ゆっくりご覧ください。
第1波の全滅。それはあまりにも早く、あまりにもありえない話だった。壊夢以外なら、の話だが。
「嘘・・・ですよね!?」
「悪いけどこれ、現実なのよね・・・って事で第2波。萃香と勇儀いるから大丈夫だろ」
再度強烈な風圧と衝撃。爆音が後から響く。しかし今度はそれで終わらず、何かと何かが殴り合う音が聞こえる。
「ごめん全然大丈夫じゃねーや。もう少ししたら裏から茜が来る。行くぞ、幽香、ボケナス、虫ケラ」
「「了解、チキン」」
「了解です、ヘタレ」
「りょ、了解よ・・・?」
龍一が頭から飛び降り、侵二が再び蜘蛛のような形になり、幻夜が幽香殿を担いで飛び降りた。
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幽香を抱き抱えながら空気を踏んで跳ねていると、幽香が囁いてきた。
「幻夜。貴方は壊夢って人を抑えて。私は後ろから撃つから・・・」
「うん。無理しないでね?」
「ええ。・・・幻夜も」
地鳴りが響く。徐々に壊夢が近くなってきた。
「よーし、行くぞてめえら!」
「あ、そうだ。2軍と3軍ってどうやって決めたの?」
侵二が僕に微笑んだ。
「ダイスですよ」
選択理由が酷かった。だから2軍に侵二とマスターが同時にいるのか・・・
幽香を担ぎながら地面に着陸すると、女の子二人が壊夢と殴り合っていた。
「全然効かんぜな!」
もう何というか相変わらずで、どう見ても僕なら一発でノックアウトされるような打撃を喰らっても仰け反るどころか、微動だにしない。逆に笑う始末。もう生き物辞めてない?
「あれはもう・・・ダメですねえ」
「あいつ里帰りして何したんや、減量してるし、オーラが倍近くに見えるんだが?」
更に壊夢は前よりも細くなって、がっしりとしていた肩幅や浮き出ている筋肉は無くなっていた。待ってそれであの筋力とかゲテモノじゃん。しかも二メートル超えてるとか何?動く木?大自然そのもの?
「セアッ!」
減量した壊夢は今まで以上に早く、そして力が増していた。
「ぼさっとしてねえで行くぞっ!」
マスターが拳銃を持って接近し、壊夢に連射する。侵二が羽をバネにして突撃する。弾丸は壊夢に当たるものの、銃弾がぺしゃんこに潰れた。
「行くよ!幽香!」
僕も接近し、壊夢の足元を凍らせる。
「ぬん?・・・幻夜に、侵二、主ぜよか!」
「正解ッ!って事でくたばりやがれ!」
マスターのかかと落としが壊夢の頭に命中し、侵二が満身創痍の女の子二人を掠め取る。壊夢はメキメキと当然のように凍らせた地面を粉砕してマスターに襲いかかる。当然のように十八番封じるのやめてくれない?萎えるんだよ?
「大丈夫ですか?御二方」
「おっ、侵二かい!助かったよ!」
「あれ何なんだい?茜より頑丈な奴とか初めて見たよ?」
「まあ、あれが俗にいう檮杌です。そこにいるのが援軍の混沌、幻夜。そしてそのガールフレンドの幽香殿です」
「よろしくー、伊吹萃香と星熊勇儀だよね?どっちがどっち?」
二人のうち子供の時の縁ぐらいの大きさの子が答えた。
「私が伊吹萃香。そっちが星熊勇儀だよ。・・・もっと混沌って人相悪いと思ってたよ」
「よく言われるよ。後そんなぼーっとしてるんだねって言われる」
そんな人相悪いと思う?・・・まあ命令されるなら殺すような僕だけどさ。
「自己紹介してるのは良いけどよぉ!俺が一人でやってんの忘れんなよ!?」
もう筋肉馬鹿と呼べない程細マッチョになった壊夢の拳骨を受けながらマスターが叫ぶ。
「あ、幽香!行っちゃって!侵二もちょっと手貸してあげて!」
「はいはい。こうですか?」
幽香が日傘を構え、その背後に侵二が立って幽香の手を取る。
・・・なんかすっごい嫌な気分。
「ええ。・・・【マスタースパーク】」
侵二が口から発射していた光線の倍以上の火力の光線が射出され、壊夢とマスターを包む。マスター共々食らってて笑う。でもなんかイライラする。
「侵二、幻夜、貴様等アッ!?」
マスターの壮絶な叫び声と共に壊夢はしめやかに爆発。
そして当然のように咳き込みながら出てくるマスターと、豪快に笑いながら無傷のまま出てくる壊夢。揃いも揃って頭おかしいと思う。
「ゲホッ!壮絶なフレンドリーファイアを見たぞ貴様等・・・」
「ハッハッハ!!何とも景気のいい一撃ぜよなぁ!?」
幽香は愕然とし、侵二はやれやれと首を横に振る。
「そんな・・・無傷なの!?」
「呆れました、クソ程も効いてませんね。主上、どうします?」
「知るか。こうなりゃタコ殴りして諦めてもらうしかねえだろ」
そう言って侵二とマスターが消え、壊夢の周りを走る。仕方なく僕も混ざって壊夢を囲むように走る。
そのまま三人のうち誰かが壊夢に攻撃を仕掛けていく。一度当てると再び周りを走る。何度も何度も壊夢に攻撃があたり、壊夢が少しだけ後ずさる。マスター、侵二、マスター、僕、僕、侵二、僕、マスター・・・連撃を続けていると、壊夢が右足で地面を踏みしめた。
直後三人共吹っ飛ばされた。
「ゴホッ・・・!?」
何が起きたか分からなかったけれど、外傷がない事から、壊夢の衝撃波だと分かった。ふざけないでよ。
壊夢がいる位置から半径一メートルの場所は、何かに押されているように凹んでいた。
「気を高めて周囲に強烈な重力空間を作り上げるってか・・・ざけんな、どんな化け物だ」
マスターが血混じりの唾を吐き、手をプラプラとさせる。
「俺はこの狭いとこじゃ能力的に鎮圧は無理。ついでに肋骨と鎖骨折れた。侵二?」
「こっちは骨折はなし、・・・ただ、強烈に頭を打ちました。ちょっと視界歪みます。戦闘継続に支障が出ます」
「幻夜は?」
「大丈夫・・・だけど、アレは無理。それに萃香と勇儀と幽香連れ帰んないと」
「アタシもさっきの時に腕をやられてね・・・行けるかい、萃香?」
「私も無理だね。そもそも最初の頭突きか分かんないなんかで肋骨がね・・・」
「そもそもなんで突っ込んできたの?・・・ねえ壊夢、何で来たの?」
壊夢は僕に振り向くと、拳を打ち鳴らした。
「ちと面白い噂を聞いたぜな、鬼子母神っちゅう奴を見に来たぜよ!」
「あれこれ俺ら要らなくない?」
「ですね」
「まさか聞かずに対策してたの?脳筋じゃん」
「それな」
途端に頭が痛くなる。馬鹿な僕だってわかる。無駄な事やってたんだよね。これ全部。そもそも壊夢が帰国したからってそんな戦乱に首突っ込むような奴じゃないし、よくよく考えると危険なのは危険だけど、挑まなければ良いよね。
ひょっとして伊織ちゃんの言ってた壊夢さんは危険なんですかの質問はこの意味だったのかも。もうみんな戦闘に汚染されてる?
「これどうすんの?」
「面白いからほっとこうぜ。なあ壊夢!山吹っ飛ばす気あるか!?」
「ねえぜよ!壊すとマズイぜよか?」
「風魔が結婚してな!ここに住んでるんだ!」
「おお!なら壊さんように鬼子母神とやらと喧嘩するぜよ!」
もうなんか色々と酷い。普通に話通ってるじゃん。吹っ飛んだ鬼と天狗無意味じゃん。すごい可哀想なんだけど。後風魔何も知らずに喧嘩するじゃん。もっと苦労してるじゃん。泣いて良いよ。
侵二が山頂に失敗のサインを出す。と同時に山頂から何かが飛び出して空に消え去り、しばらくして成層圏から紅い何かが突っ込んでくる。
ん?成層圏?
「貴様等・・・!!良い加減にしろおアッ!!」
奇声を上げながら燃える風魔が落ちてくる。
・・・さっきまでの聞こえてたの!?
「許さんぞ貴様等ッ!?こぞってふざけおって!受ける側の身になれっ!!鬼は許そう、幻夜も幽香も非がない、壊夢も許そう。だが貴様等は許さんッ!!」
徐々に接近する隕石、もとい風魔。それはマスターと侵二を狙って落ちてくる。
「オイオイオイ・・・侵二?」
自分の死期を悟ったような表情をした龍一が侵二に笑うと、侵二も微笑み返す。
「動けません。ダメでしたねえ・・・ダイスで決めちゃダメですね!」
「全くだ」
「でありゃアッ!!」
そうして火の玉となって落ちてきた風魔を、
「まあまあ、待つぜよ」
壊夢が片手で止めた。もうやだこのメンバー。これだから混沌の僕まで魔境入りしてるって思われるんだけど。入ってないから。
「離せっ!私はそこの二人を斬らなければ済まんッ!」
「風魔クッソキレてんじゃん」
「風魔人怒る!ですかね?」
「ア゛ァ゛ッ!?」
「・・・すいませんでした」
「大変申し訳ございません」
風魔が生き物かどうか怪しい脅しの声を上げると、流石のマスターと侵二も頭を下げた。メラメラと燃えていた風魔はどんどんと収まり、火が消え始めた。
「・・・チッ、このど畜生共が。壊夢、貴様もだ!元から鬼子母神と喧嘩したいと言えばよかろうに、何故わざわざ荒らしに来た!と言うか何故痩せた!?」
「いやー、鬼子母神とやらのいる場所がいまいち分からんかったんぜよ。痩せたのは修行ぜよ!」
修行とか笑うしかない。どうやったらあのバッキバキの筋肉が落ちて痩せた癖に前より化け物並みの筋力がつくんだろーね。
「このボケナスが・・・やめだやめ!馬鹿らしくて斬る気にもならん!・・・中学生じゃあるまいし、気分で動くな」
風魔は煙管を取り出して吸いながら、大きなため息を吐いた。
「壊夢、頂上に茜殿とやらがいる。それがお前の探している鬼子母神だ。・・・その辺りの広場は使わせてやる。巻き込まずにやれ」
「お!?ええぜよか!?」
「嫌という程鬼畜ではない。・・・好きにしろ」
そうして嬉しそうに拳を振るう壊夢に対して微笑んでいる風魔は、ちょっと呆れ顔が見えたけれど、本当に楽しそうだった。
「めでたしめでたしだな。じゃあ帰るか「待て」・・・何でございましょう風魔さん?」
風魔は僕と幽香を指差して言った。
「この二人は別として、片付けるよな?」
マスターに向けて笑う風魔は、いつも通り楽しそうなとっても悪い笑顔を浮かべていた。
次回へ続く
はい、そうですね。
一言も誰も壊夢が山を滅ぼしに来たか確認してませんでしたね。
馬鹿です。固定観念って怖いですね。
次回もお楽しみに。