幻夜視点、まだまだ続きます。
ゆっくりご覧ください。
縁と離れて以来、ちゃんと連絡はしているものの、やっぱり寂しいね。
え?縁の事が好きだったのかって?あれは・・・嘘だよ。縁に諦めさせるためだよ。・・・前々から、特に17頃から僕の事気にしてたのは知ってたから、あの場所で敢えて、ね。酷い親だなぁ・・・やっぱろくな親じゃないね。全然見てないくせに、変なタイミングで心配しないようには心がけてたけど、難しいね。
「・・・まあ、娘としては凄く好きだったしなぁ・・・嘘ではないかもね」
あれから早くも五年。縁は無事第一子を出産。女の子だった。もう見て死ぬかと思うほど可愛かった。彼氏君感動でガン泣きしてたな。やっぱりあの子で良かった。ちなみに僕もガン泣きした。
そんな中、僕は面白い情報を手に入れた。何しろこの辺りに「花妖怪」がいるとか。しかも滅茶苦茶美人で滅茶苦茶強いとか。
・・・そんな事聞いたら見たくなるよね!って事で、絶賛その妖怪のいる「太陽の畑」探し中なんだよね。でも中々見つからない。
「何処かなー・・・」
いつも通りフラフラと歩いていると、綺麗な向日葵の花を見つけた。
茎はしっかりと伸び、力強く支えている。
花弁は太陽をそのまま下ろしたような鮮やかさを持つ黄色で、一枚一枚が気高く咲いている。茎から生える葉も大きく、青々としており、虫食いの箇所が一つもない。
「凄い・・・これを育てたのは天才かな?」
いやもう凄いね。こんな綺麗な向日葵初めて見た。それも辺り一面。よく見ると、目の前の金色の地面は全部向日葵だった。
「ひょえー・・・」
僕が気の抜けた声を出していると、畑の右側から誰かが歩いて来た。目が合った。
「あら、こんな所に何者かしら?・・・でも、向日葵は悪い人ではないって言ってるものね・・・貴方、何しに来たの?」
縁のような緑髪、僕より少し低い身長、ちょっと鋭いけれど、綺麗な赤い瞳、優しそうな顔・・・
「・・・い」
「何?聞こえないわ」
「・・・めっちゃ可愛いッ!!」
やばい死ぬ。縁の娘くらい可愛すぎて死にそう。浄化されて死にそうなくらい可愛い。あー、笑顔で溶けそう・・・そりゃ作る向日葵も綺麗だよね。
「ちょっと!?貴方!?」
「はっ!?・・・ごめんなさい。ついつい向日葵と君が綺麗なもんで、ちょっと死にそうに・・・」
「向日葵はともかく、私で!?」
驚く顔も可愛い。もう死んでもいいや。これが一目惚れって奴かあ・・・
「・・・んんっ、ともかく、貴方は向日葵を見に来たのね?何もする気は無いと?」
咳払いも可愛い、じゃなくて!
「そだね。向日葵と言うか、綺麗な花畑を見に来たんだよね。後、君の噂聞いてかな。噂以上に可愛くて死にそう」
「そんな理由で死なれても困るのだけれど・・・」
「そだね、ごめんね」
彼女はふうと息を吐いた。可愛い。さっきの困り顔も可愛い。もう抱きついて頭撫でたい。・・・落ち着いて、リラックス、リラックス・・・
「・・・まあ、良いわよ。花を見に来たのよね?案内してあげるわ、私の作った花畑をね!」
誇らしげに笑う彼女も、やっぱり可愛らしい。理性大丈夫かな。
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「そう言えば貴方、名前は?」
一通り見せてもらい、僕も彼女も満足していると、彼女がふと聞いて来た。
「んっとね・・・幻夜。まぼろしの幻に、夜って書いて幻夜。君は?」
「幻夜ね。私は風見幽香(かざみゆうか)、幽霊の幽に、香りの香よ。幻夜、聞いたことがあるわね」
「そー?結構いる名前なんじゃない?・・・ところで幽香はいくつ?」
幽香はいたずらっぽく微笑んだ。
「いくつに見えるかしら?」
「んー・・・十、八?」
幽香は嬉しそうに笑った。
「お世辞でも嬉しいわ。・・・でも、ここに来たからには、私が妖怪なのは知ってるわよね?本当は幾つだと思う?」
僕はキョトンとして首を傾げた。
「・・・まさか、本当に言ってるの?」
「え?そうじゃないの?・・・なら、十九!」
幽香は僕を見てポカンとした顔をして、クスリと笑った。
「貴方、子供みたいね。・・・私は三百十八歳よ。残念ね。・・・貴方は幾つかしら?」
僕は幽香に似せて、悪戯っぽく笑った。
「幽香は幾つだと思う?そもそも何者だと思う?」
そうねえ・・・と、幽香は顎に手を当てて考え始め、すぐに答えた。
「旅の人間・・・かしら?歳は十七?いや、それだと若過ぎるわね・・・子供っぽい二十一、かしら?」
「残念。人間じゃないよ。・・・歳も、幽香より上、かな?」
「本当に!?私より上なんて初めて聞いたわ!」
「そう?えっとねー・・・聞いたら戻れないけど良い?」
「何それ?変な感じね。・・・気にしないわよ、教えてくれる?」
じゃあ良いやと思って、僕は微笑んだ。
「はーい。・・・改めて、僕は幻夜、混沌さ。歳は二億と八千七百万・・・くらいかな。お嫁さん探してまーす」
幽香が腰を抜かした。
「こ、混ッ・・・混沌!?」
「うんそう。混沌。ついこの前まで指名手配犯だった混沌」
そうなの・・・と、幽香が立ち上がろうとするので、僕は手を貸してあげる。・・・すっごいスベスベな手だなー
「ありがとう。・・・ちょっとイメージと違うわね。もっとこう、粗暴で悪そうなイメージだったわ、ごめんなさいね」
「いーよ。でも僕だって生きてるからさ、植物とか好きだし、花を見たら和むよ?」
「そうよね。・・・変に境界を引いちゃってたわね。今度友達に教えてあげないといけないわ」
「そーそー、悪いイメージばっか言われると、こっちもへこむからね。まあ嬉々として受け入れてる奴もいるんだけどさ」
ところで、と僕は幽香に質問をする。
「幽香は彼氏とか旦那さんいるの?」
「ブフッ!?」
幽香が噴き出した。・・・そんな変な事聞いたかなー
「ゲホッ、ゴホッ、・・・いないわよ。いきなりで驚いたじゃない」
「ごめんごめん。まあつまり、僕にもチャンスはあるわけだね」
「ブッ!」
再度幽香が噴いた。
「・・・嫌?」
「ゲホッ、・・・別に嫌とかそんなのじゃなくて、突然過ぎるし、早過ぎるわよ」
「そっかー」
嫌ではないと遠回しに言ってくれているので、内心ガッツポーズのまま踊ってる。
「・・・そもそもそんな事言われたの初めてだから、どうしたら良いか分からないじゃない・・・!」
幽香は何か言ったみたいだけれど、聞こえなかった。
「・・・じゃあ、またこよっかな。今日は帰るね」
「そう?別にいつ来ても構わないわよ。私の家はあそこね。また来てくれるなら歓迎するわ」
「ほんと?やった!」
僕は嬉しさで飛び上がり、危うく幽香に抱きつきそうになって自制する。危ない危ない、嫌われるとこだった・・・
「・・・そこは抱き付いて来ないのね・・・っ!」
あれ?またなんか言ったけど聞こえなかったや。
今度遊びに行く時、何お土産に持って行こうかなー
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帰ってから何となく、僕は風魔に連絡をした。理由は無かったけど、一番しっかり対応してくれそうだったからかな。いやまあ他にロクなのいないからなんだけどさ。
「・・・何だ、幻夜か。久しいな」
「うん、おひさー。・・・あのねあのね、聞いてくれる?」
「話にもよるが、構わんぞ」
「えっとね・・・好きな人、見つけた」
「そうか、お前もか。良かったな」
「うん、それでどうしたら・・・ん?貴様、も?」
僕は風魔の言葉に耳を疑い、再度聞いてしまう。通信の奥で、風魔がああそうかと言ったのが辛うじて聞こえた。
「お前達に言ってなかったな。・・・私に嫁が出来た」
「・・・嘘でしょ!?待って、早くない!?」
「奪いたくなったから奪い取った。特に後悔もない」
いやそんな後悔云々じゃないでしょ・・・そもそも奪ったって何さ・・・
「待って待って、じゃあさ、結婚したの?」
「したな。もう数年過ぎる」
まさかの一番は風魔かぁ・・・負けたなぁ。って早過ぎるでしょ。
「そっか。じゃあ尚更質問なんだけど、好きな子にはどうしたらいい?」
風魔は悩んだ後、少し待てと言った。
「伊織、知り合いから通話が来たんだが、普通女性は何をされると喜ぶ?」
向こうから声が聞こえるが、何を言っているかは分からなかった。風魔が戻ってきた。
「今嫁に聞いた。まずは話す種を持って、よく話す事だそうだ。特に相手の趣味に合わせたものをだそうだ。・・・後はまあ、ちょっとしたボディタッチだそうだ。嫌われていれば嫌がるし、そうでなければ手を繋ぐ、程度なら行けるだろう。・・・何せ嫁にしたせいで何をしても喜ばれるのでな」
「ふーん・・・ありがと、ちょっと参考になった。すごい惚気だね」
「そうか。・・・結婚した身から言おう。悪くはないぞ」
「何それ、自慢?」
「そうかもな」
風魔の笑い声が聞こえ、ついつい僕も笑ってしまう。
「ありがとね、また連絡するかも」
「好きにしろ、お前なら多分大丈夫だ」
風魔との通信を切り、僕はごろりと借りた家の床に寝転んだ。
「好きって・・・難しいなぁ」
どうすれば幽香、喜ぶかなぁ・・・
次回へ続く
ありがとうございました。
悪天候で通学路が沼地と化しました。
次回もお楽しみに