽い人にはなってほしくないです」

 

 

「そんなものか?」

 

 

「ええ、特に風魔はそれが分かってないから女の人が寄ってくるんですよ。・・・文ちゃんはお父さんみたいだと思ってるみたいですけどね。まあ風魔は大人びてますからね」

 

 

「そうか・・・すまなかったな、軽率だったかもしれんな」

 

 

「ちゃんと反省してくださいっ」

 

 

伊織に指摘されたところを思い返し、確かに悪かったなと反省する。・・・嫁がコイツで良かったかもしれない。

 

 

「・・・で、お仕事は終わられたんですか?」

 

 

「終わったぞ。約束・・・何をしてほしい?」

 

 

「そうですねぇー・・・じゃ、お買い物行きましょう!」

 

 

「声が大きい。・・・分かった、すぐ準備する」

 

 

「はーい」

 

 

嬉しそうに走っていく伊織を見て、まだ子供だなと苦笑し、そんな子供に惹かれた私も子供だなと、更に笑ってしまった。

 

 

「で?何処に行くんだ?」

 

 

「食器やお布団を買いに行きます」

 

 

「そうか。買えるのか?」

 

 

「風魔のお財布でお願いします」

 

 

「最初から私頼みか!」

 

などと言っていると伊織は私の腕に絡みついてきた。

 

 

「いーじゃないですかー・・・」

 

 

「はあ・・・適当な数にしておくなら構わん」

 

 

「やった!「だから声を下げろ」・・・はーい」

 

 

眠っている文を確認し、私は伊織の手を取って外へ出た。

 

 

____________________

 

 

「あ、そうだ。風魔って幾つなんですか?私よりは歳上ですよね?」

 

 

「ふむ・・・」

 

 

千から先は数えていないな・・・龍、いや、侵二と会ったのが五千万年前か、そしてあの里から出たのが一億、出る前に一億以上は居たから・・・

 

 

「二億と・・・九千万ぐらいか?知り合いの中では二十歳扱いだったが。そうだな、あの五人だと上から三番目か」

 

「に、二億・・・!?」

 

 

「ああ。・・・お前を小娘と呼ぶ理由が分かったか?お前とは比べ物にならん程長く生きた。生き過ぎた。もう老害だ。・・・お前に惹かれたのは、止まり木を探していたのかもな」

 

 

「な、何ですかその言い方・・・照れるじゃないですか。後、老害は言い過ぎですっ」

 

 

「ハハハ、そうか」

 

 

「でも、そんなに生きて、寂しくなかったんですか?」

 

 

「・・・そうだな。ある程度は辛い時もあったか・・・」

 

 

一人で刀を振っていた事を思い出していると、伊織が俺の頭を必死に撫でようとしていた。

 

 

「ぐぬぬ・・・!」

 

 

「・・・何してるんだ?」

 

 

「撫でようとしてるんです・・・!」

 

 

私は微笑ましさに口が緩み、そっと頭を下げた。すると、優しい手つきで私の頭に触れた。

 

 

「届いた・・・あのですね、風魔、私は独りぼっちがよくわからないのであんまり言えないですけど、無理したら怒りますよ」

 

 

「・・・そうか、ありがとう」

 

 

「じゃあ、お買い物続けましょう!」

 

 

私の嫁は面倒だ。だが、良妻だ。

 

 

次回へ続く

 




ありがとうございました。

妹の自然学校のため、また来るかもしれない台風が消え去る事を願います。


次回もお楽しみに。


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