真・幻想創星録   作:青銅鏡(銀鏡)

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またまたポンポンと時間軸が飛びます。


ゆっくりご覧下さい。


第三十八話 時過ぎて

時間は風魔が天魔を殺った次の日に遡る。

とある山で、虐殺が起きていた。

 

 

「ハハハ、ハーッハッハ!!」

 

 

百を超える天狗や化け猫、巨大化した猪などの死体の山の中心に、全身を返り血で染め、高らかに笑う男がいた。

侵二だ。口元や翼は赤く染まっており、心なしか満腹のようだ。

 

 

「うえっ・・・ちゃんと片付けろよ・・・」

 

 

その死体の山を前にして、龍一は顔を顰める。

 

 

「ああ、すみません、久し振りにお腹いっぱい食べたのでつい・・・」

 

侵二は頭を下げると、周囲に飛び散った血や死体を翼を使って貪り始めた。

 

 

「これでこの山は貰いましたね。ご馳走様です」

 

 

「あのな・・・確かに山の中で俺らそっちのけで別の山の天狗を嫁入りさせるだの伝統が廃れるだの喧嘩してたけどな、流石に横槍大虐殺ご馳走様はねーだろ」

 

 

仕方ないじゃないですか、と侵二が口を尖らせる。

 

 

「私は風魔や幻夜と違って燃費が悪いんで、こうして時々食べないとダメなんですよ。・・・まあ、天狗は人間と違って保有している妖力等は多いので、あと一万年は大丈夫ですかね」

 

 

「・・・果たしてそれは燃費が悪いというのか、疑問だな」

 

 

「風魔は風から摂取しますし、幻夜は水から取りますし、壊夢は溶岩に浸かってると取れますから。私も同じように何とかなりますけど、力は出ませんね。そりゃ他の三人も食べますけど、他は一人食べれば満足しますから」

 

 

「そこまで行くと燃費云々の話じゃねえだろ。なんだよ風と水と溶岩からって。生き物じゃねえだろ」

 

 

「一度に200人食べる私も生き物か怪しいですけどね」

 

 

「違いねえな」

 

 

二人が笑っていると、草むらががサリと揺れた。

 

 

「あれ?食べ残しですかね?」

 

 

「食べ残しってお前な・・・まあ生きてるだろうな」

 

 

龍一はゆっくりと草むらに近づくと、何かを察したのか苦笑した。

 

 

「お前・・・体格考えて隠れろよ。角はみ出てんぞ」

 

 

「およ、ほんとだねえ、気をつけるよ」

 

 

そんなのんびりした応答と共に、草むらの後ろの木のから巨体が現れた。

 

 

「久しぶりじゃないか、龍一」

 

 

「生きてたんだな、茜」

 

 

茜と呼ばれた巨大な鬼は、ニヤリと笑った。

 

 

「ああ、ちゃーんと生きてたさ。・・・で、そっちのは・・・ん?あの時の「初めまして、侵二と申します」侵?・・・人違いだ、ごめんごめん。・・・そう言えばちゃんと足も手もあるね」

 

 

「初対面にかける挨拶が酷い。そして侵二も食い気味の挨拶すんな。茜も茜で足も手もあるねってお前・・・あー、成る程な、あの檮杌探してた奴か。似てんのか?」

 

 

茜は首を捻り、答えた。

 

 

「ちょっとね。声は分からなかったし、顔も見てないからどうとは言えないけど、見た感じ似てたんだよね・・・でも名前がファンで始まったから、全然違うね、ごめんよ」

 

 

「いえ、お気になさらず。・・・ところで、どういった要件で?」

 

 

それなんだけどね・・・と、茜は頭を掻く。

 

 

「ウチの下っ端とかがバカやっちまってね、人間と折り合いつけてたんだけど、追い払われたのさ。他の奴らは下で待ってるんだけど、泊めてくれないかい?」

 

 

龍一はニヤリと笑った。

 

「前言ったよな、贔屓にするって。ちと血の匂いが残ってるが、元々ここを落とすことにしか興味がなかった、山ごとやるよ」

 

 

「正気かい?」

 

 

「狂気だ」

 

 

「そうだったね、じゃあありがたく頂いとくよ」

 

 

「ほいよ、けど、俺と侵二も適当なとこに住むからな」

 

 

「そりゃ当然さね。・・・あ、後もう一個頼みがあるけど、良いかい?」

 

 

面倒そうに龍一が頭を掻く。

 

 

「なんだ、喧嘩なら悪いけど今度にしてくれよ」

 

 

「違う違う。前に住んでたとこで河童を拾ってね。何人かいるんだけど、一緒に入れても良いかい?」

 

 

「山やるって言ったはずだぞ?勝手にしろ、俺は知らん」

 

 

「ありがとね」

 

 

「礼言われる要素ねえぞ」

 

 

龍一はぶっきらぼうに答え、茜は苦笑する。

 

 

「昔からそこは変にこだわるねえ。助ける癖に変な理由つけて、俺は知らんって、子どもかい?」

 

 

「るっせえやい。俺は悪役でいいんだ上等だろ」

 

 

「間違いないですね。そんな主上に朗報です。風魔が結婚しました」

 

 

「ブハッ!」

 

 

龍一が鼻から鼻水を噴いた。汚い。

 

 

「お前、それいつの話だ・・・」

 

 

「昨日です」

 

 

「昨日!?」

 

 

「おや、知り合いが結婚かい?めでたいねえ」

 

 

「めでたいってなぁ・・・侵二、風魔が女捕まえたのはいつだったか?」

 

 

「昨日です」

 

 

「ほら見ろおかしいじゃねえか!何で二十四時間過ぎずに結婚してんの!?」

 

 

「顔に似合わず掻っ攫ったんじゃないですかね」

 

 

「適当か!」

 

 

「まあまあ、そんなに騒がなくて良いじゃないか」

 

 

「おう、じゃあ風魔の山攻めるか」

 

 

「いやいやいや」

 

 

茜が龍一の肩を掴み、問い詰める。

 

 

「攻める理由が何処にあるのさ!?なんならそっとしておくべきなんじゃないかい!?「風魔なら秘蔵酒とか持ってるだろうな」詳しく聞かせとくれ」

 

 

サムズアップをする主人に侵二は苦笑し、めでたく結婚した友人に哀れみの念を送る。

 

 

「よーし!なら落ち着いたら風魔のいる山に攻めるぞー!」

 

 

「はいよ!」

 

 

____________________

 

 

「っ!?」

 

 

「風魔、どうしたんですかー?」

 

 

「いや、気のせいかもしれんが、寒気がな・・・」

 

 

「んー?確かにちょっと冷えてきましたねー・・・まさか風邪ですか!?そこに寝っ転がって下さい!おかゆ作ってきまキャアッ!?」

 

 

「伊織様ーっ!?あーっ!?書類がー!」

 

 

「・・・これでは寝てられんな」

 

 

____________________

 

 

「ん」

 

 

「どうしました?お義父さん?」

 

 

「いんや、ちょっと寒気が・・・」

 

 

「縁!義父さんが風邪だ!「何ですって!?お父さん、大丈夫ですか!?」く、薬を買ってくる!」

 

 

「・・・二人揃って元気だねー」

 

 

「そんな事言ってないで横になって下さい!・・・あーっ!?卵が焦げてるーっ!?」

 

 

「ちょっと元気すぎるねー?」

 

 

___________________

 

 

「今間違いなく二人ほど嫌な予感察知しましたね」

 

 

「んなアホな」

 

 

「何意味のわからない事言ってるんだい!さっさと準備手伝っとくれよ!」

 

 

後日同じようにこの空気を海を越えて察知した筋肉馬鹿がダイナミック帰投の準備をするのは言うまでもない。仲良しか。

 

 

____________________

 

 

その夜、侵二が岩に背を下ろし、息を吐いていると、茜が現れた。

茜の表情は引き締まっており、目は鋭かった。

 

 

「・・・やっぱ、あん時の鬼だよな。あの時は世話になったな」

 

 

侵二はいつもと違い、砕けた口調で茜に声をかけた。

 

 

「そうさねえ。で、お前は何をしてるんだい、今は侵二か。侵二」

 

 

「あの時と一緒だ、アイツらを殺す為に、今ここで主上に仕えてるだけだ。別に復讐に飽きたとかじゃねーよ」

 

 

「そうかい。・・・疲れてないかい?」

 

 

「鬼に言われる筋合いはねーけどな・・・ありがとな、俺は大丈夫だ。・・・まさか腕と足千切れてた時に助けて貰った鬼にまた会うとはな」

 

 

「なら良いけどね。・・・変な巡り合わせもあるもんだね」

 

 

「そうだ、鬼」

 

 

「あたしゃ茜だよ」

 

 

「そうだったか?・・・まあ良い、檮杌を探してるらしいな」

 

 

「うん?そりゃあんたから話聞いてから探してるけど、それがどうしたんだい?」

 

 

侵二はにっと笑い、親指を立てた。

 

「約束通り見つけたぞ。しかも嫁探し中と来た。・・・気になるんならさっさと取りな。アイツはダチだからな、紹介してやるよ」

 

 

茜の頭が爆発した。

 

 

「ななな、何を言いだすんだい!?あたしゃ確かに檮杌を探してるけど、そんな嫁とか・・・奥さんとか、向いてないよ!」

 

 

侵二はやれやれと首を振り、茜の肩を叩いた。

 

 

「うっせえ鬼、さっさとてめーも身固めろ。いつまでもそんな体と性格して独身名乗ってんじゃねーぞ」

 

 

「・・・相変わらず口悪いねえ。まあ、ちょっと考えよう・・・かな」

 

 

「ウブなこった。後口悪いのはてめーに何回もお節介食らったからだからな」

 

 

「アンタはどうなんだい?」

 

 

「俺か?・・・許嫁殺ったんでな、今は良い。・・・どうせなら同じように世間揺るがせた奴が欲しいがな」

 

 

「あんたらしいねぇ・・・ま、元気そうで良かったよ。ところで・・・お前が黄・・・アレって事は龍一には黙ってた方が良いかい?」

 

 

侵二の顔に翳りが見える。

 

 

「・・・一応、な。この状況であの人にコレを抱えさせるのは色々とややこしいからな・・・悪いな、嘘嫌いな奴にこんな事頼んで」

 

 

「構わないよ。嘘は嫌いだけど、つかなきゃいけない嘘ぐらいは分かるさ」

 

 

そう言って手を差し出す茜の手を、侵二はしっかりと掴んだ。

が、彼等にも一つだけ誤算がある。

 

これ、俺が聞いてるんだよなぁ・・・

非常にそこが残念だ。

まあしばらく黙っておいてやろう。

 

 

 

・・・俺は神々も、そして俺も見捨てる程のクソ野郎だからな。

隠し事した事を後悔すんなよ。クソ野郎。

 

 

 

次回へ続く

 




壊夢サイドは書きません。


次回もお楽しみに。
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