真・幻想創星録   作:青銅鏡(銀鏡)

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一年前大阪に引っ越した親友が久しぶりに遊びに来ました。

やっぱり会えると嬉しいもんですね。


ゆっくりご覧下さい


第三十六話 手を取って

風魔に色々とアドバイスを貰ってから一ヶ月、僕は朝早くから幽香の家に行くことにした。

時刻は午前五時。幽香にはいつでもおいでと言われていたので、家の前でかまどを作ってご飯を作る。作っているのは縁の好物でもあった山菜炊き込みご飯と味噌汁。

 

 

「ゼンマイにワラビにウドにアブラコブシ、後は・・・タマゴタケかな。後松茸」

 

 

いつも通り山菜やキノコを放り込み、さっと醤油をかけて炊く。空気を伝って山菜やキノコのいい匂いが辺りに広がる。

 

 

「さてと、その間に・・・」

 

 

ここ三日間で遠出して取ってきたワカメを入れ、砂を抜いたアサリを解凍して放り込む。その間に大根、タマネギを切って入れる。味噌は特製のものを使う。

 

 

「・・・んー、まあまあかな」

 

 

口に含むと、塩辛さと少しの苦さが広がる・・・甘い以外の味わかんないや。

 

 

「ふぁ・・・何?この匂い・・・」

 

 

幽香がお目覚めらしく、眠そうなまま家から出てきた。

 

 

「あ、やっほー」

 

 

「幻夜!?・・・っ!」

 

 

幽香は何を思ったのか、大急ぎで家の中へと戻った。・・・あ、出てきた。さっきと違って幽香から、ほんの少しだけいい匂いがする。香水かな?

 

 

「ど、どうしたの?こんな時間に・・・」

 

 

「朝ご飯。幽香、食べる?」

 

 

丁度ご飯が出来上がり、蓋を開くと暖かい風が吹く。

 

 

「・・・これ、作ったの?」

 

 

「うん」

 

 

くるりと幽香のお腹が鳴った。幽香の顔が赤くなる、

 

 

「食べる?」

 

 

「・・・貰うわ」

 

 

幽香がお椀によそったご飯にそっと手をつける。

 

 

「頂きます」

 

 

幽香が少し口に運ぶ。咀嚼、飲み込んで・・・

 

 

「・・・」

 

 

無言でご飯を食べ始めた。あれ、美味しくなかったかな・・・

 

 

「・・・どう?美味しい?」

 

 

幽香がハッとしたように茶碗を置き、顔を赤く染めて頷く。

 

 

「・・・ええ」

 

 

「・・・・やっ・・・たぁ!」

 

 

滅茶苦茶嬉しい。まあそもそも僕が食事をしないせいで味がよく分かってないので、結構手探りだったけどね。食事をするのは侵二だけ、他はみんな食べなくても大丈夫だから、余計にみんな味覚がおかしい。甘いものは分かるんだけどね。

 

 

「そ、そんなに嬉しいの?・・・凄く美味しい」

 

 

「え、ホント?」

 

 

もう一度口に入れる、やっぱり分からない。

 

 

「んー・・・美味しいが良くわかんないな」

 

 

「・・・今まで、こっちに来るまで何を食べてたの?」

 

 

「え?変な匂いする水でしょ、その辺の枯れた草でしょ、死んだ動物のカビの生えた肉とか、蛆這ってる骨とか・・・最近は団子かな。甘いのは分かるんだよね」

 

 

幽香に微笑むと、何故か頭を抱きしめられた。

 

 

「・・・ねー、いきなり何するのさ」

 

 

「ごめんなさい・・・でも、なんでかこうしてあげたくて・・・」

 

 

偏食って言いたいのかな?・・・嫌でもわかってるけど、これくらいしか胃が受け付けなかったんだよね。色々あるんだよ。

 

 

「・・・しばらくこのままにして。なんか気持ちいい」

 

 

幽香に抱えられていると、なんだかとても眠くなったので、そのままゆっくり目を閉じた。

・・・あれ、何しに来たんだっけ。

 

______________________

 

 

私は朝から急に眠り始めた彼を見る。

彼が悪名の高さで有名な混沌。昔の私に混沌に会うなどと言うことが予想できただろうか?

 

 

「・・・変わった人ね」

 

 

初めて彼がこの花畑に来た時、頭のおかしい人間か、暇を持て余した妖怪かと思っていた。

ところがどうだ、彼は私と私の畑を見に訪れた。とても嬉しかった。自分以外にも花を、植物を好む妖怪がいるのが嬉しかった。

・・・まあ、彼の最初の一言が可愛いで困惑したのだが。

 

 

「でも、嫌な感じでは無いのよね・・・」

 

 

幻夜は多少目は細いものの、とても綺麗な顔をしている。しかも軽い言動の割にはしっかりしているので、嫌な感じは全くしない。付き合ってと時々言ってくるが、断ってはいるものの満更でもない。

ふと、幻夜が片目だけ開いた。しかし、様子がおかしかった。

 

 

「意識が取れたって事は・・・また寝てやがる。しつこいほど縁のトコに・・・あ?」

 

 

さっきの幻夜とは打って変わって荒い口調、幻夜は片目だけを私に向けて驚いた表情をしている。

 

 

「・・・幻夜?」

 

 

「あー・・・女、いや、お嬢さん、詳しい説明は今からする。まず、名前なんて言うんだ?」

 

 

何かの冗談かと思ったが、幻夜の目が泳ぎもしないので、ちゃんと答えた。

 

 

「風見幽香。前に言ったはずだけど、忘れたの?」

 

 

幻夜は目で苦笑していいや、と答えた。

 

 

「コイツは忘れてない。けど、俺はお前とは初めて会うんでな。・・・俺は幻夜の中に入ってる別人だ。名前はねえ」

 

 

「別人・・・?」

 

 

「おう、多重人格と考えてもらっても良いぜ。で、幽香、あんたはコイツの嫁か?娘か?」

 

 

私は噴きそうになった。

 

 

「何で変な選択肢しかないのよ!?」

 

 

「ああ、それか。幻夜が人前で寝るってのは、信用できる奴と、好きな奴の前だけだぞ。・・・ま、見た限り会ったばっかりみたいだし、信用されてるのかもな。珍しいなこの野郎。後マジで寝るな。体動かねえじゃねえか」

 

 

幻夜に信頼されていると言われた時、少し嬉しくなった。

 

 

「・・・で、まあ、俺がコイツの中にいるのも事情があってな」

 

幻夜が目を閉じて、心なしか暗い顔をした。

 

 

「・・・コイツは一族全員と違った生き物になってしまったし、一族全員を目の前で殺された。俺はそこで精神崩壊を防ぐためにいる」

 

 

「・・・っ!?」

 

 

「そのせいかは分からんが、コイツは家族や友達に憧れている。・・・本人では無理と決めつけているが、実際コイツは義理の親をやった。・・・多分、諦めてないと思うんだよな」

 

 

だから、と幻夜が目だけで私を見上げた。

 

 

「もし、コイツの事を信用してるなら、同情してやってくれるなら、友達でも良い、コイツの憧れるものになってくれないか?・・・俺は正直コイツに黙ってこうして話してはいけないんだが、これだけは伝えたくてな」

 

 

私は震えそうな声で聞いた。

 

 

「分かったわ。私も幻夜は嫌いじゃないし、むしろその・・・気に入ってる。・・・で、その、幻夜の一族を殺したのは、誰なの?・・・何人居たの?」

 

 

幻夜は片目を見開き、そして凶悪な笑みを浮かべた。

 

 

「そりゃ・・・俺が殺した。一人で全員殺した」

 

 

____________________

 

 

二度寝から目が覚めたような気分で目を開けると、僕の頭を撫でる幽香がいた。

・・・そっか、朝ご飯作って寝たんだ。いや何してんだ僕。

 

 

「んー・・・おはよ。ごめん、寝てた・・・」

 

 

「・・・良いのよ」

 

 

幽香の返事が素っ気ない。

 

 

「・・・怒ってる?」

 

 

「・・・怒ってない」

 

 

あれー!?怒ってるよね!?やっぱり朝ご飯作って寝るのはダメだったかな?

 

「その・・・ごめん」

 

 

幽香は不機嫌そうなまま、首を傾げた。

 

 

「何が?」

 

 

「朝ご飯作って寝た事です・・・」

 

 

「幻夜」

 

 

「はいっ!?」

 

 

幽香に肩を掴まれた。あれこれぶっ飛ばされるかも。

 

 

「幻夜、正直に答えて」

 

 

「・・・うん」

 

 

「私にどうして欲しい?」

 

 

「へ?」

 

 

幽香が顔を赤くしながら僕の肩を揺さぶった。滅茶苦茶視界が揺れる。

 

 

「だから!貴方は私に何をして欲しいか聞いてるの!怒ってないわよ!」

 

 

え、ええー・・・?

 

 

「・・・な、何で?」

 

 

「良いから!」

 

 

・・・えー、これ、どうなってんの?ねえ?

 

 

「んー・・・お友達、かな」

 

 

「そんなので良いの!?」

 

 

「僕に何を要求してんのさ!?」

 

 

ホント意味分かんないや・・・何?なんかやったっけ?山菜に変なの混じってたとか!?

 

「う、うん、友達で「付き合ってくれ」ちょおっ!?」

 

 

何やってんのさ裏!

うっせえさっさと付き合え!

 

 

「・・・良いわよ」

 

 

やったぜ。

え!?ちょっと、ホントどうなってんの!?ねえ!何したの裏!?

 

 

「い、良いの・・・?」

 

 

「良いわよ!逆に私が惹かれてんのよ!」

 

 

ええー!?

・・・うせやろ?もう結婚しろよオメー

 

 

「え、じゃあ、付き合って頂けますか?」

 

 

「・・・喜んで」

 

 

言い表せない程飛び上がりたくなり、幽香に抱きついた。

 

 

「やった!じゃあよろしくね!幽香!」

 

 

あと裏はちゃんと説明してね?

・・・黙秘権を行使する。

情報開示の義務を作りました。許可しません。

クソが。

 

 

結果、望んではいたけれど、予想外の結果で幽香とお付き合いする事になった。

でも、何でか知らないけど、幽香がやけに僕を気にするように・・・心配するようになった。疲れてないか、とか、眠くないか、とか、寂しくないか、とか。

間違いなく裏のせいだよね。僕が寝てる時出たんだろーね。

・・・うっせ、今の嬉しさ噛み締めとけや。

うん、ねえ。

・・・あ?

 

 

「僕は君の事、嫌じゃないよ」

 

 

「・・・嫌がれや」

 

 

次回へ続く




尚この頃風魔は既に結婚して数年経つ模様。彼は何もかも最速を狙ってるんですかね(白目)


次回もお楽しみに
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