真・幻想創星録   作:青銅鏡(銀鏡)

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 前書きって、何を書くものでしたっけ・・・


 ゆっくりご覧下さい。


第四話 神であるということ

須佐之男の振り下ろした十束の剣は最後の八岐大蛇の首を捉え、分断した。

 

 

「はぁ・・・はぁ・・・兄上、やりました!」

 

 

「お疲れさん」

 

 

俺は冷や汗まみれの須佐之男を労い、八岐大蛇に合掌する。

 

 

「須佐之男、下がってくれ。アイツは俺が供養する・・・アイツも神だからな」

 

 

「・・・分かりました、お願いします」

 

 

俺は俯きながら下がる須佐之男の背後に声をかける。

 

 

「神が何であるか、何故俺達がいるか・・・見て考えてくれや」

 

 

横たわる八岐大蛇の胴体に右手を当て、ゆっくりと【生】を流し込む。

 

 

「聞こえるか八岐大蛇?聞こえるなら出てきてくれ。俺だ。神矢だ」

 

 

すると、八岐大蛇の胴体が割れ、男の姿が現れた。

 

 

「神矢・・・?そんな蕎麦屋ありましたか?」

 

 

透き通った、それでいて毒を含んでいそうな声が響く。

 

 

「・・・拳骨神だ。この名前使わせんな」

 

 

「あー、龍一さんね。・・・隣の若造は?」

 

 

「す、須佐之男命です。・・・八岐大蛇、なのですか?」

 

 

困惑する須佐之男の質問に、八岐大蛇は軽く答えた。

 

 

「んー、まあそうですかね?正しくは八岐大蛇の精神体ですかね、そこの龍神の能力に効果で精神だけ生き返ったんですよ」

 

 

ともかく討伐お見事です。と、皮肉にも受け取れる賞賛と共に、須佐之男の前へ近づいた。

 

 

「・・・で、どうですか?山を殺した気分は?」

 

 

八岐大蛇はニヤリと笑いながら、須佐之男に囁く。

 

 

「んなっ・・・」

 

 

 「当然ですよねえ?私は一応ここら一帯の神ですから。・・・もうじき山の自然は崩壊し始める。うーん、長い間住んでた場所が壊れ去るのは心苦しいですねえ・・・

 まあ仕方ありません。誤解とはいえ村娘を七人も死なせてしまったツケですね」

 

 

 「誤解・・・!?」

 

 

 「ああ、ご存じない?・・・丁度七年前、ここに村を作った者たちがいたのですが、あまりにも動植物を殺すもんですから注意しに行くと、何故か村娘が捧げられたんですよねぇ。しかも村娘も相当怖かったのか気を失ったまま死んでしまいましてね・・・それが続々と七年間続いたんですよ。別に要らないから自重してくれと言いに来たのに・・・この下には彼女らの墓があります。そして今年も捧げると聞いて、今回はそっぽを向いてやろうと思ったのですが・・・酒が置いてありましたので、どうせ罠であろうとわざと引っかかるとこの始末。・・・この先、山がどうなるかどうか・・・」

 

 

 「・・・そんな、では私は妻を手に入れるというくだらない理由で貴方を、いや、多くの生き物を・・・!?」

 

 

 「そういうことだ。・・・神を殺すということは、そいつの全てを背負う事に等しい」

 

 

 須佐之男は俺に掴みかかる。

 

 

 「兄上は・・・ご存じでそれを言って下さらなかったのですか!?」

 

 

 俺は須佐之男の腕を振りほどいた。

 

 

 「聞く必要ねえだろ。村と森、お前は村を選んだ。何も間違っちゃいねえんだからな。どっち選んでもどっちかは滅ぶ。・・・両方なんてな、お前にゃ無理だ」

 

 

 須佐之男が膝をつく。それを八岐大蛇は面白そうに見て笑う。

 

 

 「何、文句を言う気は毛頭ありません。・・・龍一殿、あれを」

 

 

 八岐大蛇が本体の尾の部分を示したので、俺は須佐之男を立ち上がらせる。

 

 

 「おら、落ち込んでねえで来い。さっさとあの尻尾斬れ」

 

 

 フラフラの須佐之男は何とか十束の剣を尾に向けて振り下ろす。が、尾が切れることはなく、十束の剣の切っ先が折れた。

 

 

 「は・・・!?」

 

 

 「おお、刀まで折れるんですか・・・」

 

 

 困惑する須佐之男、感嘆する八岐大蛇を横に、俺は新月を抜き放ち、尻尾にそっと当て、硬いものに当たらないように引いた。骨ごと斬り落とせた。数億年の加工の末完成した刀の前ではどんな骨も岩も無に等しい。

 

 

 「兄上の刀の切れ味おかしいですよ!?」

 

 

  

 「これから渡すものが霞むものを出すのを止めていただきたい・・・」

 

 

 結果は文句だらけだが。

 

 

 「まあ結果オーライ。須佐之男、これやる」

 

 

 俺は八岐大蛇の尾から抜き取った大刀を投げ与えた。そして俺はその隣の宝玉を取り出し、近くの血溜まりから血をすくった。

 

 

 「え?兄上、これは一体・・・?」

 

 

 「私の尾に生成されていた刀です。どうせ使えませんし、死んだ身です。譲りましょう」

 

 

 「・・・というわけだ。十束の剣は預かる代わりにその剣で代用してくれ。・・・そして、今回の件についてだが、この山の辺りは大丈夫だ」

 

 

 俺はすくった血を飲んだ。途端に体と拒絶反応が出るが抑え込む。

 

 

 「んなっ・・・!」

 

 

 「おえっ・・・これで八岐大蛇の一部は俺の体だ。いいな?八岐大蛇?」

 

 

 「構いませんよ。どうせ死にましたし」

 

 

 八岐大蛇が頷いたので、八岐大蛇の死骸を燃やした。

 

 

 「なら終了。お前も色々言いたいだろうが・・・今回は受け付けない。お前の殺した八岐大蛇とここいらの山は全部俺がどうにかする。「兄上・・・」お前はこんなことより告白と龍華のところに行くのが最優先だ。そうこうしてる間に龍華が泣きそうになるんだがなぁ・・・泣かせてみろ、どうなるか・・・「今すぐ向かいますっ!!」いってらー」

 

 

 全速力で飛び去る須佐之男を見送ると、八岐大蛇の方に向いた。八岐大蛇は・・・笑っていた。

 

 

 「若いっていいですねぇ・・・あ、龍一殿、見て下さい、日が昇ります。・・・ここで日を眺めて山を見るのも最後ですね・・・」

 

 

 ・・・俺がこいつと会ったのは数百年前だ。俺は龍華のせいで跋扈した神話生物を消しまくっていたのだが、こいつは・・・森に愛され、逆に森を愛していた。自然に被害を及ぼしていたやつらが多かったのにだ。俺が初めてこいつを見たとき、こいつの体には多くの生物が乗り、遊んでいた。ゆっくり近づいた時も、こいつは何もして来ないばかりか、逆に歓迎をしてきた。

 結局少ししか話せなかったが、こいつは森を離れる気はなく、骨もここで埋めると、何もしないと笑っていた。だから、俺はこいつが生贄を求めているというのは疑わしかった。結局のところこいつは無実だった・・・安心したが、結局殺さなければならなかったのは少なからず俺にしても苦痛だった。

 

 

 「そうだな。・・・とは言わんからな。八岐大蛇・・・俺の旅路に付いてこないか?」

 

 

 「旅ですか・・・」

 

 

 「ああ、・・・いつかはあの甘えたがりおてんば娘も独り立ちせにゃならん。・・・ここで黄泉に行くなら、俺の傍で日を眺めないか?」

 

 

 八岐大蛇はしばらく悩んだ表情を見せたが、俺の前で膝を折った。

 

 

 「・・・八岐大蛇、龍神の武器となりましょう。・・・その十束の剣に入れてください」

 

 

 「・・・そうか。なら行こうか」

 

 

 俺は宝玉をかみ砕いて飲み込み、折れて八束程になった刀に八岐大蛇を取り込んだ。

 

 

 「これで完全に俺の眷属だ。・・・お前とは神話生物の間引き以来だったが・・・これからは物として使わせてもらうぞ、相棒」

 

 

 俺が鞘に収めた剣に向けて言うと、かたり、と剣が揺れた。

 

 

 ____________________

 

 

 「てなわけで八岐大蛇の入った八岐の剣は俺が使うから。異論は認めん」

 

 

 「にーさま滅茶苦茶です・・・」

 

 

 俺が八岐大蛇のいた森を調べ、七人の娘の墓に合掌し、山の動植物に八岐大蛇の死を伝えていると、丸二日かかった。

 

 

 結果須佐之男は大和に帰ることができた。嫁の櫛名田比売(くしなだひめ)を連れて龍華のところにも向かったらしく、龍華は俺が帰って来るや否や「にーさまのおかげで須佐之男が帰って来ました!」と笑いながら抱き着いてきたが、明らかに異様な八岐の剣を見つけると後ずさり、「捨ててください!」と叫ばれた。妖気が駄々漏れらしく普通の神、妖怪、人間は生理的にすら受け付けず、神経を逆撫でされるとか。まあ確かに冗談半分で龍華の前で刀を抜くと泣いた。なだめるのに数時間かかった。

 

 

「まあ・・・怖がらせたのは反省する。だが・・・間違いなくこの先もクソ面倒な案件が続々とやって来る。それを俺が一々解決できるわけじゃない。・・・俺はお前の目の届かない案件を抑える。・・・俺からのお願いだ。目の届く問題の一つや二つ、お前で解決しろ」

 

 

 俺がそう言うと、ショックを受けたように龍華が俯いた。

 

 

 「そんな・・・りゅーかは一人では何も・・・」

 

 

 うつむく龍華の頭を、俺はガシガシと撫でる。

 

 

 「・・・須佐之男の異常に気付けたのはお前だ。確かに俺よりお前は筋力云々はないが・・・俺よりも優しい。お前の前では誰もが口を自然に開く。・・・俺には到底出来ない。俺ができるのはお前の知らなくていいところにいる奴らの話を聞くだけだ」

 

 

 「でも・・・りゅーかはにーさまみたいに止められません!」

 

 

 龍華の気持ちも汲んでやろうと思ったが、俺は突き放した。

 

 

 「お前には・・・伊邪那岐がいる。伊邪那美がいる。須佐之男がいる。月読命(つくよみ)もいる。天照もいる。・・・お前は近くに俺以外の奴がいる。・・・困ったら俺以外の奴も頼れ。お前は一人じゃない。・・・頼むから、俺が帰ってきたとき、大きくなりました!って言ってくれよ・・・な?」

 

 

 「にーさまは、絶対に帰ってきてくれますか・・・?」

 

 

 「いつか偶然会うこともあるだろう。だが・・・約束してやる。絶対にいつか会いに行ってやる」

 

 

 龍華はいつの間にか流していた涙を俺の服で拭くと、にっこりと笑った。

 

 

 「分かりました!りゅーかは大きくなります!旦那さんも見つけます!」

 

 

 「そうか・・・だが俺の服で涙を拭いたのは駄目だ。旦那探しも許さん」

 

 

 「何でですか!」

 

 

 「お前料理出来ないだろ!誰だ卵焼きで炭素の固形物作ったのは!流石にあれを料理とは言わん!錬金術だ!」

 

 

 「うぅ・・・」

 

 

 だが正直、俺を恋愛対象から外してくれたことは少し嬉しい。前まではにーさまと結婚するの一点張りだったのだから・・・

 

 

 「・・・明後日、俺はここを離れる。・・・ちょっとだけだが遊んでやる」

 

 

 「本当ですか!?」

 

 

 目を輝かせて飛び跳ねる龍華に頷く。

 

 

 「今回だけな。何したい?」

 

 

 世の兄からしたら、甘すぎるのかもしれないな・・・

 

 

 

 次回へ続く





 ありがとうございました。

 
 次回もお楽しみに。
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