真・幻想創星録   作:青銅鏡(銀鏡)

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平和回挟みます。


ゆっくりご覧ください。


第四十一話 偶にはこんな風に

 

朝、と言っても午前四時。昨日まどろっこしい点滴を飲みながら仕事をしていた身からすると厳しい時間帯だが、隣の天狗に起こされる。

 

 

「風魔!起きてください!出かけますよ!」

 

 

そう、小娘(伊織)だ。昨日の夜から眠れませんとほざいていたこいつは、嫌だという私の布団に潜り込み、掛け布団を吹っ飛ばした後、私の首に腕を置いて寝た。私?寝られるか馬鹿者。

侵二の宣戦布告の件から、念の為休みは返上、終戦後に改めて休む事にし、今日は仕方なく一日休む事にした。

 

 

「・・・まだ四時だぞ」

 

 

「今から行きたいとこがあるんです!行きますよ!」

 

 

私は仕方なく着替え、玄関でウロウロしている伊織と共に街に降りた。

 

 

____________________

 

 

「ここです!ここ!」

 

 

眠い目を擦りながら私の来たところは饅頭屋だった。

 

 

「ここです!ここのお饅頭は一日二個限定で売ってるんです!」

 

 

「そりゃ御苦労な事だ」

 

「じゃあ行ってきます!おじさん!限定饅頭下さーい!」

 

 

私が伊織の元気さに呆れながらも感心していると、トボトボと帰ってきた。

 

 

「・・・早かったな」

 

 

「売り切れでしたぁ・・・!」

 

 

どんな馬鹿がこいつより先に買いに来たのだろうか。どう見ても落ち込んでいる伊織を慰めようと手頃な店を探すために伊織を置いて歩く。が、いかんせん四時。どこも空いていない。そもそも饅頭屋が開いているのがそこそこおかしい。

 

 

「・・・あれ、風魔に伊織殿じゃないですか。昨日ぶりですね」

 

 

今一番会いたくない奴に会った。侵二は何かを考えていたが、何か閃いたのか、手に持っていた小包を渡してきた。

 

 

「見た感じ伊織殿が落ち込んでるとか言う程でしょう?これでも食べて元気出して下さい。店主と仲良くなったのでまた作って貰えますしね」

 

 

侵二は小包を私に押し付け、手を振ってすたすたと去って行った。・・・何がしたかったんだ?

 

 

「お饅頭〜」

 

 

「ええい、泣くな。・・・とある店がある、行くぞ」

 

 

私が落ち込む伊織を引いて連れて行ったのは開いているのを思い出した服屋、それも女性向けのものが多い店だった。

 

 

「・・・好きな物を選べ」

 

 

「・・・ホントに良いんですか?」

 

 

「まあな」

 

 

「・・・っ!行ってきますっ!」

 

 

嬉しそうに跳ねながら店に入る伊織に苦笑しながら店を見渡していると、店員らしき人間に声をかけられた。

 

 

「何かお探しですか?」

 

 

「いや・・・そこで着物を見繕っている奴に似合う服とは何か考えていてな」

 

 

「娘さんですか?」

 

 

「いや、嫁だ」

 

 

「奥さんでしたか・・・随分と奥様が若く見えたものでして、すみませんでした」

 

 

「いや良い。逆に誇らしくもあるからな。・・・で、あのおてんば娘に似合いそうなものはあるか?」

 

 

「ありますよ!ちょっと値は張りますが、こちらなどは・・・」

 

 

「・・・買った」

 

 

「・・・え?お買い上げですか?」

 

 

「ああ。買う。後そこの簪と手鏡も頼む」

 

 

「あの、お客様、勧めた側としてはどうかと思われるでしょうが、この三点ですと相当お値段が・・・」

 

 

顔を強張らせる店員に、私は優しく笑う。

 

 

「大丈夫だ。こう見えても貯めてある」

 

 

____________________

 

 

本当に売れた事が信じられないような顔をする店員に会釈をし、伊織が選んだ5着も買い、店を出た。

 

 

「ホントに5着も良かったんですか?」

 

 

「気にするな、本来なら年に一度使う分だからな、そこそこ溜まってはいる」

 

 

「風魔、買うのはお酒とちょっとのご飯ですもんね・・・後、その持ってるのは何ですか?」

 

「これか?まあ・・・私物だ」

 

 

「そうですか。あのお店の前の着物も綺麗でしたねー」

 

 

「そうだな。似合いそうだったしな」

 

「そうですねー・・・買えないですけどね」

 

 

残念ながらお買い上げ済みだ。

 

 

____________________

 

 

「お昼はどうしますか?」

 

 

「そうだな・・・」

 

 

昼過ぎ、活気の溢れ始めた街を眺めていると、とある屋台に目が行った。

 

 

「・・・何故あんな店がある」

 

 

「え?あの【らあめん】ってお店ですか?聞いた事ないですね」

 

 

何故!飛鳥時代に!ラーメン屋がある!

 

「風魔?どうしました?」

 

 

「・・・気にするな。思い違いかもしれんからな、入ってみるか」

 

 

中華、と大きく書かれた暖簾をくぐる。

 

 

「らっしゃーせー」

 

 

店員が!主上ッ!何を考えている!?

 

 

「お、新しいお客さんか。何注文するんだい?」

 

 

「えっと・・・風魔、分かりますか?」

 

 

「・・・味噌か、塩か、醤油か、豚骨。どれが良い?」

 

 

「冷やし中華もあるぜー」

 

 

主上!自重!この時代に冷やし中華は無い・・・っ!

 

 

伊織は首を捻って悩んだ後、私に向き直った。

 

 

「・・・よく分からないので、風魔と同じのにします」

 

 

「店主、豚骨二つ」

 

 

「あいよ」

 

 

伊織が店を見回している間に、主上に小声で話す。

 

 

「何故貴様はこの時代にラーメン屋を開いている・・・!?江戸時代頃ではなかったのか・・・?せめて握り寿司・・・いや、今の時代だと熟鮓か。ともかく時代を考えられんのか?」

 

 

「良いじゃねえか別に。あんまり気にするとハゲるぞ」

 

 

「ハゲるか馬鹿者。・・・それに、一ヶ月後に攻めてくるのではないのか?」

 

 

「だからって今からギスギスしたくねえじゃん。俺はこうして店開きたかったから開いたんだよ。攻めるのはまあ、傍迷惑だろうが遊びたいんだ。・・・ま、平和に行こうや」

 

 

そう言って主上は出来上がった伊織の分のラーメンに、焼豚を増やして入れてくれた。

 

 

「仕方ないな。今回だけ遊びに来い」

 

 

「サンキュ。・・・はいよ、ラーメン二丁」

 

 

「これがらあめんですか・・・」

 

 

「ああ、火傷しないようにな」

 

 

「あちっ!」

 

 

「火傷するなと言っただろうが」

 

 

____________________

 

 

「ご馳走さまです!」

 

 

「美味かった、ありがとう」

 

 

「まいどありー」

 

 

帰っていく二人を見て、龍一は微笑み、ふと風魔の食べた後の器を見た。

 

 

「・・・あれ、そういやなんでアイツ、ラーメンがこの時代の料理じゃないこと知ってたんだ?俺ラーメンの話したっけ?」

 

 

いや待てよ、と龍一は首をかしげる。

 

 

「なんで未来の江戸時代の事と、寿司の出来た頃知ってるんだ?」

 

 

___________________

 

 

そのまま昼過ぎまでふらふらとしていると、突然伊織が山に行きたいと言い始めた。

 

 

「山・・・か?」

 

 

「はい!初めて会った山です!歩いて登りますよ!」

 

私は伊織に手を引かれ、山を登る。

 

 

「ぜえ・・・ぜえ・・・早く行きましょう!」

 

 

「その割に苦しそうだな。・・・仕方ない」

 

 

私は伊織を下から持ち上げ、歩き始めた。

 

 

「ちょっと風魔!?恥ずかしいです!降ろしてください!」

 

 

「誰も見てないだろうが。それに、急ぐのだろう?」

 

 

「そ、そうですけどお・・・」

 

 

どうこう言いながらもしっかりと抱きついている以上、嫌ではないらしい。

そのまま登っていると、伊織が不思議な事を聞いてきた。

 

 

「風魔」

 

 

「ん?」

 

 

「・・・前会った侵二さんは、何か悪いところでもあるんですか?」

 

 

「ん?アイツ?・・・いや、特に持病も無いが」

 

 

「そう、ですか・・・なんだか侵二さんが病気みたいな気がしたんです。ちょっと無理してるみたいな・・・」

 

 

「無理、か・・・まあ確かに無理はしているだろうな」

 

 

「怖かったんですけど、ちょっと悲しそうでしたし・・・」

 

 

「・・・理由は知っているが、墓まで持っていく事なんでな」

 

 

私を含め、四凶の奴らは碌な過去がない。その中でも侵二は最悪。メンタルの弱い人間ならば聞くだけで気絶するような事ばかりだ。

産まれてから今まで、間違いなく被った血は侵二が一番多い。

そんな奴が悲しげに見えるのは、あながち間違いではない。

 

 

「なら聞きませんけど、風魔はなんで知ってるんですか?」

 

 

「・・・山頂だぞ」

 

 

「あ!降ろしてください!」

 

 

「分かった分かった。・・・ここは?」

 

 

「風魔が景色を見てたところですよ!忘れたんですか?」

 

 

「そうだったか・・・」

 

 

山頂に上がると、日は暮れ、丁度夕日が沈み始めていた。

 

 

「綺麗ですねー」

 

「お前の方が綺麗だがな」

 

 

「い、いきなりずるいです!」

 

 

私は笑いながら、侵二に寄越された小包を渡し、近くの岩に座る。

 

 

「菓子だ。食べるか?」

 

 

「お菓子?・・・こ、これって、朝買えなかったお饅頭じゃないですか!?」

 

 

「早並びの馬鹿はアイツか・・・!!」

 

 

まさか並んでいたのが侵二とはな。そりゃ売り切れていたわけだ。

 

 

「こ、これを何処で!?」

 

 

「侵二がこれでも食って元気を出せ。と渡してきてな」

 

 

「・・・侵二さんって優しいんですか?」

 

 

「まあな。私達と主上、信用した相手、後は敵として認めていない相手には優しいな」

 

 

「不思議な人ですね・・・やっぱり怖いですけど」

 

 

「違いないな」

 

 

饅頭を口に入れる。もちもちとした食感、そして中の白餡が見事に混ざり、あっさりとした甘味が口の中を埋め尽くす。

 

 

「・・・美味いな」

 

 

「美味しいですー!」

 

 

伊織が嬉しそうに足をパタパタと動かす。

 

 

「あれ、なら隣のお荷物はなんですか?」

 

 

「これか?・・・まあ、帰ってから着れば良い。お前の服だ」

 

 

「わ、私のですか?」

 

 

「ああ。後は簪と、手鏡か」

 

 

「そんなにですか!?」

 

 

信じられないようなものを見るような伊織の顔に失笑してしまう。

 

 

「クッ、ハハハ!」

 

 

「な、何笑ってるんですか!」

 

 

「いや、すまんすまん、今の顔が面白くてな・・・」

 

 

笑っていると、伊織に頭を掴まれ、無理やり膝の上に頭を乗せられる。

 

 

「・・・伊織?」

 

 

頭を上げようとするが抑えられ、優しく撫でられているので大人しくしながら聞く。

 

 

「風魔が頑張っているので休ませてあげているんです。いっつも無理して、昨日は点滴までしてるんですよ!?」

 

 

「いや、まさか点滴までするとは私も思わなかったがな・・・」

 

 

「無理しすぎなんですよ・・・天狗でも無いのに、私達のことばかり考えて、その度に当然だとか言って寝ずに仕事して、私だけ寝させて・・・」

 

 

「いや・・・」

 

 

「ホントに風魔はバカです」

 

 

反論しようとしたが、ここで返すのもあれだと思い、頷いた。

 

 

「そうだな・・・いつもすまないな」

 

 

「分かれば良いんです」

 

 

伊織の手が止まり、私の頭を持ち上げ、伊織の肩に乗せられる。

 

 

「今日はここで早めに寝ましょう」

 

 

「寝相は?」

 

 

「うっ・・・ちゃんと大人しく寝ますよ!」

 

大事な所で押し黙る伊織に笑いながら、私は目を閉じた。

 

 

「伊織」

 

 

「はい?」

 

 

「・・・すまん、このまま寝る」

 

 

「ええ、どうぞ」

 

 

その日は今までにない程、安らかに寝ることが出来た。

ついでに次の日、例の服をこっそり見た伊織が驚きのあまり、私の体を半日揺さぶり続けた。

 

 

 

次回へ続く




そろそろブタクサとかの花粉が飛んできますね。
毎回悩まされます。あれどうにかならないんですかね、ならないんですね。
そう言えば、やっとこさ40話過ぎたんですね。遅い。
過去駄作なら一月近くで到達してましたね。


次回もお楽しみに。
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